メールマガジン

メールマガジン第398号

掲載日2011 年 4 月 4 日

メールマガジン第398号(4月4日)
皆さん、こんにちは
東北・関東大震災は、東京電力福島原子力発電所事故を併発し、東電、政府、学者の不明瞭な状況把握と、行き当たりばったりの対応に国民は不安にさいなまれている。この原子力発電所の問題処理が、国民の重大な不安の原因となり、国際的に「原子力発電全面見直し」の流れが形成されようとしている。かつて、ドイツでは、チェルノブイリの跡で、原子力発電が戦後最大の住民運動になり、それが環境都市フライブルクの現在に繋がっている。
日本では、東京電力と政府の責任回避とそれに群がる御用学者とジャーナリズムがこの問題の大きさを隠蔽する側に廻り、原発見直しがこのIT時代に若者を動かすこともなく、「手なずけられたペットのようになっている」ことは不思議な現象である。世界が日本を目覚めさせてくれて、どのような結果となるかによって、震災対策は全く違った対応になる。
しかし、その先行きの展望が得られず、福島原発問題は、とりあえず除外して、東北・関東大震災復興・再生事業提案考えなければならないという状況になっている。そこで、HICPMとしても対応を纏めることにした。この提案には13の具体的提案によって構成されているが、今回のメールマガジンでは、その前段としての基本的考え方を紹介することにした。

東北・関東大震災復興・再生事業提案
1.    取り組みを考えるための基本的な考え方

東北・関東大震災は、災害規模の大きさ、復興に要する資金の大きさと、現在の日本経済の置かれている環境及び財政赤字の大きさを前提に考えなければならない。いずれにしろ、巨額な復興国債の発行を不可避とする状況下での取り組みは、このような復興計画での成功例を参考にすることが重要で、思いつきの計画であってはならない。
日本の戦災復興や、阪神淡路大震災後の復興事業を見ることができるが、いずれも、その後の地域の経済復興に寄与をしたかという視点に立ってみると、いずれも成功した事例であるというわけにはいかない。

戦災復興の経験の総括
前者は、大都市火災という甚大な被害の再発防止という視点で「不燃都市の建設」を掲げ、「羹に懲りて膾を吹く」の譬えのような対策に偏り、木造建築の排斥と、徒に、醜い鉄筋コンクリート建築の建設を推進した。その後の急激な都市化という社会的津波を受けたといえ、歴史文化を破壊した無秩序な都市を造ることになった。
その結果、国民は土地と建築をばらばらな不動産として建設し、住宅をすぐれた生活環境資産として形成することができず、スクラップアンドビルドを繰り返さざるを得ない都市としてしまい、都市資産形成が出来なかったので、成功事例にはならない。

阪神淡路大震災の総括
一方、阪神淡路大震災後の復興は、基本的にインフラ再生であり、公共事業や社会福祉、「花の博覧会」関連事業に代表されるようにリゾートレクリエーション施設の建設など、目先きの経済効果や、見掛けの復興に終始した。そのため、一時的に震災後の淡路に活気を与えたように映った。しかし、巨額の投資は、土地買収の形で一部の都市所有者を潤したが、結果から見ると、現在の時点で阪神淡路大震災跡地を見ると、過疎化は進み、経済活動は停滞し、「溝(どぶ)にお金を捨てた」と批判されても仕方がない復興事業であった。

2.    モデルとすべき米国の「ニューディール」政策
1929年米国で発生し、世界に波及した世界恐慌は、東北関東大震災のように物理的な災害ではない。しかし、この恐慌によって経済が停帯し、企業倒産が相次ぎ、米国国民は失業に陥り、多くの国民は住宅ローン破産に直面した。
1928年の大好況時代に、年間100万戸の住宅を建設していた米国では、一挙に住宅建設は10分の1以下に急落したので、その経済収縮が如何に大きかったかを理解できるはずである。
ルーズベルトが採択したニューディール政策は、経済学上の理論としては、英国の経済学者ケインズの理論の実践であり、その成功事例としてその後ケインズ主義が世界の経済政策に大きな影響を持った。つまり、国家全体が経済力を失ったときには、政治によって有効需要を生み出して、それを起爆剤として経済復興をするという経済理論である。
この経済理論がニューディール政策として施行した理由は次の二つである。

第1.住宅政策を基本にした国民生活を最優先
基本的に米国国民の生活再建を第一に優先し、個々の恐慌被災国民が具体的な生活再建ができるという政策を取ったことである。フーバーダムやテネシー河総合開発事業(TVA)などの象徴的な大規模プロジェクトと並んで、政治が住宅都市政策を最大の政策として取り上げ、住宅ローンで苦しむ人びとを完全に政策で救済した。モーゲージを証券化(MBS)して、二次金融の制度を作り、金融機関へのしわ寄せを転じて金融業の拡大事業とした。それにより、国民中心に金融が行われているという信頼感を国民が持つことができたことである。

第2.    国民に直接の恩恵が分かる政策
ニューディール政策として実施する政策内容が具体的で、分かりやすく、すべての国民がその政策に合わせる形の再建の取り組みができ、財政投資と個人投資相乗効果が発揮できたことである。その中心になった政策は、失業者を救済する事業(失業対策)で、直接的な収入を保証するだけでなく、将来の経済活動の展望(国家経済の政策)を示すことができた。
住宅バブル崩壊後のオバマの政策も、基本的にニューディールの住宅政策同様、失業対策に重点が置かれているのも、主権在民の思想の現れである。

3.    復興再生計画
その詳細はここでは割愛するが、その基本は、各地域の歴史・文化、社会・経済を分析し、各地域、地区の特性を分析し、その土地の持つ特性と住民の潜在力、住民のニーズを大切にし、住民の自発的な取り組みを国家、県、市町村がそれぞれの立場で支援する必要がある。
クリントン政権の副大統領アル・ゴアが21世紀の都市政策として取りまとめ、その後、ジョージ・ブッシュの政権下においても基本的に踏襲され、成果を上げた「ビルディング・リバブル・コミュニティ」(HICPMで単行本として翻訳本を刊行している)に明らかにされている。役割分担と協力関係によって進めることが、最も効率的な取り組みである。小さなベクトルでも、その方向を定め相乗効果(シナジー)を発揮することができる。
財政力が失われている今の日本で、効率の高い復興を実現するためには、今求められていることは、しっかりした相乗効果を発揮できる全体計画とそれを実施するリーダーシップをおいてない。
(住宅生産生研究会理事長 戸谷英世


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