メールマガジン

メールマガジン第426号

掲載日2011 年 10 月 23 日

メールマガジン第426号(10月19日)

皆さんこんにちは

10月12日から10月19日まで米国のNAHBリモデリングショウと合わせてシカゴとシアトルのリモデリングの現状の調査をしてきました。

今回のGKKとHICPMのリモデリング調査は、米国の住宅が現在どのような仕組みで動いているかを知るうえで大変興味深い事実を見ることができました。米国は依然住宅バブルの後遺症から回復できないでいます。しかし、米国の中でも住宅による資産形成が確実に進んでいるところをまのあたりにすることができました。

ワシントン州の最も経済的ポテンシャルの高いシアトルのクイーンアン、マグノリアを現地で見学して、この地の住宅地経営管理が、住宅の資産価値を高める最大要因にしている事実を実例として納得したというだけではなく、これこそ住宅産業関係者に見てもらいたいと思いました。この環境にほうり投げ込まれた住宅は、例外なく資産価値を高めていることが確かめられ、理論と実践の照合関係をこれほど面白く感じたことはこれまでに経験したことがありませんでした。

ワシントンポストに掲載された記事がそのきっかけになったといわれます。クイーンアンの丘やマグノリアを始め、シアトル北部の丘陵地は20世紀の初めボーイング社とともに、中産階級向けのシアトルの郊外住宅地として開発されたところは、開発され始められて以来、多くの人達の憧れの住宅地として、それぞれの住宅に対する思いをこめて建てられ、この土地の歴史文化を築いてきました。この住宅地のよさを評価してこの地に住宅を建築した人たちは、この住宅地からの眺望を享受するというだけではなく、この地に形成されてきた街並み景観に憧れ、自分たちもその街並み景観の担い手として誇りをもって、居住するようになっていました。

ワシントンポストは、この地区の生活を丘陵にある30近い長い階段と町全体が公園になって、多くの人達が犬の散歩をしたり、ジョッギングをしたりする毎日がリゾートライフのようなゆとりがあり、人びとが声を掛け合い、挨拶をしている生活を見て、現代の自由時間都市と感じたことを記事にしていました。
マイクロソフト、ボーイング、アマゾン、スターバックシスなど取り上げれば、きりがないほどの世界規模の大企業がひしめき合うワシントン州の中心都市の高級住宅地は、多数の家族の憧れの住宅地となって、圧倒的な売り手市場になっています。

ここに集まってくる人たちは、この地の歴史文化空間を享受しようと願ってやってくる「教養があり、知的水準の高い」人たちです。これらのこの地の街並みや住宅の歴史文化に憧れてやってくる人たちは、それらの街並みを造ってきた住宅の外観を基本的に尊重し、自らの家族のライフスタイルや嗜好を生かしたデザイン、機能性能を持った住宅をインテリアで工夫し実現しています。住宅の価格としては、新築の住宅を建設するよりもはるかに大きな費用を掛け、これまでの住宅をリモデリングして快適な生活を実現しています。

今回研修ツアーに参加した日本人は、ほとんど全てが、「どうして建て替えをしないのだろうか」という疑問を投げ掛けていました。今回の研修ツアー参加者は、日本の住宅産業界の中では、世界的視野を持った優秀な人たちでしたが「同じように高額の費用を投入するならば、住宅は建て替えるべきだ」という感想が出たことから考えると、日本の住宅産業界を汚染してきた政府、及び多くの御用学者の罪は大きすぎると感じました。

住宅が土地に建築され、土地の一部に吸収されるという世界の常識が通じない国が日本です。住宅は土地利用計画として決められた都市空間の一部の担い手で、決して独立して存在できるものではありません。
都市のマスタープランも、日本では、都市工学的な機能、性能のマスタープランですが、欧米では、都市の歴史文化空間としてのマスタープランをいいます。マスタープランは街並み景観の形成の計画といっても過言ではありません。都市の景観を破壊し、自己主張する建築は欧米の都市計画では認めていません。そのため、安藤忠雄や高松伸のような建築をこのような住宅地に建築する自由(放縦)は、社会的に許されません。

都市計画上の土地利用として許されない土地は、取引の対象にはならず、価値は認められません。そのため、これらの住宅地の土地所有者は、そこで決められた土地利用計画に沿って住宅を建築し、その資産価値を享受しようとします。つまり、都市または住宅地のマスタープランとそれを具体化するアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)にしたがって建築物を建てることが、その土地の価値を最も高くすることになります。

現在土地と建築物の価格を日本的に評価すると、その比率は8:2になっています。しかし、その条件は、その土地に決められた都市計画とアーキテクチュラルガイドライインに適合した場合であって、それに逆らって建築しようとする場合には、建築自体が許可されないだけではなく税金は高いままで、事実上、土地利用はできないことになります。

つまり、計画通り利用できない土地は、高い税金は課せられますが、その期待通りの価格では取引きされません。不動産市場でも、その敷地に定められている土地利用計画や建築設計指針に適合しない建築物は取引自体の対小にはならず、価値はゼロになります。しかし、マスタープランとアーキテクチュラルガイドライインに適合した住宅は、多くの人の需要の対象に成り、高い価格で取引されています。ワシントンポストで紹介されました。外部からシアトルに移り住むことになった多くの人で、クイーンアンやマグノリアに居住しようと願って来た人たちはこの地のマスタープランとアーキテクチュラルガイドラインに従って自宅のリモデリングをします。

そこでは、驚くほど高額な支出をして既存住宅地の街並み景観を尊重したリモデリングをしています。これらのお金持ちが居住することに伴い高級ブティックやレストランやカフェー、商店街も作られています。そのためこれらの高級な商品を生活に取り入れて生活する人たちにとっても住みやすい街として、町全体が高い所得の人たちの町に移行しています。しかし街並み景観は壊されず、優れた造園により、ランドスケーピングとして、ますます魅力ある町になっています。

かつてジョルジュオースマンが近代都市の原点をパリ大改造計画で示してくれたと同じようなすばらしい公園都市がシアトルに出現しています。そこでは高所得者のリモデリング工事が盛んに行われ、素晴らしい庭園が町中に広がり、多くの居住者が散策し、ジョギングをし、犬の散歩をし、カフェーやレストランで談笑しているという風景が拡大しています。つまり、クイーンアンやマグノリアは錬金術の環境のように、そこにある住宅とここに住む人たちの住宅資産を高い価値に引き揚げています。

このレポートの詳細は、2ヵ月後のビルダーズマガジンに掲載しますのでお楽しみにしてください。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長戸谷英世)



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