都市計画

東北・関東大震災復興都市計画提案

掲載日2011 年 4 月 4 日

2011.04.04.HICPM
東北・関東大震災復興・再生事業提案

1.    取り組みの基本的な考え方
東北・関東大震災は、災害規模の大きさ、復興に要する資金の大きさと、現在の日本経済の置かれている環境及び財政赤字の大きさを前提に考えなければならない。
巨額な復興国債の発行を不可避とする状況の下での取り組みは、このような復興計画での成功例を参考にすることが重要で、思いつきの計画であってはならない。日本の戦災復興や、阪神淡路大震災後の復興事業があるが、その後の地域の経済復興に寄与をしたかという視点に立ってみると、いずれも成功した事例であるというわけにはいかない。

前者は、大都市火災という甚大な被害の再発防止という視点で「不燃都市の建設」を掲げ、「羹に懲りて膾を吹く」の譬えのような対策に偏り、木造建築の排斥と、徒に醜い鉄筋コンクリート建築の建設を推進した。その後の急激な都市化という社会的津波を受けたといえ、歴史文化を破壊した無秩序な都市を造ることになった。その結果、国民は土地と建築をばらばらな不動産として建設し、住宅をすぐれた生活環境資産として形成することができず、スクラップアンドビルドにしてしまい、都市資産形成が出来なかったので、成功事例にはならない。

一方、阪神淡路大震災後の復興は、基本的にインフラ再生であり、公共事業や社会福祉、「花の博覧会」関連事業に代表されるようにリゾートレクリエーション施設の建設など、目先きの経済効果や、見掛けの復興に終始した。そのため、一時的に震災後の淡路の活気を与えたように映った。しかし、巨額の投資は、土地買収の形で一部の都市所有者を潤したが、結果から見ると、現在の時点で阪神淡路大震災跡地を見ると、過疎化は進み、経済活動は停滞し、「溝(どぶ)にお金を捨てた」と批判されても仕方がない復興事業であった。

2.    モデルとすべき米国の「ニューディール」政策
1929年米国で発生し、世界に波及した世界恐慌は、東北関東大震災のように物理的な災害ではない。しかし、この恐慌によって経済が停帯し、企業倒産が相次ぎ、米国国民は失業に陥り、多くの国民は住宅ローン破産に直面した。1928年の大好況時代に、年間100万戸の住宅を建設していた米国では、一挙に住宅建設は10分の1以下に急落したことを以って、その経済収縮が如何に大きかったかを理解できるはずである。
ルーズベルトが採択したニューディール政策は、経済学上の理論としては、英国の経済学者ケインズの理論の実践であり、その成功事例としてその後ケインズ主義が世界の経済政策に大きな影響を持った。つまり、国家全体が経済力を失ったときには、政治によって有効需要を生み出して、それを起爆剤として経済復興をするという経済理論である。
この経済理論がニューディール政策として施行した理由は次の二つである。

第1.    基本的に米国国民の生活再建を第1に優先し、個々の恐慌被災国民が具体的な生活再建ができるという政策と取ったことである。フーバーダムやテネシー河総合開発事業(TVA)などの象徴的な大規模プロジェクトと並んで、政治が住宅都市政策を最大の政策として取り上げ、住宅ローンで苦しむ人を完全に政策で救済した。そこでそのモーゲージを証券化(MBS)して2次金融の制度を作ることで金融機関へのしわ寄せを金融業の拡大事業とするという国民中心に行われている信頼感を国民が持つことができたことである。

第2.    ニューディール政策として実施する政策内容が具体的で、分かりやすく、すべての国民がその政策に合わせる形の再建の取り組ができたことで、財政投資と個人投資相乗効果が発揮できたことである。その中心になった政策が、失業者を救済する事業により、取り組まれた政策が仕事を求めている人たちに直接的な収入を保証するだけでなく、将来の経済活動の展望を示すことができた。住宅バブル崩壊後のオバマの政策も、基本的にニューディールの住宅政策同様、失業対策の重点が置かれているのも、主権在民の思想の現れである。

3.    復興再生の原則
米国のニューディール政策に倣って、東北関東大震災の復興計画は、以下の基本原則に立って、全体計画が相乗効果を発揮できるよう有機的関係をもって立案され、「主権在民の原則」に立って強力な政治的なリーダーシップの下で進めることが必要である。

(1)    地域的な個性を生かした復興事業として取り組む
各被災地にはそれぞれの歴史、文化、社会、経済の特性があり、それらは地域自体の歴史、文化、社会、経済の生産力であるという認識が必要であり、その特性を歴史に遡って明らかにし、基本的なグランドデザイン(骨格)を住民の意見を最大限取り入れて地域の主体性を尊重して作成する。

(2)    基本的なグランドデザインに対応する都市または地区(コミュニティー)のマスタープランを立案する。
コミュニテイのマスタープランは、地域住民の要求を尊重して、長期的展望を持った基本計画と、生活要求に応える短期的な実施計画とから構成される。そこには、行政機関が取り組む仕事と、住民による取り組みの支援という二つ部分から構成される。

(3)    復興計画の計画理論は、ピーターカルソープが提唱し、実践し大きな成果を上げたサステイナブルコミュニティの理論に基づき立案し、その思想を取り入れたニューアーバニズムの理論と計画技法により実践する
(イ)    TNDの思想:「人びとの絆の強化」を基礎におくコミュニテイ、
(ロ)    サステイナブルコミュニテイの思想:人びと豊かな生活の実現を第一に考える町造り、
(ハ)    LEEDの思想:エコロジカルな環境思想に基づく町造り

(4)    住宅地の経営管理の技法は、エベネツアー・ハワードが提唱し実践したガーデンシティのリースホールドによる手法を基本に置き、ラドバーン開発で骨格が作られ、その後、欧米の住宅地経営管理技法となった「三種の神器」による住宅地経営とする。「三種の神器」とは、以下である。
(イ)    第一の神器:ニューアーバニズムによるマスタープラン(基本計画)と、それを実現するためのアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)
(ロ)    第二の神器:住宅所有者、住宅地経営管理協会(法人)住宅地開発業者が3者で締結したルールを強制的に遵守させる権利を、住宅地経営管理協会に与える住宅地経営管理契約約款
(ハ)    第三の神器:住宅地経営管理約款に基づき、住宅地を経営管理する住宅所有者全員強制加入によって造られる自治団体(法人)

(5)    マスタープランの対象となる地域を単位として土地所有者全員が強制加入する一の土地管理法人(株式会社)を創設し、その土地管理法人と住宅所有者、住宅地経営管理協会、住宅地開発事業者との間で、99年間のリースホールド契約を結ぶ。地代は、市場取引価格の1%とする。(国債で土地を取得したと場合の利率とする)

(6)    地域地区で土地を所有する人たちには、その土地の災害前と固定資産評価額に相当する株式を所有してもらい、都地収支の資本家の利益を集約するとともに、都市の復興及び熟成利益を土地所有者にその資産の大きさに合わせて分配することで、全体の土地所有者の力を結集できる。

(7)    都市のインフラストラクチャー、港湾・漁業インフラ事業、農業インフラ事業、教育施設、公益施設、医療福祉は、基本的に公共事業又は公的助成により整備する。つまり、現在の災害に罹災した状態の土地は、利用がない土地であるが、その土地は、基本的に公的インフラ整備により、地価は回復する。その場合、従前の土地所有者の権利を尊重し、かつ、従前の土地利用に縛られずに、新しい計画を受け入れることができるようにするためには、従前の土地の権利者には、その固定資産税の評価に基づく株式を所有するようにし、新しい土地開発の基本計画(マスタープラン)を実現するようにすることができる。

(8)    住宅供給事業に関しては、所得が低い場合には、賃貸住宅として経営し、居住者が一定の所得となった場合いには、頭金を賃貸住宅の家賃の一部として、一定額以上積み立てた段階でモーゲージを組み持ち家とする。そのような「賃貸・分譲」住宅という方式を米国で実施し、成果の上がっている。このような方法を採択する。
基本的に建設廃棄物となるような応急仮設住宅の建設は最小限に抑え、将来個人で増築することのできるような「コアハウス」としての公共賃貸住宅を建設し、最小は無償の使用貸借から始まって、所得の向上にあわせて「レント・リベート」(所得に見合った家賃)を徴収する。家賃の内「減価償却費相当分」に関しては、「ローン返済額」相当額として計上し、その減価償却額の積み立て総額が「コアハウス」の建設費用になった時点で、「コアハウス」は「持ち家」となる。その「コアハウス」は、賃貸住宅として居住されている間においても、「ローン返済中の債務付き持ち家」取引できるようにする。

(9)    居住者の世帯収入を高めるため、夫婦が共働きできる「ダブルインカム」とできるようにするためには、養育と介護の世話が必要となる。その際、子どもと老人対策は、公共的な方法で対応する。
乳幼児の託児施設、学童の放課後の各種受け入れ施設(宿題支援、進学準備、スポーツクラブ、園芸クラブなどオランダで取り組んでいる取り組み)を組織的に行い、子供達の多様な可能性を伸ばし、親たちが安心して働ける環境を造る。子供達がその能力を高めることは、親たちに生きる希望を与え、仕事に力を集中することができる。
また、働ける家族が高齢者の世話のため、時間を奪われていることは、介護の専門家ではないため、不十分なサービスしか出来ない上に、有効な労働力として活用することができない。高齢者が豊かな気持ちで生活を送ることができる環境を作り、家族は安心して労働に集中することができる。

(10)    災害失業者は、復興再生事業の都市インフラ事業、公益事業、住宅建設事業の建設労働者として雇用する。重層下請け事業を廃止して、公共事業等では直轄事業とし、建設業者としては直接工事をする業者を指揮管理する特定建設業者及び直接公事業者のみとする。いわゆる、中間での手配業者の介在を許さない。
欧米のように建設業を不動産製造業として、生産性を高める欧米のCM(社会科学的に正しいコンストラクションマネジメント)を採用し、日本の重層下請けによる「建設サービス業」として粗利が重層加算する仕組みを改め、建設投資額を、現在の投資額を2倍以上に使うようにする。
(現在の日本の建設業の公共事業の粗利比率は、50%以上80%にまでなっているものを粗利率20%にすることで有効投資額は倍増する)

(10)地域の自活(自給自足)をできるだけ拡大するためにアグリカルチュラルアーバニズムの考え方を取り入れ、自作農地を最大限取り入れる。罹災者自身は著しく購買力が縮小しており、家計支出のしわ寄せは、食費に寄せられる。罹災者が健康を維持し、支出を抑えるようにするためには、すべての罹災者は、自分の生活に使う菜園を地域で計画的に実施できるようにし、食物及び使用済みの医療の物々交換経済体系を造る。余剰農産品の保存食化などを含む専門的農業経営ができれば、それを市場や流通させることを考える。基本的には所得が少なく、貨幣経済に依存する程度を少なくする。

(11)復興再生する都市には、コミュニティ活動支援の核として、それぞれの都市の性格に合わせ、地域の産業を支援するための大学または高等教育研究機関を設立し、協力関係の機関を作り、中小零細な地場の産業を支援できるようにする。
この事例として、戦前の高等工業が地域で果たした役割として、浜松高等工業、宇部や下関工業学校、各地の水産学校、農業学校、園芸学校等があるが、現代は、さらに社会的需要として養護、介護、育児、医療、薬事、その他の需要に対した産業支援が求められている。
海外でも、アーバイン、デービス、ハイデルベルク、ソルボンヌ、スタンフォードなど地域産業と一体となった個性ある大学が設立されている。

(12)都市づくりの技法としては、これまでの「無政府主義」の開発ではなく、マスタープランドコミュニテイとして開発するが、その開発計画としては土地の共同利用をする共同住宅(マルチファミリーハウス)と、権利が重層しない戸建て住宅(シングルファミリーハウス)の土地利用計画は明確に区分し、共同住宅地区と戸建て住宅地区は別の土地利用とする。
その際、戸建て住宅地区は、低層高密度開発を進め、土地の高度有効利用を図り、1戸当たりの利用土地を最小限にし、住宅所有者の地代負担の軽減を図る。街並みデザインとしては、日本の伝統的な市街地住宅や、欧米のすぐれた市街地開発の例に倣って、アタッチドハウス(隣地境界線に接して建設する住宅形式)を基本として開発する。

(13)ニューアーバニズムの計画として、地域の日常生活は、基本的に人間の絆を重視した徒歩の町とする。そして、地域地区には水を命の途として通し、地域の動植物の環境と調和した水と緑を取り入れたビオトープの張り巡らされたエコロジカルな循環都市として形成する。
住宅地の基本的な計画としては、パリ改造計画において都市のあるべき姿としてオースマンが提起し、その後、世界の都市計画の進むべき方向として取り組まれてきた都市全体を公園とする環境を持った都市とする。この考え方の都市の計画理論となったものがハワードによるガーデンシティーである。


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