メールマガジン

メールマガジン第361号

掲載日2010 年 7 月 20 日

メールマガジン第361号(7月20日)
みなさんこんにちは
先週HICPMが実施した2つの催し物の報告をします。

一つはHICPM第3木曜日のCMセミナー例会です。
洋風住宅デザインの学習
この例会は参加希望者の要請を取り入れて実施するというやり方できましたが、今回は「輸入住宅スタイルブック」の出版を記念して、CMセミナーで資産価値の形成に繫がる住宅デザインの考え方をセミナーとして実施しました。
日本では、住宅デザインというと、複雑な形態を持ち込んだり、時代のトレンドを追いかけるデザインを採用することで、住宅を高く売ることができる、という誤った考え方があります。

住宅デザインとは何か
デザインは、基本的に住宅の個性の違いを表現するもので、そこには垢抜けのしないものもあれば、洗練されたものもありますが、その違いは、直接価格の違いに反映されるものではなく、需要との対応での差となってあらわれます。需要者の目が痩せていれば、「野暮なデザインでも高い価格で販売されている」ことは、「日本の大手ハウスメーカーの住宅が数年で色あせてしまって、粗大ゴミになっていること」を見れば明らかです。
デザイン、機能、性能のいずれの要素もその評価をお金ですることはできないことから、これらの要素を根拠に住宅価格を吊り上げることは間違いです
中でも、デザインは住宅の形と意匠の特性をあらわすもので、同じデザインで、粗末であるとか、歴史文化を踏まえていないものであるとかで、需要の対象にされないということで市場価格として低く評価されることがあっても、デザイン様式として洗練された住宅が、その違いを理由にして価格に直接反映させることは理論的にありえないのです。たとえば、ジョージアンデザインがビクトリアンデザインに比べて優れているということはないのです。

低価格で供給する住宅に優れたデザインを
消費者の購買力が低下しているとき、安い価格でしっかりしたデザインの住宅を供給することは大切であるという認識の下に、「しっかりしたデザインとは何か」を勉強してもらおう、とした企画が今回のセミナーの企画でした。
デザインを学ぶことは、建築の歴史を学ぶことと同じことです。歴史上、多種多様な住宅デザインが誕生してきましたが、それらのデザインは、それぞれ時代の歴史文化と気候風土、政治・経済、貿易などの公益・交流、土地の立地環境や気象条件等を反映して生まれたものです。住宅のデザインは、同じ状態に留まっていることはなく、常に変化しています。私はそれを土地の生み出す文化生産性という言葉で包括的に説明してきました。土地の潜在力として形成されてきた「土地の文化生産性」とそこに生活しようと集まってきた人びとの嗜好や感性との組み見合わせで、新しい住宅デザインが生まれてきているのです。人の嗜好や感性は、人びとが担ってきた歴史文化と、社会経済環境の中で形成されるものです。個人的に相違しているようでいて、嗜好や慣例もまた、歴史文化の流れの中で大きな影響を受けているのです。

建築は民主主義の実現(ライトの4原則の第4)の意味
人間は自分の存在を認めて欲しいと思っており、それば基本的人権といってよい個性の尊重を求める要求といってよいのです。自分を認めて欲しいと言う要求に応えるためには、相手の個性を認めることをおいてありません。それが民主主義の原点なのです
しかし、日本の住宅産業は「住宅の個性の単なる違いを、住宅の優秀性である」と間違った認識の下に住宅販売を「差別化」と言う戦略で販売してきました。朝鮮人、中国人と日本人の違いを、戦前のわが国では日本人の優秀性であると差別をすることで「朝鮮人や中国人を非人間的に取り扱って当然」と言う誤った政治行政を行ってきました。その本質が「差別化」政策だったのです。人間の違いは、人間の価値の優劣を決めるものではないにも拘らず、現代でも学歴、学閥、資格、民族、人種の違いを人間の優劣の判断材料に持ち込もうという動きがあります。住宅のデザインも区別するもので、差別するものではありません。

建築デザイン教育
残念なことに、日本の学校教育で建築デザインを歴史文化遺産という視点で、まともに教育しているところは皆無に近く、「デザインをインスピレーションで生み出すものである」かのような間違った教育が、いわゆる建築雑誌に登場する建築家や教授、講師とした多くの大学で教育されてきました。
和風建築の様式はもとより洋風建築やイスラム建築、中国建築、インド建築、東南アジア建築、ビザンチン建築、北アフリカのベルベル人の建築、中南米のアドベ建築など、数え上げればきりがないほど多種多様な建築文化があります。それらの建築デザイン(フォルム・形態とオーナメント・意匠)をその気候風土、歴史文化、政治経済環境の違いを反映してどのように形成されたかを学ぶことが建築デザインの学習です。

まともなデザインの知識を必要としない国・日本
しかし、日本でそのような教育をしている学校が皆無に近いだけではなく、教えることの出来る教師も文献も貧しい状態です。図書館や建築関係図書販売所に出かけてみると、その貧しさは歴然です。
欧米だけではなく、中国や中近東、インド、オーストラリアの大都市の本屋に行けば、日本の丸善、八重洲ブックセンター、三省堂、紀伊国屋などの本屋とは比較にならないほど豊かなデザインの理論と実践に関する書籍を容易に発見することが出来ます。その理由は、その社会の国民のニーズであり、そのニーズに応えるためには住宅産業関係者に高いデザイン知識、技術、能力が求められているからです。
それに対して、日本では有名建築家の自己中心的で、歴史文化をつまみ食いして、自己中心的な感想をまとめたような建築論、時代におもね、流行の、又は、前衛的と自己主張するデザインで、皮肉なことに、多くのデザインの図集は、それらが発行されたときには、すでに時代から置き去りにされたものばかりです。

150枚以上の代表的西欧住宅スケッチ
HICPMの今回のセミナーでは、100枚以上の歴史上高い評価を得ている住宅建築のスケッチを、時代を追っかけてOHPで見てもらいました。このOHPの原画は、「アメリカンハウススタイル」の著者、ジョン・ミルン・ベーカーが、私がその翻訳書を刊行することになったときに、「使用してよい」として下さったものです。その図版の多くは「アメリカンハウススタイル」の中に掲載されていますが、図版としては小さすぎてよく分からないため、OHPで、壁に大きく映し出して、見てもらいました。
その後、HICPMが進めてきたサスティナブルハウスの全体像を同じくOHPで説明し、引き続きカナダのパークレーンホームが取り組んだ「ディスカバリータウン」のマスタープランと建築ファサードのスケッチを見てもらいました。
大変好評でしたので、同様の内容のセミナーは、会員からのご希望があれば、CMの定例セミナーに取り入れて、少人数でもこれからもやっていこうと考えています。

もう一つの催し物は、グローバル研修企画とHICPMによる国内研修ツアーです。
今回の研修先は、HICPMの会員であり、鎌倉で、輸入住宅デザインに拘って個人住宅中心に取り組んでこられたソーケンホーム(社長:小幡さん)でした。7月15日にHICPMのデザインセミナーを計画していたので、グローバル研修企画の研修場所としては、それに対応するものとしようということで選択しました。

似非Gメンとゆすり弁護士に負けなかった小幡さん
かつて、明治大学の建築Gメンを名乗り、ジャーナリズムを利用して、悪質な弁護士とつるんで工務店をゆすりたかる不当な摘発というものがありました。小幡社長は、その犠牲者となり、訴訟に持ち込まれる事故に遭遇し、経営破たんの危機にまで追い詰められた経験をした方です。
私もこの事件に関係し、不当な弁護士と戦うことになりました。しかし、民事訴訟に入った段階で、新しく加わった弁護士が、自分の流儀で仕事を進めるため、私を排除しました。メールマガジン第360号でも書いたとおり、「弁護士とは、基本的に法律を使ったゆすり」と言ってよい連中です。

西欧建築デザインに拘った小幡さん
小幡社長は、その問題から逃げるのではなく、消費者に対して誠実な問題処理に取り組まれ、自らの木造建築し、二級建築士、一級建築士の資格をとるとともに、西欧建築のデザインを勉強されました。その結果、現在では3人のお子さんのうち2人が、父の取り組んできた住宅建設の仕事の魅力にひかれ、父親を支えて住宅の仕事に取り組んでおられます。その建設された事例をバスツアーとして見学して回ったのですが、基本がしっかりできていて、参加者に大変よい勉強になりました。

変貌した鎌倉山住宅地
その一方で、かつて私が住宅都市開発公団の調査課長時代に、自然と調和した住宅地として参考にしようとしていた鎌倉山のよさは、その後の建て替えで擁壁を高く積み上げて間違った敷地造成が繰り返されて、擁壁だらけの見苦しい住宅地に変貌していました。高級住宅が多いこの地では、高い設計料をとる建築家が関係しているものやハウスメーカーが関係していると判断される住宅が多数ありましたが、その多くは、自己中心的で、鎌倉山の環境破壊に手を貸していると非難されても仕方ないものが多数を占めていました。これらの事例も資産形成のできる住宅建築の反面教師として、参加者に見てもらいました。今回のバスツアーは20名を越す参加者で高い満足を得てくださったように思います。契印たちが経験交流を通じて力を高めていくものと感じました。

研修ツアーの目的と効果
国内研修ツアーの目的は、HICPM会員相互の経験交流をすることで、お互に学び合うということができます。具体的な事例を通して、事業の置かれている環境を含んで総合的に学ぶということができます。
具体的な住宅及び住宅地の形態や意匠をとおして、どのような技術や、デザインが活かされているかを説明できる「オン・ザ・ジョブ・トレイニング」としての役割を果たすことができると思います。
中には反面教師となっている場合もありますが、実際使われている事例を通して、背景となっている欧米の歴史文化を理解することができます。
車中セミナーでは、できるだけ教室セミナーとの関連を考慮し、教室セミナーでは得られない研修としております。これまで参加者の大きな支持を得て40回近く続いてきました。
毎回テーマを考えて企画していますので、まだご参加なさっていない方にもお勧めしたい学習方法と思っています。一緒に参加された方が同じ事例をどのように評価しているかを知ることで、住宅や住宅地を単なる技術的な問題だけではなく、市場での評価との関係で立体的に理解できます。国内ツアーには、国外研修ツアーに連続する面白さがあると思います。

戸谷 英世


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