メールマガジン

メールマガジン第336号

掲載日2010 年 2 月 1 日

皆さんこんにちは、最新のアメリカ報告です

今日は、先週訪問した「アグリトピア(アリゾナ州フェニックス)」について紹介いたします。この事例はアグリカルチャアーバニズムの興味深い実践成功事例として、これからの都市づくりの参考となるものです。

このプロジェクトは、あまり大きすぎて全体を理解することは容易ではありませんが、此処では基本的なコンセプトとして私の理解したものを説明しますが、同じコンセプトで実施をするためには、現地に出向いて検討することが、不可欠な学習になると思います。私もこれからのこの都市の成長を見守って生きたいと思います。

新しい都市農業の提案
米国においても、農業は、決して楽な産業ではありません。生き残っている農業は、資本集約的な大規模機械化農業で、中小、零細な農業は生き残ることは容易に出来ることではありません。

今回見学したアグリトピアは、日本のスケールから見た場合、間違いなく大規模農業に属す規模ですが、トラクター1台でやれる農業は、決して米国の大規模農業ではありません。

ジョウさんは、先代からの農業を引き継ぎましたが、彼自身はスタンフォード大学でポリテクニックを学び、世界を旅行し、新しい事業としてアグリトピアの開発に取り組んだといいます。その詳しいことを聞くことはできませんでした。

ヨーロッパのグリーンツーリズムがヒントに
アグリトピア開発に採用されたコンセプトを理解して、私の想像ではありますが、多分、彼はヨーロッパに出かけて、ドイツにおける「グリーンツーリズム」を学び、それを米国の彼の農場で読み替えをして実践したのだと思います。

その読み替えとは、基本的に農業生産に関しては、彼自身は農業を生産者として、消費者の下に価格競争力のある農産物を届ける方法として、ドイツのグリーンツーリズムが実践している流通を介さないで、直接最終消費者と繋ぐことを学んだと思います。そこでは、大規模農業経営に対して遅れを取った高い生産コストと、流通業に奪われる利益を、彼自身の収益として手に入れる方法を考えたと思います。

もう一つの消費者を掌握する方法として、ヨーロッパのグリーンツーリズムの場合いには、農村の持っている文化を、都市の居住者に提供することで、農村に来た都市の人に、食文化を含む農村の文化総てを、都市住民の憧れる文化と結び付けて、消費者への小売価格で直接提供することで魅力あるものとし、結果的に農業収入を上げることに成功したのです。

大家族制、大農園経営のイメージ
彼は、都市居住者に対して、これまでの都市生活から失われた「地域や家族で守っている自然と地縁共同体の中で一緒に生活する農村の生活環境」を、農村が育ててきた大家族化家族が寄り合って生活する農村的環境を、「人びとの絆や家族の絆」を積極的に生かすニューアーバニズムの考えに立って構成しハードな環境を建設するとともに、開発時の基本コンセプトを支持する人たちの主体的取り組みを通して、その人たちの大農場経営の田園的な雰囲気を享受するソフトな地縁共同体の自治経営運営をすることを構想したのです。

住宅地の居住者と農業生産者とを結ぶモデル農園
ジョウさんの構想した基本コンセプトは、先ず自らが新しい農業経営者のあり方として、農産物を単に生産する農業者ではなく、ドイツのグリーンツーリズムで見たような農産物をエンドユーザーの食文化に繋ぐ提案のできる形に変えたのです。父親の代の昔からのジョウさんの家をレストランとカフェーと農産物即売所にして、そこに繫がる農地に果樹(みかん、桃、りんごなど)の果樹園と野菜畑を造り、そこで食堂やカフェーで提供する農産物を生産することのしたのです。

また、その農地に隣接して市民農園を造り、小規模の家庭農園を実施し、そこにこの町にやってくる人たちに農業に対する関心を持たせ、生産者と消費者を農業で繋ぐことを計画したのです。そこで、この町
の中から農業に夢中になれる理解者のための農園を15人に用意しま
した。宅地農園には専門家の指導者はいない。

大家族制の一宅地面積1万平方フィートの住宅集団
ジョウさんの農園を囲んで、400宅地(1宅地10、000平方フィート)で取り囲み、1万平方フィートの各宅地には、原則的に、3戸の住宅を建設する計画がつくられました。この3戸の住宅は、できる限りファミリーであるとか、その他親密な関係にある人たちの集合として計画する宅地利用の方法です。「複数家族の人びとの絆に護られて、この住宅地の治安は非常によい」と、ジョウさんご自慢の住宅地です。

この家族をもう一回り大きした大家族を10、000平方フィート(約300坪)の敷地に詰め込むというアイデアは、ネイテイブ・アメリカン系か、ラテン系か、アジア系の感じがしました。ジョウさんの奥さんはレバノンだったか、確か中近東のご出身だといわれたように思います。

住宅の形を建築面積制限で実現
住宅地全体はニュー・アーバニズムの計画理論で計画し、「人間の絆」を大切にするとともに、そのアーキテクチュラル・ガイドライイン(建築設計指針)としては、各住宅の建築面積は2000平方フィート以下にすることで、住宅の塊(マス:ボリューム)の単位として、「小さな住宅」という感じの「住宅集団の形成」をすることが定められました。

住宅の屋内空間として、大きな容積を希望する人には、「地階及び中二階、又は、2階建てまで」の3層までの建築はしてもよいことにしています。その結果、3個で構成される各宅地は夫々工夫して地位サの住宅が3棟、個性的な構成で建てられているのです。

SOHOのある住宅地
宅地を区画するフェンスなど、見通しの利くフェンスや生け垣を原則とし、その高さを低い塀を造ったりするようにしている。そのようにすることによって、隣との関係をお互いが、「なんとなしに」分かり合って譲り合うといった思いやりや理解をしあう関係として創りあげているところが特色となっています。同じ宅地内の3棟の住宅は、夫々のつながりを大切に計画するとともに、各住戸の独立した生活を考えて、全面道路との出入りとバックアレーからの出入りとの選択ができるようにもな
っている。

通常のニュー・アーバニズムの計画のように、コミュニティの開発では、バックアレーを車庫への自動車の導入路として計画した住宅地と、バックアレーを遊水緑地内の散策歩道としてつくり、自動車は全面道路から宅地の奥にドライブウエイトして引き込むものの2種類がありました。

その1万平方フィートの住宅地の中には、ゾーニングとしてSOHOを取り入れることが出来ることにしていて、実際に建築家や写真家、コンピュータープログラマーで業務用の事務所を構えている人の住宅を訪問した。いずれの居住者も、職住近接又は一体の生活に満足しており、家庭菜園をやっている人の満足も高いようでした。

これらのSOHOのある住宅の中には、積極的な住宅購入者としてSOHOのある住宅を購入した者もあれば、1万平方フィートの宅地購入者店子として入居した者あって、「1万平方フィートの宅地所有者の個人宅地経営」として、定期借地持家や戸建住宅賃貸(定期借家)がやられているようであった。

自治団体としてのアグリトピア
この住宅地開発は、マスタープランド・コミュニテイと呼ばれる開発で、居住区だけの住宅地経営管理協会(HOA)という自治団体のほかに、この敷地内には、私立学校や教会があり、やがて、次の段階で養護老人ホームも建設される企画になっています。

これらを総て包含した全体を一元的に経営管理する自治団体としてのアグリトピア都市経営管理協会(HOA)という開発地の自治団体が計画されている。ジョウさんはこの事業経営者であると同時に全体のHOAの理事長でもあるのです。つまり、ジョウさん、英国のランド・ロード(土地の王様:貴族)と同じ気持ちで都市経営をやっているのです。

わかり易く考えれば、農業生産にだけ頼っていたランド・ロードが、農業生産物の消費者を囲い込み、これらの消費者に土地を売却して、従前の農地を現金化し、その資金でアグリトピアの環境整備をして、豊かな生活を実現できることで、この地の不動産に対する需要を高めることで住宅により住宅購入者の資産形成に貢献しているのです。その都市経営自体が全てジョウさんの事業として、かつての農業経営以上の利益を生むことになっているのです。

都市経営の原則「三種の神器」に忠実な取り組み
この「アグリトピア」のコミュニテイには、米国のこれまでの資産形成を実現してきた住宅地を支える開発事業者と住宅所有者と住宅地経営管理協会の3者間で結ばれた基本契約約款CC&RS(カベナント・コンデイションズ・アンド・レストリクションズ)があって、それに基づいて経営管理されています。

「アグリ・トピア」の運営は、米国の一般的にやられている「3種の神器:ニューアーバニズムによるマスタープタンとアーキテクチュラルガイドライン。HOAと言う自治団体、コミュニテイ全体を法的に契約関係で繋ぐCC&RS)によって構成されている。ここの地域には公立学校区があって、そこに学童は通学することもできるが、この私立学校の住宅地内の学校の人気が高い。コミュニティの学校は協会と一体的な建築として作られていて、多分、ジョウさんの宗教的な信条と深い関係を持った月光と協会との関係がある者と考えられた。

カフェーとレストランの機能
この住宅地の人びとは、農園の伸び伸びした雰囲気のある昔からの農園の住宅をリモデリングしたレストランやカフェーに家族全体でやってきて、農園の文化を経験して楽しめて、家族の絆を高め、ジョウさんの目の前にある「農園で取れたばかりの新鮮な農産物」を、そこにある農産品直売場で購入している。

ジョウさん自体が、コーヒーの専門的な知識技術を持っていることから、カフェーを開きそこでカフェーの雰囲気を楽しめるようにしていることで、少しハイカラな農園風景が造られている。人々にハイカラな生活の楽しめる集会の機械が作られていることで、この場所は、ニューアーバニズムによる地縁的な「人の絆」を高める空間が、懐かしい農園(ファーム)の雰囲気がよりうまく演出されている。

取り残された農家が最先端の都市農業への変身
私なりに勝手な解釈をすれば、このコミュニテイは、400宅地(各宅地3戸)合計約1200世帯の居住者(約5000人)を囲い込んで、これらの居住者を対象に、農業者が農産物を確実の売却することで、規模は小さくても利益率の高い安定都市農業を実現することに成功した。

過去の農業規模では、早晩、経営的に衰退する運命にあったものを、都市居住者という最終的農産物需要者を確保することで、見事小規模で高利潤の農業経営を成功させた事例を作ることになった。

都市と農業という関係は人びとの生活上不可分の関係にあるが、都市住民にとっても新鮮で、安心できる農産品を安く手に入れたいという希望は基本的なニーズである。一方、都市農業者にとっても集約的な農業生産ではなく、需要をにらんで必要な量だけ必要な方法で収穫し、販売することが出来れば、大きな倉庫も要らなければ、収穫や貯蔵に集中的な労力を使わなくても住む。農業生産者とそこでの収穫物を都市居住者がその生活圏の中で感じることにより、また、レストランやカフェーでの料理の中で実感できる安心のできる農産物の購入を促進することができる。

グリーンツーリズムの経済理論の実践
アグリトピアの取り組みは、要するに、通常ならば都市と農村を結ぶ中間流通に奪われていた経費を省略することで、農業経営者にも、都市居住者にも、経済的利益だけではなく、都市と農村両方の持つよさを享受することが出来ることで、都市居住者の農業に関係する生活内容は豊かになり、農業経営者には、高利潤経営を可能にした。

コミュニティの基本的なメカニズムは、ドイツのグリーンツーリズムと同じであるが、「よき時代の農村の生活の復興」ではなく、新しい農業を採り入れたいことを求めている都市生活者に対して「アグリカルチュラル・アーバニズム」のモデルを「新しい中規模農業者の実現可能な農業経営」として提起したものである。

都市経営者としての成功者
人びとが信頼しあって助け合い、理解しあうコミュニテイを、学校や教会、農業や農園の環境を通してその絆を強めていくことを通して、人びとの主体的な活動を育んでいくことで、みなの憧れの住宅地を建設し経営することで資産形成に成功し、大きな成功を果たしている。

その結果、この住宅地は同一の内容の近傍の住宅と比較して30-40%高い価格で取引されている。この地に生活する人が高齢化したときに養護老人ホームにより専門性のある高い介護サービスを提供することを展望しい将来に建設される養護老人ホームはこの町の中心の農地に隣接する敷地に建設されることになっている。

そこには、農業経営者による経営対象が農作物や家畜であったのに代わって、都市経営を取り入れた農業経営という経営対象を変更した新しい姿が認められる。
戸谷英世


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