メールマガジン

メールマガジン第403号

掲載日2011 年 5 月 9 日

メールマガジン第403号(5月9日)
皆さん、連休をいかがお過ごしでしたか。

「サスティナブルコミュニティの実現」の誕生の背景
この連休は「サスティナブルコミュニティの実現」という、冊子の取りまとめの最終段階の仕事で、これからの街づくりの取り組みの運動の展開の仕方が見えたという1週間でした。
『サステイナブルコミュニティの実現』という冊子を取りまとめるきっかけとなったのは、出版を推進することになったサステイナブルコミュニティ研究会のメンバー、アスカルデザインの櫻井さんらが、クボタ松下の山田さんとともに、かねてよりHICPMの推進してきた「三種の神器」による街づくりに関心を持ってくださったことにあります。
欧米における「住宅による資産形成が出来る街つくりのシステム」の、わが国における実践に取り組んできた住宅生産性研究会の成果を、その「会員工務店の具体的な事業として実際に確かめることの出来た」と評価してくださいました。つまり、住宅生産性研究会会員の実践した成果は、「欧米の住宅地経営の理論を我が国において確かに実践できた結果」として、今後のわが国で十分使える計画技術として活用できる資料として纏めてくださいました。

「サステイナブルコミュニティの実現」取りまとめの裏話
この作業は櫻井さんが山田さんの依頼を受け、サスティナブルコミュニティの各地の実践事例を、あらためて現地まで足を運ばれ調査され、それを理論と実践という二つの枠組みを使って整理し、画像で分りやすく工務店事業の参考になるようまとめたものです。
作業の成果を見て、この資料は、画像や解説図から欧米の住宅地経営管理の理論とその応用に関する利用可能な多くの情報を提供していました。しかし、日本ではこれまでに、欧米の住宅地経営管理に関しあまり情報が少ないため、工務店の方々が本画像や図版からだけでは、ご覧になった人びとの知識、経験、能力によっては、必ずしも、この資料で纏めた欧米の住宅地経営管理技術を的確に読み取ることはできないと考えられました。
そこで約50ページの図集を纏めるに当たって、桜井さん、山田さんらと議論しあった内容を使って、写真のキャプションのように画像の背景、部分解説、画像の理解を助ける背景にある住宅地経営の思想・考え方を、それぞれ、1000字程度の解説文として付けることにしました。
議論の中心になったものは、此処で取り上げた事例を実際に実施した工務店がどのような経緯で欧米の住宅地経営に学び実践したか、そして、事業に取り入れられた技術はどのような歴史的な背景を持って作られたものか、工務店が事業に欧米の理論と技術をどのように理解し実践したかを説明しました。実践できた結果は、現時点で振り返ってみると中途半端に終わった点など多くの反省点もあります。そこで、本冊子が今後の事業の技術指導に使う資料として活用する目的で作成したことから、隠し立てしないで反省点も紹介することにしました。

「サスティナブルコミュニティの実現」の出版
成果を冊子として出版することに最も大きな支持をしていただいたハイアス・アンド・カンパニーの濱村さんとその話をしたとき、その場に同席し、昨年一緒にミラノとロンドンの研修旅行に参加した公認会計士の山口さんにも協力してもらうことにしました。また、国土交通省からの研究補助金を受けてハウジングアンドコミュニテイ財団の調査研究会に2年間参加し、現時点で住宅生産性研究会と通年的な顧問契約を締結し、その技術を最も総合的に取り入れ、かつ、米国、ドイツ、イタリア、英国など欧米に調査研究に出かけ、その成果を「荻浦ガーデンサバーブ」で実践している大建社長松尾さんにもサステイナブルコミュニティ研究会のメンバーになってもらい、内容の吟味をお願いすることにしました。
また、目下、これまでのHICPMの成果を私単独で広く普及することは難しいと考え、その調査研究成果の伝達推進する業務をこの3月から支援し、+HICPMを立ち上げた岡田さんも本冊子の研究会に加わりました。このような多数の方の支援を受け、また2年前までHICPMのビルダーズマガジンの製作をした耕文社の長澤さんがこの出版に理解され、冊子の作成と赤字の出ない販売計画を立て出版の運びとなりました。出来るだけ多くの人に活用できるように全頁に図版を入れたカラー印刷としました。クボタ松下の山田さんとHICPMとで製作費用を負担し、印刷費で赤字を出さないという計画としました。その結果、この冊子の努力販売目標の400冊を採算点とし、定価を1,500円に設定しました。

「サスティナブルコミュニティの実現」の値打ち
HICPMとしては会員支援という枠組みを超えることはできず、「理論的には、このようにすべきである」という意見を言うことはできても、それ以上に無理強いすることはできません。私の官僚時代は、法律制度と補助金や融資によって施行者に利益を約束し、代わりに行政指導を押し着せることもできました。そのようなことで私自身、過去に100を超える事業を行政指導の名の下で公共団体や公団・公社や民間に対してやってもらった経験を持っています。
しかし、今はHICPMの会員には、官僚時代の武器は使えないので、総て納得してもらわない限り、それ以上に進めることはできません。法律上正しいことでも、末端の行政指導に妨害され会員が萎縮してしまえば、それ以上に進められません。HICPMの会員が実施してきた住宅地開発は、その多くが会員自身の力として発揮できた成果です。欧米の知識経験をそれぞれの会員がその置かれた条件の中で最大限発揮させたものですから、本冊子に取り上げられた成果には、誰が見てもリアリティ(現実性)があります。
私が見ると「もっとやれたのではないか」という目で見てしまいますから、一生懸命やった人にとっては、「少しは誉めてくれてもいいんじゃないか」という不満が残っている話をよく耳にします。「何故もう一歩頑張れなかったのか」という説明がなかったところに、私は自分のプロジェクトと思って真剣に考えているだけに、フラストレーションが残ります。

「長期優良住宅(まちづくり部門)認定事業」での心残り
四日市の「泊山崎ガーデンテラス」と横浜の「ガーデンヒル」に関しては、長期優良住宅の補助金を受けるためにHICPMとコンサルタント契約を結んだだけに、HICPMとしてもこの作業を実施するに際し150万円近い持ち出しをして、こちらの思い入れも大きかったわけです。
しかし、多分、こちらの思いは理解されず、コンサルタントのやった成果は、「成果として受け止めるが、後は事業主がどのように変更してもそれは商売上仕方のないことで、コンサルタントが口を出す」ことではない。ましてや、実施する事業に関しては、「依頼主がHICPMに対して相談することでもない」と思っているためでしょう。HICPMがコンサルタントとして作業した事業を変更しても相談を受けることはありませんでした。そのため、事業成果にコンサルタントとして提供した技術が無視されてしまうということも沢山ありました。実は、「会員工務店によって実践されたことが、住宅生産性研究会の会員に技術移転できたこと」とに気付かされました。
HICPMの持ち出し分は、国土交通省から住宅地経営管理マニュアルとして纏めてほしいと要請もあり、「超長期優良住宅地経営管理マニュアル」として取りまとめました。しかし、費用の回収方法がありませんので100冊の冊子を印刷し、1冊15,000円(会員は10,000円の割引価格)で販売することにしました。これまでに70冊程度を販売し、未だ残部がありますが、これから本格的な需要が出ると思っています。

「荻浦ガーデンサバーブ」の経験
さて、HICPMとしては、過去の経験から、福岡の大建が取り組んだ「荻浦ガーデンサバーブ」では、事業の最初から松尾社長と「私の提案した内容を実施するか、しないかは双方で納得の行く合意を前提に進めること」を申し合わせました。少なくともHICPMとしては、「私ならこのようにすれば実現できる」という提案の説明責任の負える提案でなければならないし、大建として「実現しようとすれば、それに伴う実現できない場合のリスクをどのような形で負うか」ということに関する合意の下に事業を進めてきました。
未だ開発事業段階の最終の結果は、住宅の販売が始まってもいませんので、事業の成果は未だでていません。しかし、目下、私が見るところでは、大建社長松尾さんご自身として「街づくりを、住宅需要者のニーズの実現を社業とする理想の経営」チャレンジとして会社の社員一体となってずいぶん辛抱強くやっていてくださるお蔭で、双方にとって満足の行く仕事ができていると思っています。ニーズの的確に応えることが、結果的に経営の健全化となると言う確信です。

経験交流を通しての切磋琢磨
現在実施中の「荻浦ガーデンサバーブ」では、英国に倣ったリースホールド事業を、大建自身が土地所有者となって取り組んでもらい、昨年ドイツのフライブルクで学んだビオトープの計画を住宅開発に取り入れる計画は、九州大学の「都市に公園を復興する共同研究」に採用されています。さらに、米国のHOPEで実践されたハイポイント(シアトル)のダブルインカムを実現する方策も計画に取り入れてもらいました。そのようにして松尾さんには、新しい社会的ニーズに応えたサステイナブルコミュニテイ実現の実践者になっています。そこで6月にはワシントン州の米国建材セミナーの一環として、福岡で「荻浦ガーデンサバーブ」の現地見学セミナーでは、松尾さんを講師に招いて開催することにしました。そして直にその経験をサスティナブルコミュニティの実現の経験談や取り組みを話してもらうことにしています。
HICPM創立準備を含めると欧米からの技術移転の取り組みは、約20年経過します。サステイナブルハウスを故・成瀬さんと一緒に始めて12年を経過しました。試行錯誤の結果を「サスティナブルコミュニティの実現」という冊子を見ていて考えることは、HICPMの会員はそれぞれ独立した会員であるにもかかわらず、HICPMの「欧米から学んだ知識経験」の実践の経験交流を通じて、全体として過去の経験を生かしながら前進できます。その背後には、欧米における多くの住宅産業関係者の多様な経験が相互に影響しあってしっかりした理論と技術が開発されてきたことを見落とすことはできません。

HICPMによる指導に対する確信
HICPMが自信を持って「サスティナブルコミュニティの実現」に取り組んでいる背景には、19世紀の産業革命の発達による工場主による工場町の建設に労働者階級のために住宅地形成が端緒になっています。そのリースホールドによるガーデンシティの計画理論と実践が、ラドバーンにおけるフリーホールドによる資産形成の実現できる住宅地の経営技法としての「三種の神器」のシステムを確立させました。その経緯を踏まえて、現代のニューアーバニズムによる都市開発まで、理論と実践のフィードバックを繰り返した理論と計画技術の成果があります。知識や技術は個人の頭脳からしか生まれません。一人の人間にできることには限界があります。私たちは歴史に学ぶことで、歴史で大きな役割を果たしてきた人たちの知識と経験の集積を学ぶことによってそのすべてを生かすことができるのです。
HICPMは私が直接的に技術移転の活動をしていますが、それは私の知識や考えを普及しようとするものではなく、歴史の中で生み出された知識や経験に学べということを私が言っているだけです。ある元会員が「戸谷さんにはオリジナリティがないのですか」と言いました。ニュートンは「私の発見など海辺で美しい石を拾ったぐらいのことだ」と言ったように、ニュートンほどの偉大な発見者であっても、世界から見ればニュートンの言ったとおりかもしれません。「歴史に学ぶということは、過去の人類の知恵に謙虚になり、「学ぶことは真似ること」ことと思います。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)


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