メールマガジン

メールマガジン第324号

掲載日2009 年 11 月 2 日

メールマガジン第324号
皆さんこんにちは。
先月末の10月26日から30日まで、ワシントン州政府の「アメリカ建材セミナー」で、前橋―水戸―東京―千葉―静岡の5都市で巡回セミナーが実施され、私は講師として参加しました。今回で私も4回目になると思いますが、丸一日のセミナーで、日本がワシントン州から学ぶセミナーとして非常に充実したものになってきたと思っています。それは、参加者の評価においてはっきり現れていることでした。

「アメリカ建材セミナー」
輸入住宅促進を政府が旗振りしていた頃の「アメリカ建材セミナー」は、建材販売を中心にした取り扱いの仕方に相当重点を置いたものになっていましたが、今は、HICPMで長年やってきた工務店向けCM講座に非常に近いものになってきたように思います。CM(コンストラクションマネジメント)に関係した話は、私と小金沢さんの話の中にちりばめられていて、はっきりCMという言葉を上げてきませんでした。

今回、私の話には、CMを学ぶ基本的利益を指摘することにしました。出展業者の方々は、いずれも取り扱っている商品の消費者にとっての効用を説明することで、それらの取り扱い建材の知識を正しく学ぶ機会になっています。これは、米国の住宅産業のレベルの高さが、日本の住宅産業関係者に良い影響を与えるようになっているためで、いずれも工務店の関係者のための最新建築知識の学習機会として大いに活用されるべきセミナーです。

ワシントン州政府の方針も、建材販売を表に出すのではなくて、日本の住宅を消費者の満足を高めるためにするために、米国の経験に立って工務店に対して役に立つ「技術の移転」という観点に立って実施していることが、このセミナー参加者の評価になっていると思います。

小金沢さんと私の基調講演
全体の構成は、ワシントン州政府の東京事務所の伴さんが全部アレンジしたもので、その構成はこれまでの私と小金沢さんの知識経験の中からワシントン州政府のセミナーに必要とするテーマを与えて講演するというもので、私は、「鵜匠に馴らされた鵜」のような役割をやっているわけです。講演内容は、最初から講師たちの関心と、ワシントン州政府の意図とを良く摺り合わせて作られたものです。

特に、私のプレゼンテイションの映像は、総て伴さんが受講者の気持ちで纏めて作成してくださっているものであるため、聞く人にとって分かりやすいということもHICPMで私がやっているのとは違います。そのうえ、私も5日間のセミナーを通して、トライアルエラーを繰り返して、毎回、伴さんの画像改良も加わって、改良を加え、進化したセミナーとすることが出来ましたし、小金沢さんや、その他の建材セミナーをされる方とも意見交換をして、私からもお互いの講演が相乗効果を発揮できるように提案や、感想を持ちかけ、結果的には皆さんの講演とうまく融合することが出来ました。

小金沢さんは、住宅産業を取り巻く金融環境が変わることを中心に「無理、無駄、斑」を無くする取り組みをアメリカではどのようにやっているかという実施例を使ってのお話で視聴者には分かりや食いお話になっていたと思います。私は、資産形成のできる住宅作りをアメリカではどのようにやっているかということを、住宅を取得して資産を失ってきた日本の現実との対比で何を米国から学ぶべき課のお話をしました。

私からの「CM」のはなし
このメールマガジンで既にお話した「1000万円の住宅で、その粗利が200万円、材料費及び労務費がそれぞれ400万円という内訳で、4ヶ月掛けて造っていた住宅を、あなたは800万円で請け負いますか」という、例題について、急遽、伴さんの作成してくださった画像で説明しました。この説明を、始めは小金沢さんが「無理、無駄、斑の話し」をしておられたので、「小金沢さんの話に入れていただければ」、と小金沢さんに提案したのですが、「急の話であり、私自身でやったほうが良い」ということで、私の話の中に入れました。この新しいCMの「コストカット」の講演を聞いておられた方は、始めよく理解が出来ないように見えましたが、やがて納得されたようで、良かったと思いました。

正解は、「工期を2ヶ月に短縮することで、工務店としては2倍の機関利益を上げることができたうえで、建設労働者には従前の賃金(月額)を保障して、200万円の価格切り下げをすることができます」。実際の建設現場では、現在の設計図書と同じ図面を使い、同じ労働者が労働強化をすることなく、これまで無給で長時間拘束されていた打ち合わせや、工事進捗状況の下見、前工程や建材供給や設計上の収まりが決定していないなどの理由で、手待ちや手戻りとなっていた「無理、無駄、斑」時間を無くすることで可能になるのです。私がかつて会員の下請け業者に聞いていた話は、「1ヶ月に28日近く拘束されているが、その内、賃金の支払われるのは13日にもならない」といった驚くべき日本の工務店の現状を改善することに工務店の関心が向かうべきです。

「粗利総額」や「労務費総額」から「期間あたりの粗利」や「期間あたりの賃金」へ
日本と米国の住宅建設現場生産性は、これまで多くの調査がやられてきて、日本は米国のほぼ40%、つまり、米国の2.5分の一であることを考える必要があります。ここでの解決策は、現在の米国の生産性の80%の解決です。粗利総額が200万円でも、それを手に入れるために4ヶ月掛かるということは、一ヶ月当たり50万円です。

しかし、日本の工務店は、日本政府が考えている通り、「建設サービス業」という経営をしている会社が多く、(ハウスメーカーは例外なく建設サービス業)粗利だけを取ってしまえば、後は下請け任せで、自ら建設現場の経営管理をやりません。そのため粗利総額にしか関心がありません。日本以外の国では、ホームビルダーは、不動産製造業です。建設現場にある土地の上に建材と労務を投入して住宅不動産を製造する業者です。自ら製造をするために時間が拘束されるから、拘束時間内に製造する量を以下に多くするかを経営の基本に考えます。その基本指標が「生産性」です。

つまり、単位時間当たりの住宅生産能力をいかに高めるかという関心です。現在の2倍(米国の80%)の生産性になれば、住宅価格を現在の80%に引き下げても、工務店の期間あたり(毎月の)の粗利総額は2倍になり、建設労働者の賃金総額も現在の賃金総額を保障できることになります。

「生産性を挙げても工事を受注できなければ何にもならない」という批判に対して
「建設サービス業」というピンはね建設業者には、基本的に「生産という理屈が分からないし、必要がない」からこの欄のような「標題の質問」をすることになるのです。しかし、現実のこのような質問が多いことも事実ですから、その回答も用意しました。今回のセミナーでは、先手を打って次のような話をしました。この提案は米国のホームビルダーで当然のようにやられているCMの技法のひとつです。

「生産性を挙げて暇が出来たら、これまでに仕事をした住宅を見て回りなさい」。これまで仕事をしてもらった顧客は、自分の住宅を造ってくれた工務店なら、「その工務店が造った住宅に不具合がないか、ということで訪問したのなら、家に入れないということはない」でしょう。しかし、下手をすると、大変なクレームを効かされることになるかもしれません。事実は、それこそ、工務店にとって、大変良い反応と考えるべきです。クレームが多いということは、工務店が顧客に対して約束を護っていなかったということです。つまり、これまでの建築に瑕疵が有ったということですが、クレームが出されたことは、その工務店にまだある種の期待を持っていてくれるということだからです。

その機会を「売り逃げをした業者」という汚名返上のチャンスと考えるべきです。クレームの内容を顧客との間でよく検討し、工務店の責任に関しては、その瑕疵保証工事はしなければなりません。顧客のクレームが瑕疵でなければ、その改良工事として仕事をさせてもらうことも出来ます。いずれにしろ工務店がこれまでに建設した工事こそ、その工務店の看板であり、その建築主こそ工務店の成果を社会に説明してくれる無給の営業マンと考えれば、過去の顧客にサイド立ち返って、その満足を実現することに取り組んだらどうでしょう。

実は、このような顧客との関係を大切にすることを顧客管理(カスタマー・リレイション)といっていて、カスタマー(顧客)との関係から新しい需要を発堀する営業のことをカスタマー・セイルス(顧客紹介販売)とも言います。これまでの顧客はどれだけの住宅費負担をして住宅を購入したのか、その住宅販売で工務店はどれだけの利益を得たのか、ということを少しまじめに考えれば、今何をしなければならないかが分かるはずです。このような人間として当たり前な思考を失った工務店が多すぎることに、住宅産業に対する社会的不信感があるのです。

デザインに対する意識を高めるためのショック療法
「刑務所の囚人の服装は、通常の人びとの服装と何が違っていると思いますか?」囚人の服は、作業がしやすいように作られ、囚人の健康にも良いように作られていますが、囚人の好みは反映できないようなデザインで造られ、番号で呼ばれます。服装に求められ効用とは、住宅同様にその効用は、「デザイン、機能、性能」の3種類ですが、囚人服ではデザインに関して囚人の好みを入れることは許されません。

要するに、囚人には動物のように生きることは求められますが、人間としての文化的な人権が認められていないのです。そのような「文化的な人権を認められない罰を受けるという償い」を求められているのです。その選択の自由を拘束することが罰則なのです。もちろん、囚人に対する罰則にも時代や社会によって代わりますが、それは罰に対する罪の償い方の方法ということで、必ずしも、囚人服における個性を認めない方法以外にも適当な方法があるかもしれません。

日本の住宅では「デザイン、機能、性能」の3要素のうち「性能」に偏重し、少し機能は問題にしますが、デザインには殆ど言及していません。このことを先の囚人服の例と比べてみてください。人間が個人の文化的自由にとって、もともと重要なデザインについて放置していることは、人間の個性を大切にする考え方がない住宅政策をやっているということです。デザインに関して軽視していることは、デザインの自由を尊重しているのではなくて、その逆で、デザインを大切にしなければならないということが、全く分かっていないからです。

人権を尊重するということは、まず、人権が大切であり、それは、人びと相互間でも、国家によっても尊重すべきものであるということを共通理解とすることがなければ、具体的な尊重の仕方(ルール)が明らかに出来ません。個々人にとってのデザインは、人格的な表現なのです。個人の部屋では好きなように出来ても、家族としての共通の空間では、家族としてのコンセンサスの得られるデザインとすることがなければ、家族で共通に楽しめません。家族としての合意が我が家のデザインです。

「我が家のデザイン」は「他人の家のデザイン」とは、住んでいる家族が別ですから、当然違っているに違いがありませんが、それは、単に違いであって、優劣ではありません。お互いの家族がそれぞれの違いのデザインを尊重しあうことで、相互に共存しあえますが、相互の相違するデザインの家族の住宅が立ち並んで、それぞれの家族が満足できる街並みのデザインを造ります。

街並みのデザインがその通りに立ち並ぶ住宅の総てに家族とって、「わが街」と思えるような町にするためには、その通りに立ち並ぶ住宅に共通な基本計画(マスタープラン)があって、そのマスタープランを実現できるよう、個々の敷地ごとに従うべき建築設計指針(アーキテクチュラルガイドライン)が必要になります。

このようなデザインに対する配慮に関し、国家の住宅政策は何も明らかにしないどころか、国家の住宅政策に関係した住宅関係者のこれまでの社会に対する発言も、実際に社会的にやってきた行動も現れていません。これまでのデザインの取り扱いは、樹木を植えて住宅を隠すことや、建物をでこぼこして複雑にすることや雁行させて道路に顔(ファサード)を見せないで欠陥を見えにくくすることをデザインするといってきました。

目先の流行を追ったデザインを推奨したり、何か従来と変わった形や意匠を採用することを住宅のデザインをすることのように言ってきました。

それらの住宅や街並みの多くは、住宅や住宅地のデザインを歴史文化に根ざした人文科学の問題とは考えないで、単に目新しいことで消費者の関心を引き、やがて、数年経って見慣れてしまえば目障りになる売り抜けのデザインを推奨してきたのです。要するに囚人服においてさえ意識されているデザインの重要性を日本の住宅政策では全く無視しているといってよいのです。

それは、日本の建築教育が世界に例を見ない工学部のエンジニアリングであって、歴史文化に根ざした建築形態と意匠という人文科学として建築を学んでいないからです。国土交通省自体が建築士は「アーキテクト」ではないといわざるを得ないのです。

ワシントン州政府の実施しているセミナーの専門性
日本の住宅産業は、集客が難しいといいながら、消費者の個性や人権と深い関係にある個人のデザインを知る技術を鍛えようとして住宅のデザインを学ぶ努力をしないため、消費者との距離が埋められないのです。トレンデイーな流行のデザインを追い、使い捨ての住宅を売ってきた悪い癖が抜けず、工務店が建築や住宅に必要な知識や技術を学ばず、楽をして売り抜けようとするための技法としての「ポン引き」同様に、「下手な鉄砲数打てば当たる」方式を追い求めてきました。

その広告宣伝方式として、「ブログつくり」、「ホームページつくり」をすることであるといった間違った取り組みを教えてきた連中が、自称「住宅コンサルタント」や住宅産業関係の大学教授や講師といって住宅新聞・雑誌に登場する著名人顔で登場する人たちです。彼らは、自ら「誤った解説をしている」という自覚すら持っていません。

それほど住宅産業に関し専門的知識も経験も薄い素人たちであることは、これまで何を学び、どのような業績があったかを見れば歴然です。工務店同様、過去にやった実績から飛びぬけたことが突然できるということはありません。

ワシントン州政府が実施している「米国の建材セミナー」は、米国の優れた住宅産業の経験の上に立って米国の個人の資産形成に大きな寄与をしてきた住宅産業の中でも、米国内だけではなく、国外に対して長年月に亘って建材を輸出し、そのアフターケアーをし、経済の好況と不況の大きな波にもまれながらも、継続して事業を行ってきた企業によって構成されています。

これらの企業が、日本市場について専門性のある人材を充当して、ワシントン州政府の提供する米国の総合的な住宅情報、建材技術、知識と一体的になされる今回のセミナーは、多分、国内で現在実施されているこの種のセミナーの中では、工務店にとって最も優れたセミナーになっているといってよいと思います。

私自身HICPMで実施してきたNAHBの技術移転として、セミナーをCMの理論を中心に20年近く実施してきました。それを昨今の工務店を取り囲む状況を考えて、CMセミナーを工務店の関心との接点を広げる形で、昨年と今年の2年間は、住宅設計と建築材料という具体的な課題を加えて実施してきました。

しかし、そのような具体的なテーマという点では、ワシントン州政府の取り組みは、多様な建材を扱うということで、HICPMで実施しているものと比べて、はるかに実践的なものになっています。「米国の建材セミナー」では、これからは、工務店の経営改善を前進させることを建材の利用と一体的に取り組む必要があり、CM教育のウエイトを大きくする必要があります。

それだけに、今後このセミナーが継続するということでしたら、私が関係する場合いには、「住宅の品質をこれまで以上に高めながら、住宅販売価格を消費者の購買力に対応するように引き下げ、それでいて工務店の利益総額を高め、建設労働者の賃金総額を高める米国の住宅産業が実施してきたCM技術の実践の仕方のABCを説明していきたいと考えています。
戸谷英世


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