メールマガジン

メ-ルマガジン第323号(10月26日)

掲載日2009 年 10 月 26 日

皆さん こんにちは。

先週末は、福岡県博多市の会員(大建)のところに出掛けました。その用件は、2つありました。一つは資産形成のできる住宅地開発プロジェクトであり、もう一つは、既存公共共同住宅団地再生プロジェクトでした。今回はその最初の検討会の内容を紹介します。

これからの住宅地開発は、リースホールドとして取り組み進めるべきであると考えているわけですが、そのリースホールド事業とは、日本の定期借地権ではなく、英国のリースホールドによるものです。リースホールドによる都市開発とは、「土地を資本化する」事業に取り組む事業です。つまり、リースホールド事業は、都市開発及び都市経営事業として、土地の加工製造業として都市開発を取り組む事業で、そこでは、都市経営という「都市の熟成」による「最大の地代収入」を上げる「資本家である土地所有者の将来に向けての利益を最大にする事業」に取り組むことです。

今回はそのための都市開発の基本条件の検討を大建の皆さんと検討しました。この検討の前提として、現代の日本で取り組んでいる借地権事業の間違いを徹底的に批判することから取り組むことにしました。以下その決定的な誤りを列挙します。

日本の定期借地権事業の誤り

(1)定期借地権事業の目的が、住宅会社が出来るだけ建築費を土地代に食われないようにすることで住宅販売額を高め、利益の拡大を図るものです。住宅販売時の一過性の商取引で、借地権を利用して取り組まれた住宅事業の推進者(ハウスメーカーと電鉄系列住宅会社)が、建設後の住宅地経営を無視して、どうして取り組んだかということを考えればその理由は理解できるはずです。

(2)地主が相続税を逃れるとともに、固定資産税及び都市計画税を免れるために、借金を作ることで「節税という脱税」をするものです。現在、定期借地権事業としてとり組んでいるコンサルタントの説明する定期借地権事業は、「節税という脱税の手引き」以外のものはありません。「住宅地経営ということが土地の税金対策である」といっているのも同じであると言わぬばかりの馬鹿げた取り組みなのです。

(3)定期借地権事業推進者たちは、とにかく、「住宅の販売価格を切り下げて売却する」ための口実だけを、定期借地権利用で尤もらしく作り、定期借地権制度の矛盾は地主と借地人に押し付けて、売り逃げることを中心に考えているものです。定期借地権事業に取り組んでいるコンサルタントの中には、住宅地経営の専門家もいなければ、そこで住宅地経営として議論されている技術として、その住宅地でどのような生活を計画するかといった都市開発及び都市経営の専門的技術はないのです。

(4)日本の借地権事業は、体のよい「仮設住宅」でしかなく、建設後、住宅地及び住宅の資産価値は確実に下落していき、借地期限には資産価値はマイナスとなります。定期借地権満了時には、総ての居住者は、強制的に住宅から追い出され、そこに形成されたコミュニテイは破壊され、建設廃棄物として取り壊しを義務付けられた住宅しか残りません。借地期限が近づくにつれ、残存借地期間の短い住宅は取引の対象にされない「粗大ごみ」になり、急激に資産価値を下落させることになります。

(5)特に、定期借地アパート経営は、「粗悪品質」のアパートを見映えだけもっともらしく造り、地主に10年程度で借入金の回収をするような計画を提起して、借家人に不当な負担を押し付けているのです。住宅会社がその事業に基本に据えている「資産運用借家経営」は、借家人の弱みに付け込んだに「アパート経営者の借家人ブロイラー」経営を、土地所有者を唆して実施させる過大な負担を強いる「住宅を利用した不当利潤回収事業」というべきです。アパート経営者は住宅会社を「専門住宅会社」として住宅経営の専門的知識や経験があるものと勘違いさせられて、「流行のデザインのアパートであれば集客できる」という説明を信じて、土地所有者はアパートを建築し、3年後には確実に空き家の発生と、家賃引き下げを求められて、経営危機に直面するというものです。

(6)定期借地持ち家の場合においても、基本的に「売り逃げ」となっている住宅地は確実に住宅地環境が無政府状態化して、混乱をきたし、空き地となったところが経年するにつれ売りづらくなっていきます。その理由は、「衣食住」の総ては、いずれも「衣食住」について、その生産より維持管理に関して専門的知識がなくても、それらを高い品質として享受しようとするならば、専門的知識・技術・経験による生産及び維持管理がなくては出来ないことばかりです。日本の住宅が例外なく資産価値を下落してきた事実に着目する必要があります。

(7)日本の住宅産業全体が、率直に言ってしまえば、住宅産業関係者に住宅地経営に関する専門的知識がなく、極端な言い方をすれば「売り逃げ」の詐欺師集団のようなことをやってきたため、それを当たり前のように思わされてきたのです。有名大学の教授や研究者を筆頭に、有名建築家や有名設計事務所がやってきた実績を見て、それらの中に「国民の資産形成に寄与した住宅」がどれだけあるかを調べてみてください。これらの連中の著述した現実の書店に出回っている住宅関係書籍を見れば、それは世界の書店に並んでいる住宅関係書籍とまったく違っているのです。日本では、まともな住宅開発・住宅経営の知識は不要で、詐欺師まがいの「売り抜けの書籍」しか書店に出回っていません。定期借地権関係に限れば、日本のような地主と消費者を犠牲にする借地権事業は世界中に日本以外にはありません。

以上は、必ずしも体系立てた指摘ではありませんが、日本の定期借地権住宅事業の大きな欠点です。それに対して、今回の大建(博多)で私が話した主要な点は、以下の通りです。

(1)現在、定期借地権による住宅地経営事業に取り組まなければならない住宅産業としての必然性を明らかにすることにより、つまり、最終的には住宅需要者(消費者)のニーズに応えるために、なぜリースホールドに取り組まなければならないかを明らかにしなければなりません。基本的には、FTA(自由貿易協定)時代に入り、国民の所得が現在の半分の時代に向かうという経済環境に対する認識です。

(2)土地需要自体が縮小し、余剰土地が今後急拡大する環境下で、土地を「売り抜けたいという要求」はありますが、土地は売れず、地方公共団体は財政基盤を維持するため、地価は下落しても土地の課税標準額は引き上げており、土地所有者の土地管理費は税金を中心に拡大しています。土地所有は、税を中心に負債の拡大原因(負の資産)であり、利潤を生む資産(正の資産)にするためには、「土地が生み出すことの出来る利潤」である「地代を生ませるリースホールドによる土地経営」しかありません。

(3)住宅は、土地と切り離して効用を発揮することは出来ず、土地自体の環境の担い手として土地の一部なのです。人びとが住宅を選択するときの最優先項目は「ロケーション」であるとされるのは、住宅を購入することで、その住宅のある生活環境を享受することを目的としているからです。そのことから、まず、予定した住宅需要者のニーズに対応した住宅環境全体を恒久的に守られる環境として計画するマスタープラン(基本計画)と、それを、個別の住宅建築に当たって、「マスタープランどおりに作るような敷地ごとに定められた」アーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)を、生活する人の絆を大切にした計画技法「ニューアーバニズム」によって計画することです。

(4)マスタープラン(基本計画)とアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)は、その開発地の歴史文化によって形成された文化資産と、そこに居住しようと考える住宅需要者の歴史文化を担って形成されているアイデンティティとを融合させて計画されるものでなければなりません。そのためには、開発地を含むその都市の地域・地区の歴史文化環境の調査から始めなければなりません。(今回の検討会では、私と大建の方々と一緒に簡単なフィールドサーベイを行い、どんなことをするかというデモンストレーションの一部をやってみました。)

(5)開発地全体を有機的な一体の土地として計画段階から維持管理段階まで、開発・経営を行うためには、全体の開発地を一つの土地とする必要があります。エベネツァ・ハワードはガーデンシティの開発に当たっては、その開発地全体をガーデンシティ株式会社の所有にしたし、英国の戦後のニュータウン開発は、ニュータウンを開発公社の法人所有にしました。リースホールドの場合には、まず、その開発する土地全体を一法人の土地に纏めることで、借地人がそこで作られる環境の恒久的利用が保障されることになります。米国の場合いには、持ち地(フリーホールド)ですが、住宅所有者全員が強制加入する住宅地経営管理協会(HOA)」という「住宅による資産形成を希望する住宅所有者が1票の投票権を持つ住宅資産経営管理団体により、住宅地全体の経営管理を実施することがやられています。

(6)住宅地は居住者がその住居費負担の範囲内で生活にしわ寄せすることなく(年収の2.5倍以内の住宅ローン返済額)で住宅を取得できるようにするために、住宅自体の「費用対抗率」が最大になるように、入居対象のニーズに対応した必要最小限のものしか備えないように造ることが大切です。そのためには需要階層を絞り込んで、さらに現在その世帯にとって必要とされるもの以外は造り込まないことです。各世帯は、家族の成長(子供の成長)により6、7年ごとにライフスタイルは変化するため、当面のライフスタイルに対応する住宅とすることが肝要です。

(7)そこで生活する人の世帯単位で負担するものは最小にして、共同で利用するコモンハウスを造り、そこに宿泊施設(ゲストハウス)や、会食(リビングルーム)空間とそれに対応する台所(キッチン)を設けるほか、住宅地の空間として子供達が遊び、屋外でくつろげる共用庭(コモンガーデン、コモングリーン)などの管理とともに、ここの居住者が住宅地全体の環境の担い手として遵守すべきルールを設け、そのルールを確実に遵守させるシステムがなければならなりません。サッカーの場合にルールを疎かにした人にはイエローカード(罰則)が与えられ、それでもそれに従わない場合にはレッドカード(退場)処分がやられることで、サッカーのゲームは楽しく出来るのです。住宅地の自治のルールは同様なもので、それを住宅地経営管理基本契約(CC&Rs)として、住宅地を開発するデベロッパーと住宅地経営管理協会(HOA)戸住宅所有者(HO)との三者間で結ぶことになります。

HICPMビルダーズマガジンでNAHB(全米ホームビルダー協会)が発行している住宅地開発技法「NAHB技術講座」として連載中の「コミュニティづくりの理論と技法」は、これまで55回に亘って連載してきましたが、この内容は、全米でもこの関係の分野ではベストセラーとして広く読まれた基本的な技術書で、日本においてもここで取り扱われている技術を学ぶことは、国民に適正は住居費負担で資産形成のできる住宅を供給しようと考えるならば、この連載内容と同程度の知識を学ぶことは絶対条件と考えています。

住宅による資産形成システムの形成

私自身、3年間インドネシアで200ヘクタール規模の住宅地開発を3地区手掛けたあと、住宅都市開発公団で都市開発調査課長として5年間、多くの都市開発に関係し、その後2年間、外郭団体のコンサルタントとして地域振興公団のニュータウン計画に関係する傍ら、世界の住宅開発を追っかけて調査研究してきました。地方公共団体でも通算5年間、多数の住宅地開発に関係したほか、HICPMにおいても、15年間に亘り世界の都市開発や住宅地開発を現地の出かけ、調査研究をし、日本での多数の住宅地開発の相談やコンサルタントもやってきました。

しかし、やればやるほど、日本の住宅開発・都市開発の水準の低さを見せられてきました。日本で住宅を購入した人がそれによって資産を失う現実にはそれなりの必然性があることを確認できました。そこで、HICPMとしては英国と米国に倣って、国民が住宅を取得することで資産形成できる方法を確立したいと考えました。そこで10年前から、住宅によって資産形成できる理屈を研究してきました。

そして、昨年、国土交通省の依頼を受け、ハウジングアンドコミュニティ財団における技術研究開発として、「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」の作成を依頼され、それを一般的なシステムとしてまとめることを始めました。偶々、HICPMは、横浜の工藤建設と四日市の朝日グローバルから、「超長期住宅地経営管理システム」作成のコンサルタント業務の依頼を受けて2地区の作成作業のコンサルタントを実施して、日本で適用できるシステムとして取りまとめました。

その結果、英国と米国での約150年の歴史を通して造られた住宅による資産形成システムが日本でも十分適格に機能するものとして造れることを確かめることが出来ました。この2地区とも、当然のことですが、国土交通省の「第1回長期優良住宅(街づくり部門)認定事業」として認められました。

HICPMが資料として有料頒布している「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」(定価15,750千円)です。今回、大建(福岡)での検討会での研究会での私の説明は、基本的にそのマニュアルの内容に基づいて行ったものです。


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