メールマガジン

メールマガジン第367号

掲載日2010 年 8 月 30 日

メールマガジン第366号(2010年8月30日)
皆さんこんにちは!
今年の夏は本当に暑い日が続いていますが、体力が仕事をする上でも基本となりますので疲労がたまらないように気をつけてください。

「輸入住宅にこだわった人」は長続きできる
9月1日には、グローバル研修企画とHICPMでの共催で、国内研修ツアーとして、つくばの大創(丸山社長)のこだわりの仕事を見学に行くことにしました。
(バス席にまだ若干の余裕があります。参加ご希望の方は、GKK小林の電話番号:03-3230-4876、HICPMの電話番号:03-3230-4874まで)

この見学の背景には、7月に実施した神奈川県鎌倉のソウケン(小畑社長)の国内研修ツアーで、「こだわりの輸入住宅」が大きな成果を上げていたことを実感できたことにあります。多くの工務店が、猫も杓子の輸入住宅に取り組み、政府(建設省と通産省)も輸入住宅に力を入れ、JETROを中心に輸入住宅が政府主導で取り組まれました。
しかし、あれほど元気だった「輸入住宅」は、「夏草や、兵どもが、夢の跡」で、今の日本では輸入住宅が活気を持っていたことは嘘のような環境になっています。その中で、消費者の誇りに思える輸入住宅にこだわってきた工務店がしっかりと地に根を生やしていることを知り、研修対象にしたのです。

プラザ合意と輸入住宅の取り組みの経済環境
1985年、中曽根首相の時代に、激しい円高に見舞われ、緊急に、米国のプラザホテルで先進5カ国首脳と中央銀行総裁が集まり、金融秩序の再編成のプラザ合意がなされました。その結果、合意したその日1日で、約20円近く対ドル価格が上昇しました。そして、1ドル240円くらいの為替交換比率が、1年間で一挙にⅠ20円くらいにまで上昇し、さらに、その後、1ドル 80円台近くまで円高は更新しました。円高が急激に進んだにも拘らず、大手商社を通しての建材価格は、急激な円高を反映させず、商社の利益となっていたので、為替変動による円高差益の還元が社会的に問題になりました。円高環境は輸入品が安くなるので輸入促進になります。

建材から住宅への並行輸入
プラザ合意を受け、日本は輸入促進をすることで国際的なバランス形成に努力するということになりました。日英首脳会談後、英国のサッチャー首相から「スコッチを輸入するよう」に頼まれた中曽根首相が、奥さん同伴で東京のデパートに買い物に出かけ、なぜかフランスのネクタイを購入した記事が新聞を賑わしました。その記事を読んだ住宅金融公庫の河野総裁は、首相がそれほどのパフォーマンスをするならば、それに沿った取り組みを金融公庫としても進めなければと考え、輸入住宅の推進に取り組むことを決定しました。最初は輸入建材の並行輸入(商社による輸入によらず、それと独立並行する流通により、直接外国から為替変動を反映して安く建材を輸入する方法でしたが、日米住宅価格比較をしてみると、ほぼ同じ仕様の住宅を、米国では日本の半額で供給できると判断されたため、住宅の丸ごと輸入がなされることになりました。神戸市住宅供給公社によるSV(シアトル・バンクーバー)ビレッジは、その象徴的モデル事業でした。「円高差益を消費者への還元」をうたって進めたSVビレッジは、目標価格で建設することはできず、事業主である神戸市供給公社は大赤字を計上し、その後再び輸入住宅事業に取り組むことはできませんでした。

円高急激更新にもかかわらず、輸入住宅ブームとならない事情
最近の円高は、1ドル120円台から1ドル80円台までになり、ほぼ50%近く円高が進み、1985年当時を思い出させる状況になっています。しかし当時輸入住宅ブームに乗って多くの企業、Fホーム、M物産インターナショナルを始め、雨後の筍のように多数登場しましたが、最高160億円の赤字倒産を起こした会社を筆頭に、多数の会社が輸入住宅に取り組んで失敗しました。
そのため、輸入住宅の取り組みは悪夢になっていて、円高がこれほど昂進しているにも拘らず、輸入住宅の取り組みは芽を吹き返そうとしていません。
輸入住宅の取り組みは、住宅を求めている消費者の要求に応えるためとしてではなく、政治的または行政的要求が先行し、それが住宅供給者の利益追及と結びつく形で上意下達のやり方で、国策として取り組まれたため、「何が輸入住宅の取り組みか」は、輸入住宅ブームが去った後まで明確にはなりませんでした。

特に、SVビレッジを推進した住宅金融公庫及びその下で設計事業を拡大したI建築事務所は、アメリカ合板協会(APA)等と協力して、リゾート開発など業者の金儲けになる事業に輸入住宅デザインを使うことでけん引役を買い、「輸入住宅は住宅を高く販売できる小道具」として使っていきました。I事務所とM物産インターナショナルの一体的な輸入住宅の取り組みはその代表的失敗例となり、M物産はその信用にかけて尻拭いをしました。それが、再び円高になったとき取り組めなくなっている理由です。

刑事事件となった「輸入住宅」経営
以前、輸入住宅が下降線をたどり始めたとき、「輸入住宅」という名前の会社経営が悪化し、資金繰りが厳しくなりました。そのため、営業圏を拡大し、広い地域からの需注を拡大し、契約金による資金調達を図ろうとしました。資金は集まったのですが、営業権の拡大で逆に経営効率が悪化し、悪循環の拡大再生産にはまろうとしていました。
そのとき、NHKがそれを「詐欺である」と報道しました。その中傷報道のために、契約交渉中の顧客が一挙に離れ、資金繰り不能になり倒産に陥った例がありました。経営者は、詐欺罪として訴えられました。 

当時、被告は、「詐欺の意図はない」と東京高等裁判所に控訴していました。しかし、裁判所は殆ど被告の説明に耳を貸そうとしませんでした。絶望の中でこの業界で公平な判断ができる専門家を探して、私に裁判所での証人になって欲しいと助けを求めてきました。
事情を聞いてみると、当時の輸入住宅に取り組んでいた企業と基本的に同じ経営をやっていることがわかりました。
この企業の経営自体に問題があるとしても、「赤字拡大で倒産することを承知の上での営業である」として詐欺罪で起訴した検察は起訴権の乱用であると考えました。大手輸入住宅会社との比較で、同じことをやっていて容認されている会社は多数あり、この会社だけが、「赤字の拡大は倒産せざるを得ないことと認識していたはず」として、特別に、詐欺を理由に起訴することは、法の上の平等に反する扱いです。しかし、私には被告の証人としての発言をする機会は与えられませんでした。この場合も弁護士が弁護士料をとることが目的の弁護で、被告の立場になっていませんでした。

その会社では、副社長の1級建築士が技術的なことを取り仕切っていました。検察庁は世論を操作したNHK報道に辻褄をあわせた結果とするため、業界の実情を調べもしないで、副社長を検察の意図通りの事件の筋書きに従うようにたらしこみました。検察官は副社長から検察官の作成した起訴理由どおりの口述調書を取って起訴猶予としました。そして、社長(被告)には、副社長の証言を根拠に4年の懲役を要求し、裁判所はその言いなりの判決をしました。ひどいやり方です。
その頃、日本と米国を繋いでの輸入住宅の取り組みと深く関係していたKさんに、私から「被告の仕事のやり方」を、多くの輸入住宅に関係した経験を生かして検討してもらうよう依頼しました。Kさんの判断も、基本的に私と同じで、「当時のほかの輸入住宅会社のやっていることと何ら変りはなく、もし彼が犯罪者になるならば、殆どの輸入住宅会社は同じ罪を着せられる」という結論になりました。
被告はKさんに理解してもらえたことで喜び、仮に有罪になっても、出獄したら一緒に仕事をしようと2人は夜遅くまで酒を飲み交わしたそうです。しかし、不幸にも、その翌朝、Kさんは脳梗塞で帰らぬ人にとなってしまい、Kさんとの未来の関係はすべて消えてしまいました。

「輸入住宅はデザインである」にこだわった丸山さん
大創の丸山さんは、輸入住宅の取り組みが始まった当時から、高橋憲一郎さん(現在建築設計事務所を主宰)を設計者に選び、一貫して輸入住宅に取り組んできました。高橋さんは建築設計が本業で、かつて、COFI(カナダ林産業協議会)の技術指導者として全国的に指導して回り、特に北海道の十勝では現在のツーバイフォー住宅の取り組みの礎を造ったともいわれる人に指導され、丸山さんは消費者の利益(生活を豊かにできる住空間作り)を考えるデザインにこだわったツーバイフォー住宅に取り組んできました。
高橋さんもそうですが、基本的に消費者目線で仕事をする人たちです。丸山さんは輸入住宅の魅力はそのデザインにあることを早くから認識し、消費者にとって魅力を感じる輸入住宅は何かということを消費者の目で見ようと取り組んできました。

HICPMの会員として熱心にHICPMセミナーに参加されるとともに、HICPMが企画するGKK(グローバル研修企画)との海外研修ツアーには何度か参加されました。そして実際に欧米で長い時代にわたって国民から愛されてきたデザインを熱心に勉強してこられました。建築デザインの勉強は、書籍を通して理論的に勉強することも重要ですが、実際に建築物として、街並みの住環境のにない手として建築されている住宅を見て、それらの住宅が長い歳月に亘って住民たちに支持されている理由を考える、それほどよい学習はないと思います。漫然と街並みを見て歩くのではなく、人びとに愛されている街並みをそこに住んでいる人たちと住宅との関係でその対応関係を理解することが重要です。

つくばの研修ツアーの目的
今回見学する住宅はつくばという土地柄、海外生活経験者や、海外訪問経験者の割合が非常に高く、輸入住宅を見る目の肥えた方々が多数生活しているところです。住宅市場で、大創の丸山さんが、どのように顧客の支持を得てきたかを、建築した住宅との関係で見ることが研修の目的です。
その中の一軒の住宅は、日本でも数少ない国際的な場で大活躍をしているトランペット奏者の住宅です。この音楽家は、自分の納得の行く住宅を造ろうと約30社ほどの輸入住宅関係会社を訪問し、その仕事を見て、最終的に大創を施工会社として選定しました。建築主の希望と大創の得意とする仕事とがうまくあったということです。
私自身これまで何度か大創の仕事を見てきましたが、丸山さんは建築のディテールにまで、消費者の立場で、やり直しをいとわず、施工者自身としての納得の行くところまで追及するというところが優れたところだと思います。しかも、一人よがりの納得ではなく、そのデザインの起源や発展の生い立ちも考えて、実際にやられている事例に忠実に従おうとするところが立派だと思います。私の指摘に対しても、具体的事例を探して確認して取り組むという姿勢で、鵜呑みで仕事をしません。

輸入住宅はデザインの輸入
HICPMとGKKがこれまで行ってきた国内及び海外住宅研修ツアーは、視覚的な学習として実際に社会で高い評価を受けてきました。その事例をごらんいただくとともに、それらの住宅や住宅地がどのような社会的、経済的、歴史的背景を持って造られたかを説明し、住宅は民族の歴史文化資産として創らなければならないことを理解していただくのが、研修ツアーの目的です。
輸入住宅をJETROが定義して、「使用材料のうち60%以上を輸入建材を使用したもの」といった扱いは、輸入建材促進のJETROとしては当然の定義かもしれません。しかし、消費者の観点では、仮に100%国産材を使用したとしても、その建築様式が海外のデザインであれば、それは消費者の観点からは輸入住宅です。つまり消費者の観点からの輸入住宅とは、空間文化輸入の住宅ということだからです。
丸山さんのこだわりはまさにそのデザインにあったのです。日本人は世界中から優れた文化を貪欲に取り入れてきました。そして、それを自分のものにしてきました。

さて9月2日(第一木曜日)の住宅地経営の「三種の神器」のセミナーは、住宅地計画の歴史を振り返り、OHPの映像で視覚的に理解してもらえるセミナーにしようと計画しています。日時のご都合のつく方はどうぞご参加ください。HICPMのホームページに詳細が掲載されています。
NPO法人住宅生産生研究会 理事長:戸谷 英世


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