メールマガジン第329号(12月7日)
皆さんこんにちは
今回は「生産性」に拘ってきた住宅生産性研究会の歴史背景についておはなしします。
海外に出かけて何を見てくるのか:40年前のカナダ調査旅行
私が中心になってこの15年間進めてきた住宅生産性研究会の最大の目的は、会の名称に掲げたとおり住宅の生産性向上です。これは1970年初めに私がカナダ政府の招待で、建設省から調査団としてカナダの2×4工法住宅の調査に出かけたときに始まります。当時カナダ政府は、カナダの林産品を日本に輸出したいと考えていましたから、最初の調査内容は木材の製材から林産施品、エンジニアードウッドの工場などを見ることになっていました。林野庁の林業試験部長上村(林産学)、建築研究所有機材料研究室長今泉(林産学)、住宅金融公庫建築指導課長丹羽(建築学)と、当時建設省住宅局建築指導課長補佐の私(建築学)に、カナダ政府商務官ボブとカナダ大使館商務官矢崎の5人で、約一ヶ月かけて、バンクーバー、カルガリー、モントリオール、オタワの4都市を回り、製材工場、林産物資製造工場、2×4建設現場、ホームビルダー協会と会員、職業訓練校、建築調査研究所、CMHC,商務省ました。日本政府もカナダ政府も2×4工法を日本に導入するために行政の担当者に調査させるということだけで、それ以上の制約はありませんでした。
日本の調査団4人のやったこと
この中の丹羽は最初から全く遊び気分で、カナダ政府に招待されて、日本・カナダ両政府とも2×4工法の日本導入のためには、CMHCの果たしている役割を学んでもらいたいと思っていたのですが、彼は、その機会にアメリカ旅行を意図していて、カナダでは観光に熱心で、途中でアメリカに回っていってしまいました。旅費は全額カナダ政府です。
上村は、熱心に製材工場や加工木材工場を見ていましたが、見た後に、製材比率が日本の方が高いとか、精度は日本がよいとか、カナダの林産業と日本の林産業との比較をし、カナダの欠点と日本の優れているところ探しに熱心で、カナダの優れたところから学ぼうとする姿勢はなく、2×4工法住宅には頭から否定的で、全く関心を示しませんでした。
今泉は、2×4工法の工学的な技術の関心を持って住宅の建設のされ方やデテイールを熱心に見ていました。特に釘による接合による応力伝達といったことに関心があったようでした。カナダでは木造耐火問題が進んでいて、そこに対する関心もあったようでした。今泉は大学で林産学を学び、材料の物性研究から建築工学で学位をとった研究者でした。
私は2×4工法がカナダのホームビルダーにとって満足行く利益を与えているかということと、建設労働者がこの工法どのように評価しているか(工務店の経営上の利益と、建設労働者の賃金とが他産業と比較して優れているか)ということを知ることが最も大切だと考え、旅行中、2×4工法の生産性の高さの与える利益を中心に見てきました。
HICPM/グローバル研修企画研修旅行
当時もそうでしたが、現在になっても正直な感想として、カナダへの調査旅行で、丹羽と上村の両人は、あの旅行で気がとがめなかったのだろうかとよく思い出します。自分のお金と時間を使って旅行したりするのと、公費(日本とカナダ国民の血税)とで旅行するのとではまったく意味が違います。旅費はカナダ政府が負担してもその関、国内の仕事をしないで、給与が支給されているから、両国の国民の血税での旅行になります。
HICPM研修旅行でも、参加者の行動を見ていると、いつもカナダに出かけたときと同じ違和感、会社からお金と時間を出してもらって研修旅行に来ているのではなかったか、を指摘したくなる参加者の混じっている様子を見ます。しかし、最近では研修目的を絞って実施していますので、殆ど違和感はありません。研修旅行ですから計画上、旅行先の国の歴史文化を学ぶという物見遊山をして、住宅産業が消費者に文化を売る産業であるという研修に絞るようにしてきました。同じものを見るにしても、「消費者として楽しむ」のではなく、「消費者が楽しめる理由を考え、それを創り出し、維持管理する技術を学ぶ」という視点で企画をしています。「真似ることは学ぶこと」というのが私の原点です。鹿島建設140周年記念懸賞論文で、「模倣から創造へ」という私の論文は、優秀賞を受賞して50万円を頂いたのは、まだ、建設本省にいた1970年ごろのことです。
最近では、参加者の問題意識が高く、参加者相互の経験交流の場としての機能も果たしています。そのように参加者の気持ちがそろってきますと、研修の中に歴史文化を学ぶという視点で出来るだけ歴史文化や生活文化を見る機会を入れられないかという検討をしています。同じものを見ても、見る人の視点が重要であると思っています。
私の基本的な視点:生産性
住宅産業に携わっている人たちが満足行く所得が得られなければ、安心して仕事に打ち込めません。中国の諺に「恒産なければ、恒心なし」があります。実際は、人間の欲望には切がありませんので、「恒産」としてどれだけあればいいのかという基準は人によって全く違います。私は「恒産」という財産は、「人並み」、「社会的な平均的レベル」というように考えることにしています。一方、「ハングリー精神がなければ発展することはない」といって、お金だけではなく、知識や閑静に関し、いつも「恒心の目標」を高く持つことが必要です。「恒産」とは、経済的な財産で、どれだけあれば「恒産」といえるのかは、個人によって差があります。私は「人波の生勝を営むための資産」を諺の言う恒産と考えます。
私はカナダの4都市の総てでホームビルダーと話し合いをする機会を作ってもらいました。そこで驚いたことは、何処の都市でもホームビルダーは、その地域のなかで、社会的な平均以上の所得を取っている産業であり、産業労働者であったということです。そして、その理由が、現場の高い生産性により工場労働者より高い賃金を得ているということでした。その現場の高い生産性を支えているハードな技術が2×4工法であり、ソフトな技術がCMだったのです。当時、私は2×4工法にしか関心がなく、生産性の高さはハード技術と思い込んでいました。CMに気付いたのは、建設省を退官する5年ほど前の1980年代半ばで、NAHBの進めたCPM/CPNのテキストを勉強して米国の住宅産業が日本の自動車産業同様に、生産性を高める取り組みをしてきたことを発見しました。そこで私は日本の住宅産業の体質改善のためには生産性を重視し、HICPMを創設しました。そして、会の名称に住宅生産性研究会(ハウジング・インステイチュウト・オブ・コンプリート・プロジェクト・マネジメント:住宅に関する完璧な事業管理研究会)として、運動の旗幟を鮮明にしました。それから千田さんと一緒にNAHB(全米ホームビルダー協会)からの技術移転の仕事をテキストの翻訳を通して、CMの体系を知ることが出来ました。
生産性の生み出す利益
これまで、このメールマガジンで生産性を挙げることは、工務店経営にとっても、建設労働者にとっても、「期間利益を最大にすること」であることを説明してきました。工期を半分にすることが出来れば、粗利分を全額住宅請負価格から差し引いて、従来の住宅請負価格の80%に引き下げても、工務店の総額としての粗利は確保できる。生産性を2倍に向上することは、それまでの粗利総額を確保して、請け負う価格の引き下げるだけではなく、その粗利をそれまでの工期の半分の期で得られるようになることから、工期あたりの粗利は、それまでの低い生産性に比べて2倍になるという説明をしてきました。
その説明を聞いたある元ハウスメーカーの支店長であった工務店の社長が、「日本の大手ハウスメーカーであれば、いずれも130平方メートル程度の住宅であれば、60日で造ることが出来る」といって、私が「4ヶ月の工期を2ヶ月程度に短縮して建築する」ということを優れているといった事例説明に対し、その程度の生産性向上では「遅れている」といわぬばかりの対応をしました。わたくしは4ヶ月で造る工事を2ヶ月で造るという例を挙げたのは、現在の工務店の実現目標になると考えたこともありますが、単に、実現可能な工期短縮という話としてあげただけで、工期の2ヶ月を達成目標とすることを,工務店の努力目標とするべきことを示したわけではありません。
そこで、私はそのような貧しい理解を反省させなければと思ったのですが、わざわざHICPMのセミナーに出てくれたのですから、意見として聞くだけにしておきました。私は次の節での説明をはっきりしておくことが、参加者にもためになると思っているので、いつもなら,間髪を置かずはっきり説明したのですが、グローバル研修企画との合同セミナーでしたので、小林さんのやり方にも気を配って、誤解を解くための説明をしませんでした。
米国では「1日で住宅を建設する住宅会社」が沢山ある
米国のモーバイルホームという車のシャーシーの上に住宅を建築し、それをトレーラーで建設地まで引っ張っていって予定敷地に据え付け、上下水道と電気ガスを設置する住宅があります。この住宅は、わずか1日で住宅を建築しています。モーバイルホームには、一般的に、モー場いるホーム団地として、その建築場所が決められていて、そこにはモーバイルホーム用の電気、ガス、上下水道等インフラストラクチャーが整備されています。
また、モジュラーホームといって住宅の部分を工場で造り現場で繋ぎ合わせるものや、日本のパネル化住宅のようなもので害は軌を工場で造り、それを現場得組み立てるものは、1日から3日くらいで作ってしまうものもたくさんあります。
住宅の現場生産性を高める方法として、現場工事の一部を生産性の高い工場製作に置き換えることにすれば、その分、現場の仕事は少なくなりますから、現場の生産性が高くなります。しかし、工場製作部品の運搬や現場での取り付けなど、工場と現場全体としての生産性を見ないといけません。また、住宅生産性が上がったといっても、工場での生産性向上は、工場の問題で、建設現場の生産性向上ということにはなりません。工場製作部品を採用して、現場の生産性が上がったという認識は間違っていて、現場から仕事が工場に移っただけで、現場の生産性は上がったわけではないのです。
生産性を挙げるためならば、現場で上がっても、工場で上がっても、何処で上がっても生産性があがれば、同じことで、それでよいという風に考えている人が沢山います。その考え方は何の目的のために、誰が利益を得るかという視点がないことから、生産性向上を考える上で間違っています.
現場で生産性が挙げることと工場で生産性を挙げること
結論から言えば、生産性を上げることができたところでは、その生産性を挙げた分だけ期間利益は上がります。工務店にとっては工期が早くなって期間利益が上りますが、工場製作分の工事がなくなるわけですから、その分の工事による利益は抜けていきます。それにも拘らず、工務店は工場製作分の費用に自ら仕事をしないのに、粗利だけを取ろうとします。当然、その分だけ住宅価格は高くなり、消費者の負担は大きくなります。ユニットなど工場製作分を現場で製作する分での材料費と一緒にして、その費用総額に粗利率を掛ける計算場間違っています。それは、現場と工場製作分に2重の粗利を取っていることになります。工場製作分の粗利計算は分離しなければ正当といえません。
工務店関係の新聞で、盛んにユニットバスやパネル化を推進して、生産性を挙げるということを推奨していますが、それらの生産性は、彼らが工務店のためとか現場の職人のためと言っている理屈と真っ向から対立する取り組みなのです。工務店関係の新聞の編集長にはその辺の勉強をしてもらわないと、工務店や職人の味方といって彼らの生活を脅かすことをやっているのですから、矛盾した主張は困ったものです。
分かりやすい例として、ユニットバスが壊れたらどうやって修理をしますか、修理をする人は地場にはいませんし、多分、ユニット製造メーカーも修繕をしてくれません。現場でお風呂を作る米国では、修繕をしてくれるリモデラーもいればDIYでも可能です。米国ではユニットバスは殆どありません。工場製作と遜色のない現場で高い生産性で職人がバスルームを造ります。
その高い生産性は、使用する材料と施工方法の社会的標準化、規格化、単純化共通化が出来ていて、職人たちが何処の現場でも同じ材料と技能を使って手馴れた手順で手馴れた作業が出来るようになっているからです。高い現場生産性が、職人に多くの仕事を苦労しないでこなしていくことが出来るため、一仕事あたりの利益や労賃が少なくても、1か月あたりの仕上げる仕事量が大きく、利益総額や労賃総額が大きくなるのです。
住宅はその使用材料は耐用年数に限度がありますが、住宅自体は恒久的に使用することが出来ます。修繕をし続けることで、最も少ない費用で住宅の効用を持続することが出来ることになります。LCC(ライフ・サイクル・コスト:住宅の生涯必要費用)を最小限にするためには、リモデリング費用を最小にする社会システムが不可欠です。
現場で生産性を挙げることとCM
米国ではホームビルダーとサブコントラクターとが、現場での資産性を挙げるために3段階の生産性向上の取り組みをしています。
第1段階は、バリュウ・エンジニアリングとも言われている取り組みで、請負契約で取り決められた設計図書を、施工者の立場でより合理的な施工方法はないかという検討をし、資材と労務量を削減する方法を検討します。バリュウ・エンジニアリングで、住宅自体の効用には変化がなくても、工事内容の合理化をする場合、それを建築主の了解を必要とする合理化と承認の必要のないものとがあります。
第2段階の生産性向上の取り組みは、個別の下請け業者に担わせる工事には手を加えず、それは既定の条件として、その下請け業者がする工事を組み合わせる方法によって、全体の工期を短縮する取り組みです。前工程、本工程、後工程の組み合わせを合理的にすることで、現場が連続的に仕事を行うことが出来るようにする施工計画の取り組みです。
第3段階は、個別の下請け作業ごとに作業手順や機械工具の導入や人員構成の工夫などを工夫して、その下請け単位の工期を短縮する方法です。多くの倍した受けの担う仕事には、関係する他の工事の矛盾が転嫁されることも多いため、下請だけでは改善できません。
これらの合理化をすることで、基本的に工期を削減することが出来れば、それだけ人件費と間接経費を節約することになり、節減した分はそれだけ利潤が大きくなります。また、工期自体が短縮されることは、施工業者自体の施工能力が大きくなったと同じことで、それだけ多くの仕事が出来るということになります。この技術がCM(コンストラクション・マネジメント)という管理技術なのです。
工場で生産性を挙げること
工場に移された仕事は、工場自体の製造に仕事になり、工場で新しい価値を創造し、その創造された価値は総て製造工場に帰属します。現場に工場で作られた部品や部位を多く使うようになれば、当然現場の生産性が上がったように見えます。それは住宅を早くできたというだけのことです。現場での時間が短くなったのだから、住宅の現場生産性が上がったといっても間違いではありません。しかし、それは、現場自身での製造工事が向上したわけではなく、現場での製造作業がなくなって、工場に移行したにすぎないものであるため、現場での価値の創造はなく、現場の職人に賃金は入りませんし、工務店も工場に出した分に関して、手数料と利益を加算することになっても、価値が創造されたわけではないため、住宅の販売価格を引き上げることにしかなりません。工場化を進めれば進めるだけ、現場で働く職人の働く場や機会を奪い、工務店は墓穴を掘ることになります。
日本では建設業を政府の産業分類では建設サービス業に仕分けしています。この仕分けは、「建設業者は手配師である」といっているのと同じであるから、現場の職人にやらせるか、工場製品を使うかは、どちらでも選択の範囲で、早く工事粗利を手にするためなら、工場製作ユニットを使ったほうがよいということになる。日本の工務店関係雑誌、新聞の論調は工務店が出来るだけ早く請け負い代金を手にするために、プレカット材を使え、ユニット製品を使えといって、同じ粗利が取れるならと考えて工業製品を使って工事を早く終わらせることを支持してきた。そして、現場で働く熟練技能者を不要にしてきたのです。
日本の住宅産業コンサルタントのお粗末
ここで私が書いていることは1960年に米国で始まったHUD(住宅都市省)の工業化住宅推進策(OBT)と全米ホームビルダー協会(NAHB)との生産性を何処で実現する現場生産性向上とが消費者のためになるかという戦いが起こった。そして、その戦いの結果、住宅産業はそれ自体が土地の加工産業であって、土地に定着する工作物を作る産業であるから、その産業の担い手である建設労働者に高い賃金を支払えなければならないとして、建設現場の生産性を挙げることであるとしたNAHBNO主張が、工場化を主張した連邦住宅省(HUD)に勝利したという歴史的事実があります。
それにも拘らず、住宅産業や工務店関係の新聞雑誌には、そのような歴史を全く知らないかのようなコンサルテイションを工務店にしてきた。政府自体がまともな住宅政策をやってこなかったこともあるが、住宅産業関係者の不勉強や、無責任さに大きな問題があります。
今回は「生産性」という住宅生産生研究会が拘ってきた問題の本質をここに検討することにした。また、HICPMでは、CM及びその関係技術、デザインや設計、住宅建築都市関係法律関係に関し、NAHBの技術移転をさらに積極的にやろうと考えています。その方法として、HICPMに予約して来場された形には時間があるかぎり、参加人数の如何にかかわらず教育をするようにし、その費用に関し次の目安で行う予定であるので、お問い合わせをしてください。下記の費用を参考にして、ご利用できる条件を明らかにして、ご相談ください
現在計画しているHICPMによる研修費用(案)
(1)HICPMで実施する場合の研修、コンサルタント業務(テキストを含む)
イ。1日(10-17時)セミナー参加費用6千円(会員3千円)
ロ。半日(3時間未満)セミナー参加費用4千円(会員2千円)
(2)HICPM会員又はその関係者で研究会に来会者
コンサルタント料 1時間程度 0円
上記(1)ロとして扱う。
(3)出張を伴う多人数を対象にした1日の費用に関し、講演会又は研修会(一般的な目安としての費用としては、以下のような講師費用とし、交通費・宿泊費用は実費又は依頼者負担とする)
企業・団体を対象
イ。教育研修で3時間を越える場合 10万円(会員5万円)
ロ。企業の事業や経営相談の場合 5万円(会員2万円)
ハ。挨拶等で1時間程度の場合 3万円(会員2万円)
ニ。HICPM啓蒙活動として必要 1万円(会員 0円)
消費者対象(企業が実施する場合でも同じ) 基本的に、上記の会員価格
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