メールマガジン

メールマガジン第372号

掲載日2010 年 10 月 4 日

メールマガジン第372号(10月4日)

皆さんこんにちは

「住宅革命」

今日はHICPM会員の真木健一さんの著作「住宅革命」のご紹介をしたいと思います。

この本書は、1年ほど前から執筆に取り組まれていたもので、途中で出版社の社長から「内容を見て欲しい」という相談を受けて、読むことになったものでした。著者は不動産関係の仕事をいろいろ経験した後に、住宅建設に取り組んだという方です。これまでの人生で住宅産業の矛盾をしっかりと経験し、それではいけないと考えたことがこの著作のきっかけになったようです。

消費者の視点の住宅産業情報公開本

出版社から渡された原稿の印象は、住宅産業の裏(闇)を見てはいるが、それに対する非難が断定的に書かれていて、この本が出版されることは真木さん自身の期待とは逆に、本人の誤解に繫がると感じ、その著作を徹底的に読んで、厳しく批判しました。

あまり厳しく批判したので、それっきりになってしまったかと思っていたのですが、突然出版社のほうから刊行された本が送付されてきて少し驚きました。早速、全体を読み通してから、再度全編をしっかり読んでみました。著者の考えていることが非常に分かりやすく書かれていて、本としては成功していると思いました。

業者にも読んで欲しい本

本書の記述内容に関しても、以前の下見した原稿とは違って、素直に住宅産業の矛盾を、設計、施工、販売、建物取引などの業ごとが抱えている問題の広がりを、事実によって明らかにして、消費者に正しい判断をするような情報を提供した本です。本書が読者として予定されている消費者には分かりやすい本として書かれていますので、専門業者の方々もやがて消費者が知ることになる住宅産業の醜い姿が明らかにされている本という意味でぜひお読みになるとよい本です。しかし、専門家向けの本ではありませんので、本書から建設業者としての専門知を提供する教科書として役立てる本ではありません。

本書は次のステップへの案内

僭越な見方になってしまいますが、住宅産業の矛盾を現象面で捉え、理論的な因果関係の究明としてできていないところも少なからずあり、現象面で批判されている業者からは、「私もやむを得ずやっているので、みんなもやっていることで、きれいごとばかり言わないでくれ」といった反発もあるかもしれません。

また、リースホールドなどその歴史的な経緯や英国の状況など情報不足から正しく認識できていない部分も少なからずあり、この書のだけからは、現行の定期借地権の抜本的な批判になってはいません。しかし、専門性のある人達には、本書はあくまで、「何が日本の住宅産業の問題か」を考える糸口を提供していると捉え、適切な問題提起のできている本と受け止めて、問題は本書で解決がされているわけではなく、著者自身がこれから取り組んでいこうとしている「問題の提起」であると考えてみられたらよいと思います。

住宅産業中心の見方ではない本

先日、あるハウスメーカーの中堅どころの商品企画をしている技術者に、「住宅メーカーの実際の粗利が60%程度以上になっている」という話をしたところ、ハウスメーカーは住宅展示場経営業者に高い出展料を取られていることから、「ハウスメーカーはその犠牲者である」と、本気になって抗弁しているので驚いたことがあります。真木さんの著書は、その点はるかに冷静で、「消費者に不当な負担をかけている」という視点で書かれているため、この本を読んでいて、そのようなフラストレイションを読者に感じさせません。

政府の住宅政策を窺い知ることのできる本

この本は、日本の政府の不合理な政策の欠陥を基本的に問題にしていません。しかし、本書は、消費者の利益を守るという妥協のない視点があって、その視点から問題を見ているところに、この本を積極的に評価するべきです。本書自身で政府施策に対する直接批判をしていないだけで、書かれている住宅産業が抱えている矛盾の原因は、政府自身の住宅政策にあることに気付かされるはずです。最終的な読後感としては、日本という国は「無法地帯だ」という感想です。行政は何もしないで国民を守らないというだけではなくて、官僚が筆頭になり、住宅産業界を抱き込んで、国民を食い物にしているということです。こんな国に住む住民は、ばかばかしくて税金を払っておられないと感じるはずです。しかし、この本を読んでも、日本の住宅政策の体たらくに対する憤りを感じないとすれば、その人は事大主義者で、長いものに巻かれろという生き方をしているに違いありません。

わが国の住宅政策の狂いの現象を提起した本

その誤りの基本に、土地と建物との科学的関係を間違って規定している認識の誤りがあります。政府は、この間違った認識を利用して、「住宅産業が国民から不正利益をまきあげる手段としている」ことを容認しているのです。たとえば、住宅を土地と一体的な「土地の加工形態」と見る社会科学的認識がなされていないことを悪用して、政府と住宅産業界は共謀して、「住宅を土地と切り離しても、その効用を評価できる」かのような見方をして、住宅価格を操作している詐欺行為、は批判されても仕方がないことです。また、本書の中に登場する個別の記載内容についても、この1冊の中で盛り沢山に取り上げたため、核心に迫れなかった問題は、読者が「本書から提起された問題」として考えればよいのです。

踏み絵につかったら面白い本

本書は、住宅を購入しよう、注文しようという人達に対し、「日本の住宅産業を見る目、付き合い方」を提起した本という意味で、消費者だけではなく、住宅産業関係者が読んだらいい本であると考え、お読みになることをお勧めしたい。この本を読んで、消費者の方々に住宅を購入する前に「一読の価値のある本である」とお勧めできる業者は、まともな業者に分類されてよいと考えます。逆に、この本を「消費者に見せたくない」と考える業者は、政府の進める住宅政策に盲従している業者です。此処で著者が、批判し、非難している本当の相手こそ、政府の住宅行政であることを見抜けないとしたら、その人は消費者の立場で仕事をしている人ではありません。

(戸谷 英世)

「住宅革命」著者:カーサプロジェクト代表取締役 真木健一、

出版社:WAVE出版、定価¥1400円


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