メールマガジン

メールマガジン第380号

掲載日2010 年 11 月 29 日

メールマガジン第380回(11月29日)

皆さんこんにちは!
先週は住宅地開発関係の仕事でほぼ1週間忙殺され,久しぶりに実際の住宅地開発の仕事を、三つの事業計画者や開発事業者及びコンサルタントの立場で取り組むことができ、充実した時間を過ごすことができました。

貧しい日本の都市開発
私自身、かつて、住宅都市整備公団に都市開発調査課長として5年勤続し、公団の事業は事業者の利益本位の考えから抜け出せず、売却できればそれで居住者の要求に応えたことにして、居住者の生活をほとんどまともに考えてこなかったことを直接経験してきました。しかしHICPMで仕事を始め、世界の都市開発を実際に経験することにより、日本の都市開発を支える技術のみならず学問水準の低さと、住宅購買者に大きな損失を押しつける日本の住宅地開発技術の貧困さを痛切に感じてきました。
また、都市開発と住宅地開発を別の事業とする都市開発制度上の問題と、住宅地計画が生活者のことを考慮しない都市開発のレベルの低さをあらためて実感しました。
一言で言えば、土地と住宅とを別々の不動産とする社会科学的に間違った考え方を基礎におき、住宅購入者の生活を基本的に考えずに、計画上住宅地に見合わぬこけおどしの公園を造ったりして、専ら事業者の立場で、「顧客を騙して高く売り抜けようとする計画」が当然のようにやられていることです。
今回、私が相談を受けた住宅開発だけではなく、日本中のほとんどすべての開発がこれと同じ計画手法を使っていますので、ほとんどの業者はもとより、行政機関、学者・研究者、コンサルタントから住宅購入者までが、それをむしろ当然と考えているように思います。日本の図書館や書店と欧米のそれらとを比較してみれば、それぞれの社会で必要としている技術の程度及び内容が比較できます。

大手デベロッパーと住宅メーカーによる住宅地開発の貧しさ
来月からHICPMビルダーズマガジンに記事を連載していただく若本さん(当研究会会員)から、典型的な「宅地開発と住宅建設をばらばらにし、住宅を売りぬけ」同様の事例が広島でやられているということを聞きました。そこで、私から「その計画案の対抗案でも作ってみましょう」と、既存の宅地開発を前提に住宅購入者の利益を守る計画案の作業をしました。
そんな矢先でしたので、早速、その作業結果を下にした考え方を、新しくご相談を受けた事業にも応用できると考え、検討したところ、間違いなく適用でき、従前計画に比べ、はるかに優れた公園都市を計画することができるという見通しが立ちました。
その計画の前提は、これまでの計画に比べて同一規模の住宅を、住宅戸数として、50%以上を多く建設するという依頼主の要求に応えられるものです。
コンサルタントとしての相談をしてくれた会員会社に対して、地場に根を張って事業をしようとする限り、住宅購入者の利益を中心に考えることをしなければいけない、ということを、私は繰り返し申し上げました。
その結果、私の指摘したことを実現できる具体的な提案をして欲しいという要請を受け、早速取り組むことにしました。今回の事例は10ヘクタール程度の開発で、低層住宅による町としては、保育園、幼稚園、診療所、集会所、管理事務所、警察派出所、日用品店舗などを備えた近隣分区程度の規模の開発です。
小学校を計画する必要がなく、対外折衝も楽な開発です。この程度の開発は、都市開発の事業経験がなくても比較的取り組みやすい対象で、事業開発の関心を居住者の日常生活に一番近いところに絞って取り組める規模といえます。これまでの経過を大いに生かした計画を作りたいと思いますので読者の皆さんも期待をしていてください。

福岡市の都心での「ニューアーバニズム」による開発提案の作成
そこで検討したことを通して、その考え方を都心部の開発に展開できないかを考えて見ました。その結果、かつて、大建から相談を受けた福岡都心の高級住宅地にあった空き地を思い出し、HICPMが今顧問契約をして取り組んでいる大建の仕事で福岡に出かけたのを機会に、それとは別の計画で新しい検討をしてみようと思い、その土地を見せてもらうことにしました。
その土地は、かつて福岡県の大建で住宅開発の取り組みを始めようとしたとき、福岡県住宅供給公社の土地で、その事業は適当な提案がなく、計画自体が潰れた土地です。その土地が、「もし、開発が始められていなければ、再検討したい」と、松尾社長に現場へ案内してもらいました。
そこで、直接住宅地と周囲との関係を見て、その土地を私が構想していたニューアーバニズムの考え方で計画してみたらどのようになるかという検討をしてみました。
現地はマンションが林立するところで、低層住宅での対応は難しいので、米国のレイクランドや、メープルローンで知ることの出来たデュプレックスタウンハウス(2階建てテラスを重層する住宅計画)という「立体テラス」(専用の庭を持つ住宅)という考え方を取り入れて、纏めることにしました。
今回の福岡行きの主な目的は、大建の「荻の浦ガーデンサバーブ」が、開発許可が下りたので、工事に向けての詰めをする業務で4日間福岡にいました。そこで顧問としての検討業務が完了してから、毎晩、深夜まで福岡と新築のマンション地にある2,500平方メートルの土地でのニューアーバニズムによる都市住宅計画を考えました。草の江平面

公園都市開発の提案内容
寸法を間違って作図をしていたため、出来上がった検討案は、私自身満足できませんでした。そこで造った計画図が、寸法の違いでイメージ自体に狂いが生じ、誤解を招かぬように、松尾さんには作業図は見せないで、話だけにして、帰京後2日かけて整理しました。
開発計画として纏めたものの結論は、2,600㎡の土地に、鉄筋コンクリート造6階建て+ロフト住戸の7階建てで、住宅専用面積1戸当たり209平方メートルの住宅57戸、各住戸専用ガレージ(31㎡付き)です。
この開発計画の考え方は、大建が目下「荻の浦ガーデンサバーブ」で進めている計画内容と基本的に同一計画の内容・技術を盛りこんだ計画で、その計画は、凡そ以下のとおりです。
中央の大きなコート(庭園面積750㎡の中庭)を囲み、そこには各住宅の前を水路が流れ、中央の幅約20メートルの、高い樹木が植えられた公園にもその中央部を水が流れています。各住宅へは、水路のある歩廊からリビングポーチを通って玄関に入ります。
この住宅地で発生した雨水及び雑排水は、公園中央の土の山の中に造られた散水濾床の中で生物酸化により浄化され、住宅の前面歩道に計画された水路を循環します。当然その上部には芝と樹木で覆われた森が作られます。その水路の水は、庭園内の樹林や花木、草花等の植物へ給水し、炭酸同化作用と土壌からの水分の蒸散により気化熱を奪い、住宅で囲われた微小地形をエコロジカルな環境に創りあげています。水路が住宅地全体を循環し、住宅地全体に潤いを与えるビオトープの公園を造り上げているのです
屋根の上には太陽光パネルが設置され、その電力により中央にある住棟に囲われた庭園の電燈、雨水の循環のためのポンプアップの電力利用をまかなうことにしています。

開発計画の密度と経済的実現可能性
住宅棟で囲われた中央に造られた公園は、ローマのコロシアムの闘技場を連想することのできるすり鉢状の大楕円形劇場のようになっています。すり鉢状の中央の中庭空間を、中央の公園の屋根までの高さ21mで囲われた容積を各住宅あたりに分配してみると、住宅ごとに一階ファサード(間口一杯で、高さ3m.)面積で除しますと、その想定保有庭面積平均で、各十戸それぞれが、約18㎡の専用庭を持つことと同じ広さを持つ計算になります。
この建築物の容積率は、460%ですから、1戸(平均専用住宅延べ面積209㎡)あたりの敷地面積は、わずかその4分の1の45.5平方メートルにしかなりません。
この土地の街路沿いに、ソフトバンクの松永選手が住んでいる住宅がありますので、専用面積として209㎡程度の住宅は十分需要があると思っています、しかし、世知辛いことを行って、仮に、1戸あたりの住宅面積を減らし、住宅を114戸に2倍増すれば、1戸当たり97平方メートルになります。その場合には、専用車庫は半分の住宅には供給できませんが、しかし、工夫をすれば供給する方法もあります。この住宅の販売価格は、3,800万円程度(専用住宅面積209㎡)で可能と思います。オプショナルな面積を半分にした場合には、2,500万円程度(専用住宅面積97㎡)で販売できると思います。

本邦に前例のないニューアーバニズムによる共同住宅
この開発は、かつて日本にはありませんし、欧米でもこのような形は前例はありません。計画理論としてはニューアーバニズムによる事業として、同じ考え方によって開発された事例は多数あります。この計画はこれからデザイン的な検討を進めてから何らかの形を使って事業化に持ち込めればと願っています。
この考え方は、一般的に、広く使うことができる技術ですので、これからこの計画の事業化をHICPMの会員の皆さんの中で関心のおありの方とともに推進できたらと考えています。このメールの読者の方の中でもご関心の方は、遠慮なく私宛にアプローチしてください。

開発事業の図上演習
大建での4日間は、松尾社長が中心になって、社員約10名が机上での開発事業を作成する取り組みをやりました。CM(PEPSI)でいう最初のP(Planning:施工計画)の策定作業です。開発事業計画図書を下にそれを詳細工事に分解して、その詳細工事をどのように組み立てていくことが、「手戻り」や「手待ち」工事をなくし、如何に円滑に工事を進めることができるかという作業を、関係者全員で知恵を絞って検討する作業です。
当然、工程ごとの作業費用を最小にすることも検討対象になります。関係者は、自分の作業を中心に見ていますが、それを「工事全体を合理的に進める」という観点で取りまとめる作業が関係者の知恵を絞って検討されました。
4日間で、一応全体の大きな順序はできたと思います。松尾社長自身が、開発工事の現場監督(スーパーインテンダンッ)となり、専務の畑さんが自ら開発工事の模型製作をし、具体的イメージを共通化することにより、仕事は紆余曲折をしながら、一応まとめることができました。
このような作業は実際の仕事が始まるまでに、さらに数回机上で演習をすることにより、実際の仕事をうまく進めることが出来るようになるのです。軍事訓練と基本的に同じことで、作戦通り仕事を進めるために関係者全員が、しっかりとしたイメージトレーニングをすることが必要です。(難儀な作業でありながら、意識と脳細胞の活性化につながります。)
これが建設業者が取り組むべきCMの取り組みです。これから大建の事例の紹介をとして、CMの実践をお伝えできればと思っています。

(HICPM理事長 戸谷 英世)


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