法令

マンション建て替え円滑化法(諏訪2丁目住宅団地)建て替え事業

掲載日2011 年 6 月 24 日

平成23年(ヨ)第41号
債権者 諏訪2丁目住宅マンション建替え組合 債務者 坂元克郎 伊藤綾子
準備書面(1) 東京地方裁判所立川支部第4部保全係 御中 平成23年6月30日
債務者 坂元 克郎 伊藤 綾子 債務者補佐人 戸谷 英世
マンション建替え円滑化法とその実践平成23年6月21日審尋に対する反論
はじめに
(1)本審尋は、冒頭に裁判官に対し、「債権者の適格に対する審査」を要求したにもかかわらず、裁判長は、「審尋の過程に置いて、明渡し条件の検討をする中で検討する」と明言したにもかかわらず、その検討をせず、中途で「法律論は、一旦、横に置いて、明け渡しをすることができる条件の検討をしてほしい」という裁判官の指揮がなされた。
債務者側は、裁判長の指揮を真剣に受け止めて、債権者側と話し合いをもったにもかかわらず、結果的には、裁判官と債権者とが事前に申し合わせた筋書きに従って「債権者の要求どおりの和解勧告」をしたと「同じ内容の猿芝居(できレース)」に終わった。

(2)そこで、6月21日の審尋において、かねて裁判官が法律論によって、債権者適格、即ち、「建て替え組合の法律上の正当性」に関して、審理するという約束を反故にして一方的に審理の打ち切り宣言をした。つまり、「債権者の要求と同一の和解案に債務者が同意しなかったことで審尋は打ち切り、裁判所の結論を申し渡す」といって、結審となった。

(3)このような審尋は、債務者の「裁判を受ける憲法で定めた権利」を全く蹂躙するもので、債務者の主張を検討することなしになされた審尋の打ち切り受け入れることはできない。裁判長が6月末日までに審尋で検討できなかったことを文書で提出すれば、「その内容に関しては審理する」と明言したことから、債務者が主張していることで、今回の審尋で検討されないまま放置された基本事項を、検討してもらうように以下に陳述する。

(4)そこで、本最終準備書面では、これまでの不当な審理を省みて、その審理を正常に戻すため、本裁判の審理の基本となるべきマンション建替え円滑化法の立法の背景、国会の審理と法律の構成を踏まえて、まず、本裁判の判断とするべき法律の内容を、次の3段階で説明することにしました。この3段階に関し、裁判官は検討し債務者に対し個々での説明を受け入れない場合には、判決に置いてその理由を説明しなければならない。そこで、そのたたき台を準備書面で提出することにした。

第1、「立法の背景と立法の経緯」で本審尋の前提になる債権者適格の判断基準となるべきマンション建替え円滑化法の理解

第2、「諏訪2丁目住宅管理組合による建て替え事業」において、実際に諏訪2丁目住宅管理組合が実際の建て替えでやってきた事業が、法律の内容とかけ離れた法律違反により組合認可を得た事実

第3、裁判官が示した明渡し条件として提起されたマンションの強制差し押さえ価格の不当性の説明

(5)上記の事実認識の違いこそ、本審尋の対象となるべきで、これらの事実関係を審理せず、明け渡しをするべきことを既成事実として、かつ債権者のマンション購入価格の正当性に関し、「基本的に大きな欠陥があるという債務者の指摘」を裁判官は全く聞こうとはせず、頭ごなしに否定し、または、無視し、「債権者の主張を単に追認するだけのスケジュールこなしの審尋」しか実施しなかった。これは憲法で定めた主権者である国民の裁判を受ける権利の蹂躙というほかない。

第1.立法の背景と立法の経緯

(1)マンション建替え円滑化法の立法の背景は、次の2点に集約される。

一、床面積45㎡の小さなマンションが住宅市場から取り残され、居住者が高齢者中心に偏り、所得の低い人たちが取り残され結果、年金生活者など低所得者には住み易いところになっているが、子育て中の若年世帯は床面積が狭いため、入居せず、住宅団地全体が社会的老朽化の一途をたどっている。

二、経済成長の結果、都市圏が拡大し、かつて、建設されたマンションの立地条件が改善され、地価が高騰し、住宅所有者は費用を負担しなくても、土地を高層高密度化することで経済的負担をしなくてマンション建替えができる経済環境が生まれてきた。

そこには政府が一貫して進めてきた「スクラップアンドビルド」の建替え政策があり、地価に見合った土地の高密度高層利用を「善」とする前提の住宅政策が、GDP拡大の経済政策の一環として、経済活動重視、弱者切捨ての建替え推進の政策が、政府施策の公共住宅において、率先して進められてきた。

(2)建設業界は、建替え推進を進める事業環境を営業機会の拡大と考え、建設業者とマンションを保有する者が中心で政治を動かし、建替えによって「潜在地価を顕在化させて、利益を手にしよう」とする「経済的利益を求める人たちの圧力」が高まった。
マンション建替え円滑化法が制定されるまでは、共同住宅の建替えは、憲法第29条の規定を根拠に「住宅所有者全員合意」がなければ、共同住宅の建替え事業を実施できなかった。それが、経済的利益を優先して一部の反対があっても、建替えを強制的に実施されることになった。

(3)マンション建替え政策は、日本経済が低迷し地価の上昇が鎮静化し、建替えによる利益が期待できなくなった昨今では、「経済的弱者切捨てが生み出す社会問題の拡大による政治的不安」が懸念されて、建替え政策からリモデリング(修繕)政策への転換がなし崩しに始まっている。
つまり、建替えを推進するために構造的に「老朽化して危険だ」といわれた鉄筋コンコリートマンションを、最近では政府とUR(元都市基盤整備公団)自身が、「構造的に十分安全だ」とコペルニクス的転換を図って、過去の説明とは全く違った説明をし、構造躯体をそのまま使って内部を模様替えする方法が、「ルネッサンス計画」と呼んで、新しい事業名称の「看板換え」によるリモデリング(リフォーム)事業が進められてきた。

(4)建替え推進するために、「コンクリートの中性化」を理屈に、「構造危険性」を煽り「鉄筋コンクリート耐震性診断」評価基準が作られた。しかし、理論的にはコンクリートを適正調合で作ったものは中性であり、また、強いアルカリ性を示すコンクリートは、セメントを過剰に投入した日本だけの異常なコンクリート調合基準である。高アルカリ性のコンクリートコンクリートの場合でも、コンクリートは硬化の寄与しなかった遊離セメントが流出し、それが中性化しても強度は低下せず、何百年も構造耐力を維持する材料である。セメント工業会と御用学者がセメントを大量に使用したコンクリートを促進したことが、コンクリートはアルカリという間違った考え方を広めた。

(5)また、コンクリートの強度は、砂利や砂の強度で決まるもので、セメントの強度で決まる材料ではない。日本のコンクリートはポンプでコンクリートを流し込むため、建設時の結合に必要とする水より遥かに大量の水とセメントを使う。そのため、結合に関係しなかった水やセメントがコンクリートから流出し、非常のポーラス(空隙)の多いコンクリートになっている。そのため、コンクリートの硬化後、外部から水分や空気がコンクリート内部に容易に浸入し、鉄筋を腐食させ容積が膨張するため、引っ張り力に弱いコンクリートが破壊され、構造的な欠点が生まれるが、コンクリートの強度は変わらない。

(6)政府が作成した耐震診断は、安全な構造の建築物まで危険性があるかのような診断結果と判定する「建替えを促進するための環境整備」とも言うべきものである。この基準は建築物自体の安全基準を全く正確に現していない。特に、現在、建替えのターゲットにさせられている鉄筋コンクリート壁式構造の場合、ラーメン構造(柱はり、構造)と違い、構造耐力的に余力の大きい構造で、物理的には新潟地震で転倒した公営住宅に見るように「住宅棟として倒れても、構造は壊れない」程、構造耐力的には強い。建替え促進政策では、それを危険と判定させてきた。

(7)マンション建替え円滑化法は、『潜在地価の顕在化』という経済的利益を追求するための「建替えを推進する政治的な方針」を正当化する「後付けの議論」により作られた法律である。建替えに反対する者に対し、いかなる方法で「建て替えを強制できるか」、「どのような理屈をつければ、憲法の規定と精神に抵触せず、立ち退きを強行することができるか」、という議論がされてきた。

(8)その結果として、「組合員の5分の4以上の賛成があれば、建替え反対者を強制することができる」とする理屈を、政府は御用学者を動員して、政治的及び行政的にしたのである。つまり、「5分の4という絶対多数の賛成があれば、憲法上の説明がつくことにしよう」とする政治家、官僚及び御用学者たちの間での政治的・行政的・行政学的な割り切りで、政党間の決着と行政内部の割り切りを付けた。

(9)しかし、「5分の4の賛成があれば、憲法第29条に抵触しないで、個人の財産権を侵害できる」とする「法律論上の理由付け」ができた訳ではない。政治的判断が先行して、内閣法制局が5分の4の多数決に対して、マンション建て替え円滑化法第4条の基本方針において「基本的な手続きの民主化」を徹底するという付帯決議を認めて、法律が成立した。5分の4の多数決には、都市計画決定に見るような「公共の利益」を優先するために「計画公(高)権」と同様な「公共性」があったわけではない。

(10)建替え事業は、「建替えを希望する個人の利益」のために、「建替え希望をしない個人を犠牲にする」ものである。「民・民関係」で、「建替えを希望する人たち」は「建替えを希望しない人たち」を犠牲にする権利は、憲法上、基本的にはない。
逆に、「この団地に継続して住みたくなければ、その人が出て行けばよい」ので、そこで「安心してすみ続けたい建替えを希望しない人」を追い出してまで、建替えによって利益を上げようという人たちの利益を拡大することを、憲法は認めていない。

(11)マンション建替え円滑化法は、都市計画関係法ではないから、潜在している高地価を顕在化する都市の高度利用の推進の強制することを都市計画決定して「公益である」ことを根拠として、住民を追い出すために使える法ではない。つまり、都市計画法でも「公共性の認められなかったこと」を、建替えを希望する個人や事業者の利益追求のために、強制的に個人の財産権を奪おうとする事業であるから、憲法上の基本問題との矛盾を否定することはできない。

(12)しかし、この法律の本質である「建替え支持組合員が5分の4を条件にした法案」は、政治的には、「建替え事業に関係する有権者の5分の4の支持を、政治的支持者として選挙の票として囲い込めるという各政党の「卑しい思惑と期待」があった。組合員の5分の4を各政党が「味方に引き寄せるか、どうか」になっていた。国会での政治家と政党の駆け引きは、建替えによる「建設業の利益を政治献金させる期待」をした政治家と、「建替え事業で利益を受ける関係居住者からの政党支持票」を期待した。
その結果与野党の政治家の全てが、「5分の4の組合員の支持を自分の政党に引き寄せる党利党略」の「全党一致」の賛成で、この法律を成立させることになった。自民党から日本共産党までのどの政党も「5分の4の多数者の利益を支持することが民主主義政治である」と憲法違反を正当化した。

(13)そのときでも、切り捨てられる経済的弱者の問題を無視できなかったところに、「重要な憲法との関係」の問題を提起していた。そのため、建替えに賛成したいずれの政党も、「護憲」の立場を捨てていないことを示すために、衆参両院で付帯決議により、「行政上の手続きで十分な配慮をする」ことで立法府の責任を行政府に付回しをした。
しかし、現実に建替え事業を始めて、人権を侵害される人たちが沢山顕在化した。実は、国会での審議中にも建替え事業は、憲法上の貧困な人たちに大変な社会問題になることを議員たちは十分承知していた。それを承知の上で、各政党は多数の住民の利益と建設業者の利益を自分の党利党略に結び付けて、反対者の切捨てに賛成した。

(14)「社会的弱者や庶民の味方」を標榜してきた社民党、日本共産党及び公明党は、その代表的な政党であったが、自党の選挙の票のためには、「社会的弱者の切捨てもやむなし」と考えたのである。切り捨てられた居住者は、現状の生活環境が彼らにとって「幸せな生活である人たち」だった。そのため、建て替えによって泣く人たちが生まれても、すべての政党が、党利党略のために、以下のイから二までの住民を見殺しにしてきた。

イ.多くの建替え対象とされた既存の中層共同住宅は、建蔽率10%、容積率50%程度で、緑豊かで徒歩で団地を行き交うヒューマンスケールでできた環境で、お互いのことを理解しあい、思いやりのもてるコミュニティである。住宅の取引価格も安く、定年を迎えようとする人にも、少ない年金収入でも安心して生活できる「終の棲家」とすることのできる住宅地となっていた。そこで子育てをしてきた思い出の住宅地で、自分ら自身が選択し育ててきた住宅地を建て替える必要はないと考えてきた。

ロ.住宅の規模(床面積)自体が狭いことから、子供たちが巣立った後は、両親だけが残り、または単身者となっても、同じような環境の人たちが生活することで、安心して老後の生活が計画できていた。住宅地が高齢化したことを、少しも悪い環境になっているとは思っていない。団地には四季を飾る植物や花木が育ち、豊かな樹林と公園緑地を形成し、高齢者の街として住みやすいと感じていた。これらの人たちは、これまで住み続けた自分たちの生活文化を大切にしたいと願っていた。

ハ.中層マンションであるため、エレベーターはなく体の不自由な人には不都合であるが、リハビリテイションを兼ねた階段の上下で、かえって健康を維持できていた。歩行の困難な人は低層階に移り住めば問題はなく、費用が高くかからず、その可能性も多くある。多くの高齢者は住み慣れたマンションで、屋外空間が広いため、安い費用で路上または駐車場に駐車することができる。既に住宅ローンを支払い終えた人たちにとっては、少ないマンション管理料と安い駐車場料金で安心して生活できる豊かな住宅地になっていた。

ニ、老親と同居していない子供世帯は、老親の世話をしないでいたにも拘らず、建替えの話が出てきたとたん、親の財産目当てに、老親に「建替えを要求」して、子供たちの世代に「ぼろマンションを残してくれるな」といって、建替え賛成の態度をとる人(子供たち)も沢山いた。老人介護のことが心配である高齢化に向かう人たちは、同居していない子供世代を気にし、要介護生活になったときの不安のため、「子供の意見」で建替え賛成になった人もいる。親世代は、自分たちの生活環境が壊されることを悲しんでいる。

(15)現実のマンションの建替えが経済的利益を中心に強引に取り組まれた諏訪2丁目住宅団地では、その間、建替えによる利益を追求する人たちが、反対者に不当な嫌がらせをし、マンション建て替えに賛成をしない人を誹謗中傷する張り紙を団地全体の全住宅棟の全ての階段室に掲示した。
それに対し、被害を受けた住民が刑事告訴をしても、刑事警察には無視され、名誉毀損の民事訴訟をしても、多摩市長(行政機関)が建替えを推進しているため、司法はそれを却下してきた。そのような抵抗をした住民は、絶望して移転していった。
それを見て、この団地に嫌気がさした住民は、家族が精神的に追いつけられ、気力耐力を損ない、人生に希望を失い、病気になり死亡し、不条理を訴訟で争った本人も転出していった。残った住民間の亀裂は広がり、利益が対立し、反目が拡大し、この土地に生活し、団地の文化を築いてきた人たちは建替えによりばらばらにされてきた。

(16)立法の背景となった「経済第1主義」が、住民の間に鮮明な形で利害の対立を持ち込み、「建替を推進する人たち」にとっては,「建替えに反対する人たち」は、その利益追求の妨害者「敵」として、「我利・我利妄者」の憎しみの対象になっていった。
しかも、地方公共団体(多摩市)は、税収の拡大を建替え事業に期待して、建替え推進の立場を表明し、建替え事業に肩入れをしてきたため、公的機関支持する建替え事業側に、「社会的正義」があるような環境が作られた。

(17)これまで団地の生活文化を築いてきた人たち。中でも高齢者の人生設計として、当地を「終の棲家」として選択した人たちの憲法で保障された「居住の自由」は、事実上、蹂躙された。人びとが高齢化を迎え、低所得でも生活できる人生の生活設計として選んできた「終の棲家」としてのマンションは、これらの人にとっては憲法で保障されるべき権利である。「居住の自由と、マンション所有権の保護」の観点からは、いかなる事業法であっても、それらの事業法に優先して憲法の規定は尊重されなければならない。
問題は、マンション建替え円滑化法が成立したとき、当然、起きると予想された問題であった。つまり、「経済主義が、弱肉強食を引き起こす」ことを防止するために、国会では大義名分をかざした口先だけの大変な議論を繰り返し、衆参両院で付帯決議をした内容が、「単に、法律の建前に過ぎぬもの」として扱うわれるようになった。

(18)実際には、「経済主義万能」の政治と行政のもとで、行政機関も一緒になって国会の衆参両院の付帯決議を、「事実上遵守しなくてもよい」とした扱いをすることによって、重大の「住民切捨て問題」が発生している。行政による法令無視を司法が容認することで、憲法違反が現実に各地でやられている。しかし、それは国家と国民の社会契約(憲法)違反であって、法治国の国民としては容認することはできない。
分かりやすく言えば、マンション建替え円滑化法もまた、憲法の規定に優先することはで来ない。つまり、憲法という「国家と国民との社会契約という枠組みの下でしかマンション建替え円滑化法は有効でない」という枠組みの中で、マンション建替え円滑化法の施行の合法性の判断がされなければならない。

(19)マンション建替え円滑化法は立法に当たって、政党と議員たちの利害が優先して建替え促進の法律として成立したが、衆参両院ではこの事業法によって「泣く人を作らない」ことを法律の施行で担保するということで、付帯決議において民主的な手続きを必ず踏むことを決議した。その内容がマンション建替え円滑化法第4条を根拠に作られた2つ事業施行の手続きのマニュアルである。つまり、建替えを推進するためには、マニュアルでは、組合員自身が組合費を使ってマニュアルで定めた十分な検討作業を実施することを詳細に定めた。組合員自身が組合の費用を支出して、マニュアルで定めた建替えに向けての検討をすることで、組合の建替えに取り組む真剣さを確認することも期待された。

(20)衆参両院の付帯決議では、まず、「組合が建替えに絞って検討する」判断をする前提となる内容に関し、組合員が具体的な利害を判断できるような内容の検討をすることをマニュアルで定めた。それは組合員が建替えにともなう利害関係に関し、共通の判断材料をもとに「建替えか、修繕か」を検討することをすることを条件にした。
同じ判断材料に基づき、組合員が建替えに向けての判断をするという事業推進を決定する民主的手続きが不可欠であると考えられた。そこで、建替えに向かって検討段階を進めていくプロセスをマニュアルとして民主的に定めた。その手続きを経ることで、個人の財産権の保護を定めた憲法29条との調節を図ることにした。その規定が,マンション建替え円滑化法第4条に既定した「基本方針」である。

(21)国会では与野党全員が党利党略の免罪符として、マンション建替え円滑化法第4条の基本方針を具体化する民主的手続きを、2つのマニュアルとして定めた。このマニュアルは単なる手続きの「手引き」でも、事務的な取り組みの指針ではなく、この法律の憲法に抵触することがないようにする上での具体的に遵守すべき「民主的な手続き」である。このマニュアルどおりの手続きを踏むことが、憲法との調和を判断するための民主的手続きを実施したという「判別式」になると規定している。この手続きに従わない事業は、「憲法に違反する事業」であるといっていると同じことである。

一、第一のマニュアルは、「建替えか、修繕かの判断をするためのマニュアル」である。このマニュアルは、各住宅団地ごとに、団地組合自身がその費用で、組合員が建替えか、修繕か、の判断をするために必要なマニュアルである。そこでは建替え事業に関し、マニュアルで定めるような内容を、コンサルタントを使って専門的に内容の検討をし、その共通の検討結果に基づいて、「建替えに絞っての検討をすること」を組合員の5分の4以上の賛成で決定する「建替え推進決議」をすることが規定された。マンション建替え円滑化法に言う「建替え推進決議」は名称だけではなく、第4条基本方針を具体化した2つのマニュアルに定める具体的な検討を経た「実体のある」手続きを経たものでなければならない。

二、もう一つのマニュアルは、建替えか、修繕か、の両方の途を実施するための手続きのマニュアルを定めたものである。「建替え推進決議」をしたということは、組合員全員を拘束して、建替えに絞った検討をするというものである。そのため、そこでの検討は「実際の建替え事業をする場合の具体的な検討」を前提にしなければ、適正な判断はできない。実際に住民の希望する要件を取り入れた建替えのための設計図書を作成し、その見積価格を計算するためには、巨額の費用がかかる。そこで、衆参両院の付帯決議を受けて、事業計画作成費に対しては国庫補助金の支出が決定され、諏訪2丁目住宅団地の場合、5億2700万円の巨額の予算が国民の血税から支出するよう計上された。そして住民の期待する建替え事業が、徹底して検討された。

(21)政府はそのための費用を国庫で3分の2の補助金を負担(実際は国が3分の1、東京都と多摩市とがそれぞれ6分の1)し、住宅団地組合が3分の一の費用を負担するという制度を、「優良建築物等整備事業補助制度」を使って実施することが国会での審議を背景に決定した。この補助金は、上記(20)一号の「建替え推進決議」を補助金交付申請の条件としている。この補助金を受けた建替え事業計画を前提にし、組合員が最終の「建替えを実施するか、どうか」の判断をする手続きがマニュアルに決められた。

(22)国会で決定した「組合員の5分の4の圧倒的な過半数が建替えに賛成すれば、多数者の利益のために少数者を犠牲にできる」という単純な絶対多数では、「憲法で決められた個人の財産権を奪えない」という基本的共通認識があって、2つのマニュアルという「建替え事業に実施するために遵守すべき民主的手続き」が決められた。
その根拠となるマンション建替え円滑化法第4条で定める基本方針は、マンション建替え組合を東京都知事が認可をする場合の「認可の基準」(マンション建替え円滑化法第12条第10号)としても、明記された。それは、強制法としてのマンション建替え円滑化法が、「憲法違反にならない運用」をしなければならないことを明らかにするものである。

第2.諏訪2丁目住宅管理組合による建て替え事業

(1)諏訪2丁目住宅管理組合の場合、組合の理事長以下組合幹部が組合総会及び理事会の決定なしに、定款に根拠を置かない「理事長の執行権限」という独裁的な権限執行体制を理事長以下6名の理事及び組合員1名で形成した。そして、「理事長の意思決定原議」なる私的な謀議により、組合を私物化することがやられてきた。彼らは住宅管理組合の理事会及び総会の議決をすることなしに、理事長権限で旭化成ホームズ㈱に建替え事業を請け負わせるという約束をし、まず、その準備のためのコンサルタント契約を締結した。

旭化成ホームズ㈱は、「江戸川アパートの建替え事業を成功させた住宅会社」とTVで紹介されたことで、一躍、「建替え事業の専門業者である」ことを名乗り、諏訪2丁目住宅団地組合を手玉にとって、自社の思い通りの建替え事業に取り組んだ。

(2)まず、建替え事業化の方便として、旭化成ホームズ㈱は建替え推進団地組合幹部と共謀して、法律に違反した手段により国庫補助金を詐取することを計画した。その具体的な方法は、諏訪2丁目住宅管理組合に対し、マンション建替え円滑化法第4条に違反して、名称だけの「建替え推進決議」を行わせ、国庫補助金を騙し取り、それを旭化成ホームズ㈱自身が建替え事業を実施するために必要な設計図書及び見積書を作成するための費用とした。

(3)旭化成ホームズ㈱の補助金詐取の詳細な方法とは、国土交通省事務次官によるマンション建替え円滑化法施行通達に明記されている優良建築物等整備事業補助金制度要綱による補助金を、「建替えか、修繕かを決定するためのマニュアル」に定められた検討の手続き(マニュアルで規定する「建替え推進決議」)をしないで、名目だけの「建替え推進決議」を「建替えを進めるための調査費を国庫補助金として受けるために必要な条件」と組合員を騙して組合総会で議決させましたものである。
そして、「名称だけの実体の伴わない」組合員の5分の4以上の賛成による「建替え推進決議」を、優良建築物等整備事業補助金制度を根拠に認められることになった国庫補助金交付申請書に添付して、組合の理事会及び総会の議決をしない国庫補助金交付申請書を、多摩市長経由で国土交通大臣に申請した。

(4)それに対し、最初、多摩市長は、国庫補助金交付申請書が団地組合総会からの議決という裏づけを組合に対して求めた。しかし、組合には、「意思決定原議」以外の組合理事会、または、総会の議決はなかった。多摩市長は、国庫補助金申請自体が組合の正当な文書でないことも、補助金申請の条件となっている「建替え推進決議」も、マンション建替え円滑化法に定めたマニュアルによらないものであることを承知していた。しかし、多摩市長は建替え事業を実施することで、市の財政収入拡大なるという思惑で、建替え事業に積極的に臨んでいた。

(5)その上で、多摩市長は当時の井上国土交通省住宅局市街地建築課長からの「建替え事業実施の要請」を受け、組合から実体のない「建替え推進決議」でも、形式的な書類があればよいとして、補助金の交付申請条件を満足しない国庫補助金申請を受理した。
国土交通省の担当課長が違反を容認した理由は、地元選出国会議員と旭化成ホームズ㈱との要請と、担当課の実績作りを急いだためであった。形式審査しかしていないことから、申請書自体の形式が整っていさせすれば、本省としては「申請書を審査して補助金を適正に交付する」と言い、問題が発覚しても、「本省での審査の責任の追及を免れることができる」という考えを直接面談した組合員に明らかにした。

(6)住宅団地組合の建替え事業推進派は、国庫補助金を旭化成ホームズ㈱の言いなりに要求し、同社がやりたいと思う設計図書の作成に取り掛かることを支持してきた。その一方で、住宅団地組合の住民の20%以上が、依然、建替えに賛成していないことを承知し、建替え不同意者に対し、建替え事業賛成のための説得工作に旭化成ホームの建替え実績を利用した宣伝(資料配布や説明会)に力を注いだ。つまり、国庫補助金は、補助目的とは違って、旭化成ホームズの営業促進の人件費に使われた。

(7)しかし,旭化成ホームズ㈱には江戸川アパートの建替え事業が、成功事例としてTV報道されたことが組合の建替え推進派を取り込み、完全に手なづけることに成功した。そこで、同社はこれまでの経験を生かして建替え計画を進めていけば、そのうちに組合員の建替え同意は計画通り高まると慢心していた。そして、旭化成ホームズ㈱の過去の実績を組合員に示せば、建替え経験のない素人集団は短期に建替えに賛成するようになり、実体を伴わない「建替え推進決議」により始まった国庫補助金を受け入れた事業の違法性は、結果的に阻却することになると考えた。旭化成ホームズ(株)は、組合員はもとより、国庫補助金の交付に関係した行政機関を侮っていた。

(8)しかし、江戸川アパートの場合は、居住者として、所得の高い人が多かったのに対して、諏訪2丁目団地の場合には所得の低い人も沢山いた。事業計画を策定し、旭化成ホームズ(株)の営業活動に対する住民の反応は、組合幹部と旭化成ホームズの期待に反して、よくはなかった。その結果、旭化成ホームズ㈱の利益のために、建替え賛成者の利益を重視して進めた計画内容に対して、所得に低い人たちを切り捨てる形の建替え計画は、マンション建替え円滑化法第4条基本方針で定めたマニュアルで規定された80%以上の支持を得ることにすることは不可能であることが明らかになった。

(8)諏訪2丁目住宅団地組合による優良建築物等整備事業は、マニュアルに定めた手続きによらない「建替え推進決議」という「偽決議」により、国庫補助金を騙し取った上さらに、国庫補助金を「組合員の建替え要求を実現する計画策定」という補助金の交付目的どおりには使っていなかった。
補助金は補助金の交付目的どおり使わなければならないにも拘らず、組合員の要望を前提にした建替え計画ではなく,旭化成ホームズ㈱の事業としての費用として予算が使われた。そのような補助金の使用は、補助金等適正化法に違反するとして、組合員が、多摩市長を相手に地方自治法及び補充金等適正化法を根拠に「補助金の補助条件に違反した交付申請と交付目的に違反した補助金の不正使用で提訴する行政事件訴訟」をするともに、多摩中央警察署に対し、補助金の詐取を理由に、多摩市長、組合幹部、旭化成ホームズ㈱社長が刑事告発した。

(9)多摩市長を相手取った補助金等適正化法違反事件は、裁判所で多摩市長は「補助金は建替え事業のために使われている」という虚偽の弁明を繰り返した。最判官は、多摩市長の説明を信じ、原告の求めた「実際の事業に踏み込み、事実関係を調べること」をせず、多摩市長の主張を認めた。東京地方裁判所最判官は、「旭化成ホームズ㈱の実施した建替え事業計画が、建替え決議のための組合員の共通資料に使われる」という虚偽の説明を、その時点では「建替え決議」が実施されていなかったので、多摩市長の説明を「正しい」と認め、原告の提訴は却下された。このなすべきマニュアルに定めた実体のある「建替え決議」は、現在に至るまで実施されていない。

(10)刑事告発を受けた多摩中央警察署も裁判の動向を見て、告発内容に関する調べをしようとはしなかった。しかし、その後、旭成ホームズ㈱の作成した建替え計画では、組合員の5分の4以上の賛成が得られないことが明らかになった。そのことによって、組合幹部は、旭化成ホームズ㈱の纏めた建替え事業案を「建替え決議」に使うというマニュアルで決めた方法に従わないことに方針に変更をした。
「国庫補助金を受けて作成した旭ホームズ㈱の建替え事業計画案」は、建替え業者選定事業者競技の際の、専ら「旭化成ホームズ㈱の提案」として使うことにして、マニュアルに規定した「建替え決議の採決」そのものを、旭化成ホームズ㈱の作成した案では、実施することを放棄した。

(11)このことにより、「国庫補助金が補助金の交付目的外に使用されたこと」が明らかに証明された。多摩中央警察は、刑事告発の事実を認め、書類を検察庁に送付し、検察庁による調査が始まった。東京検察庁立川支部の緒方検察官の調査を受け、訴追を恐れた多摩市長は再選立候補を断念し、旭化成ホームズは建て替え事業からの撤退を決定した。
検察官は告発を受けて多摩中央警察刑事課で行った調査に基づく更なる調査をし、起訴するかどうかに関し、告発人からも意見を聴取した。その段階で緒方検察官は、告発人に「多摩市長を、被告発人から外すこと」を強く勧め、告発人は、本事件で起訴できるならば、「本事業の違反の事実が検察官の手で法的に明らかになる」ことを重視し、検察官の強い誘導を受け入れて、多摩市長を被告訴人から外すことに同意した。

(12)推測ではあるが、検察官が告発人に対し多摩市長を被告発人から外させることを進めた背景には、多摩市長に対する検察官の調査の中で訴追の可能性を匂わせ、不起訴をすることで、市長再選を思いとどまらせたとも考えられる。
結果的には、多摩市長を被告発人から取り下げたことが、逆に、起訴の論理構成を弱め、国庫補助金詐取の告発事件「不起訴」の扱いを受けることになった。告発人は検察審査会に「不起訴」の扱いをした緒方検察官の処分に対し、不服審査請求を申し出ましたが、検察審査会からは却下された。

(13)しかし、そのスキャンダルを隠蔽する方策として、初めから旭化成ホームズ㈱が諏訪2丁目建替え事業から撤退して、それに代わって東京建物㈱事業施行者となるという事業者の選定をする「できレース」が組合幹部、旭化成ホームズ㈱と多摩市長の間で決定された。これまで多摩市域で多数のマンション開発を実施してきた東京建物㈱に「損はさせない」という因果を含められて、建替え提案競技(コンペ)により施行者の権利を禅譲する筋書きが伝えられた。業者の提案競技(コンペ)は、東京建物㈱が圧倒的に有利になる条件として、「既存のマンションの利用床面積を保証した上に、各世帯に500万円の移転補償金を支給する」という「空手形」の提案をした。

(14)この東京建物㈱の提案は、補償金の合計だけで32億円という恐らく建替え事業収益に相当する巨額な資金を建替え住民に提供するというもので、旭化成ホームズ㈱の提案とは比較にならない組合員に手厚い提案であったから、建替え業者選定競技は、ワンサイドゲームで東京建物㈱に業者が決定された。その結果、旭化成ホームズ㈱はそれまでの法律違反を犯し、補助金を詐取したことを追求されないで、補助金を着服したままで、無傷で建て替え事業から撤退することができた。

(15)建替え業者が一社に絞られ、東京建物㈱以外に建替え事業のできる業者が登場する可能性がなくなった。そのときを見計らって、東京建物㈱と建替え推進組合幹部とが、申し合わせた筋書き通り、「リーマンショックの影響で選定時の条件では事業ができないので、1戸当たり500万円の引越し補償金の支給はしない」と通告してきた。このやり方に対して、これまで建替え推進の神輿に乗っていた元組合理事長が、「騙されていた、と言って反対した」とも、元理事長の「東京建物と組合幹部の謀議がなかったと言う潔白を演出する芝居」といううわさが団地に流れた。「死人に口なし」で真実はわからない。

(16)そして、組合幹部は組合員に対して「もし、その条件が認められなければ、東京建物㈱は、事業から撤退するという通告をしてきた。」と伝達してきました。この通告は東京建物㈱が事業者の提案参加(コンペ)に参加する際に、「組合幹部と裏約束されていた」条件であったと言われている。東京建物㈱には、最初から500万円の引越し補償金を支給する意図はなかったし、旭化成ホームズ(株)から東京建物(株)に建替え事業施行者を禅譲することに関係した組合幹部にも、500万円の補償金を東京建物㈱に要求する意図はなかった。そのため、組合員全体としては32億円もの損失になる問題を組合幹部は全く反対をせず、東京建物(株)の立場に立って、組合員問題にしようとすることをさせず「受け入れやむなし」の流言飛語を流した。

(17)組合幹部は組合員に対して、「東京建物㈱に補償金を要求すれば、建て替え事業が反故になる」ことを「危機」と宣伝し、組合員の不安を利用して「東京建物㈱組合側がにすがりつくような形」で「1戸当たり500万円の引越し補償金を貰わなくてもよい」という条件変更を受け入れることになった。東京建物㈱は、組合幹部による一種の組合員への恫喝により、32億円(640世帯×500万円)を「濡れ手に粟」の状態で手に入れた。

(18)そして、建替えを希望する組合員が、「建替えが実施されなくなるのではないか」という心配が残っている組合員の足元を見て、組合幹部は、建物区分所有法による「一括建替え決議」を提案しました。その建替え決議には「国庫補助金を受けて旭化成ホームズ㈱が作成した建替え事業計画を全く取り入れてはいない」東京建物㈱に建替え事業をやらせるという内容の事業計画を前提にしたものである。つまり、建物区分所有法における「一括建替え決議」は、マンション建て替え円滑化法第4条に定める2つのマニュアルに定める「建替え決議」の前提条件を持つものではない。

(19)その「一括建替え決議」は、参加組合員の圧倒的賛成多数で可決した。しかし、この「建替え決議」は、マンション建替え円滑化法第4条の基本方針に定めるマニュアルで定めた「実体をもたない名称だけの建替え決議」である。よって、この決議が建替え事業に賛成しない者を縛ることはでないし、建替え組合認可の基準に適合しないから、組合認可も認められない。
マンション建替え円滑化法第12条で「建替え組合認可の基準」が定められている。その第10号には第4条で定める基本方針に適合していることを条件にしている。建替え決議の実体は、建替え事業計画というよりも、建替え事業推進者が「東京建物㈱に逃げられては困るので施行者になってください」と平伏して願い出ると言った性格のもので、マンション建替え円滑化法で考えているものとは全く無関係な実体を前提にしたものであった。

(20)諏訪2丁目住宅団地管理組合は、建物区分所有法にいう「建替え決議」が得られたからという理由で、東京都知事に対して建替え組合設立の認可申請を提出した。それに対し、複数の組合員から、建替え組合申請はマンション建替え円滑化法第4条に違反し、同法第12条に定める認可の基準の基準に抵触するものであるから、認可をしないでほしいという異議申し立てが提出された。しかし、東京都知事は、その全てに対し、理由を説明せず、「却下」の処分を行い、建て替え組合を認可した。

(21)そこで、組合員のうち5名が、国土交通大臣に対し、行政不服申請請求を提出した。しかし、その不服申請審査請求に対して、国土交通大臣は審査申請人の申請内容を審査せず、審査請求人の請求内容には答えず、却下の採決を下した。そこで、国土交通大臣の教示により法務大臣を相手に行政事件訴訟を提訴することになったが、最判所の要請により、「被告は法務大臣ではなく、国とする」ことで、国を相手にした訴訟となった。

第3.裁判官が示した明渡し条件として提起されたマンションの強制差し押さえ価格の不当性の説明

(1)裁判官が示した和解条件は、「建替え事業により経済的利益を追求しようとする者」が、「建替えをしないで既存の環境で穏やかに住み続けようとする者」に対して、「建替えをしたいので明渡してくれないか」という申し出に対して、「建替えをしないで居住し続けたいと考える者」が、「明け渡しを強制する」マンション建て替え円滑化法を背景に「受け入れることのできる条件を検討してくれ」、という検討であったはずである。

(2)「明け渡しを強制するときの基本的条件」とは、憲法第22条、第25条及び第29条で国民の保障されている居住の自由、健康で文化的な最低限の生活と、私有財産の保護が守られなければならないということである。
債務者となっている二人は、これまでの人生設計として、諏訪2丁目住宅団地は、自らの経済力と生活様式を考えた上で、人生の終末を迎えるに適した「終の棲家」として選択してきた住宅が諏訪2丁目住宅団地である。長い人生設計で選択した住宅で、20年を越す住宅ローンを支払い終え、やっと、年金生活でも他人にお世話をかけなくても生きられるという誇りある人生設計をしてきた人たちに、マンション建替え円滑化法による建替え強制事業は、憲法において国家が国民に保障した生活をぶち壊すことになろうとしている。

(3)マンション建替え円滑化法は、建替えにより犠牲を受ける人に対して、憲法に規定に違反することなく、建替えを余儀なくされる人の犠牲を最小限にするよう計画段階から建て替え事業段階にわたって犠牲者の損失を最小限にし、その苦痛をなくするように施行することが制度的にも法律の施行通達にも再三記述されてきたことである。

(4)それに対し、債権者は、債務者はマンションって変え円滑化法第4条の基本計画に違反した「建替え推進決議」及び「建替え決議」であっても、その名称の決議をし、東京都知事が組合認可をしていれば、そのくみあいには、「不動産鑑定士の評価として、1,117万円を適正価格としての評価を受け供託しているので、それで明け渡しを請求して正当である」という主張をしている。裁判所は「債権者の主張を全面的に認めて、1,117万円を基礎にした金銭解決が、審尋における裁判所の結論である。」として、審理を打ち切ってしまった。裁判所は、審尋で債務者に提示した明渡し条件として提示した費用が、「債務者の生活補償の上で、一体どのような費用に当たるか」ということを全く考えていないところに、この審尋の基本問題がある。

(5)明け渡しを求められている債務者が、それを具体的に検討するためには、「現在のマンションで、どのような状態での生活を享受しているかという状況を説明し、それを奪われるとした場合、奪われることになる環境を再現しようとすれば、どの程度の費用が必要になるかということを説明し、その損失の回復は最低限埋められなければならない。」という主張を債務者側が始めた段階で、裁判長は審尋の打ち切りを宣言し、債権者の提示した「明渡し金額」がマンション建て替え円滑化法で定める政党はマンション買い取り価格であると断言した。

(6)債権者の提示した不動産鑑定士の評価した額は、以下のとおり適正な額ではない。
一.債権者が提示したマンションの評価額は、基本的に、諏訪2丁目住宅団地全体の更地価格から、既存マンション等の取壊し処理費用を差し引いた価格を640戸で除した「建替え世帯の平均現在資産額」である。マンション建て替え事業に賛成した人にとって、既存マンションの建築部分は取壊し費用が必要となるマイナス資産でしかない。しかし、当地でこのマンションに済み続けたいと願っている者にとってこのマンションは高い効用を提供する資産である。

二.このマンションの取壊し計画が始まる以前、この団地のマンション取引価格は、立地条件(住棟位置)、階数、AC(エアコン)など住宅設備のリモデリングされている程度により相違したが、1,100万円から2,000万円程度まで約2倍の価格差があった。住宅取引きは個別で行われ、団地全体の平均値での扱い自体、建て替えをするという人にとっては、既存マンションはすべて建設廃棄物であるから同じであっても、個別補償という観点では、平均値の議論は、適当ではない。全体で640戸の住宅団地で、30年余に期間の時代を経て、居住者の利用の仕方による市場取引価格が2倍近くある団地に置いて、平均値で住宅価格を査定するやり方自体に、現実の市場を反映しないもので、合理性は認められない。

三.マンション建て替え事業が非民主的に実施され、「買い取り価格が、1,110万円という価格」が提示されると、多くの失望した組合員は祖住宅を一般不動産市場で売却するようになった。そのときの取引価格の基本相場が1,300-1,400万円であった。
この価格が、債権者が提示している1,117万円に相当している額である。
現実に置いて明け渡しをしなければならない者に提供しなければならない提示額は、その額に引越し関係の費用、新しい財産に転換するために必要な登記費用を初め、必要な事務的経費、雑費等を加算した額を保障しなければならないことは、閣議決定された「公共事業に伴なう損失補償基準要綱」に示されているとおりである。

四.一方、建替え推進が既存のコミュニティを破壊する形で推進された結果、多くの住民が宅地建物取引業者に不動産を売却し、転出して行った。そして、これらの財産をマンション建替え施行者である東京建物(株)及びその関連会社が購入した。これらの購入マンションは、当面は、建替え事業を東京建物(株)の事業をやりやすくするための東京建物の発言権(権利者)となっているが、それらの権利は事業全体にとっては、権利変換を受ける住宅購入者である。東京建物(株)が権利変換を受けるマンションは、最終的に売却をしなければならないマンションである。それを現時点で売却するために、東京建物は建替えする前のマンションを「青田売り」する新手法として、違法にも、既存マンションを建替え後のマンションの買い手を確保する方法として「取壊し対象マンション」を新規マンションの「先売り(青田売り)」として売りに出している。
そのときの価格が、1,570万円である。これが現時点で債権者が債務者に提示している買い取り価格(1,117万円)に相当する価格である。この事実は、裁判所が提示した現在のマンション価格は、マンション施行者である東京建物㈱の評価に比較して453万円低いということになる。その費用に加えて、引越し関係費用が加算することとなると、少なくとも、この住宅団地平均で考えて、1,600万円以上の補償費を出すべきことになる。

(7)裁判官は「マンション建替え円滑化法の明け渡しを、供託人損失補償の理論は適用しない。」と債務者側の主張を繰り返し、何の根拠を示さずに断言し審尋を打ち切ってしまったもので、一体何のための審尋であったのか、単に債権者側の主張を裁判所での正当化するために、「審尋という形式」を踏んで形式を整えたというだけに過ぎない。その実体は、裁判官が「この提示額でどうか」と質問したのに対して、債務者が条件反射的に「都市難民となれ、ということですか」と回答せざるを得なかったほどの残酷な裁判指揮出しかなかった。裁判官は「都市難民とは何のことですか」と、「自分のやっていることが、債務者の生活にどのような残酷な結果をもたらすことになるか、も理解できないことを暴露する場面も起きていたことを、再度ここに指摘しておく。

(8)裁判官に認識して欲しいことは、「安心して豊かな生活を享受している国民の住宅を取り上げて、その国民を町中にほうり捨てるようなことをする権利はない。」という憲法で規定している基本的な考え方を再認識することである。裁判官は明渡しの下手人にならないからと言っても、審尋の結果が、債権者に債務者を都市難民にしても良いという大義名分を与えることになることを理解しなければならない。債権者がこれまで、国庫補助金の詐取を始め、マンション建替え円滑化法に違反して、その積み重ねの結果、建替え組合の認可を得て、不正を拡大していることは以上に説明してきたとおりである。

(9)債権者は、遵法精神がないだけではなく、債務者の生活を「屁理屈を積み上げても」できるだけ少ない費用で取り上げることしか考えていない者である。国家はそれまでこの種のならず者を泳がせてきたが、ならず者に正義があるわけではない。このことは、これまでの審尋でも、債務者が明らかにしてきたことである。裁判官がその債権者のお先棒担ぎをして、債権者の財産を「憲法及び関連法に違反して取り上げる」違法行為に、一貫して与してきたことは、裁判に対する国民の信頼を大きく既存する者として許すわけにはいかない。

(10)裁判官に、もし、憲法に従うことを宣誓して審尋を実施したという自負が残っていて、裁判官としての内在的制約を意識することができたならば、此れまでの審尋の流れを変更し、国家が国民と結んだ社会契約である憲法と、それに基づく実定法の有効とされる法律の境界領域に関し、裁判官は、再度、自省して、法治国のルールに従って、マンション建て替え円滑化法が如何なる社会的背景で成立し、施行させることになったかを考えて、裁判官の良心に照らし田結論をまとめなければならない。それはみずからに恥じることのない、法律に適合した「社会的批判に耐える」審尋の結論の決定をされることである。債務者としては、裁判官が、国家と裁判官の人生のために、憲法に照らして正しい結論を出すことを願わないわけには行かない。



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