メールマガジン

メールマガジン第355号

掲載日2010 年 6 月 15 日

メールマガジン第355号(6月15日)
皆さんこんにちは、
6月13,14(日、月)広島でご活躍のダブルスネットワーク(若本さん)主催のリースホールドによる街づくりの研修会に講師として出かけてきました。若本さんの確信を持った住宅産業改善の取り組みを実地に見ることができ、私も大いに刺激されました。

一体、日本の木構造はどうなっているのか
その中で、偶然ではありましたが、在来木造構造による2階建て住宅を、地場の真面目な工務店の施工中の現場を見て、大変驚きました。というより日本の木造工法の伝統を破壊してきた「政府及び建築学会の破廉恥さ」に呆れてしまいました。
在来工法において、「応力の伝達材として、金物を使うようになったこと」は私も知っていました。しかし、実際、躯体工事が完成した在来工法の木造を今回ほど念入りにしっかり見たことありませんでした。そのため、これまで金物による緊結に疑問を持ってはいましたが、工務店は法律に照らして適正な工事をしているにも拘らず、これほどひどいとは思っても見ませんでした。今回のように驚いたことはありませんでした。

建築基準法の規定に対する長年の疑問
木材には、弾性があり、金物で締め上げますと、当然のように木材の弾性によって材料の接合が緊張した形でしっかり締め上げられることになります。日本の在来構造とこれまで言われてきたものには、建築基準法の在来工法基準では、木材の筋交い(正しくは「筋違い」と書く)に代わる材料として、木材ではなく、鉄筋の9ミリの丸鋼を使っても、柱の3つわり筋交いと同程度の強度を認める、という扱いがされてきました。
このような建築基準法で規定された木構造で、鉄筋により締め上げられた筋交いにより、木工造は、工事完了時点では、しっかり締め上げられることが確認されてきました。

金物で締め上げられた木構造
しかし、このように鉄筋で締め上げられた構造は、1年経つと木材が締め上げられた形にたわみ、木材も弾性を失います。そして、木材の乾燥が進むとたわんだ状態で弾性が失われるため、鉄筋による筋交いで木構造を締め上げる力を失い、次第に木構造自体が歪み、隙間ができ、接合部には「がた」がきます。
そこで「がた」をさせないように、鉄筋の筋交いをさらに締め上げらざるを得なくなります。すると、木構造は締め上げられることで、その木材の弾性で「がたがた」しなくなりますが、建具直付けの構造が、やがてたわみによる変形が拡大し、建具も狂うことになります。つまり、鉄筋は剛性の違う木構造締め上げることで、短期的に木材の弾性でしっかり締め上げられていますが、やがて、年を追って、たわみ変形により木構造を全体として狂わせていきます。

木造伝統工法と建築基準
江戸時代中期に完成した伝統的木構造は、木組み(仕口、継ぎ手)により応力を伝達することにし、金物は、仕口、継ぎ手の直接的な応力伝達手段ではなく、仕口や継ぎ手が離れないようにする補助的接合手段に過ぎませんでした。そのために金物により木構造を締め上げ、それにより木材をたわませるということはありませんでした。現在のわが国の在来工法といわれているものは、伝統木構造とは基本的に構造の考え方が違います。そのようなわけで、バラック建築の構造補強筋交いとして建築基準法に取り入れられた「9ミリの鉄筋使用」に関しては、伝統木構造ではなく、バラック構造でして、以前から「強く締め上げすぎると木構造にたわみを作らせる」という批判が以前から提起されていました。

安直な国の判断
しかし、国土交通省は、かねて住宅金融公庫があった当時から、工事時点の構造安定しか考えず、金物による木材のたわみを全く考慮しない構造体形を無批判に採用してきました。その代表事例を今回、広島の優良工務店の建築基準法適合建築物としてみることが出来、真面目な工務店に、このような長期に見た場合に不安の拡大する住宅を、「長期優良住宅」と説明させ、供給させていることに大変驚きました。分かりやすく言えば、金物で締め上げられた在来木構造は、「売り逃げ住宅用(伝統工法のまがいの)木構造」といったほうがよいように思われました。

経年するにつれ金物による変形を受ける木構造
その理由は、この金物締め付け住宅は、住宅引渡し時点は、木材の弾性により緊張感のある構造を維持しています。しかし、経年するにつれ、確実に締め上げられた木材はたわみ、5年たてば累積たわみが進み、木材の弾力性は失われ構造の緊張感は緩むことは必至です。そこで、構造の緩みを締め上げることが必要になり、締め上げることで、建築は変形量を拡大することを余儀なくされます。つまり、建築された時点でしか緊張感を維持できない住宅を造ることになるのです。このことは今 急に発生したり、知られるようになったことではありません。少なくとも木造に関しては、「竹山・西岡論争」として建築会で長年議論してきたことです。私は竹山さんの理屈を支持してきましたが、多くの伝統木造や、在来工法支持者は西岡さんを全面的に支持してきました。果たして、西岡さんの主張と現代の金物工法とどのような関係があるというのでしょうか。

現場の作業を放棄した工務店と大工
しかも、木構造として組み立てられる材料は、全て工場でプレカットされていて、建設現場では、素人で十分できるプラモデルの組み立てという単純労働しかありません。木材が重いといって、クレーンを使ったり、機械にさせる仕事を観察しているだけの仕事しか現場にはありません。このような仕事しかやらない労働者には、技能力を必要にしないことから、米国で言えば、ワーカーとして、時給7ドルくらいしか払えない労働ということになります。つまり現代の在来工法木造現場で必要とされている木造施工技術は、大工の技術ではなく、雑用労働者の技術にしか過ぎません。

工務店の粗利の取り方は間違っている
日本では、工場でプレカットさせた仕事に対して、あたかも建設現場の労働者が加工組み立てしたかのような大工賃金を支払う、といったばかげたことがやられているのです。
同様なことは、ユニットバスやシステムキッチンといったユニットを採用するときにも、材工一式です。これらユニットを全て現場の工事人が作成したかのような粗利を吹っかけて建築主に請求しているのです。これらのユニットが壊れたとき、取り付けの工事人は一切責任を持たないだけではなく、実際上修繕しようとしても、その修繕することもできず、スクラップアンドビルドの対象にするしかありません。

建設現場の職人の賃金は正当か
それでいて、どのような仕事させる大工か職人か分からない状態で、「大工の賃金を上げよ」、「職人の後継者がなくなる」、「伝統的木構造の担い手」などと、口にしています。日本の大工・工務店は、本来の伝統的な大工・工務店の仕事をしているつもりなのであろうか。プレカット業者やその指示を受けて組み立てている現場監督の仕事が、棟梁のやる仕事とは私には思えません。少なくとも私が広島で見た建築基準法に適合した金物締め付けバラック工法は、確実に数年で狂い、経年するにつれ「がた」のくる建築であるといってもよい代物です。

現場で高い生産性を挙げる努力を
米国の建設現場では、材料と建設労働者の労働により、建設現場で住宅を生産しています。建設現場作業を工場に仕事を移さないで、材料の寸法を尊重した設計と、コンストラクションマネジメントを徹底することで、大工やホームビルダーが高い生産性を挙げることのできる仕事をすることに成功し、工場生産住宅に比較しても負けないコストで住宅を供給しています。そのような高い生産性を建設現場で実現できることにより、工務店は高い利潤を上げ、大工など建設労働者は高い賃金を得ているのです。

「建設サービス業」と「不動産製造業」
米国と比較すれが、日本の工務店は、日本国政府が言っているとおりの「建設サービス業」で、つまり「手配師」で、本来の建設業のやるべき、製造業(不動産加工業)としての仕事をしていないのです。実際の生産をしないで、下請け手配をする人は、経費と利益を上乗せする手配業者であって、住宅価格を吊り上げる、という負の仕事をしています。

政府の「長期優良住宅」は噴飯物
私は、このような日本の在来工法の住宅を買わされている消費者が気の毒でなりません。建築行政と建築学会は無責任です。この事実を知っていて、明らかに将来的に欠陥となる住宅を「長期優良住宅」と平気で公言しているのですから、それはもはや確信犯としか言いようがありません。消費者の長期的な住宅保有による損失、という視点で「金物締め付けバラック工法の見直し」を強く要請します。
戸谷英世


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