メールマガジン

メールマガジン第374号

掲載日2010 年 10 月 26 日

メールマガジン第374号(10月19日)

皆さんこんにちは!

10月14日HICPMとGKKとの共催で「中部地区の工務店経営研修ツアー」を実施いたしました。HICPM会員で、レンガ住宅に特化して事業を順調に展開している竹内合名会社(竹内)社長と、企画建売住宅(佐倉社長)として業績を上げている諸戸産業(株)の2社の事業をいずれも社長の解説を受けながら見学研修しました。参加者は皆それぞれの立場で大いに参考になったことと思います。

この2社は事業を発展させる上での際立った共通点と相違点があることが分かりました。相違点としては、前者(竹内合名)は、営業としてはきわめて消極的な取り組みしかしていないのに対し、後者(諸戸産業)は、積極的な営業をしている取り組みです。共通点は、いずれも自社の能力を発揮するという主体性を持って取り組んでいることです。

住宅市場全体の中で、自社の力を発揮できる限られた市場に絞り込んで、自社の能力を発揮するという主体性が、市場から尊敬される営業を実現させているという結果になっています。

竹内さんの場合には、本格的に建築を学んできたわけではないという自分の力を理解して、これまでに世界の国々を見聞した経験と、消費者のニーズの動向を検討して、レンが建築に絞って取り組んできたところに特色があります。3匹の子豚の話がありますように、レンガ建築の持つ安心できる住宅のイメージを営業に上手く活かしているように思えました。竹内さんの娘さんが、口にしていらっしゃる言葉「今住んでいる家が、お父さんの造っているレンガ住宅よりもっと好き」という意味を、竹内さんが理解していらっしゃると思いますので、次のようなアドバイスをしました。

奥さんと娘さんを同道されてオランダやベルギーを旅行し、「お父さん、こんなデザインの住宅が私の好きな住宅です。」と言ってくれるようなデザインを見つけてお建てになったら、もう一皮向けたホームビルダーになれると思います、と、お伝えしたところです。

今、竹内さんの娘さんは、100年以上も住みなれたご自宅の住宅が大好きで、お父さんの造っている住宅にはいま一つなじめない、と言っておられるようです

実は私も娘さん同様、竹内さんのご自宅が気に入っています。竹内さんのところモデルホームとして造った在来工法のレンガ住宅に泊めてもらったことがありますが、あのモデル住宅はこれまでの竹内さんのおつくりになったレンガ住宅の中では最もよい住宅だと思いました。

バスの中のセミナーで、デザインの話をしました。「日本の誇るデザインとはどんなデザインですか」という話です。多分、多くの日本人は、「法隆寺こそ日本の代表的なデザイン」と言うでしょう。しかし、実は法隆寺のデザインは、アレキザンダー大王がヘレニズム文化をインドに持ち込んだときに伝えられたギリシャのデザインだったのです。インド人が釈迦の教えに従って、仏陀没後300年間、偶像となる釈迦像を造ってこなかったのです。そころが、ギリシャ彫刻を見たとき、「これこそ釈迦の姿だ」と、ギリシャ彫刻をモデルに釈迦像が作るようになったといわれます。

ペシャワール地方の古い仏像がギリシャ彫刻を思わせるのはそのためだといわれています。このギリシャ彫刻と一緒にパルテノン神殿がシルクロードを通って日本の法隆寺の建築につながっていると考えられています。

1984年のシカゴコロンビア博覧会の際、日本政府に「日本を代表する建築物」の出展依頼があったとき、日本政府は宇治平等院鳳凰堂の2分の一の模型をプレカット材としてシカゴに送り、2人の宮大工が展覧会場に作ったといわれます。

そのモデルとなった鳳凰堂は、寝殿造りの代表的建築で、部屋ごとに一棟の建築物として造られ、それを回廊で繋いだ中国の邸宅建築をモデルに、日本の当時の貴族がその邸宅として造ったものです。これらのデザインは「和様」と呼ばれています。「和様」とは、鎌倉時代に宋から禅宗文化が入ってきたとき、それ以前までに日本に入ってきた建築文化を総称して「和様」と呼ぶことにしたもので、その起源が日本にあったというわけではありません。

日本に固有の建築デザインがあるとすれば、これらの海外から輸入された建築物を日本の気候風土に合うように改良して洗練させた結果として創作されたものであり、オリジナルな建築デザインは海外から導入されたものと考えるべきです。

ライトは鳳凰堂を見てプレーリー様式のデザインを発想し、その里帰りと言われるものが帝国ホテルだったわけです。優れたデザインに国籍はないと私は考えています。

レンが建築は世界各国にあり、よいレンガ建築は世界中あらゆる人びとに高い支持を受けてきました。竹内さんのレンガ住宅の仕事は、いま発展途上段階にあって、奥さんや娘さんが感動するようなデザインに向かって成長し洗練されていくことを願っています。

レンガ住宅に対して、娘さんが夢中になれないのではなく、竹内さんのご自宅の住宅デザインに比べて、竹内さんが、今、お造りになっているレンガデザインの住宅は、奥さんや娘さんを感動させる力がないと考えるべきだと思います。

今回建築現場周辺に建築されている大手住宅会社や地元住宅会社の建築を見ていると、住宅購入者達は、企業の利益の食い物にされているという不愉快さがこみ上げてきます、

街並みを破壊する勝手な不調和なデザインを「差別化」と言って売り歩いてきたことがよく分ります。それらにくらべ、消費者の利益を重視して取り組んでこられた竹内さんのレンガの住宅は、その誠実な仕事を含んで、相対的によい住宅として評価されているようです。しかし、私は、レンが建築としてもっと洗練させないといけないと感じました。

諸戸産業の住宅は、すべて2戸以上の住宅を集団として建てられていることが成功している理由の一つです。集合している住宅は、それぞれ個性があって同じ住宅ではなく、違いのある住宅としていることで、購入者は「自分の住宅」という個性を感じることができるようになっています。それでいて複数の住宅が相互に共通のリズムを持ち、相乗効果を上げています。一般の区画整理地の住宅メーカーが、「差別化戦略」で建設してきた住宅は相乗効果ではなく「相殺効果」しかあげられない無政府状態の住宅となっていますが、それとは正反対の魅力を造っていました。

もう一つの成功の理由は、住宅の階高を思いっきり高くすることで、建築のボリュームを大きくし、同じ大きさの延べ面積の住宅に比べ、存在感をかもし出していること、住宅内にはロフト型式の空間に子供の寝室を作り、「ワイルドな感じと、意外性」を新鮮な空間イメージとして売っていることでした。さらに、ボリュームの大きさと、容積算定の床面積としてカウントしない実質床面積を作ることで、購入者に得をした感じを与える新しい空間造りに成功していることです。

中でも成功している最大のポイントは公園や河川、道路などの公共空間のボリュームを建築空間が映えるようにうまく利用し、「住宅は土地の加工物で、土地に住宅を建築することにより、建築物は土地そのものになり、土地と一体となった住宅不動産を立派にする」ことを実践した好、例と思います。

諸戸産業の住宅は、その住宅を好む人をはっきり意識して造っている住宅で、この住宅は万人を相手にするものではありません。諸戸産業という大山林地主の持っている信用が、前衛的なデザインに関心のある人たちに、興味をもって迎えられていると思います。

私のこれまでの経験から、この建築自体は、有名建築家同様の流行建築設計者の自己主張の強い作品で、欧米で言われているようなノスタルジアを感じることのできるデザインではありません。特にインテリア空間に関して、エクステリアのデザインのために、住宅からの眺望を犠牲にしている住宅は、安藤忠雄の「住吉の家」同様、「褒められるべき人は、この住宅を住みこなした居住者である」と言うことなのかもしれません。

住宅は人々の関心によって多様な住宅が登場して当然であると思いますし、住宅が都市の中に建てられた街並み景観を良く造ってくれる限り、それらの住宅はいずれも尊重されるべきと思っています。今回2つの工務店の仕事を見、そのいずれもがそれぞれの計画した住宅需要者から高い支持を受けていることは、それなりの合理的理由があることであり、それを学ぶことを重要なことだと思いました。

住宅産業関係者は、このような実物をできるだけ見学し、その計画意図やその結果を学ぶことによってこれからの社会が求めている住宅と自らの力を生かす途を見出すことができるものと考えます。是非、これからの研修ツアーご関心をもたれてご参加されるようお勧めいたします。 HICPM理事長 戸谷英世


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