メールマガジン

メールマガジン第419号

掲載日2011 年 8 月 29 日

メールマガジン第419号(8月29日)
DSCF0877みなさんこんにちは、
近畿能力開発大学校でのセミナーの話
先週、(8月23,24日、近畿能力開発大学校で田島教授と一緒に、ニューアーバニズムによる住宅地造りの2日間セミナー(理論編)を実施しました。全部で12名が参加されました。工務店の方や淡路市役所の議員・職員と混じって、中国とベトナム両国から日本に研修に派遣されている学生が2名参加しました。参加している学生を見て、日本の住宅関係者は、異口同音に、「日本の学生と比べると意欲がまったく違う。将来を考えると日本は中国に置き去りにされる」という感想を話していたことが印象的でした。中国やベトナムからの研修生たちは、しっかりと長期を展望する能力、意慾をもっていました。

日本の住宅産業関係者の共通した意識
かねてより、日本の住宅関係者と話をした後には、むなしさというか、後味の悪さを感じが残ってしまうことを感じていました。その理由がだんだんわかってきました。日本の住宅産業関係者の話は、「住宅を販売することを通して、いかにして客を掴み、金を支払わせるかということ」が全てです。客がその供給した住宅で「どんな豊かな生活(クオリティ・オブ・ライフ)をしてくれるか」という話がないということでした。
東日本大震災で大手建設業者が、緊急事態を口実に特命で工事を受注し、アウシュビッツの収容所にも劣る隣棟間隔のない仮設住宅を、1戸平均半日で造り50億円も売り上げ儲けたといって得意がっていました。枝野官房長官は、この仮設住宅に「3年以上居住させる」と公言しました。「自分で住んでみろ」と居住した人は言うに違いありません。
そこで、「誰がこの住宅にどれほどの期間、入るのですか」、と建設業者尋ねたところ、「そんなことは、私に関係のないことです。」という答が返ってきました。そのとき、「アッ、この感じだ。」と住宅産業関係者との対応を思い出したのです。

欧米の住宅産業関係者の意識
欧米で住宅の話を聞くときは、住宅販売をするセールスマンからは、「その住宅での生活や、将来、住宅地が熟成して、購入した住宅の資産形成が出来る」という話を聞きます。日本では住宅産業者が住宅取引で、「如何にお金をもうけるか」という話になるのに対して、欧米では、「住宅を購入する顧客の利益」が話題の中心になります。その違いを考えたとき、その違いの原因が金融機関の住宅ローンのやり方にあることがわかりました。
欧米の金融機関は、住宅ローンを出すとき、ローンを組んだ人が「ローン返済不能事故にあうこと」を前提にローンをします。返済不能になったら、金融機関は住宅を差し押さえ、売却し、債権(残債)を回収します。そのため、金融機関は住宅ローンの対象になる住宅が、融資期間内に値崩れせず、値上がりするような維持管理条件を融資の審査条件とします。
取引きの対象とされた住宅が、HOA(住宅地経営間陸橋開)の管理下に置かれた住宅であるか、どうかということは、将来的な資産評価の重要な審査内容です。
住宅購入者の住宅購買力は、金融機関の融資額で決りますから、購入者の住宅評価の判断基準も金融機関と同じです。そうすると、住宅産業者の住宅に対する見方は、購入者や、金融機関と揃えないと住宅販売ができなくなるため、金融機関と同じ判断をすることになります。つまり、住宅の資産価値が維持向上するような住宅購入者の利益を中心に考えることになります。

日本と欧米の住宅金融の違い
東日本大震災後、日本では「住宅の2重ローンの話」が政治と行政の場で議論されています。米国からやってきたニューアーバニズムの専門家たちが、その話を聞いてびっくりしました。「嘘でしょう!」日本で、そのような非文明的なことがやられていることはないだろう、といった驚きでした。
日本国憲法で生命財産を国家が保障すると決められ、真面目に納税してきた国民が、自らの責任ではなく、国家が憲法に基づく規定にもかかわらず、その財産を守ることが出来なかったときには、国家が国民との約束(憲法という社会契約)の履行をするために、つまり、瑕疵保証として、その住宅ローン債務は免除し、必要な住宅を取得するための支援をすることは当然だというのです。
世界中で、住宅が住宅所有者の責任以外で失われたときには、その住宅ローン債務も消滅するというのが常識です。そのような不動産金融―をモーゲージといいます。日本では、住宅ローンに際して、「抵当金融」と称して、「土地建物を担保に押えながら、その債務を担保として住宅不動産で相殺しようとせず」、住宅借主の信用で融資をするクレジットローンをしています。
借主の信用を保証することは連帯保証人制度もありますが、それは保障人の成り手が見つけられないので、生命保険で保障をしています。つまり、住宅ローン債務が返済できないときは、「死んで生命保険で支払ってもらう」という制度になっています。
その話を聞いた米国人はそれでは「ベニスの商人と同じではないか。」と驚き、「近代国家にこのようなことが許されるのか、信じられない」と言い、私が冗談を言っているか、嘘のつくり話をしているのではないかと何度も聞き返されました。
このような制度になっているための、住宅産業関係者は、自らの造っている住宅自体が住宅市場で、現在だけではなく将来においても、どのように評価されるかということには関心がないのです。居住者が快適に生活でき、みんながその住宅地と住宅に生活したいと願うことが、住宅の需給関係を決めるのです。
日本の住宅産業者の関心は、今、目先に売るべき住宅を、「如何に高い価格で売り抜けるか、」そのために、「どのような手練手管を使ったらよいか」、にしか関心がないのです。そこでやっていることは、「市場取引で決る価格ではなく、口先3寸で顧客を騙して金を巻き上げられるか、どうか」という詐欺商売になっているのです。その小道具が、住宅性能評価制度や、住宅瑕疵保証保険制度なのです。

英国とドイツの100以上前の住宅地研修旅行報告会
翌8月25日には、住宅生産性研究会のセミナールームでGKK=HICPMが7月に実施したニューアーバニズムのモデルとなった英国とドイツのガーデンシティの調査報告会が開催されました。豪雨のため欠席された方もいますが、ツアー参加者4名を含む19名が参加し、映像を見ながら何が学ぶべき点であったかを確かめました。
今回のツアーの目的は、住宅購入者が資産価値の高まる住宅(売買差益の得られる住宅)を得られるためには、現在欧米で一般的になっている個人資産を増殖できているシステムのモデルとなっているニューアーバニズムの源流を訪ねることが必要であると考えたためです。
今年6月「ニューアーバニズムの実現」というオールカラーの冊子を刊行しました。この冊子はニューアーバニズムの理論と日本各地で実践したHICPM会員による事例分析を纏めたものです。近畿能力開発大学の「理論編のテキスト」としても使いました。
今回の英国とドイツの住宅ツアーは、ニューアーバニズムの計画理論によって開発された住宅地の100年以上経過した姿を、ニューアーバニズムのオリジナル住宅開発事業が、100年以上経過してどのようになっているかを、見学して確かめることができるだろうという趣旨の研修ツアーでした。この研修ツアーの中で最も参加者の心を掴んだものは、ウイリアム.リーヴァーが19世紀末に開発したポートサンライトでした。

世界一美しい町・「ポートサンライト」
私自身今回が3度目ですが、訪問の都度その美しさの魅せられます。今回は改めて19世紀末の近代都市の原型としてジョルジュ.オースマンの提唱した「都市を公園にする理想」が英国の19世紀におけるピクチャレスクな環境づくりと結びついて、住宅地の全ての場所が心行くまでピクチャレスク(絵画的構図を持った)街造りとなっていることでした。この事業がハワードのガーデンシティの理論とレッチワースガーデンシティの実践に大きな影響を与えたことは間違いありません。
都市計画が優れたマスタープランとその具体的な実現方法として定められたアーキテクチュラルガイドラインを使って、個々の建築を美しく造る(クオリティーアーキテクチュア)によって実現できるという人文科学(日本のように「工学」としてではなく)としての都市学や建築学を実物で見ることのできる最高のモデルです。
この詳細は182号のビルダーズマガジンに少し工夫をして紹介することにしました。ご期待していてください。計画当初からクオリテイオブライフの実現を目指したリーヴァーも夢と実践が、100年以上たった現在、ユニ・リーヴァーに継承されているのです。

もう一つの美しい町・「コーラヴィレッジ」
今年の10月、NAHBによるリモデラーショウがシアトルで開催されます。その機会に合わせた、ポートサンライトと双璧ともいえるすばらしい工場町・コーラヴィレッジを見に行くことにしました。コーラヴィレッジは大きく3期に分けて取り組まれました。この街造りの第2期がフランク.ロイド.ライトの計画によってなされたと聞いています。
私は以前この町を訪問したとき、ポートサンライトを見たときと同じように「こんな美しい町があるのだろうか」と驚いたことを思い出します。そのときも季節は秋で、紅葉の美しさが、町の住宅と調和して、参加者は口を聞けないほど感激したのでした。
実は、ライトの街造り建築計画の思想もまたニューアーバニズムの重要な要素となっているのです。この機会には盛りだくさんですが、シアトルにストップオーバーで飛行機を降り、HOPE6の代表例のハイポイントとサスティナブルコミュニテイの代表例で25年かけてほぼ完成したノースウエストランディングを訪問します。
また、これからインテリアに懐かしい空間を造るために「古材再利用」の進んでいる米国の古材再生産(リモデリングによりとりこをされた住宅や家具の再利用・再生業者)を見学することを計画しています。

DSCF0899ニューアーバニズムの源泉を見学に
GKK・HICPMの研修旅行では、毎晩、GKK社長の小林さんか私の部屋にみなさんに集まっていただき、夜遅くまで、当日見学したことの復習と合わせ、私の説明によって理論学習をすることにしています。毎日が勉強の連続ですが、同じような関心をもった人たちと、住宅産業の取り組みの悩みを分かち合い、意見交換をして、約一週間経験交流をすることにより、お互いが勉強しあう機会になると思っています。住宅経営で悩んでおられる方も、更なる発展を目指しておられる方もご参加されるようお勧めします。詳細はGKKのホームページに掲載されています。
(NPO法人 住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)



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