
メールマガジン第302回(5月18日)
皆さんこんにちは
5月15日に国土交通省の第1回長期優良住宅先導的モデル事業(まちなみ・住環境の分野にかかる提案部門)で7事業が評価され、その中にHICPMが直接技術指導したアサヒグローバル建築株式会社によるTNDによる「ガーデンテラス泊山崎」と工藤建設の100年間の定期借地権「ガーデンテラス」の2事業が長期優良先導的事業と評価されました。
この2事業は、これまでも私のメールマガジンで説明してきましたが、平成12年から9年間掛けてハウジングアンドコミュニテイ財団で、国土交通省に技術研究補助金を受け、民間の意欲的な企業20者が参加して取り組んできた「住宅により資産形成してきた欧米の経験を日本の住宅産業に如何にして取り入れるかの研究成果」を実践したものです。
特に、平成20年度(平成20年11月から平成21年3月)の研究では、国土交通省から「政府が現在勧めている超長期優良住宅事業に向けて住宅の資産価値を維持向上させる欧米の経験をもとにした日本で利用できる住宅地経営管理マニュアルをまとめて欲しい」という要請を受けていました。
HICPMとしましては、平成19年度までの研究では、ほぼ欧米(主として米国英国)にシステムを日本で応用することが出来るまでの資料を取りまとめていましたので、国土交通省の要望には答えることができる自信を持っていました。しかし「絵に書いたモチでは動詞も説得力がなくてどうしようかと迷っているときに、アサヒグローグローバル株式会社の久保川社長および工藤建設の小板橋部長から、それぞれ別な形で超長期優良住宅プロジェクトに挑戦したいので指導して欲しいという要請を受けました。そして、そこで実践した開発研究の成果を、ハウジングアンドコミュニテイ財団の研究会で検討していただき、その研究成果は今年3月末に国土交通省に納品されています。
私自身住宅地開発事業には住宅都市整備公団で都市開発調査課長時代のニュータウン事業を含めて約20年弱都市開発事業に取り組んだ経験を持っていたうえ、多分、日本でも欧米の優れた住宅地開発事業を実例にわたり文献調査と事例調査を私以上に沢山やった人はそんなにはいないだろうという自負もあり、引き受けることといたしました。
HICPMとしてはこれまでは一般的な技術教育や技術移転でしたが、今回始めて具体的なプロジェクトを対象にコンサルタント契約をして実施することにしました。
HICPMに開発事業のシステムを依頼された2会社にとっては事業計画の一部に対する技術委託事業であり、HICPMとしてはコンサルタントとしての受託事業であるとともにハウジングアンドコミュニテイ財団の開発研究の準備であったわけです。
「開発研究」という研究は、基礎研究や応用研究とは違って、実現する研究成果を実現する理論や個別技術は最初から明らかになっているが、その理論どおりの成果にむけて、如何に確実に研究成果の実現をもたらすかと言う研究です。
今回の受託事業を通して、具体的なプロジェクトをとして行なうことで、より正確に技術移転を実現することが出来ることが確認でき、今後も要望があれば対応しようと考えています。すでに一つのプロジェクトには関係することにして業務も始まっています。
特に今回の国土交通省からのマニュアル作成の調査では、これまでの住宅資産形成に大きな力を発揮してきた米国においてサブプライムローンを梃子にした住宅バブルに金融投機が乗っかって、住宅資産価値の水ぶくれの後を受けて、そのバブル崩壊により、米国のみならず世界経済が世界恐慌を導き出すといった状況にありました。そこで、米国の住宅による資産形成に関しても吟味をようするという問題もありました。そのための調査を開発研究の遺憾としても取り組みました。
基本的に、米国の住宅バブルの膨張と崩壊とは、米国の住宅産業及び住宅地経営が、約75年以上のわたって住宅による資産形成を確実に実現するシステムを築いてきた20世紀が、住宅資産価値の右肩上がりの神話と形成してきました。それにブッシュ政権が利用し、FRBがそれに便乗してエクイテイローンで住宅ローン返済のための借金を容認することで住宅需要が拡大しました。この住宅市場需給関係を偏重した住宅バブルに、金融資本が住宅投資から住宅投機の対象としたことで住宅バブルが発生したものであることがわかりました。
その背景には、事故率の範囲で有効とされた融資保険理論をその境界領域外でも有効であるとした金融工学の過信が事態を一層混乱させ、解決の道を塞いでしまっていました。
私は、住宅バブルが米国で発生を始める頃から、その成長段階、住宅バブルの最盛期、そして住宅バブルの崩壊とその後の問題処理の段階とこの10年間に、20回以上米国を訪問し住宅産業の現場を観察してきました。もちろん、始から住宅バブルとは思いませんでしたし、現在の事態が生まれるとは想像もしていませんでした。
しかし、1929年に世界経済恐慌が起こったときに、住宅産業が年間100万戸の新設住宅を誇っていた米国で1933年には年間9万戸にまで新設住宅が激減していた経験を、ルーズベルト大統領が全米住宅法(NHA)を制定することで、その後の住宅産業成長基盤を造ってきたことを文献研究で学んでいました。第2次世界大戦をはさんでこの住宅政策の枠組みは維持損著されて、住宅を所有することが米国民の資産形成を実現したという事実を学んできました。
そのようなわけで、私は米国での住宅バブルに関して、住宅産業による住宅地開発の方法、住宅建設の方法、居住者による住宅地経営管理の方法に関しては、住宅による資産形成の維持向上を実現させる確実の方法として信頼できるものができていたと確信していました。住宅バブル崩壊は、私の理解を検証するためにも大きな意味を持っていました。
日本の住生活基本法による住宅政策に関しては、その基本となる制度設計を審議した社会資本制度審議会住宅宅地部会八田会長に対しても、法律施行前に直接面会し、その疑問をぶつけたことは以前このメールでも紹介してきたとおりです。
金融工学専門経済学者を自称する八田教授は、事故率の範囲で制度設計がされているので「フラット35の信頼性に疑問はない」と断言し、クレジットローンでなされている住宅ローン証券を、モーゲージでなされている米国のMBSと同列で扱ってもなんら問題がないと言い切ったのです。(実は私が日本のMBSと米国のMBSとの担保自体の根拠が違うと指摘したときまで、その違いが分かっていなかって、あわてていました。)
米国の住宅産業や住宅地経営管理の健全性は、住宅バブルを引き起こすことになった住宅の資産価値維持向上システムへの信頼性の証明であって、それを金融後期に利用させた油断に問題があり、住宅地経営管理システムの欠陥ではなかったのです。ビルダーズマガジン第152号では、特集記事として米国の住宅産業と住宅バブル経済崩壊のこれまでの調査結果をまとめて掲載しているのでお読みくださると、HICPMがまとめた「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」がモデルにした米国の住宅地系営為管理への信頼性を確信していただけると思っています。
アサヒグローバル株式会社の久保川社長は、かつて、私とTND開発のメッカとも言うべきシーサイド(フロリダ)や、バブル最盛期にアーバイン「カリフォルニア」を一緒にグローバル研修企画のツアーで視察された間柄でであり、HICPMに指導を大いに取り入れてくださり、一緒に設計を担当された堀さんは非常に積極的に取り組まれたことが立派な成果を生むことに繋がっていました。
「住宅地経営管理マニュアル」の「三種の神器」の一つが、ニューアーバニズムをとりいれたマスタープラン(基本設計)とアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)で大きな成果を挙げることができました。
工藤建設株式会社では、大熊さんの指導を受けた100年定期借地、渋谷さんの建築デザインに加えてHICPMのCMを考えた開発計画という沢山の指導を取り入れた取り組みで、小板橋さんの意欲ある対応で可能になったものです。
「三種の神器」に第2は、この二つのプロジェクトのには、英国及び米国で100年以上にわたって培われてきたコミュニテイ(自治組織としての団体:HOA)が自治政府を作って、その中の住宅資産を維持向上させるために必要な自治政府(住宅地経営管理協会)をつくるということです。
「三種の神器」の第3は、住宅所有者(HO)と、住宅地経営管理協会(HOA)と、開発業者とが憲法にさだめる「契約自由の原則」の上に立っ手、マスタープランとアーキテクチュラルガイドラインを尊重したたコンセンサスを公正証書として結んだ基本契約約款(CC&RS)として定めるということで、国家による民事契約の国家的担保を得ることにしています。
中でも、今回の調査で明らかにしたことは、エベナネツアー・ハワードが提起し、実践した「ガーデンシテイ」の都市経営の考え方は、英国でそれまで大土地所有者(ランドロード)が自らの資産形成をやってきた手法を住宅地経営に取り入れたリースホールドの考え方が、米国の住宅地経営管理の基本に継承されているということの重要性であります。
土地都建築物との関係は、キャンバスの上に油絵絵を描くことやモザイク画の下絵にモザイク(色つき石)を組み立てていくように油絵の具やモザイクの石は、いずれのキャンバスやモザイク画の一部になる「土地と建築物は不可分のもの」と言う不動産の社会科学的な原則にあったマスタープラントアーキテクチュラルガイドラインを遵守する強制権を住民自身で維持管理することが、住宅の資産価値を維持向上させる鍵となっています。
私自身約半世紀、住宅問題、都市計画問題を中心に行政、都市開発、住宅産業などの多様な分野で仕事をし、その間米国英国の都市住宅の研究をしてきて、これらの国で行なわれていることの必然的な理由を解明してきました。そして、それを日本の住宅都市産業に応用する取り組みをやってきました。
今回の「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」は、これまでに出版した「アメリカの住宅地開発」(学芸出版)、「アメリカの住宅産業」「住まいの図書館」、「アメリカの家、日本の家」、「アメリカンハウススタイル」、「輸入住宅4つの革命」、「新ホームビルダー経営」、「定期借地権とサステイナブルコミュニテイ」、「日本の住宅はなぜ貧しいか」、「資産を築く国、失う国」から「マークスプリング物語」までの井上書院からの出版物と一貫した考え方でまとめられたものです。
その中で、実際の住宅地開発と住宅地経営管理をまとめた今回は、「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」は、アサヒグローがるか部式会社や工藤建設と言う中堅工務店の意欲的な取り組みで実証された日本で十分実践することの出来る住宅地経営管理マニュアルとして、多くの工務店にも活用できるものと考えています。
HICPMとしてはこのマニュアルの研修を実施することを関係者に働きかけて生きたいと考えています。今後これらの実践例を、ブローバル研修企画(株)と一緒に現地で見学することで、よりしっかりした技術移転を進めて生きたいと考えていますので、その後案内が届きましたらご参加をご検討ください。
戸谷英世
トラックバックURL: