法令

渋谷区鶯谷マンション都市計画法違反の開発許可

掲載日2010 年 7 月 26 日

以下に紹介する「意見書」は、原告及びその弁護士からの以来を受けてまとめたもので、都市計画法及び建築基準法違反の開発許可及び建築確認処分の違法性を明らかにしたものである。 
意   見   書(平成22年7月23日)
特定非営利活動法人住宅生産性研究会
理 事 長  戸   谷   英   世
(保有資格)技術士(都市計画及び地域計画部門、一級建築士、建築主事資格

渋谷区鶯谷マンション事件に関する都市計画法及び建築基準法の立法の背景、趣旨及び行政の変遷の経緯から見た法律違反について意見を述べる。
私の都市計画行政・建築行政専門家としての主な経歴
1961年度(昭和36年度)国家公務員試験上級職「甲」合格
1962年度(昭和37年度)建設本省入省(住宅局配属)
1968年の新都市計画法制定時に、住宅局建築指導課市街地建築指導室係長として都市計画法制定に対する住宅局窓口として、都市局都市計画課との折衝の任に当たる。
1963年から住宅局建築指導課基準係長として、建築基準法第五次改正を担当し、建築基準法改正法案の内閣法制局審査及び各省折衝を担当。
1976年から住宅局建築指導課長補佐として、建築士法の施行を担当するとともに改正建築基準法を建築関係団体に対して普及徹底する任に当たる。
1980年から新設された住宅都市整備公団都市開発調査課長として、都市開発事業調査を担当したほか、大阪府建築部参事として建築行政を担当。
1995年以降、NPO法人住宅生産性研究会を設立し、豊かな住宅と街づくりを実現するべく、欧米の住宅都市の調査研究をし、その成果の国内の住宅産業への技術移転を図る一方で、法律違反の行政事件に対して適法な法施行をするよう求める市民運動を、行政不服審査及び行政事件訴訟を通して支援。
本論
1.制度と手続き上の問題
(1) 開発許可と建築確認の行政事務の整理(都計法29条、建基法6条)

開発許可制度は、1968年に都市計画法が制定されたときに、予定建築物が、関係都市基盤が整備されていない段階で建築行為が行われると、都市空間利用が乱されることになるので、開発許可に関する開発行為が開発許可どおり完了しない限り、予定建築物の確認は認められず(建築基準法第6条)、都市計画法上もその建築は禁止すること(都市計画法第37条)が明記された。
住友不動産による渋谷区鶯谷マンション再開発事件(以下「鶯谷マンション」という)は、都市計画法第36条に規定されている開発許可の工事完了公告が出されていない段階で、建築基準法第6条に違反して確認申請がなされ、確認済み証が交付され、かつ、都市計画第37条第1項および建築基準法6条に定める建築基準関係規定(権基準法施行令第9条第12号に違反して鶯谷マンションは着工された。
開発許可の処分庁が都市計画法第37条1項ただし書きを「制限解除」と称して、開発許可に係る事業の完了前に、予定建築物の着工を許可したが、法律で許可できるとした建築の工事は、開発許可に係る工事に必要な現場事務所や材料置き場の建築物であって、予定建築物は許可対象に入らないことは文理上明確である。

(2) 開発許可処分権者(都計法29条)
渋谷区長は、都市計画法第29条で明記された開発許可権者ではなく、かつ、地方自治法上開発許可権を東京都知事から権限委譲を受けることが出来ない自治体の長である。地方自治法上、渋谷区として出来る開発許可に関する事務は、都市計画法上の開発許可権者である東京都知事のなすべき開発許可事務の一部を、渋谷区(自治団体)にやらせることが出来るとしただけで、渋谷区長(自治体の長)に東京都知事の開発許可権限の委譲をしたものではない。
処分庁が主張する地方自治法第252条の17の2は、東京都知事の名前と公印を使って行う行政処分の事務を、渋谷区がその事務方として行なってよいという規定であって、地方自治法上、都市計画法で定められた「指定都市等(都市計画法第29条)の長以外には権限の委譲はできない」ことを定めた規定を緩和できる規定ではない。法律上の権限のない者のなした開発許可処分は、無効とされなければならない。

(3) 開発許可と公共施設管理者の同意(都計法32条)
開発許可権申請者は、道路、河川、下水、公園等関連公共施設や学校教育施設等、鶯谷マンションの建設に伴い関係する公共施設の行政上の権限を持った管理者と、開発許可申請に先立って協議し、その開発内容が既存の周辺都市環境にしわ寄せを与えないこと(都市計画法第33条第1項第2号及び同条第2項)に定められている技術的事項を協議し、関係行政上既存市街地住民にしわを寄せない開発計画であることを認めて同意を得るべきこと(都市計画法第32条)が定められている。
しかし、住友不動産はこの規定に違反し、必要な同意を得ないまま(都市計画法第32条の同意書の添付のされない)、本件開発許可申請をなした。それに対し、都市計画法第29条条の開発許可権限を有しない渋谷区長が、関連公共施設の管理者の同意書の添付されていない開発許可申請を受け付け、第32条に関する審査をせずに、処分庁自らの恣意的判断で、申請者に開発許可を与えた。
処分庁は関連公共施設の管理者の同意がなされていることを審査する義務を負っていて、それに変わって同意内容を許可する権限は与えられていない。これは本件開発計画が、関連公共施設につき法律上の権限を有する者による審査を受けることなく、違法に開発許可の審査をすり抜けたものであることを意味する。
それに対し、違反工事の差止めを求めた原告に対し、東京地方裁判所は、関連公共施設の管理者がなすべき関連行政法により審査がなされていないことを、開発許可申請手続きの欠陥(違法)とは判断しなかった。
それに代えて、裁判官は、都市計画法上の行政判断の根拠に依らないで、裁判官自身の恣意的な判断で、いずれの関連公共施設の規定にも違反している事実を無視して、開発許可の処分権者でも、関連公共施設の管理者でもない渋谷区長の判断でよいとした。
裁判長には法廷に提出された陳述に対し審査する権限は与えられているが、行政法上に基準に従って行政機関が判断しなければならない技術的判断について、「法令の定めるとおり公共施設の管理者の同意を受けなければ、開発許可申請自体受理できない」というべきところを、裁判官が恣意的な判断を持ち込んで、「第32条の同意書がなくても、裁判官の感じで適正である」とすることは3権分立の民主主義の基本を侵犯するものである。

(4)    広義の開発許可と狭義の開発許可(都計法29条)
都市計画決定された基本計画(マスタープラン)と建築基準
都市計画決定は、都市計画区域内に居住する者が、都市の将来的に実現する都市環境を都市の土地利用計画を定め、それを関係者全員が共通の実現目標と考えて遵守することで実現しようとする都市環境の到達目標である。都市計画区域内の居住者は、都市の基本計画(マスタープラン)を都市計画法第8条で定める地域地区という土地利用計画として都市計画決定し、それを個別の建築行為の都度、建築基準法で定めた建築設計基準を建築行政で建築規制し、関係者が規準を遵守することで、都市計画決定を実現することを法治国の国家と国民の契約として信じてきました。

開発許可制度と審査内容
都市計画法で定めている開発許可制度の目的は、予定建築物が都市計画決定した都市の土地利用計画(基本計画:マスタープラン:都市計画法第8条「地域地区」の都市計画決定)どおり建築できるように、予定建築物の計画が、その敷地に定められた土地利用規制(「用途に適合すること」と規定している。)に適合するあることを審査し、その敷地を開発許可の基準(都市計画法第33条)に適合しているように開発させること(都市計画法第36条)である。

建築確認制度と審査内容
建築基準法第6条で定める確認申請は、予定建地区物の敷地が都市計画法で定められた開発許可どおり完成していること(都市計画法第36条による完了公告がなされていること)である。そのことを確認事務では、都市計画法との関連に関し、「建築基準関係規定」(建築基準法施行令第9条第12号)との照合をすることを定めている。そこでは、都市計画法との関係として、開発許可にかかる開発行為が完了している開発許可の実体ができていることを「都市計画法第29条第1項に規定に適合していること」と定めている。

間違った「開発許可」の法律解釈

これは、「開発計画が開発許可の基準に適合していることを審査して、開発許可どおりの開発行為を始めてもよい」(狭義の開発許可)とする都市計画法第29条が定めている字句どおりの開発許可(開発計画の許可)があれば、開発行為がなされていなくてもよいとするものではない。それは、都市計画法第3章に定める開発許可の目的とする行政処分全体が完了し、予定建築物を建築できる敷地が完成していることを指している(広義の開発許可)。
このことは、都市計画法の立法趣旨の説明からも、都市計画法の文理解釈上からも導かれる。なぜならば、開発許可がなされただけでは、許可された内容の開発行為がおこなわれる保証にはならず、開発工事が完了し、完了検査が行われ、許可された内容どおりの開発行為がなされたことが確認されて始めて当該開発地に安全に予定建築物を建てることが可能となる。よって、開発許可は、完了公告がなされることまでが開発許可の行政事務であるということにならざるを得ないからである。

法律の目的、立法趣旨及び文理に照らして間違っている判例
最高裁判所が、「開発許可という行政事務を開発計画に対する許可で完了し、完了公告以降、開発許可の誤りを訴えることはできない」とした判例を出しているが、開発許可の目的は完了公告がなされることで完了するわけであるから、開発許可の結果が違反であるとする場合には、完了公告がなされて以降に「開発許可(都市計画法第29条第1項を根拠条文として不服審査請求を行うこと)が都市計画法立法当時以降の内閣法制局の考えで、国会において政府委員により説明され、立法された内容である。

(5) 開発審査会と審査会前置(都計法50条)
審査会の立法の背景

1968年に都市計画法が制定されたとき、開発許可制度による開発許可が多数なされることになると考えられた。それによる許可処分の誤りに対する国民の不服に対して、都市計画行政が迅速かつ的確に施行されるように開発審査会制度が作られた。その制度設計は、建築基準法の例に倣って、開発処分権者(開発許可処分庁:本事件の場合、東京都知事)の上級行政機関(上級処分庁:東京都開発審査会)において、行政機関としての最終判断をすることが出来るように開発審査会の規定がおかれた。
そして、行政上の最終判断(開発審査会の裁決)を得ないで、司法への提訴は出来ないこと(都市計画法第50条)とされた。

審査会の業務の実態
ところが、東京都開発審査会は、審査請求人の求めた「本件の開発処分が都市計画法に違反した処分である」とした審査請求において、根拠となる都市計画法及び建築基準法上の条文を上げて証明したにも拘らず、都開発審査会は審査請求人らの請求内容の審査をせず、訴えの根拠が法律上間違っていることの検討もなく、審査請求人に「原告適格」がないことを理由に審査請求を却下した。
しかしながら、開発審査は、上記のとおり、開発行政の適否を行政庁内部で最終的に点検し、自ら適正な行政を行うことを担保する制度であって、司法審査とは全く異なる。
したがって、当該開発許可に違法性が指摘されている以上は、法治行政の観点から、開発審査会は、自ら職権によって許可処分の違法性の審査を行うべき職責がある。開発許可処分に違反がなければ、原告適格者自体は存在しない。そのため開発審査会は開発処分自体の違法性の有無が審査されなければならない。
当該処分の違法性が審査請求されているにも拘らず、審査請求内容を審査せず、請求人が行政訴訟を出訴し得るか否かの資格とされる「原告適格」の有無を問題として却下することは、開発許可処分の違反か否かを闇に葬ることになり、都市計画違反を容認することになり、都市計画法第50条条の立法趣旨に照らして許されない。

(6) 原告適格(行事法9条)
都市計画法に照らして違法な開発許可、又は、違法な疑いのある許可が、都市計画法第50条に照らして、そのまま放置されてよいわけがない。
しかし、これまでの裁判所における審理もまた、開発審査会の審査同様、まず、なされるべき「開発許可処分が都市計画法に照らして正しく行われている」かの原告の求めている「法律の適正施工を実現するための審理をせず、原告適格の審査を中心に不毛の審理を行ってきた。
そして、開発許可処分が違反であるという法律を根拠に置く合法的な判断なしに、原告適格の存否のみを審理しただけで、本案の審査を真摯にせず、訴えを却下した。その後、訴えを却下することを正当化する説明を、判事の恣意的判断で補強することにより、違法な行政処分を容認してきた。
国家と国民との社会契約としての憲法に照らし、行政が適法に施行されていることを司法がチェックするというのが行政訴訟制度の趣旨である。原告適格を有しないと判断された行政事件では、「行政処分の違反があっても、その違反処分は容認してよい」と事実上容認するものであって、法律の適正な施行を求める国民の司法に対する信頼を裏切る裁判といわざるを得ない。

(7) 開発許可と建築確認全体構成(都計法29条から37条、建基法6,7条)
計画許可制度と開発許可制度
わが国では、大正8年に都市計画法と市街地建築物法が「姉妹法」として制定されて以来、日本以外の国で都市計画行政1つの行政としてなされていることが、都市計画法と建築基準法による2つの行政として行われてきた。
英国の都市計画法による計画許可制度に倣って1968年に取り入れられた開発許可制度は、日本では次の4段階に分解して都市計画法と建築基準法とに取り入れられた。

開発許可処分(都市計画法第29条第1項)
まず、都市計画法の「開発許可」では、第29条から第36条までの一連の行政事務を完了させることにより開発許可の目的が実現することになっている。つまり、それは、「予定建築物の敷地」が都市計画決定された土地利用計画に適合し、かつ、既存の都市環境にしわ寄せしないものであるという「都市計画決定への適合」と「既存の都市環境に調和」した開発計画が図られていることの「計画」の審査に基づく開発行為実施の着工の許可(第29条)がなされる。
その後、開発許可された工事が完了した段階で、開発行為が開発許可どおり実施されたことの工事完了検査を行い、検査済み証を交付し、完了公告(第36条)がおこなわれる。これら開発計画が開発許可の基準に適合しているから開発行為を始めてもよい(都市計画法第29条)とする段階から、開発行為が開発許可どおりに完了して予定建築物を建築させてもよい(都市計画法第36条)までの一連の過程を経ることによって、予定建築物のための敷地環境は整備されたことになる。開発許可に関する一連の行政事務を完了して、初めて建築基準法による予定建築物の建築確認ができる段階に入れることになる。

確認処分(建築基準法第6条第1項)
建築確認は、開発許可が終わってからでないとその行政事務を開始してはならず、建築主事のなすべき確認事務(建築基準法第4条)は、予定建築物の計画が建築基準関係規定に適合していることの計画の確認(建築基準法第6条)により、同法第6条第14項による建築工事の着工が始まる。
予定建築物の計画に対する確認事務は、まず、その敷地が「開発許可」どおりできていることの確認を含み、建築計画が建築基準関係規定に適合していることが確認され、確認済証が交付(第6条)され、建築工事に着手してよいことになる。
その後、建築工事に入って、実際の工事が「計画確認」段階と変更しなければならないことは建築工事では一般的に発生することであるので、軽微な変更に関しては設計変更のための確認申請をしなくても、その建築工事が建築基準関係規定どおり完成していれば良いとされている。建築工事が完了したとき建築主からの完了報告に基づき、その工事が建築基準関係規定に適合していることに対する建築主事の工事検査済み証の交付(建築基準法第7条)を受けて、建築物を供用開始できるまでの行政事務が確認事務に含まれている。建築物が建築基準関係規定に適合していることの確認(建築基準法第6条第1項)には、計画確認(第6条)から工事確認(第7条)までが含まれる。

(8) 広義の確認と狭義の確認(判例と法律)
これまで裁判所は、開発許可処分、または、建築確認処分に関し、開発計画の許可または建築計画の確認によって、開発許可の目的とする開発許可に適合した開発行為が完了していなくても、又は、確認処分の目的とする建築基準関係規定どおりの建築物が完成していなくても、開発許可処分または確認処分としての計画段階の行政処分で行政行為は完結したという判例を出してきた。
そして、開発許可における開発行為の完了公告、または建築確認を受けて以降になされる建築行為は、いずれも開発許可処分または確認処分と独立した行為であるとして、都市計画法第36条による完了公告の処分がなされた開発許可または建築物の工事検査済証の交付された確認処分に対し、不服審査請求をすることは出来ないという行政法の目的、文理解釈および実務と乖離した裁判を行なってきた。
そこで、これらの法律違反の判例が、「法律に優先する判断」として、その後の行政事件の司法判断をゆがめてきた。「無理を通して、道理を引っ込めさせる」間違った最高裁判所の判決が都市計画行政及び建築行政をゆがめてきたのである。

2.都市計画法と建築基準法の姉妹法の関係
(1) 土地利用計画に関する都市計画法と建築基準法(都計法8条、建基法3章)

土地は私的に所有されているが、その都市空間は社会的に利用されているため、土地の所有権と都市空間の社会的利用の調和を図るため、都市空間の社会的利用(土地利用計画)については、都市計画区域内の住民の合意により、都市計画決定をし、土地の所有者が「排他独占的に利用できる空間と土地利用」と、それ以外の「社会的に利用が保障されるべき空間」とを、「都市計画決定と建築規制」の両行政により、その実現を強制的に守らせることにしてきた。
そして、都市計画決定内容を確実に実現するために、都市計画区域内に存在し、又は、建築される建築物に関して、その建築物と敷地との関係を建築基準(建築設計指針)として建築基準法第3章に定めて、その基準を強制規定として遵守させることで、都市計画決定で定めた都市計画区域内住民のコンセンサス(合意)を実現しようとしている。
その都市計画を強制的に実現する都市計画決定という都市計画鋼を根拠とした住民の合意で決められる一種の立法権公権力を「計画公権」(「高権」ともいう。)という。そして、計画公権は「私権を拘束できる権限」とされ、都市計画法及び建築基準法の強制法を担保する権限であり、その「計画公権」で結ばれる両法の関係を「姉妹法の関係」と呼んでいる。
都市計画決定で定めた「用途に関すること」の内容は、「土地利用計画」を指しており、都市計画法第8条で定める「地域地区」に応じて建築基準法第3章で定められた用途、建蔽率、容積率、建築物の各部分の高さ等の規制内容が、土地利用計画の具体的な内容となっている。都市計画決定を実現するために、建築基準法第3章では、建築物ごとに固有の敷地を定め、その敷地は幅員4m以上の道路に2メートル以上接し、かつ、各敷地と建築物との関係を建築基準(建築設計指針)として定めて、それを強制的に遵守させることで、都市計画決定内容の実現を図ってきた。
都市計画法第29条に違反して開発許可権者を僭称してきた渋谷区長が一貫して主張する、開発許可の基準における「用途」とは建築基準法第48条でいう「建築物の用途」を意味するという解釈は、都市計画法と建築基準法の姉妹法の関係を理解していない間違った解釈である。

(2) 「地域地区」(都市計画法第8条)と都市施設(都計法11条)に対応する建築基準法第3章規定と建築基準法86条
都市計画法と建築基準法との基本的な関係は、都市全体の都市計画決定された基本計画(都市計画違法第8条で定める「地域地区」として都市計画決定した土地利用計画)を、個別の建築物と敷地との関係として、建築基準法第3章規定を強制的に遵守させることで実現するものである。
その例外として、都市計画法第11条第1項第8号に定めた「一団地の住宅施設」がある。この規定は、「一団地の住宅施設」が都市計画決定された地域地区(第8条)およびそれを実現する建築基準法第3章の規定と同等以上の内容の品質を持つ都市施設(都市の面的環境)として総合的一団地として計画されて都市計画決定された場合には、建築基準法第3章の規定に縛られないで、建築基準法第6章雑則第86条で個別に審査して建築することが出来るとしたものである。
都市計画法第11条第1項第8号で定める「一団地の住宅施設」のうち、都市計画決定をしていないものに関しては、計画公権が付与されていなく、建築基準法第3章の規定の適用を免れることはできない。
そのため、建築基準法第3章規定を適用するか、第6章を適用するかは「都市施設としての都市計画決定をするか、いなか」の2者択一であって、その両方の規定の都合の良い規定を選択的に採用し、適用することは、法律の構成上(文理上)ありえない。
然るに、本件では、都市計画決定されていない「一団地住宅施設」に対して、処分庁は、間違った行政実例を根拠に建築基準法第86条の規定を適用できるとして、本来適用されるべき建築基準法第3章規定を蹂躙した。それでいて、今度は高容積率を実現するために、唐突に、建築基準法第3章第59条の2を根拠に作られた「総合設計制度」による緩和措置を利用している。同法第59条の2は、都市計画決定された範囲でしか適用できない規定である。
このような法律違反が横行するようになった理由は、小泉内閣の規制緩和を政治目標にした法律改正を、都市計画法と建築基準法の「姉妹法の関係」を無視して、ばらばらな規制緩和を法律の構成を改めずに矛盾した形で実施したことによっている。
建築基準法第3章の規定は、都市計画決定により遵守を義務付けられた「計画公権」実現の手段である。その第3章の規定を根拠に、都市計画決定された地域地区(都市計画法第8条)に関する都市計画決定された事項を、建築行政で実施する施工主体が、特定行政庁である。しかし、本件では、特定行政庁(渋谷区長)は、都市計画決定された内容(予定建築物ごとの敷地が幅員4m.以上の道路に2メートル以上接していること、第2種低層住居専用地域の高さ限度12m、建蔽率60%、容積率200%、道路幅員に対する建築物の高さ制限、その他)、による制限を、「特定行政庁による例外許可」で蹂躙する総合設計制度の緩和が実施された。
建築基準法第59条の2は、建築基準法第3章の規定であり、「一敷地1建築物の原則が守られるべき建築基準法第3章の規定である。そこに第86条(第6章)の都市施設として都市計画決定した場合の「1団地住宅施設」の規定を適用するという法律の文理上ありえない規定の適用をしたものである。
小泉規制緩和により、準則とし「国土交通省で纏められた総合設計制度」は、特定行政庁の権限で都市計画決定された内容に、法律上の根拠(計画公権)を持たないで穴を開けることが出来るとしたものである。この規制緩和は、都市計画法と建築基準法との姉妹法の基本的な関係、つまり強制権の根拠となっている都市計画決定による「計画公権」を蹂躙し、破壊したものである。

(3) 開発許可制度のモデルとなった英国の計画許可
英国の計画許可は、あくまでも既存市街地の都市環境を守ることを前提にした上で、都市計画決定されたマスタープランを尊重し、かつ、既存の都市環境にしわ寄せをしないという制度である。計画許可を実施することについて、計画許可権を有する行政庁は、開発地周辺住民の意見を聞いて行政機関が許可を与えるもので、あくまでも既存都市計画区域の住民の権利を優先する形で運用されている。
わが国の都市計画法に取り入れられた開発許可制度の条文自体は、英国の計画許可の規定を十分忠実に取り入れているが、実際に日本の都市計画行政での運用は、住民の利益(既得権)を犠牲にして、開発業者に住民の既得権を侵害する不正な開発利益を奪う計画が不当な開発許可により、不正利益実現が幇助されている。
単的にいえば、開発許可制度にかかる法律条文の違反が、法律上の開発許可権を有しない渋谷区長により、開発許可の基準に違反する開発計画に行われたことで実施に移されてきた。その度重なる違反を東京都開発審査会のみならず、法律の番人であるはずの東京地方裁判所も法律を蹂躙して、不正利益の追及のための行政法違反を容認してきた。

3.都市計画法及び建築基準法による利益
(1) 都市計画上の利益と計画公権(行政法の強制権)

都市計画決定は、長期間にわたって都市計画区域内の関係者を強制的に縛ることで実現するものであるため、その計画の実現は、私権を拘束できる高い公共性があるとされ、その権限(計画公権)を背景に、建築基準法第3章の強制権が建築基準法に付与されている。都市計画法または建築基準法第3章規定に違反した建築物は、その実現によって、すぐに、自動的に、相隣に被害が及ぶものばかりではない。しかし、それらの違反行為の総体が、都市機能を破壊し、都市景観を乱し、耐震火災や集中豪雨といった都市災害において重大な人命や財産の損壊や都市環境と都市景観の破壊をもたらすことになる。
都市計画決定および建築基準法第3章規定が国民に保障している利益は、100年に一度発生するかどうかという大都市災害に対して、国民の生命財産の安全や、個々の建築活動を積み重ねて築き上げる都市文化環境の形成という長期的な視点に立った利益の実現であって、個別の開発行為や建築行為が相隣に及ぼす直接的な影響を 問題にするものではない。

(2) 都市計画法及び建築基準法が保護する利益と緊急性(耐震偽装事件との関連)
耐震偽装事件で社会的に最も問題にされた、「建築基準法で国民に保障している安全性」の判断は、100年に1度発生するかどうかという関東大震災級の大震災事故に対しての国民の安全を問題にした。
その理由は、建築基準法という行政法の期待する安全性という公共の利益に関して、100年周期の地震に対する安全を確保することを公益であると考えたことによる。耐震強度が不足する建築物が事故を生ずる蓋然性、可能性は決して高くはない。それであるにも拘らず建築基準法に抵触する建築物を取り壊し、または耐震改修させることを強制できる公共性の根拠は、建築物が社会的に利用されるものであることをおいてない。
都市計画決定された内容(都市計画法第8条で定めた「地域地区」土地利用計画)や、都市計画決定を背景にした計画公権に裏付けられた建築基準法第3章を遵守するべきことの利益および不利益は、開発許可または建築確認の対象の直接的な影響による利益を問題にしていない。
そこで問題にしている利益は、都市計画が実現する都市環境が提供する利益を問題にしている。100年に一度発生するかもしれない関東大震災級の地震に対して国を挙げて耐震対策が取り組まれるのと同じスケールで都市計画決定された内容の実現が図られなければならない。

(3)都市計画法及び建築基準法で国家が国民に約束した計画の実現
都市計画法は、視点を変えてみれば、防災都市計画の実現であり、防災計画として都市市計画決定された内容は、私権を拘束できる計画公権で実施することができるとされて、土地収用法の事業認定を受けたと同様の拘束力を持っている。都市計画決定された内容の実現を優先すべきという法律構成に違反して、都市計画決定を遵守しなくても、司法も行政も「大して大きな不利益を与えては居ない」といい、都市計画区域内住民が、「都市計画決定の違反による不利益」を訴えても、司法も行政も「原告適格はない」という。それでは国家と国民との契約として定められた行政法は、国家により蹂躙されていることになる。それではもう法治国ではない。
以上


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