メールマガジン第331号
みなさんこんにちは
今日は「たぬきの森」マンション建築確認違法判決の問題を検討します。
「たぬきの森」事件とは、「たぬき」もすんでいた森を伐採して、そこに、マンンションを建築した事件です。この事件は東京高等裁判所が確認を法律に適合していないとしたものを、今月(12月17日)最高裁判所のなした「建築基準法不適合」確定判決のことを指します。
この事件は、新宿区に敷地面積約1900平方メートルの「旗竿敷地」に、延べ面積約2800平方メートルのマンションが、ほほ70%程度工事が進んだ段階で「建築基準法に不適合」を確定した判決であったため、新聞では「取り壊し」することになると大騒ぎになったものです。今回は、この報道が誤解されないように取り上げることにしました。
評価できる判決の理由
この訴訟の基本的な焦点は、「たぬきの森」訴訟とも言われているとおり、新宿区の中の貴重な緑を切り払った環境破壊の事件が争点です。それを建築基準法で引っ掛けて阻止しようとしたところが訴訟の争点でした。
住民側の建築基準法違反は、建築基準法令違反として、一般的な基準の抵触ではなく、東京都条例による「付加基準」に抵触していることを根拠にして争い、それを東京高等裁判所が認め、最高裁判所がそれを確認したものです。
建築基準法自体の違反としては、東京都以外であれば建築確認できる内容ですから、違反自体の大きさとしては小さなものでしかなく、これまでの行政や司法の取り扱いからすれば「なぜこの程度の違反で問題にしたのだろう」と感じられて不思議ではない事件です。
この事件で評価できる第1の点は、法治国の司法は、仮に、「江戸の敵を長崎で討つ」苦し紛れの行政事件でも、「法律違反は、違反として認め、それを許さないと筋を通したこと」です。第2の点は、住民が苦し紛れの行政事件を起こしたものに対して、「住民の視点で判決が書かれた」ということです。
「討ち死」を繰り返してきた「法律上の正攻法」
本来住民が要求している「たぬきの森」を護る戦いは、環境・景観と言う都市環境の問題ですから、それを扱う場所は都市計画法です。この訴訟も、本来、都市計画第29条に規定されている開発許可違反で争われるべきです。
なぜ裁判所がその指摘をしなかっただろうか。裁判所は、都市計画法の問題として提訴されていなかったと言うでしょう。裁判所の実体は、都市計画法の知識が浅く、知らなかったからです。これまでも都市計画法違反の判決を、最高裁判所を筆頭に繰り返しています。都市計画法は、都市空間のあり方として、都市計画区域の居住者のコンセンサスを都市計画決定として決定すると同時に、面積500平方メートル以上の開発をしようとする場合いには、その開発が都市計画法第33条に定める「開発許可の基準に適合していることを条件にしています。
この開発敷地は、約1900平方メートル弱あって、開発許可を受けなければならないにも拘らず、東京都が作った都市計画法違反を詰め込んだ「開発許可の手引き」と言う違反開発の手引書を違法に受けなくてもよいと言う扱いを受け、開発許可をすり抜けて、建築確認申請を受けたのです。
建築確認は、建築基準法第6条で、建築計画が建築基準関係規定に適合することを規定していて、そこでは、都市計画法に関しては、面積500平方メートル以上の敷地の場合には、開発許可を受けたとおりの開発行為が完了した敷地であることを確認することが規定してあります。
開発許可の基準では、開発が既存の環境に適合することが規定してあります。都市計画法でいう「環境」とは、歴史文化を扱う人文科学的環境、自然科学的環境と社会科学的環境の3面が含まれます。
今回の事件は、接道幅員9メートル規定とこの環境規定「第33条第1項第二号」に抵触しています。しかし、これまでの東京都の開発行政は、先に開発許可の手引き」と言う開発許可をすり抜ける法律違反を教唆する手引きにより、開発業者に不正利益を与えてきました。そのため、東京都への開発審査会に審査請求を出しても、東京都OBが「開発許可の手引き」を正当であるとして訴えを却下し続けてきました。
司法に対して行政事件訴訟を起こしても、司法は、行政法知識が貧弱なため、東京都という行政機関の言うなりの判決を繰り返し、正攻法は悉く討ち死にをさせられてきました。
ジャーナリズムがでっち上げる間違った世論
今回の「たぬきの森」事件で、都市計画法の手続きを違法に逃れ、脱法により都市環境を破壊した計画を隠し、建築基準法違反の確認申請を提出し、不正利益を手に入れようとした「開発許可偽装事件」と言うべきものを、ジャーナリズムは、業者の偽装には触れず、行政の欠陥に全責任があるとして、次の3つの間違った情報をばら撒きました。
第1は、「違反建築物は取り壊されなければならない」と言った「耐震偽装事件」のときと同じ間違った考えです。
第2は、「その取り壊し費用は行政機関が損害賠償をしなければならない」という「耐震偽装事件」とは違った考えです。
第3は、今回のジャーナリズムの対応は、「処分庁に全責任があるとし、違反業者を免責にする」という「耐震偽装事件」のときとは全く逆な論調を展開したことです。
第1の件は、「違反建築物」は、違反部分を是正すればよい。今回の違反は、敷地と道路との取り付け部分の道路拡幅で是正できるもので、基本的に建築物自体を壊す必要はありません。「違反建築であれば取り壊せ」というジャーナリズムの主張は間違っています。
これは耐震偽装のときも同じで、「構造補強すれば足りる」にも拘らず、大騒ぎをしてマンション全体を破壊し、住宅所有者と建設業者に巨大な損失を与えてきました。このような「不当な取り壊しを指導した行政は、実損を住宅所有者やマンション業者に与えたわけですから、損害賠償をしなければならない」わけですが、「知らぬ顔」を決めています。
第2の違反建築物に対する「損害賠償の理屈」は、全く間違っています。開発業者自体が指定確認検査機関の教唆と幇助を受けて不正利益を得ようとして、違反承知の設計をし、違反承知の工事をしたわけですから、これらの違反者(ダーテイハンド)には、違反者を訴える権利はありません。指定確認検査機関や特定行政庁が違反幇助をし、又は、過失により違反を容認していたとしても、違反業者の責任が行政に転嫁できたわけではありません。
第3の違反業者に対するジャーナリズムの扱いは、「違反業者に責任はなく、行政責任に対し、違反業者が行政に損害賠償ができる」と言わぬばかりの主張を支持しているのは、なぜでしょうか。このような情報の扱いは、「野次馬根性」で、批判精神のあるまともなジャーナリズムとすれば、その見識が問われます。
判決の根拠となった東京都条例
ジャーナリズムは今回の裁判の尻馬にのって、これまでの裁判では、これ以上に危険な道路の基準に違反し、消防車や救命救急者の通行を閉鎖した開発許可違反の事件で、「却下」判決を繰り返してきたことに関しては、取材を要請しても取材せず、司法の都市計画違反容認を全く問題にしてきませんでした。
なぜ取材してくれないのかと聞けば、不正業者の多くはジャーナリズムの重要な広告主で、その広告主に不利益の及ぶ記事など書けるはずはないといいます。私が朝日新聞、日経新聞、赤旗などの購読を中止した理由は皆同じ理由で、不当な取材や記事に対して直接談判して、結果として私に出来る最低限の報復は、購読中止しかありませんでした。
今回の判決は建築基準法に根拠を置く東京都条例ですから、「たぬきの森」破壊の基本問題の環境は争われず、環境の回復にはならないのです。明治神宮は80年程度で今の森が出来たわけで、「たぬきの森」も開発許可違反で勝訴できたら、「たぬきの森」の復活に繫がる道をつけることが出来たかもしれなかったといえます。
しかし、現代の裁判所の都市計画法を蹂躙した判決を繰り返している限り、その望みは非常に小さいとしかいえません。しかし、「行政法違反はやってはいけない」と言う「法治国の秩序を護る最低限のことを履行できた」今回の判決の意味は大きく、その点をジャーナリズムはしっかり報道すべきであります。
玉川学園の開発許可違反
HICPMでこれまで三行政事件を取り組んできた町田市玉川学園で、先週土曜日には弁護士2名と住民たち約10名で玉川学園を豊かな郊外住宅地から交通環境の著しく危険で、次々に緑の森を切り倒してきた町田市の都市行政を許すわけにはいかないとして、これからの取り組みの検討をしました。この取り組みは、先に東京都開発審査会で却下された事件を行政事件訴訟として提訴するとともに、再度開発審査会で不服審査請求をする取り組みをする確認をすることになりました。
東京都開発審査会は、かつて、東京都の行政官として都市計画法違反を繰り返してきた行政官OBが審査会長の席に天くだって、引き続き「違反開発許可の手引き」を反省なく繰り返し、不正利益を脱法で追求している業者を幇助し続けているのです。
このような横暴を許すわけには行かないとして、ともかく違反の事実を明確にして、町田市の住民の生活環境破壊を阻止しなければならないという合意が出来ました。私たちは、「たぬきの森」事件の最大の成果である「法治国として、法律に照らして正し裁決と正しい判決を要求」し続けることをしなければならないということを今回の取り組みで再確認した次第です。
行政事件は、実は民主主義国家の国民の生き方が問われている事件と考えるべきで、行政法がその施行を通して、国民に約束している公益の実現を、国民が自分達の宝としての環境を守る問題として、如何に護ろうとしているかが問われている問題なのです。
年末のご挨拶
今年は本当に色々厳しく国家全体が揺れた都市で、HICPMもその尊属を揺さぶられました。しかし、HICPMの理事監事及び会員からの本研究会を継続することに対する強い支持が得られましたので、継続することにしました。
その結果、来年2月からは事務局の廃止に伴い、私一人が専従の常勤者として業務を実施することになりますので、ご迷惑をかけることも多くなると思います。1月一杯かけて、事務の引継ぎを行い、何とかやっていくことに致します。皆様方におかれましても、色々大変なことばかりでしょうが、「自分の会社の生きるために、仕事を探す」のではなく、消費者の利益の実現という視点で取り組むことで、「ニーズのあるところにはビジネスがある」という原点を忘れないで、来年に向けてよいお年をお迎えになってください。
戸谷英世
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