メールマガジン

メールマガジン第423号

掲載日2011 年 9 月 26 日

メールマガジン第423号(2011年9月26日)
皆さんこんにちは
台風第15号
台風は東京を襲い、鉄道はほぼ全線マヒ状態で、前回の東日本大震災とは違いますが、副都心の駅のターミナルは混雑、食堂の店内は満員、入店を待つ長い列、店内には3時間以上居座った客。レストランは満員でも売り上げは上がらず、白けていました。私達も30分ぐらい店の前に並んでいましたが、行列はまったく動かず、ちょうど半年前の東日本大震災のときのホテル前のタクシー待ちで無駄な時間を費やしたことを思い出しました。
災害のときは、人は同じような行動をとるものだということを改めて感じました。

界壁:隣戸境界に立つ境界壁
福岡の㈱大建では、県庁の前例主義の法律適用に苦しめられています。かつて、福岡県で連続住宅に対し、「連続した2戸の住宅の二つの外壁を界壁として扱った」確認事例があったので、今回の㈱大建の場合も、「その例として扱わなければならない」という行政指導です。その確認事例自体が建築基準法違反なのです。
普通の街並みの中にも、敷地境界線に接して住宅が建てられていることがあります。その場合、「敷地境界線に接して建てられた二つの住宅の隣り合う外壁を、「界壁」という扱いを、「常識を持っている人」がするでしょうか。

法律違反の福岡県が作った前例
福岡県では、このような一般市街地に立つ隣地境界線に接して建設される住宅と、今回の連続住宅(住宅の登記上は専用利用の土地ごとに独立住宅として登記)とのあいだに、不動産登記上も、物理的にも違いがないにもかかわらず、前者は、「2枚の外壁がある」というのに対し、後者も、同じように、「2枚に外壁」があっても、それを「界壁」(境界壁の略語)であると、「界壁の規定」を適用しようと無理を強いてきました。「無理を通せば道理引っ込む」という日本の諺どおりのことがやられています。
特に福岡県の論理の面白さは、「かつて、福岡県がやった法律違反が、すでに前例になっているから、それに従え」、という論理です。自分の県が法律違反を犯しても、反省をしないで、逆に「福岡県がやったことが、法律だ」というのと同じ無茶を通そうとすることです。

法律は、まず、その文理に照らして解釈しなければなりません。その際、「適用の境界条件が合理的であるか、どうか」を考えなくてはなりません。2×4タウンハウスという建築計画が、法律制定後に新しく登場してきたわけですから、法律制定時に予定していなかった建築物にどのように法律を適用するかという扱いの問題です。それに既存の法律を適用するときには、必要な読み替えをすることが法律の読み方として、当然やらなければならないことです。

「福岡県の常識」の非常識
㈱大建は、建築の常識と法律上の規定に沿った文理解釈を基に法律適用を決定します。それでも疑義が残る場合には、かつて、住宅金融公庫が実施してきた2×4工法モデルタウンハウス事業を3年間で1,200戸近く建設してきた事例を、参考にするべきです。
金融公庫モデルタウンハウスの扱いは、「接道上は1棟の長屋として扱われるが、2枚の外壁が隣り合って建てられているため、適用すべき界壁が存在せず、界壁に適用される遮音構造と準耐火構造の規定は適用する対象が存在しないので、適用はできません。」

この遮音構造の政令を作成したとき、私は、建設省の担当係長として経験したその間の説明を福岡県にしました。私が話をした県のN建築指導課長は、私の説明に対し、「あなたの説明を正しいと、文書(証拠)をもって証明することができるか」と追及してきました。
それは、私の説明に合理性がなく納得できない場合に言う言葉です。私の法解釈に法論理に立った反論ができず、私の法解釈を立法時の経緯を思い出して説明したのです。
立法時の法令審査など関係者は基本的に議事録にはしません。必要なことを個人的なメモとして残すことはあります。当時の担当官である私に対して、「お前は嘘を言っているのか」というのと同じ内容の失礼な物言いをするのを聞いて驚きました。

悪夢の思い出
そんなこともあり、当時のことをいろいろ思い出しました。私は、建築研究所で作成した遮音基準の条文の音響技術的な内容が分からないまま、建設省文書課や内閣法制局の法令審査を受け、大変恥ずかしい経験をしたことがあります。それを今になって思い出させられましたが、嫌な思い出を思い出させられるのはなんともいやな気分です。
それは、周波数と遮音性能の関係をよく理解せず、遮音の基準が最低基準として適正であるという説明をしたところ、周波数と遮音性能との関係がどのようになっているのかという技術的内容の質問でした。その数値の規定のしかたの合理性の説明ができず立ち往生をしましたのでした。法令審査の担当官は法律事務官ですが、ハム通信のマニアで音響に関しプロ並みの知識を持っており、技官の私をからかってやろうと思って質問をしてきたことを種明かししてくれました。

2×4工法モデルタウンハウス
その後、私が2×4工法のわが国でのオープン化を急ぐため、北米の2×4の技術基準を基本的に理解しないまま作成し、それまで米国の技術をつまみ食いして、建設大臣の特例許可を受けた事例の最大公約数としての基準をまとめ、建築基準法に基づく告示として交付しました。(米国・カナダの技術基準を日本に読み替えたものではありません。)
その2×4工法をもとに、住宅金融公庫がモデルタウンハウスとして推進することになり、建築基準法上の扱いが問題になり、私が相談を受けました。
その際、「タウンハウスは独立した住宅を隣地境界線に接して並立させる形式である。独立した住宅とすると接道条件で普通の計画をしなければならなくなるので、長屋の扱いを受けることにした。」という説明を受けました。そのとき、「集団規定上、長屋の扱いを受けると、遮音構造の規定の適用があるので、どうすればよいか」という質問でした。

二つの長屋:元祖「長屋」と読みかえ「長屋」
もともと、タウンハウスは独立住宅を隣地境界線に接して並べる住宅であり、それぞれの住宅は、独立した住宅で各住宅の外に面している壁は外壁です。その外壁には、外装こそ施す必要がないのですが、外壁としての構造として造られています。
「住戸の外壁」には、遮音構造の適用をする必要がないという法律構成になっています。それが隣地境界線に接して建てられたからといって、「外壁に遮音構造」を要求してはいません。外壁に要求されない規制を、外壁に要求することはありません。
住宅の棟の扱いとして、「長屋の扱い」をするようになり、長屋の規定を適用する」としても、「タウンハウスに存在しない界壁」に存在しない「界壁の規定」規定を、「外壁」に適用することには、法律上の無理があります。かつて、私のそのような説明で、住宅金融公庫指導部の方は納得して、「2×4タウンハウスの遮音構造では、問題にする必要がない」という扱いをし、関係建築主事にしてきたはずです。

北米の技術に日本の法適用
また、2×4工法は、北米の基準では、各住戸はファイアーコンパートメント(防火区画)となっていて、住戸間の延焼は、通常の火災によっては、まったく起こりえません。その上、遮音上十分高い性能も持っているので、実質上、日本の長屋の界壁の規制基準に比べて、遥かに高い防耐火性能も遮音性能を持っています。そこで、その実性能に関し、「それが界壁の技術基準以上であること」の証明を求めること自体、常識では考えられない扱いです。日本での防耐火の規制は、外部から火災が迫ってくるという「被害防止」の考え方で建築基準ができているのに対し、欧米では、人間の済んでいる空間から火災が発生し、それら壁を付き壊して隣戸に迫るという「加害防止」の考え方でできています。外壁2枚は、十分強力な耐火性能をもっていることはいうまでもないことです。

建築基準法の規定を適用することの目的は、法律の第一条に書かれた目的どおりです。規定されている内容より建築技術的に見て高い性能を具備していることが判断できることに対して、建築基準法どおりの物差しで決められていることを要求する福岡県の建築行政のやり方には、全く理解できません。

元建築行政に携わった官僚として、現在の建築行政の乱れは、行政の信用にかかる大事であり、何とか糾すようにしなければなりません。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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