メールマガジン

メールマガジン第320号

掲載日2009 年 10 月 5 日

メールマガジン第320号(10月5日)
みなさんこんにちは
今回は「環境と共生するまちづくり」についてお話します。
国全体の政策の大きな方向が、民主党鳩山政権が誕生してから大きく転換してきました。CO2削減目標(2020年には1990年比で25%削減)を国連で宣言して、猶予の出来ないところに日本自身を追い込んで取り組もうとするもので、これから住宅産業の取り組みにおいても、色々な形での取り組みが求められることになります。

住宅産業と取り組みとHICPMの対応
このような産業の将来環境を考えて、世界中では、CO2削減に向けての取り組みがされています。その先進事例を私達は、実地に見ておくことが大切であると考えて、住宅生産性研究会はグローバル研修企画と協力して、今年9月は、米国西海岸(シアトルとポートランド)に出かけ、グリーンビルテイングとLEED事業、サステイナブルハウジングなどの最も先進的な事業の研修旅行を行いました。そして10月1日には、環境と共生する街づくりの日本の取り組みの研修旅行をしました。

住宅産業界の意識
これらの研修ツアーにご参加なさった方は、それぞれの思いや期待を持って参加されていましたが、この共通していることは、長期的な視点で住宅産業を知っておきたいということのように見受けられました。ご参加できなかった方に理由を断片的にですが聞いてみますと、共通していることは、「忙しくて、それどころではない」ということで、短期的な利益を追求することに忙殺されているということが分かりました。
私の著書をこれまで2冊ほど出版して呉れたエクスナレッジ社は、その雑誌「建築知識」最新号に、工務店と設計事務所の意識調査を基にした住宅産業界の取り組みへのアドバイスが特集していました。そこには住宅産業界の狂った実体が手に取るように記載されています。設計事務所や工務店が現時点の社会経済環境を理解し、その環境下でどのような知識や技術を磨かなければならないかを問題にしないで、総てが小手先の集客の技術に向かっているということです。

エクスナレジ社のアンケートとその対応策
その詳細は直接雑誌をご覧になる法が性格ですので、ここでは説明しません。若い年代がパソコン検索をするから、それに対応できる営業ということが工務店、設計事務所の質問の関心であり、それに対するコンサルタントのアドバイスもすべて、営業の充填は、ブログやホームページでの対応ということです。CMで取り組むことの基本としている顧客管理を真面目に考えていないものでした。私があほらしくなってしまったのは、自分のブログに何を書いてよいかが分らないと質問する人があるかと思えば、その書き方を説明するコンサルタントもいるということでした。よく言う「コンテンツがない」ので困っている仕事をする設計事務所や工務店に対して、現代の社会がどのように動いていて、そこにおいてどのような知識、能力、技術を求められているかといったことを解答すべきなのに、それは何一つ問題にされていないで、以下に上手に客引きをするかということに終始していました。

住宅と住宅地の関係の理解の重要性
住宅地開発、住宅建設を日本では明治時代から、「土地と住宅とは、独立した不動産」として扱うという、世界でも類例を見ない非科学的な扱いをしてきました。そのため、住宅は土地度独立して資産として扱えるといった間違った考え方が染み付いています。しかし、日本人の間違った意識に関係なく、人びとの行動は科学的事実に縛られるということを知らなければなりません。
丁度、「天動説は、日影曲線を描くときには有効であるので、天動説が正しい」ということにはなりません。太陽と地球という関係だけで考えたとき、有効である天動説の関係は、天体全体の説明になりません。それと同様に、天動説と地動説の関係は、土地と建築物の関係にも当てはまります。敷地の中で建築物を計画するときは、敷地と建築物だけを見ていれば、それぞれ独立した不動産のように扱うことが出来ることも多いのです。しかし、住宅地の広がりを考えるようになると、住宅地の環境は、敷地と建物という関係(天動説)だけではなく、住宅地全体(地動説)で考えるという視点が優先します。

顧客の住宅選択の最優先事項はロケーション
日本以外のどの国に出かけても、住宅選択の最優先事項はロケーションです。日本の政府と住宅産業だけが住宅性能といいます。しかし、消費者は世界的判断と同じロケーションで住宅を選んでいます。しかし、日本では政府と住宅産業に騙されて、住宅性能で住宅を選ぶ人もいますが、よく聞いてみると、潜在的にロケーションの選択が優先していて、その枠内で住宅性能を考えているようです。
人びとは住宅を購入しますが、それはその住宅を生活の拠点として享受できる都市生活を手に入れようとしているもので、住宅単体だけではありません。そのことは、住宅は土地に建築されたときには土地そのものの一部になるということです。そこで住宅建設業は、欧米同様、土地の加工業(不動産製造業)として理解されることが大切です。

現地で学ぶ学習(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)
これまでNAHBの住宅産業に関する技術を日本の住宅産業関係者に技術移転する仕事をやってきましたが、デザインの知識、機能や性能に関する知識の総てに亘って、同じ言葉を使って説明しても、殆ど、不満足にしか技術移転しているはずの技術が伝わっていないことが分かりました。そこで、できるだけ具体的なイメージを使って、伝達し散ることを正確に伝えるように心がけてきました。
その中で最も有効な方法が、現地に出かけて、そこで実物を通して学んでもらうことであると確信するようになりました。しかし、研修ツアーに出かけても、話を全く聞こうとしないで、自分の関心のある写真ばかり撮っている人もいれば、話を聞き流して、「聞いたことのある話をまた聞かされている」と思っている人も沢山あります。これらの人は、HICPMで学んで星と思って提供している技術移転という観点では、あまり成果はないと思います。「馬を水辺までつれいくことが出来ても、水を飲ますことは出来ない」という言葉は、現地学習をやる場合の困難な問題です。見るものの中には、良いから学ぶものと、悪いから学んでいけないものとがあります。私達が提供している技術事態も批判的に学ぶことが必要ですから、それを検収期間中にどんどんぶつけることが大切です。

環境共生の実態を学べる効果的学習法
今回日本で研修旅行を行った流山オオタカの森「ザ・フォレスト・カーサ」は、HICPMの理事の渋谷さんの説明で、この事業当初の事業コンペと実施の話から実施段階の仕事の進め方の経緯を聞きました。マークスプリングスを見学した都市再生機構が、「マークスプリングスのイメージ」で事業を企画したそうですが、その企画自体が利権の関係でバラバラな工区分けをしたうえで、全体のマスタープランとアーキテクチュラル・ガイドラインのないままでやると、それぞれの事業体ががんばっても相殺効果になって、相乗効果が出せない悪い例となってしまった理由が分かります。たぶん、一人で出かけたらその事情は分かりません。設計者が何を作ろうとしていたか、そしてその結果がどのようになったかを学ぶことが事業をする人にとって大切な知識となります。

ぶつ切りにされ、売り逃げされた流山開発
この開発は、流山市長も都市再生機構も協力して取り組んだ政治的にも優良開発でした。見学時は建設後3年ですが、日本では「差別化都へ離れの良い事業」を実践しているため、住宅売出し時に最高の環境を造っていましたが、一貫性のあるマスタープランとアーキテクチュラル・ガイドラインが存在しないため、事業者ごとのバラバラな計画のほころびが、時間とともに拡大し、全体の景観を劣化することが良くわかります。
今行われている住宅開発は環境共生といううたい文句で、「緑をむちゃくちゃ過密」に植え込んで売り出しますが、3年たつと息切れがし、ジャングル化するなど荒廃の兆しが生まれてきます。建設した後の責任が総て購入者に押し付けられるからです。ただし、業者は売れ足を考えて開発後の3年間は環境管理をするとやっているため、かろうじて環境が守られているのです。

日本最大のイオンショッピングモール
環境共生を売り物にした越谷レイクタウンの一つの目玉といわれているものがイオンショピングモールです。どの地方にも進出しているイオンショッピングモールは、全天候型で消費者が家族全員で終日遊べるショッピングモールとして人気を呼び、既成市街地をシャッター通りにしてしまうほどの集客力を持っているところです。
宮崎に出かけたときにも同じ現象を見てきましたが、それが支持されているのにはそれなりの必然的な理由もあります。米国でのショッピングモールの経験を日本の状況に読み替えた開発です。そこでは新しい終日エアコンつきの商業集積による相乗効果を発揮したアミューズメンとのできる「非日常空間」として、多くの消費者を掴んでいるのです。それが産業経済賞のCO2削減プロジェクトを口実に得られた補助金で、大きな事業を展開しています。
都市再生機構にとっても、産業経済省、財務省、越谷市にとっても、大義名分はCO2であっても、その心は経済政策が目的で、相乗効果を挙げる「箱物行政」を推進することで、集積による都市熟成を図り、居住人口と商業集積を高めることにあるのです。その陰には都市再生機構の保有する不良資産を良債券にすることと、武蔵野線の経営改善とイオン事業の支援をCO2対策の地祇明文で財政支出をしているというものです。

河川調節池と一体になった環境共生事業
226ヘクタールの土地にその6分の1強39ヘクタールの調節地を持つ越谷レイクタウンは、7,00戸、22,400人の計画人口を収容する区画整理事業で開発された大規模都市開発であすが、そこでの環境共生住宅計画は、ここの敷地ごとの環境共生と全体での環境共生の考え方がばらばらであるために、やはり、「相殺効果」ばかりが目に付いて、残念な結果が生まれつつあります。
分かりやすいて比喩で説明しますと「高級服地を買ってきて、それを子供に服を作らせる」ようなもので、ヨットも浮かべることの出来る39ヘクタールの人工湖はこの町の自然気候まで代える効果を期待し、かつ、新駅の前提をはさんで広がく最高の景観を提供している開発です。しかし、湖面の対岸に開発された住宅は、ハウスメーカーが土地活用を口実に売り込んで建てさせた貧しい木造や鉄骨2階建てノアパ-ト群であるため、その景観は見るも惨めな混乱した都市景観にしかなっていません。

将来のスラムになる危険性のある環境共生住宅
この住宅地は、人工湖、道路、公園、電気、ガス、上水道、下水道などに関する全体のインフラストラクチャーの整備には大きな費用が掛けられていますし、その段階の環境共生の考え方には、「箱物作りとしての過去の実績」が反映されています。
しかし、越谷レイクタウン全体として計画された街並み景観の形成やその管理と言った都市経営は存在しません。宅地を大区画単位で叩き売りして、後は自由に開発してくれという考え方です。
越谷市も建築物が建設され、人工が張り付けば、固定資産税と住民税が増大するし、イオンの顧客を早く増やして欲しいと要求していますから、都市再生機構の現場には、造成地に盲滅法のビルドアップをあおるだけで、そこには、「資産形成のできる都市経営」に必要な「三種の神器」は全く省みられていません。これまで都市基盤整備機構が犯してきた過ちを繰り返しているのです。

批判精神と優れたい技術知識の必要性
HICPMの機関紙ではNAHB技術講座として「コミュニテイづくりの理論と技法」という全米ホームビルダー協会のベストセラーを長年続けた書籍を、これまでに56回に分割して紹介してきました。その中には米国のこれまでの都市開発の経験の上での、資産形成できる住宅地の企画、計画建設、経営管理などの関するすべての技術が紹介されています。
私自身その翻訳と紹介記事の校正を通して何度も読み返したおかげで、過去住宅都市開発公団等での15年間の経験とあいまって、大変勉強になりました。そこで学んだ経験を毎年2回程度の米国訪問時の住宅都市の現地調査で検証することで実践的な技術として身につけることが出来ました。
それをグローバル研修企画のバスツアーのときの車内講座として、また、住宅地見学のときに説明してきました。目新しいことを追っかけるため、間違って欧米の都市開発の技術をつまみ食いしている例も多くあります。これらの反面教師となる事業が(間違っている例)を見て正しい技術を確かめることも重要です。

住宅地は全体が一体の絵画
欧米の住宅地経営は、その住宅地全体が消費者にとって憧れの住宅地であることを重要視しています。そのため、まず第1は、住宅地全体の基本形計画(マスタープラン)を最重要に考えることです。その基本計画は、ここの敷地で住宅を建てるときにマスタープランを計画通りに完成するために守るべき建築設計指針(アーキテクチュラルガイドライン)を定めそれに従って住宅を建設し、維持管理します。現代の欧米の新規に開発される都市開発の計画原則は、ニューアーバニズム、アーバンビレッジ、TNDなどの言葉で言われている「人の絆を育てる住宅地」です。
そして、第2に、住宅購入者が年収の3倍も掛けて購入した財産価値が維持向上するようにその財産を護る経営管理団体を設立し、住宅の資産価値を維持向上させるという観点で住宅所有者の総てが強制的に加入した団体の自治運営をします。
そして、第3が、住宅都市開発業者と住宅経営管理団体と住宅購入者とが契約により住宅地の経営管理を定めます。この3者の契約が「住民のルール」と呼ばれているもので、そのCC&RS(住宅地経営管理木本契約約款)とよばれるルールは、ルールを護らない人に対してルールを強制的に護らせる権限を行使できるように作られています.罰金(イエロウカード)と住宅の差押さえの権利(レッドカード)を、住宅所有者による自治団体が行使できるような契約となっています。
この契約は、自由主義国家が、国民の自由と平等という条件に基づいて締結した「公序良俗」に抵触しない契約は、その履行を国家が保障する憲法に裏付けられた契約になっています。このシステムは日本にも制度上ありますが、まだ住宅地形の中では利用されていなのです。

英国の住宅研修旅行
米国やカナダ、オーストラリア、ニュージランドなどの英国と関係の深い国々では、英国の住宅と住宅地開発及び住宅地経営管理の技術が大きな力を発揮しています。その上、英国は第2次世界大戦終了後、最初の住宅復興に取り組み都市計画法の整備を図り世界の住宅資産形成に大きな影響を与えた国です。特に、現在に本土地問題が土地余りと、高地価と、高い固定資産税、相続税ということで、大きな問題を社会に投げ掛けています。土地を購入すれば、それは販売価格で回収することになるため、住宅価格の中に参入される地価分だけ住宅販売価格は高くなります、
しかし、住宅のために土地を買わないで借りれば、その土地を売る必要がありません。その際、土地所有者が土地を所有し続ける限り、土地を所有していることで期待できる利益は地代収入です。土地所有者に安定時代を将来に亘って確実に高めるようにするためには、その土地の上での住宅地経営で大きな利益を上げることが出来なければなりません。その経営が、英国の「リースホールドによる三種の神器を活用した住宅地経営」です。

現在HICPMとグローバル研修企画で、英国の住宅地研修旅行を企画しています。これからの住宅産業の取り組みにとって基本的な土地経営を学んで欲しいと思っています。100年以上かけて、現代でも、最も住宅市場で魅力ある物件として取引されている住宅の現物を見て勉強することをしてはいかがでしょうか。グローバル研修企画のツアーにご参加されることをお勧めします。
戸谷英世


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