法令

都市計画の法体系の再生

掲載日2011 年 11 月 7 日

「都市計画の法体系の再生」

目    次
はじめに                                                    1頁
第Ⅰ部 実体論
第1章    都市計画法と建築基準法は姉妹法の関係                 3頁
第2章    開発許可制度                                         16頁
第3章    開発許可制度の運用実態                              28頁
第4章    道路に関する法令                                      42頁
第5章    道路法令の運用実態                                   50頁
第6章 「一敷地一建築物」の原則                                 52頁
第7章     都市計画法と建築基準法の骨抜き                     64頁

第Ⅱ部 手続論

第1章    原告適格の理論-―都市計画法及び建築基準法第3章に関係する不服審査請求
の原告適格の範囲-―                                                                   72頁
第2章 行政不服審査請求機関 ―最高裁判所の2判例批判―         84頁
第3章 行政事件訴訟の条件:審査会前置の前提                                               92頁
第4章 行政の「不作為」と不服審査請求                        96頁                    
第5章 都市計画法による開発許可権者                        110頁


はじめに
現在、東京都において、都市計画法第33条に違反した開発が「開発許可不要」として違法に容認され、又、超高層マンションや超高層ビルが都市計画決定された法定容積率の2倍もの容積及び高さで、特定行政庁の例外許可を受けて実施されている。その理由は、バブル経済の崩壊により、不良債権が金融機関を苦しめ、土地所有者の経営基盤を奪ってしまったことから、政治的に土地を規制している容積率及び高さを緩和して、不良債権となった土地に、それを回復する分だけの容積率を加算する政治的対応が求められたからである。
小泉内閣による規制緩和の多くは、拙速的にできる法律改正と、法律上の改正もなく、また都市計画法と建築基準法との関係を確かめずに、建築基準法が都市計画法で決めた「強制できる枠組み」(都市計画決定で与えられる公共性)の限界を逸脱する許可を行政上認めたものである。これはいずれも、都市計画決定に裏付けられた計画公権(「計画高権」とも言う)と、都市計画法と建築基準法とが姉妹関係にあるという法律の構成を無視し、又は、蹂躙して、開発許可、都市再生事業、総合設計制度、総合的設計制度、高さ制限の緩和などの行政が行われたものである。
その結果、既存の建築基準法及び都市計画法の全体体系を十分吟味せずに、一連の緩和を実現するためだけに、牽強付会な解釈を持ち込んで拙速的に行われたため、既存の法律体系に多くの矛盾を持ち込むことになった。そして、都市計画法の枠組みを逸脱した建築基準法行政が、都市計画決定と切り離した特定行政庁の許可によって、一人歩きできるかのように行われることになった。そして、建築基準法行政は、姉妹法体系として都市計画法と建築基準法とで構成された公共性の法律構成と矛盾する「糸の切れた凧」のように、特定行政庁限りで都市計画決定を解除できるかのような事態へと行政が変質することになった。
当面の経済的な利益の追求という政治的な要求に応える現実の行政と、都市計画決定という長い期間で健全な都市を形成するために立法され、維持されてきた法律の条文に明記された法律の体系と、その都市計画決定を実現するための建築規制を排除する小泉内閣の「規制緩和」立法・行政体系との矛盾となって、その皺寄せが国民生活に及んでいる。
現実の開発事業は、不良債権問題処理の政治主導の規制緩和という錬金術により、開発許可制度を実質上骨抜きにして、容積率と高さ緩和を受けて、不良債権は軒並みに良債権となった。そして、大不良債権土地を保有していた都市再生機構をはじめ、多くの土地を保有するデベロッパーの経営基盤が改善された。そこに米国の住宅バブルで生まれた潤沢な資本が、外資ファンドの投資と言う形で活発な開発事業を誘発した。しかし、規制緩和は、拙速的な対策で、目先の土地の高度利用を許容するものであったので、既存の都市計画法の空間秩序は蹂躙された。その皺寄せは、開発周辺の都市域の環境の悪化、交通の渋滞、災害危険の増大、都市活動の不経済という形で及んでいる。
都市計画法か、建築基準法か、いずれの行政の正当性を重視するかについて、具体的な行政運用で混乱が生まれている。事実上、政治と業界は、末端の建築規制を緩和する方向を求めている上、行政全体がバブル経済以後、それまでの行政に対する自信を失っているため、経済を活性化するという政治家の要請に応えて、行政主導で現場での違反容認実績を積み上げて、都市計画法の体系を蹂躙する方向に進んでいる。
都市計画法の蹂躙は、現実の都市計画を蝕み、国民の生活環境を悪化させている。行政庁の法律運用が法律に違反しているとして、多くの住民たちが、行政不服審査法及び行政事件訴訟法に基づいて行政不服審査請求や、行政事件訴訟を起こしても、それを扱う開発審査会、建築審査会は、いずれも処分庁の主張を追認するだけであり、行政事件訴訟においてまで、審査会と同様、「行政の実態が容認し、社会的に実積がある」として、行政の処分または不作為を追認してきた。その背景には、行政法学者の多くが行政OBで、現役時代に法律の現場追随解釈を正当化する解説を書き、それが行政法学の場で批判されず、かつ、行政法に対する司法及び法曹界の知識の貧弱さがあることが指摘される。
そのため、司法及び法曹界は、行政法をまじめに取り組もうとせず、官僚が書いた行政をやりやすくするための解説を法律の条文以上に尊重し、過去の現状追認の法律違反容認の判例を、あたかも法律の条文のように利用していることにある。日本は成文法の国であり、まず、第一に重視するべきものは法文自体である。英米法で慣習法と言うのは、控訴審の判決であって、日本のように初級審の判例や、法律を無視した行政通達や行政解説が法律に優先されている自体を改めなくてはいけない。それを改め、適正な対応をするためには、都市計画法と建築基準法の原点に立ち返り、立法趣旨、立法の経緯及び法律の文理解釈を踏まえて、現行法秩序の遵守されるべき基本を明らかにして、法律の正しい施行を回復することである。
本検討作業は、成文法国の基本に立ち返るための検討で、都市計画法と建築基準法の法律の文理に照らして、法施行の正しい姿を明らかにすることを目的としている。
(現象として現れてきた違反事例)
渋谷区富ヶ谷、鶯谷、目黒区青葉台2丁目、板橋区常盤台、世田谷区千歳烏山、文京区湯立て坂、関口、町田市玉川学園、玉川学園8丁目、玉川学園6丁目、稲城市平尾、茨城県守谷、


第Ⅰ部 実体論

第1章     都市計画法と建築基準法は姉妹法の関係

1 土地の私的利用と空間の社会的利用の矛盾
民法第207条は、「土地の所有権は法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と規定している。土地の所有権は相隣関係、都市計画規制や航空規制などのように、都市空間の社会的な利用が、法令により規制されている場合以外は、排他独占的に使用できる規定がある。これは、「土地は私的に所有される」という性質と、都市空間は光、風、雨、熱、電磁波、太陽光だけでなく、自然界の動植物は自由に敷地の境界に縛られることなく往来している、つまり「都市空間は社会的に利用される」という性質の矛盾を調和させるための都市計画法という都市空間の秩序を定めた行政法上の根拠である。

2 まず都市計画法に基づく都市計画決定がある
都市計画法は、都市空間の社会的な利用について、都市計画決定により「住民の合意の計画確定」をすることで、都市計画決定内容を計画実現及びその後の都市空間管理を確実にするために私権を従属させることのできる「公共性」を付与している。この計画決定に強制権を付与した権限を「計画公権」(「計画高権」ともいう)と呼ぶ。
都市計画法では、専門的な知識を駆使して都市空間の社会的利用計画を立案し、それを国民が利用者の立場から主権者としての意見を述べ、都市計画決定に至る国民の合意形成の民主的な手続きを定めることで、その決定について、主権在民の立場に立った都市空間の合意形成という行政法上の立法行為であると考えられていて、場合によっては、私有財産を収用することのできる高い公共性を付与していると行政法上されてきた。

3 大正8年(1919年)の市街地建築物法と都市計画法
現行の建築基準法は、昭和25年(1950年)制定当時から、その前身である大正8年(1919年)に制定された市街地建築物法と都市計画法との関係を、そのまま踏襲してきた。即ち、建築基準法第3章は、都市計画法と一体の関係を持って作られ、都市計画法によって都市計画決定された都市の基本計画(マスタープラン)を、都市計画決定により付与された公共性を背景にした強制規定、即ち、建築基準法第3章で建築物とその敷地の関係としての建築設計指針(アーキテクチュアルガイドライン)による規制を通して実現するという法律構成である。このように都市計画を、都市計画法と市街地建築物法の2法によって実現するという世界に例を見ない法律構成となった理由は、明治時代に端を発する。
明治時代、わが国は、不平等条約の改正(関税自主権の獲得、領事裁判権の廃止等)をするため、欧米に対して、欧米先進国に遜色ない近代国家であることを示すべく、ソルボンヌ大学の法学部主任教授(ボアソナード)を招聘して、民法を始めとして、人権を重視する近代法体系の整備に取り組んだ。ボアソナード民法は、「民法出て、忠孝滅ぶ」といわれて陽の目を見ることはなかったが、明治政府は、法律体系の整備に取り組む一方で、外国人が居住し、又は出入りする都市(横浜関内、築地、銀座等)に、西洋風の近代都市のデザインによる市街地を建設した。
その延長線上で、近代首都東京の都市計画に取り組んだものが東京市区改正条例である。当時の都市計画は、農村整備に使われた「農区改正」に対立する概念として、都市計画のことを「市区改正」と呼んでいた。都市計画(市区改正)については、当初、英国やフランスをモデルとして考えていたが、やがて、岩倉具視欧米調査団の海外視察の結果、日本がモデルにするべき西欧はフランスではなく、封建的な色彩の濃いプロシャ(後のドイツ)であることが、明治政府の認めるところとなった。
そこで、ビスマルクの建築顧問(エッケ、ベックマン)が招聘され、首都計画を作成するとともに、内務省を中心に、ドイツの都市計画法(バオゲゼッツ)と、建築法(バオオルドヌング)とを、保健衛生と医療との関係から受け入れることになり、それらを国の指導者階層が駆使できるようにするために、高等教育の中にドイツ語教育が採り入れられた。
陸軍軍医総監医学博士森林太郎(鴎外)が、内務省と一緒にドイツに出張し、伝染病対策を都市計画・建築規制との関係で学ぶためにバオオルドヌング(建築法)の調査に出かけた。それがその後の大阪府建築取り締まり規則に利用され、やがて市街地建築物法に反映されることになる。
明治末期に大阪北で発生した火災の後に、その事後対策として取り纏められた大阪府建築取締規則は、当時の内務省がドイツで学んだ都市計画法(バオゲゼッツ)と建築法規(バオオルドヌング)を国内で実践したものである。このような経緯を経て、1919年、それまで英国やフランスをモデルに検討してきた「東京市区改正条例」の検討成果として、都市基盤となる都市施設と土地利用計画を定めた都市計画法、ドイツの「建築線」行政から都市計画に従った建築規制、防疫対策として欧米で施行され、建築法規で規定されていた建築物の安全と衛生とを扱う市街地建築物法が、一体不可分の関係にある法律として制定されることになった。
このように、都市計画決定された地域地区の基本計画(マスタープラン)に対応して、建築物を市街地建築物法の敷地と建築物との関係の規制として定めた建築設計指針(アーキテクチュアル・ガイドライン)で規制するという都市計画と建築規制の一体不可分の法律関係の施行構造を、1919年の両法の制定当時から「姉妹法の関係」と呼んでいた。このように「姉妹」というよりも、都市計画法と市街地建築物法の二法で一体的に都市計画を実現する「シャムの双子」のように、分離することのできない法体系を持っている例は、世界中で他に例はない。
このように都市計画法と市街地建築物法を二分することになったもう一つの大きな理由は、日本の民法が作成されたときに、欧米では例を見ない土地と建築物をそれぞれ独立した不動産として扱い、独立した登記ができるようにしたことが挙げられる。土地はそれ単独では効用を発揮できず、そこで予定された工作物の建設により、初めて都市的土地利用の効用を発揮できる。不動産事業の社会科学的性格は、土地の開発造成から工作物の建設までが一体不可分の不動産加工事業である。欧米では、建築不動産その理論どおリの一体的な取り扱いをしているのに対し、日本では法律により、本来社会科学的には一体不可分として扱うべき建築不動産を、土地と建築物とを、それぞれ、分離できるとして民法を制定したところに、不動産評価を含む取り扱いの狂いが生まれている。

4 昭和25年(1950年)建築基準法制定におけるGHQの影響
昭和25年(1950年)、それまで警察行政(都道府県警務局建築行政課)として施行されてきた市街地建築物法が廃止され、それに代わって、新しい時代に適合する法律の整備が求められた。当時の市街地建築物法を改正して、新しい建築法規の立法に取り組んだ戦災復興院建築局(その後、昭和21年からの建設院を経て、23年に建設省となる)の伊東局長、内藤監督課長、前田事務官、小宮技官が、基準法制定に取り組んだ。
昭和24年、GHQ(連合軍総司令部)は、国内の米軍の兵舎の建設を的確に行うために、米国のUBC(統一建築法規)を持ち込んで、基地の建築物の建設に使用した。そして、日本政府の関係者に対しても、米国の建築法規を提示して、日本の山林から製材させ、米国から石膏ボードを輸入し、ツーバイフォー工法によって米軍兵舎を建築させた。その関係から、日本の政府関係者の中にも、米国のUBCを読む機会が生まれ、市街地建築物法の改正に取り組む関係者に、新しい考え方が採り入れられることになった。
当時の日本では、GHQの存在は、戦前の天皇以上の行政監督権限あったが、連合軍司令長官であったマッカーサー元帥は、その占領政策に独自の考え方を持って臨んだ。マッカーサーは、既に日本が敗戦になる以前から、日本の国家再建を彼の考える理想の実現として考えていたと言われている。そして、当時旅客船1艘分のニューディール派約1000人を日本に招聘した。
ポツダム宣言受諾に当たり、日本政府の最大の関心は「国体維持」、つまり、天皇制の護持であった。マッカーサーは天皇制を護持した形で、米国が1929年の世界恐慌から立ち直ったニューディール政策の経験を、日本で民主主義を上意下達の方法により再現しようと考えた。GHQが占領政策で与えた民主主義に対して、日本国民は2・1ストのような形で占領政策に抵抗することで革命が実現できるといった幻想に振り回されたことを見てマッカーサーは「日本を8歳の子ども」に例えた。
GHQの取り組んだ占領政策は、基本的に、国民の自発性に働きかける方法で、財閥解体をはじめ、軍国主義な復活を完全に破壊すると共に、国民が中心となる民主国家の建設であった。その占領政策のやり方は、驚くほど日本人の自主性を尊重する形で、日本の国情にあった創意工夫を掘り起こそうとするものであったが、日本の国民の民度自体がその期待に対応できず、結果的にマッカーサーの期待に応えた回答ができず、GHQの指示が強行に示されるといった結果に終わったとも言われている。つまり、それが戦後の民主主義は、指導された民主主義であって、国民が勝ち取ったものではなかったといわれる由縁である。
当時、建築基準法の立法作業も同時に進められ、戦後復興に必要な民間の活力を生かす行政法として、建築基準法は、建設業法や建築士法とともに「建築三法」と呼ばれていた法律の制定作業の全てに共通していた。建設業法はその後、行政による公共事業の業者管理の法律として利用されることになったが、当初は、民間建築事業のためとして作られた。
米国が日本の関係者に示した米国の関連法規を、GHQは将来の日本が持つべき法律の一つのモデルと考えて、それらを日本の関係者に示して、日本人による自発的な民主法規の制定を促した。しかし、現在の時点で考えてみると、当時の日本の関係者には、それらが十分理解できなかったのではないかとも考えられる。
特に米国のUBCは別として、建設業法や、建築士法のうち、業者登録以外の工事請負契約業務の履行に関する法律は、控訴審判決を整理分類し、編集した慣習法(コモンロウ)であることから、建築関係法に関する慣習法自体を読みこなせることがなく、その成文法化には多くの困難が伴ったようである。
昭和25年の建築基準法制定当時には、建設院は建設省になり、伊東局長、内藤指導課長、川島事務官、前川技官が、内閣法制局による建築基準法の法制審査を受けていた。GHQの審査は、この国内の法律の法令審査を受けたものについて、審議の前に国会で審査を受けることになっていたが、事前に非公式にGHQの意向を打診することもやられていた。

筆者は、当時の伊東局長の下で建築基準法の検討に携わった前田事務官や川島事務官が住宅局長や調査官時代に住宅局に勤務し、断片的ではあったが当時の取り組みの話を聞くとともに、小宮技官及び前川技官には、建築基準法第5次改正時の建築審議会委員及び建築指導課長という直属の上司として仕え、法律制定当時の話をよく聞かされた。

5 建築基準法と昭和43年(1968年)新都市計画法の制定
昭和25年の建築基準法は、市街地建築物法が県庁所在地など都市計画区域にしか適用されなかったのに対し、全国適用となり、法律の構成も、全国適用になる第2章(単体規定)と、都市計画区域にのみ付加される第3章規定(集団規定)の体系として作られた。昭和25年、市街地建築物法は一旦廃止されて、新規に建築基準法が制定された。都市計画区域に関しては、従来までの都市計画法と市街地建築物法との関係はそのまま、都市計画法と建築基準法第3章の関係として踏襲されることになった。
日本の経済成長は、60年に日米安全保障条約体制になって以来、池田内閣による所得倍増計画と自由化政策の展開により、経済成長に押された都市集中は急激な速さで進行していった。都市化の発展により、都市の基盤整備としての都市施設の建設が経済成長に追いつかないことが社会問題化した。それを受けて、都市計画法の全面的改正が取り組まれることになった。そのとき、建設省における都市計画法の検討は、ニュータウン開発や都市のスプロールに大きな成果を挙げた大都市ロンドンの都市計画制度、中でも計画許可制度に倣うことが最も有効であると判断された。
建設省は、新都市計画法制定のため、多数の職員を英国に留学させるとともに、英国の都市計画行政研究者を招聘して、英国の都市計画法体系を中心に学ぶことが行われた。都市計画法改正担当者は、英国での都市計画や都市計画事業の経験者で纏められた。中でも英国の計画許可(プランニングパミッション)制度は、日本の都市開発を制御する上で有効な制度と考えられたことから、都市施設の整備と開発を調和する制度として、集中的に検討されて、新都市計画法が制定されることになった。その概要は次の通りである。
①英国の計画許可制度(プランニングパミッション)に倣った。
②開発許可に関する不服処理機関として開発審査会制度を新設した。
③開発許可の内容の登録制度により、開発内容を維持させることとした。
④都市計画区域内の調査を5年ごとに行い、計画内容の検討を義務付けた。
⑤都市計画施設予定地の建築禁止と、計画決定地の買い取りを義務付けた。

6 昭和43年(1968年)の新都市計画法の施行
昭和43年(1968年)制定された新都市計画法は、日本の都市化の急激な進展に対して、都市基盤施設、都市開発、建築活動が、調和をもって進めるためには、既成市街地と市街化を積極的に進める区域と、農地として保全する区域と市街化を抑える市街化調整区域とに区分(線引き)することになった。この都市開発区域の線引きとともに、都市計画法第29条による開発許可制度が、英国の計画許可(プランニングパーミッション)制度に倣って創設された。それは一定規模(1,000㎡)以上の敷地に建築物を建設しようとするときには、その予定建築物のための土地の整備と都市環境への影響が、法定都市計画と既存の都市の開発の実体と調和して行われるように、予定建築物の計画内容が、その敷地に期待されているように整備されるような開発として成されている計画であることを審査し、許可する制度として、開発許可制度が整備された。
その開発行為を予め、都市計画法第33条に定める「開発許可の基準」に適合することを審査して許可する「開発許可制度」により、その開発がまず、その敷地に定められている都市計画決定の内容に適合する計画であることが求められ、次いで、既存の都市に矛盾を発生することがないようにすることが審査され、都市施設が未整備なところでは、開発業者が、その負担により、自己完結的な開発にするか、または、その開発を受け入れられるような都市施設の負担をすべきことが求められることになった。開発許可基準として定められた基準は、道路、公園、下水道、上水道(都市計画法の条文上の公共施設ではない)、河川、学校その他の公共施設にわたるものであって、それらの審査は、開発申請者が開発許可申請に先立って、開発の関係する公共施設の各行政法上の権限を有する施行者によって審査させることとし、審査に合格した場合には、その開発業者に対して開発の同意を与えることとした。そして開発許可権者は、開発許可申請書に添付された同意書が開発許可の基準に適合していることの証明書であることを審査して、開発許可を与えることとした。
都市計画行政は、都市計画の民主化を促進するために、それまでの建設大臣(国)が直接施行する体制から、都道府県知事に機関委任事務として、その実施主体が移された。しかし、都市計画法と建築基準法との関係は、開発許可制度により土地整備が行われない限り、建築行為をしてはならないことになった。
そのため、開発許可制度による開発計画及び開発工事が完了し、検査に合格して、都市計画法第36条に定められた完了公告が出されるまでは、第29条の係る開発許可による計画の実体は形成されていないという法律の構成に従って、建築基準法による確認申請に当たって、審査するべき建築基準関係規定に開発許可どおりの開発行為が完了した敷地につてしか、確認申請を受けつけてはならないことになった。
建築基準法で定めている確認制度では、建築計画段階と工事段階のいずれの場合も、都市計画法との関係においては、それらが建築基準関係規定(建築基準法施行令第9条第十二号)に適合していることを「都市計画法第29条第1項」と定めている。これは都市計画法第3章第1節、開発行為等の規制の冒頭の条文で、第29条から第36条に定める工事完了公告までの事務を含んでいる規定である。
このように新都市計画法が制定されても、開発許可以外の都市計画法と建築基準法との姉妹法の関係は、そのまま踏襲されることになった。つまり、都市計画で決定したことを建築基準法第3章の規定による建築行政により実現するという関係は、基本的に維持されたのである。

7 新都市計画法による計画と建築基準法による建築規制(第3章規定)
都市計画法と建築基準法は、大正時代に都市計画法と市街地建築物法が制定されたときに、市街地建築物法の適用区域は大都市、今で言う都市計画区域に限定されていた。そこでは、都市計画法によって、建築物のあるべき計画として許容できる枠組みを決め、それに対応して、市街地建築物法では個々の建築物の建築規制を行うという法律構成をした。
都市計画法による手続きにより都市計画決定された内容自体が公共性の高い(計画公権に裏付けられた)ものであるとされることから、都市計画決定された都市の基本計画(マスタープラン)としての地域地区(都市計画法第8条)を、個々の建築行為で実現する建築計画に対する建築設計指針(アーキテクチュアル・ガイドライン)としての建築規制(建築基準法第3章)の強制力は、都市計画決定によって付与された計画公権を根拠にしたものである。この強制力は、憲法第25条及び第29条を憲法上の根拠として、国民に対し直接的に国家が保障する建築物の安全及び衛生を保障した単体規定(建築基準法第2章の規制)とは違って、同じく憲法第25条及び第29条を憲法上の根拠としながらも、直接的には、都市計画法による都市空間利用の都市計画決定による民主的合意を根拠に構成される計画公権を背景にする公共性である。

8 建築基準法第3章規定の公法規制ができる法的根拠
都市計画区域内の住民のコンセンサス(共通理解)の下で、都市計画決定がなされた都市空間の利用内容自体が、社会的に住民に高い利益を提供する「公共性、公益性」のある土地の都市空間の利用として、国民の私的権利に優先すると位置づけられた。この都市計画決定による計画内容に対する建築基準法第3章の強制権を裏付けている公共性が、計画公権(「高権」とも言う)と呼ばれているものである。
都市計画決定に対する違反及び建築基準法第3章規定に違反は、いずれもそれぞれの行政が違反是正をする義務を負っていて、それを履行するまでの間は行政による不作為が継続していることになる。よって、行政による不作為に対して、行政庁による不作為による公共の利益を奪われた国民には、違反が是正されるまでの間、エンドレスに行政の不作為を是正する要求をすることが出来ることになっていて、そこには時効は存在しない。また行政法違反を放置しておけば、その上に違反行為が重なることになり、その是正が一層難しくなることから、行政法違反は可及的速やかに是正されなければならない緊急を要する問題である。
市街地建築物法時代は、都市計画法の施行区域と市街地建築物法の施行区域は同じで、建築規制の強制権は、都市計画法と市街地建築物法との両法による都市空間利用の公共性と、国民の生命と財産の保護のために国家が保障すべき建築物単体の安全性の両方の法律に根拠を置くと考えられていた。
この構成が昭和25年(1950年)の建築基準法の制定で、同法が全国適用になり、都市計画区域以外にも共通に適用になる「全国一律適用となる第2章の単体規定」と、都市計画区域を対象にする付加規制を定めた「都市計画区域に適用となる第3章の集団規定」によって構成されることになった。
そこで、第2章に対する行政法としての強制権の根拠は、憲法第25条及び第29条で、国家が国民に約束した「安全で、衛生的で、文化的な生活環境と財産権」の保障をするとした社会契約事項に憲法上の根拠を求める直接的な安全規定として具体化された。
それに対し、第3章の公法規制は、同じ憲法の規定を前提として「都市計画法に基づく都市計画決定を行った計画内容は、憲法の定めた公共性のある計画内容」であることによって、それを実現するために建築基準法第3章の公権力を行使できるという法律構成をとってきた。つまり、建築基準法第3章は、都市計画法で公共性を与えられた都市計画決定の実現として、公共性が認められているものである。建築基準法施行者である特定行政庁に付与された例外許可権限も、都市計画決定された範囲内で、その建築敷地の特殊条件に合わせて個別に微調整するための例外許可であって、都市計画決定と基本的に矛盾する例外許可が出来るような法律構成に放っていない。
都市計画決定したことに関して、建築基準法の第3章(都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途第41条の2~第68条の9)において「一敷地一建築物」の原則に基づき建築物を強制的に建築規制する法律構成を取っているため、都市計画法第11条で定めた「一団地の住宅施設」のような都市計画決定をした都市施設に関しては、第6章雑則、第86条で定めることになっている。しかし、都市計画決定をしていない「一団地の住宅施設」に対し、第86条で「一敷地一建築物」の原則を、基本的に排除することは出来ない。
都市計画法第8条で定めた地域地区の範囲で、計画内容により具体的に詳細に定める地区計画については、都市計画による地区計画に対応する建築規制は、建築基準法第68条の2を根拠とした条例により、建築規制の内容を定めるようにしている。地区計画は地域地区として都市計画決定された範囲内での地区の詳細計画であって、都市計画法計画決定に矛盾することがあってはならない。
同様な例は、建築基準法第59条の2を根拠にした総合設計制度である。総合設計制度は第3章の規定であって、「一敷地一建築物」の原則に立って取り扱われ、都市計画決定された地域地区と矛盾する運用は許されない。特定行政庁に許された総合設計制度による許可権の範囲は、都市計画決定された地域地区の建築規制を敷地の近隣関係の範囲で微調整することまでであって、都市計画決定内容として定められた第3章規定を逸脱してはならない。

9 都市計画に関する欧米の考え方(土地と建築物の関係)
(1)都市を分析する3つの視点

日本は欧米の近代都市計画を学んだといってはいるが、そこで実際に日本で使われている技術は都市工学だけであって、都市歴史学や都市文化学や都市デザイン学といった人文科学としての、世界で共通した都市計画学や建築学はやられていない。同様に、都市経営学、都市施設管理学、都市建設経営学、都市行政学、都市法制史といった基本的な社会科学としての都市関係学を全く学んでいない。都市の機能や性能に関し、それらを工学的に処理する技術として、日本の都市工学が研究され、教育されてきた。
近代都市計画の父といわれるエベネツァー・ハワードの「明日への田園都市」(ガーデンシテイ)という著書は都市関係学者、研究者、行政官、デベロッパー関係者によく読まれている本である。しかし、その中でハワードが最も重視した開発地全体を一元的に計画し、一元的に経営管理しなければならないことが日本では等閑視されてきた。
都市はモザイク画を造るように、都市を歴史文化の集積として人びとが豊かな生活文化を享受出来るような基本計画(マスタープラン)を造ることが求められる。そして、マスタープランどおりに建築物というモザイクを的確に並べていく都市形成の方法として、都市を当初計画した基本計画(マスタ-プラン)どおり建設するために、各敷地に建築物を建築設計指針(アーキテクチュアル・ガイドライン)どおり建築させ、経営管理するために必要な都市の経営管理システムも基本的に学んでいなかった。
現在の日本の都市で、最も基本的な無理解の例は、土地利用計画の最も重要な土地利用規制の基本として、戸建住宅地(シングルファミリーハウス)と共同住宅地(マルティファミリーハウス)という土地利用を渾然一体として扱っていることである。土地利用規制は、都市の空間利用がそれらの土地利用による地代負担能力に左右されることから、土地利用規制区分は、開発密度を基礎とし、戸建て住宅地(シングルファミリーハウス)と共同住宅地(マルテイファミリーハウス)とは、別の土地利用区分とすべきことが、日本では完全に無視されてきた。
都市を考えるとき、次の3つの点から見ることが必要である。この3つの視点は一つの都市の3つの面であって、都市のどの部分をとっても、人文科学、自然科学、社会科学という3つの科学的側面を持っているということである。この3つの視点を総合的に考えて都市住民の生活を豊かにするための都市計画を造ることになる。

(ⅰ)人文科学的視点
都市は生活文化という市民の無形文化を豊かに営む器である。そのためには、都市はその土地が育んできた人類の歴史文化を現代の都市住民の生活文化形成にどのように生かすことが出来るかという視点で都市の空間を評価し、都市空間造りを考えることになる。都市環境といった場合に、人々の文化的帰属性の根拠として最も重視する点が、歴史文化環境である。
都市空間といった場合には、人類がその土地に構築した工作物(建築物を含む)のみならず、人類がこの土地に持ち込んだ植生や動物の全てが人類の歴史文化と関係がある都市文化の産物と考えている。
都市空間を都市計画という観点で扱うときにそれを3次元としてではなく4次元として考えている。つまり、樹木の成長が都市自体の歴史を育む立体空間として視覚に入るものだけではなく、歴史上この場所にあったという時間軸の中に、かつて存在したものや、人々の営みやその遺構が、現代の都市に住む人の生活文化環境になっている。
4次元の歴史のつながりを持った都市空間を、都市住民は自分たちの現代に繋がる歴史として認識し、都市に対する帰属意識を抱くことになる。そこで都市住民が4次元の都市空間を容易に把握し、それを連想することが出来る工作物を造り、土地の名称や地図など文書上に記録することで、都市環境を豊かに享受するようにすることが都市計画の大きな役目である。人文科学的視点とは、このように人々は歴史のつながりの中にあるという視点である。それらのうちの多くは、いずれも現代の人々の都市計画の中に法定都市計画として位置づけられることで、市民が歴史文化とつながりの持てる都市空間とすることができる。

(ⅱ)自然科学的視点
都市がその機能を適正に果たすことが出来るためには、都市の地盤、地理地形、気候気象などの自然環境とともに、そこで人類が都市生活を営むために必要な人間が築造した道路、河川、公園、下水道、上水道、電気、ガス、教育施設、社会福祉施設等の都市生活に必要なインフラが、自然科学的な合理性を持って、安全で衛生的に造られていることが必要となる。そこには都市生活を営むために必要な住宅、商業、工業といった土地利用が行われることになる。西欧人は、これらの建築物(アーキテクチャー)を含む工作物(ビルデイング、バオ)の集積として都市が建設されると考えてきた。
都市に建設される全ての工作物(建築物を含む)や都市施設が、安全で衛生的に造られるためには、物理学、水文学、水理学、林学、化学、植物学、動物学など自然科学の法則を尊重することが求められる。そのため自然環境は、それ自体がエコロジカルな自然体系を尊重して維持管理されるとともに、又、都市の歴史文化環境を、自然科学的に安全に維持管理することが人類の都市文化にとっても、サスティナブルな(持続可能性の高い)コミュニテイを建設するためにも必要であると考えられている。特に緑は2次元での緑被だけではなく、3次元での立体での緑容積が、CO2削減や、空気清浄化や気化熱による気温を含む3次元の都市の微小環境には重要な指標になっている。

(ⅲ)社会科学的視点
都市はそこで政治、経済、文化活動が営まれるところである。都市には多種多様な社会的属性を持つ人々が生活するが、それらの人々が都市で豊かな都市生活を営むためには、それぞれ基本的人権という固有の尊厳と多様なライフスタイルを尊重しあうことをお互いに認識しあえる都市空間を造ることである。そして、人々の生活の基盤であり、個人資産の中で最大の資産である住宅の資産価値が維持向上されることがなければならない。そのために、都市活動におけるお互いの自由で平等な政治、経済、文化活動は尊重されなければならない。そのためには、それらの社会的属性の違う社会階層が、相互に対等で、自由で、公正な競争が出来るような社会的ルールが作られるとともに、そのルールを居住者の自治によって守ることの出来る社会的なシステムがなければならない。
限られた土地の上でおこなわれる経済活動において、経済的に公正な競争が保障されるためには、基本的に地代負担能力の違う土地利用が同じ土地に対して競合することがないように、例えば、商業・業務と住宅や、同じ住居でもシングルファミリーハウス(戸建住宅)とマルテイファミリーハウス(共同住宅)とは、競合しないように土地利用としては分離しなければならない。そして、計画された町を計画されたとおりに利用するルールが作られ、そのルールを遵守しない者に対しては、遵守するように強制することがなければならない。
一般的に、住居、商業、工業といった土地利用も、それぞれ都市空間利用としては異質な土地利用であるから、分離して計画することが必要である。その空間分離の方法は、必ずしも二次元「平面」でなくても三次元(立体)であっても良い。都市が夜間でも賑わいのある豊かな空間であるために、立体用途計画がなされていて、低層階を商業・業務とし、中層階を住宅とする計画が一般的である。しかし、最近の新しい計画論としてミックスドユースという用途が違った土地利用でも日常的な生活空間として有機的関係が構成される小規模な商業や業務を住宅地の中に混合するかつての自然発生的な都市空間の良さを復興するニューアーバニズムとしての「徒歩圏で結ばれたコミュニティー作り」の取り組みが始まっている。土地利用が複雑化すればするほど、計画どおりの利用を実現するルールが必要になる。
人間の生活空間は、地上から出来るだけ近い所で営まれるべきだと考えられていて、高層住宅は例外的にしか認められていない。英国では、歴史的に専用の庭を持たない住宅は住宅ではないと考えられていた。そのため4、5階建てのテラスハウス「縦方向に権利が重ならない住宅」(シングルファミリーハウス)が一般的であった。
近年は共同住宅も建設されるようになったが、その都市計画事情の立地地区規制は、シングルファミリーハウス(戸建住宅)地区には建設できなくて、マルテイファミリーハウス(共同住宅)地区に建設されている。さらに、中層住宅までであれば、居住者の地区に対する関心は、シングルファミリー地区ほどではなくても、高層住宅居住者と比較すれば、はるかに高いことが、多くの調査の結果明らかにされている。そのため、都市という人々の生活の場としては、住宅は中層住宅より高いものは望ましくないと考えられている。
都市住宅は、都市の生活空間とのつながりが重要で、地面での生活との関係の少ない高層空間にある住宅は、人間関係の薄い望ましくない空間と考えられている。人間関係の薄い都市空間は犯罪に弱い空間であるとされ、経済活動の盛んな時代に一時高層住宅が建てられた時代もあるが、現在は高層部分を撤去する取り組みが、ドイツ、英国、フランス、などのヨーロッパ各地で取り組まれている。

(2)都市計画(土地と建築物は不可分一体の関係)
都市計画法のことをドイツでは、バオゲゼッツ(bau gesetz)と言う。バオ(bau)とは英語のビルデイングと同義語で、人間の営為によって作られた工作物の全てを指し、建築基準法でいう工作物と同義である。道路や橋梁、トンネルなども全てバオであり、ビルデイングである。しかし、日本ではバオもビルデイングも建築物と言う訳語を宛てるため、バオゲゼッツが建築法と訳されたり、建設法という訳語を当てたりされてきたが、バオゲゼッツというドイツの法律は、間違いなくドイツの都市計画法のことである。
その法律の考え方は、その名前のとおり、土地の上に人工的な工作物(バオ)が建設されるという考え方に立っている。工作物(バオ)が構築される法律(ゲゼッツ)を都市計画法(バオゲゼッツ)という。欧米で理解している土地(素地、造成地、建築物建付け地)の経済的関係は次の通りである。

ⅰ造成地
日本では土地と建築物とは独立した全く別の不動産とされ、不動産登記法では、土地とその上に建つ建築物とは、全く別に自由に取り扱うことの出来る不動産として扱われている。そのような非常識な扱い、即ち、土地と建物とを別の独立した性格を持つものとして登記し、独立した不動産価値評価をする国は、日本だけである。
世界中の国では、土地の上に建築された建築物は、土地と切り離して扱うことが出来ないので、土地と一体のものとして法律上扱われ、土地と一体不可分な不動産として登記されている。その考え方は、全ての土地の上で行なわれる人工的な営為は、宅地造成も、住宅建設も土地(不動産)の加工である。住宅建設は、土地に描かれた下絵(基本計画)に対して、住宅というモザイクを並べることで、住宅は土地の加工・熟成である。土地と建築物それぞれは不可分の関係として土地利用を決定するもので、土地造成と住宅建築とを別の不動産の加工とは考えない。当然その不動産の価値評価は、土地と建築物一体でしか行われない。
たとえば、素地を造成するときに、造成地都市開発計画で設計された土地の加工計画に従って土木用の資材と労務により造成工事が実施され、造成地が完成する。その造成地はもはや素地部分と造成部分とを分離することは出来ない。造成地は全体として造成地であって、そこでなされた造成工事はあたかもキャンバスに絵の具を載せた素地の加工であって、絵の具はキャンバスに塗られた瞬間からキャンバスの一部になってしまう。

ⅱ建築物建付け地
全く同じ理由で、造成地の上に都市計画で定められたマスタープラン(基本計画)にしたがって、そこに定められた敷地単位での土地利用計画に適合した建築物がアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)に基づいて建築されることになる。この場合、建築物は土地に建てられた瞬間から、あたかも、モザイクの下絵の上にモザイク職人がモザイクを並べて固定するように、モザイクの石はモザイク画の一部になってしまう。欧米の都市計画図書の中に、都市をモザイクに例える記述が頻繁に登場する。土地の上に建築物が建てられて初めて建築物の効用を発揮する。同じ建築物でも立地が変われば、建築物が提供する効用は皆相違する。同じモザイクを使っても、並べ方によってモザイク画は別のものになる。
住宅は土地の上に建てて、土地の一部になってしまう。そして、人々は住宅を購入するが、実はその住宅を購入してその場所(土地)に生活の拠点を置いて享受できる生活環境を購入しているのである。英国や米国で「住宅を購入するときの最優先条件は何ですか」と質問して回ったところ、殆ど総ての人が、「ロケイション(立地)です。」と当然のように答えてくれた。そして、住宅はその土地に建設されることで土地の一部となり、年収500万円の人たちのすむところに年収1000万円の人向けの住宅建てても、年収500万円の住宅並みにしか取引されない、と説明された。日本でも住宅購入者の行動は、世界の不動産の取り扱いと同じ考え方で住宅を土地と一体に選択し、土地と一体に購入しているのである。

(3)都市計画と建築設計指針で決定する都市空間の公共的利用
都市計画は、市民の豊かな都市生活をする場を創造するために、人文科学、自然科学及び社会科学的観点から、土地利用計画を作成し、そこで計画したとおりの都市が造られるようにマスタープラン(基本計画)に対応した4次元のアーキテクチュアル・ガイドライン(建築設計指針)で都市空間が造られることになる。日本の都市計画法と建築基準法との関係で言えば、都市計画法第8条の地域地区及び第11条の都市施設の都市計画決定が都市の基本計画(マスタープラン)となり、建築基準法第3章(集団規定)が、都市計画区域内に建築される建築設計指針(アーキテクチュアルガイドライン)となる。
一般の都市開発におけるアーキテクチュアル・ガイドライン(建築設計指針)は、マスタープラン(都市の基本計画)との関係において、歴史的環境に関しては、それを再現したり、又はその記念となる工作物をつくり、若しくは、サイン(標識)として示すだけではなく、歴史的建造物や、歴史的眺望を確保できるように工作物の建設や維持管理するなどの方法において3次元空間で規制やられることになる。
都市空間は光、風、雨、熱、電磁波、太陽光だけでなく、自然界の動植物は自由に敷地の境界に縛られることなく往来している。つまり、都市空間は社会的に利用されているもので、土地の所有者が排他独占的に利用できるわけではない。そのため、所有権が区画されている敷地相互の間でも都市空間利用における使用上での排他的競合関係が生まれることになるため、その調和を図ることが必要となる。
その社会的問題を調和する方法として、都市空間利用に関する社会的利用方法のコンセンサスをつくり、それを私的利用に優先する形で立法化することにしたものが、都市計画法に定めた民主的な手続きによる都市計画決定による土地利用方法の確定である。
都市計画制度が生まれる以前には、英国には、デイード・レストリクション(Deed Restriction)といって、土地利用に関する形態規制を行い、それを公正証書にまとめ登記することで、土地の譲渡があっても、デイードは土地とともに離れることなく、一体的に土地利用を拘束する制度があった。そのため、「デイードは所有者とともに走る」とも言われ、デイードがあれば、それで土地利用規制が出来るため、都市計画法を制定しないでデイードだけで都市の空間規制をしている都市もある。
以上説明したように都市空間は私的所有権により支配される土地と建築物により埋め尽くされているが、社会的利用されている都市空間を建築物が排他独占的に利用しているわけであるから、その排他独占的利用には社会的コンセンサスを前提とした都市空間利用のルールが必要となる。そのルールの中で都市計画法という行政法としてのルールが、都市計画法計画決定であり、その内容を詳細に定めたものが地区計画である。また、都市計画法の枠組みの中で土地に権利をもつ者の間で都市空間利用のルールとして定めるものが建築協定である。
都市は長い年月をかけて造られ、住み継がれて行くものであるから、都市空間の利用のルールは、都市居住者が従うことができる民主的なルールでなければならない。そして、長い年月にわたって守られることが必要である。つまり、私有財産であっても、一旦、都市空間に建設され、社会的認知を受けた建築物は社会的存在となって、都市空間の形態及び意匠の担い手になって、街並み景観を構成することになる。
そのような訳であるから、社会的合意を得ないで都市内の工作物や自然を勝手に取り壊し、改変を含む取り壊しをすることができない。取り壊し改変しようとするときには、行政上の許可や住民間での社会的同意を受けるという社会的な了解が必要とされることになる。
都市開発の場合、前面道路に面した壁面(ファサード)や前庭(フロントヤード)は,街並み景観は「街並みの重要な顔」としての構成要素である。そのため、英米の都市では土地利用に関し、公正証書により都市開発の基本計画(マスタープラン)戸建築設計指針(アーキテクチュアルガイドライン)という土地利用を拘束するデイード・レストリクション(土地利用制限約款証書)のほか、その住宅地経営管理に関して、開発業者、住宅所有者および住宅地経営管理協会(HOA)が締結する基本契約約款(CC&RS:カベナント・コンデイションズ・アンド・レストリクションズ)により、維持管理を義務付けている。住宅地ごとに住宅資産を守ることを目的にした自治団体として、住宅地経営管理協会(HOA:ホーム・オーナーズ・アソシエイション)が設立され、住宅地の管理ルール(基本契約約款:CC&RS)により、住宅所有者に対してCC&RSを遵守することを強制できることになっている。建築基準法の第4章の建築協定の原型がこの基本契約約款である。基本契約約款は、基本的に民事契約ではあるが、そこにはコモンロウ(慣習法)に裏付けられた強制規定を契約に織り込んでいることで日本の民事契約とは性格が違っており、建築基準法体系に取り入れられた経緯がある。
このように都市空間は、都市住民にとって、人文科学、自然科学、社会科学的に重要な共有する環境財産(宝)として、都市計画決定という計画公権と、契約自由の原則に基づく民事契約を国家が日本では民法が、又は、英国や米国では、慣習法(コモンロウ)を背景にして契約の実現を国家権力で担保することで、都市住民の生活文化を大切に守り育てている。このように都市計画法は、人々の生活文化環境を守るルールなのである。


第2章     開発許可制度

1 新都市計画法の立法趣旨
開発許可制度は昭和43年(1968年)に新都市計画法が制定されるまでは、わが国には存在しなかった制度である。それまでは建築確認制度だけで建築物の審査がやられていたので、都市計画法制定当時、開発許可の基準のうち、「用途の制限」(第33条第1項第一号)という地域地区(第8条)及び都市施設(第11条)に関する都市計画決定された都市計画に適合していることを審査する開発許可制度は、これまで建築基準法で行ってきた建築物の確認制度に、屋上屋を重ねる制度ではないかと、建設省内部で住宅局から都市局に対し問題が提起されていた。
しかし、開発許可制度は、もっぱら予定建築物が既存の都市計画法及び都市の既存環境に矛盾を持ち込むことなく開発できるか、どうかを審査して許可する制度あり、法律の条文上では、開発許可と確認事務とは確かに重複しているが、既存の建築基準法による確認制度を骨抜きにはしないという合意が都市局と住宅局との間でなされて、建設省としての見解が纏められた。そこでは、新たに建築物が建設されることで既存の都市施設や都市環境に混乱を与えたりすることがないようにすることを目的として運用されるという合意の下で制定された制度である。
1960年日米安全保障条約の改正で、日本が自由化政策を受け入れ、炭鉱の閉産と農業構造改善政策が取り組まれた。農村から都市に流出した失業者が池田内閣による所得倍増計画と結びついて、展開された全国総合開発計画を背景に年間10%以上の経済成長を10年以上に亘って実現した。それは、東京オリンピック後の急激な都市集中により、都市計画自体が麻痺寸前に追い込まれた時代であった。新都市計画法の制定は、都市施設に見合った建築物しか建築を許さないことで都市の秩序ある開発を規制誘導してきた英国の都市計画法による「計画許可制度」(プランニング・パーミッション)の経験を取り入れたものであった。

都市化が急速に進むときに、都市施設がそれに追いつかなければ、都市機能は混乱する。そのために、新都市計画法は都市施設の効率的な整備を図るために、都市計画区域を都市の開発の仕方により次の2つの区域に分けられた。
①既に市街地となっている区域と市街地を積極的に形成する区域(市街化区域)。
②市街化をさせないで自然環境を保全する区域と計画的な市街地開発に限り許可するがスプロ-ル開発はさせないとする区域(市街化調整区域)。

2 開発許可の審査対象条件
市街化区域では、積極的に、集中的に、都市施設の整備を図り、市街化区域の熟成を図ることとなった。都市計画法制定時点の一つの目標としては、都市計画法第29条で開発許可を受けなくてもよいとされる敷地面積1,000平方メートル未満の開発の場合には、どのような高密度な開発に対しても、都市施設は整備されていることが、都市計画の目標と考えられていた。29条は次のようになっている。

都市計画法第29条  
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市、同法第252条の22第1項 の中核市又は同法第252条の26の3第1項 の特例市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一  市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの
(以下省略)

そして許可を要する規模は政令である都市計画法施行令第19条で次のように定められている。

都市計画法施行令第19条 
法第29条第1項第1号の政令で定める規模は、次の表の第1欄に掲げる区域ごとに、それぞれ同表の第2欄に掲げる規模とする。ただし、同表の第3欄に掲げる場合には、都道府県(指定都市等(法第29条第1項に規定する指定都市等をいう。以下同じ。)又は事務処理市町村(法第33条第6項に規定する事務処理市町村をいう。以下同じ。)の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。第22条の3、第23条の3及び第36条において同じ。)は、条例で、区域を限り、同表の第4欄に掲げる範囲内で、その規模を別に定めることができる。
第1欄    第2欄    第3欄    第4欄
市街化区域    1000平方メートル    市街化の状況により、無秩序な市街化を防止するため特に必要があると認められる場合    300平方メートル以上1000平方メートル未満
区域区分が定められていない都市計画区域及び準都市計画区域    3000平方メートル    市街化の状況等により特に必要があると認められる場合    300平方メートル以上3000平方メートル未満
2 都の区域(特別区の存する区域に限る。)及び市町村でその区域の全部又は一部が次に掲げる区域内にあるものの区域についての前項の表市街化区域の項の規定の適用については、同項中「1000平方メートル」とあるのは、「500平方メートル」とする。
1.首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
2.近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
3.中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

現実の都市の都市施設整備水準は低く、首都圏等でも既存の都市施設で対応できない事態が多発することが危惧されていた。そのため敷地面積が500平方メートル以上の開発に対しては、その開発が既存の都市施設で対応できるかどうかを事前に審査し、それに合格したものに開発許可を与えるということになった。
全国的には、さらに都市施設整備水準の低い都市もあることを考慮して、開発許可の対象とする敷地面積を300平方メートルにまで条例で引き下げることができるとした。
(事例:町田市玉川学園)

3 予定建築物によって異なる開発行為の内容
開発許可制度は、予定建築物が建築基準法第3章の用途地域の規定に適合する敷地条件であることが、開発計画として取りまとめられているかどうかを審査することになる。その意味では、開発計画の内容が先ず都市計画法第8条(地域地区)及び第11条(都市施設)で定めた都市計画決定された都市の基本計画(マスタープラン)を実現するための建築基準法第3章規定に適合していることの審査となる(都市計画法第33項第1項第一号)。 
さらに、同じ敷地に建築を計画しても、敷地に予定される建築物(都市計画法第33条第1項第二号のイから二までの建築物の内容)によって都市環境に与える影響は異なる。従って、予定建築物は都市計画決定している都市施設の水準及び都市施設の現況を現状以上に悪化させることがないよう、環境の保全、交通の安全、都市の防災、都市活動の効率等にも適合していなければならない(都市計画法第33項第1項第二号)。
新都市計画法制定時に、旧建設省住宅局が一番危惧していた点がこの条文(第33条第1項第一号)であった。開発許可の審査で事実上予定建築物の審査をすることになってしまえば、やがて、建築基準法による建築確認審査で、第3章関係の基準の審査は不要になってしまうのではないかという不安であった。つまり、都市計画法第29条に基づく開発許可による第33条第1項第一号で定める開発許可の基準の審査と建築基準法第6条により建築基準法第3章規定の審査とは基本的に重複するからである。
住宅局と都市局でのやり取りの中で、「開発許可の審査といっても、それを実施する能力や訓練を受けた人材が都市行政の中で養成されてきたわけではないので、これまで建築確認事務に携わってきた建築基準行政関係者に開発許可の行政もお願いする以外に、事実上、開発許可行政を行うことはできない。結果的に建築基準行政の仕事が拡大する」という説明で、住宅局をなだめることもやられた。
そして行政事務の整理として、「開発許可では都市施設との関係での大雑把な審査に留めて、建築設計図書で決められる詳細は予定建築物の計画が確定してからの建築確認ですればよい」といった議論がされ、建築基準法第3章に関し、予定建築物として「変更する余地の十分ある物」を対象に形態の大枠を審査し、建築物として確定されたものを対象に審査するものではないということで、住宅局と都市局との行政事務区分の「暗黙裡の了解」がなされた。

都市計画法制定当時の建設省内部の課題
当時、住宅局建築指導課建築指導室で集団規定関係を扱うことになっていて、都市計画法の制定で、建築確認制度が事実上都市計画法の開発許可によってその支配下におかれるという不安が住宅局には漲っていた。それまでの建築行為は、確認済証の交付を行うことで、事実上民間の建築行為を支配することができたが、開発許可制度のなると、確認制度の前に、基本的なことは開発許可で枠組みが決められることになるので、住宅局の権限が削がれるというのが心配の種であった。そこで「開発許可は確認行政の上に屋上屋を架けるものである」という反対意見として、住宅局の意見は纏められた。
しかし、現実問題として社会に起こっていることは、所得倍増から高度経済成長により、無秩序なスプロール開発が進み、関西の川西市や門真市では、田圃の真中に都市施設の整備のないところに建築物が、1週間で建ち並ぶといった都市の混乱が発生していた。都市施設の整備が先行しないと、建築物が所期の効用を果たすことができないという問題ができて、それが都市計画法の制定の社会的要請となっていた。建築行政自体としては、都市施設を整備する権限は持っておらず、開発許可制度を排除することは、確認制度に「屋上屋」をかけるものであるという反対は、できなくなってしまった。そして、その代わり、開発許可制度の対象になる開発に置いては、予定された建築物が確実に建築できる環境を整備することが求められることになった。

4 公共施設の管理者の同意(都市計画法第32条)
開発計画が、都市計画法第8条で定める地域地区の法定都市計画決定(都市計画法第33条第1項第一号)に合致していても、現実の都市環境として、開発計画に対応することができないような場合には、既存の都市に皺寄せをしないよう、開発計画に変更を求めることになる。予定建築物の建築が、既存の都市施設の能力、その他都市環境に調和し、軋轢の生じることのないよう計画されたものであるとの審査を経てはじめて許可が受けられることになる(都市計画法第33条第1項第二号)。
その際、開発許可権者は、予定建築物の計画内容を対象に、道路交通や雨水排水などの公共施設などを含む都市施設の管理者の同意が得られているかを審査する。開発許可権者は、関係する公共施設の管理者が開発計画に同意した計画であることを明らかにした同意書が付されているか、どうかを審査することになる。開発許可権者は、関係部局でなすべき審査をそれらの担当部局に代わって審査し、又は、判断するものではなく、関係部局の審査が行なわれたことを確認して許可するものである。
開発許可権者は、開発事業者が開発許可申請書に添付した公共施設の管理者等の同意書が、都市計画法第33条第1項にもとづく内容に関し、各行政法上の施行者である関連公共施設の管理者が同意したものであることを確認することが、開発許可権者が開発審査として確認すべき都市計画法第32条の同意の意味である。条文は次のようになっている。

都市計画法第32条  
開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。
2  開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。
3  前二項に規定する公共施設の管理者又は公共施設を管理することとなる者は、公共施設の適切な管理を確保する観点から、前二項の協議を行うものとする。

都市計画法第32条第1項は、開発敷地に予定されている予定建築物が所期の効用を果たすことが出来るためには、その敷地に関係する公共施設の対応がされていなければならないことから、既存の公共施設との適応性を検討する必要があるとするもので、開発事業者が当然なすべき検討を行うべきことを定めている。
既存の都市に新しい開発が入り込むわけであるから、その公共施設利用に関し既存都市居住者の既得権に影響を与えないわけにはいかない。その影響の程度が既存の市域の住民の既得権にしわ寄せが及ばないように開発業者は必要な計画上の対応をすることを各関係行政施行者の行政責任上審査することを定めたのが第32条の同意条項である。
その中で、政令で定める協議を義務づけられている管理者は都市計画法施行令第23条で次のように定められている。

都市計画法施行令第23条 
開発区域の面積が20ヘクタール以上の開発行為について開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、次に掲げる者(開発区域の面積が40ヘクタール未満の開発行為にあつては、第三号及び第四号に掲げる者を除く。)と協議しなければならない。
1.当該開発区域内に居住することとなる者に関係がある義務教育施設の設置義務者
2.当該開発区域を給水区域に含む水道法第3条第5項に規定する水道事業者
3.当該開発区域を供給区域に含む電気事業法第2条第1項第二号に規定する一般電気事業者及びガス事業法第2条第2項に規定する一般ガス事業者
4.当該開発行為に関係がある鉄道事業法による鉄道事業者及び軌道法による軌道経営者

しかし、条文の解釈として20ヘクタール未満の開発行為は協議が不要という意味ではないことは言うまでもない。例えば、マンション開発の場合、道路の容量やその使用状況から既存道路環境がどのように変化するかということの審査や、開発による雨水の流出係数の変化により都市河川の氾濫の危険性について、流域単位での河川管理者の同意や、下水道負荷の変化に公共下水道が対応できるかといった審査になる。
さらに、その開発事業にとっても、既存の市街地についても、そこで生活する世帯の子供にとっての環境として、学校や幼稚園など都市生活関係施設が開発計画に合わせて適正に整備され、又は、既存施設の利用が不当に圧迫されないことが必要である。そのため、都市計画法第32条では、公共施設の管理者とそれらの施設が、新たな開発を受け入れることができるかどうかについて関係公共施設の管理者との協議を求めている。

5 開発許可権者と公共施設の管理者の関係
開発許可権者自身は、これらの公共施設の関係行政法の施行者ではないので、各行政法上の判断は、各行政法の施行者の判断に委ねられなければならない。そこで、第32条第2項で協議を義務付けられていない規模の開発であっても、その行政法上の疑義があるものに関しては、開発許可権者自身に行政上の判断をする権限がないことから、第32条第1項の規定どおり公共施設の管理者と協議することを開発業者に求めることをさせることになる。
都市計画法第32条こそ都市生活の広がりの中で、予定建築物を建築計画するに当たって開発事業者が、開発事業の受益者のためにも、開発地周辺の人のためにもするべき重要な協議なのである。行政事件訴訟法第9条での原告適格が問題にされているが、それは、「利害関係者以外には訴えの利益、または、不利益はない」ことから問題にされることであるが、都市計画決定に関しては都市計画区域の居住者が全て利害関係を持つが、都市計画法第32条の公共施設の管理者同意の項目は、ここで見たとおり、開発行為の公共施設利用上の利害関係者の範囲を決定するものである。よって、ここでの関連公共施設の管理者の管理の範囲がそれらの施設の利害関係者の範囲を決めることになる。
都市計画として重要なことは、都市活動を支える都市施設と、そこでの土地利用とが如何にバランスがとれているかということで、開発許可で審査が求められている内容こそ、健全な都市開発や都市経営の視点である。都市施設の機能や規模は、既存の都市計画として開発された部分と、これから開発される都市計画の中に建設される予定建築物との関係で決められるものである。
その中で、都市施設の規模や機能に最も関係のある最大の指標が、容積率である。容積率は、建築物の延べ面積と、直接的に関係する収容人員や、交通量、使用する電気量、ガス量、水道量、雨水量、汚水量、雑排水の量、廃棄物量などに関係するため、学校、道路、公園、上下水道、電気、ガスなどの都市計画法第8条(地域地区)及び第11条(都市施設)、すなわち、都市のインフラ施設、学校教育施設、スポーツ施設、娯楽文化施設、商業業務施設、利便施設、公益施設などとの関係を、開発許可をするにあたり、厳密に確かめなければならない。

6 予定建築物が、都市計画決定に適合するものであることの審査(第33条第1項第一号)
第33条第1項第一号は、「予定建築物等の用途が当該用途の制限に適合していること」と規定し、その敷地で予定されている予定建築物が、その敷地の上に決定されている都市計画決定に適合するものであることの審査を求めている。
条文の骨格を引用しておく。

都市計画法第33条
都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準に適合しており、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。
一  次のイ又はロに掲げる場合には、予定建築物等の用途が当該イ又はロに定める用途の制限に適合していること。
イ 当該申請に係る開発区域内の土地について用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、流通業務地区又は港湾法第39条第1項 の分区(以下「用途地域等」という。)が定められている場合当該用途地域等内における用途の制限
ロ 当該申請に係る開発区域内の土地について用途地域等が定められていない場合建築基準法第48条第13項 及び第68条の3第7項 の規定による用途の制限

地域、地区ごとの用途の制限に関する規定であるが、記述は短いがその意味するところは大きい。具体的には、第3章の規定として定められていることは、都市計画法第8条「地域地区」で定めた都市計画決定(マスタープラン)に対応する建築物ごとの敷地を単位に定められた建築設計指針(アーキテクチュアル・ガイドライン)として、建築基準法第3章の規定がある。この第3章の規定は、「一敷地、一建築物」の原則に立って、先ず、予定建築物ごとに幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接する固有の敷地が計画されていることを大前提にして、その後各予定建築物が、建築敷地ごとに定められた容積率、建ぺい率、建築物の高さの最高限度等の規定にも適合しているかどうかを審査しなければいけないのである。
都市計画法第8条は次のようになっている。長いが基本の条文なので全文掲載しておく。
都市計画法第8条
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区で必要なものを定めるものとする。
一  第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
二  特別用途地区
二の二  特定用途制限地域
二の三  特例容積率適用地区
二の四  高層住居誘導地区
三  高度地区又は高度利用地区
四  特定街区
四の二  都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)第36条第1項の規定による都市再生特別地区
五  防火地域又は準防火地域
五の二  密集市街地整備法第31条第1項 の規定による特定防災街区整備地区
六  景観法 (平成16年法律第110号)第61条第1項 の規定による景観地区
七  風致地区
八  駐車場法 (昭和32年法律第106号)第3条第1項 の規定による駐車場整備地区
九  臨港地区
十  古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法 (昭和41年法律第1号)第6条第1項 の規定による歴史的風土特別保存地区
十一  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法 (昭和55年法律第60号)第3条第1項 の規定による第一種歴史的風土保存地区又は第二種歴史的風土保存地区
十二  都市緑地法 (昭和48年法律第72号)第5条 の規定による緑地保全地域、同法第12条 の規定による特別緑地保全地区又は同法第34条第1項 の規定による緑化地域
十三  流通業務市街地の整備に関する法律(昭和41年法律第110号)第4条第1項の規定による流通業務地区
十四  生産緑地法 (昭和49年法律第68号)第3条第1項 の規定による生産緑地地区
十五  文化財保護法 (昭和25年法律第214号)第143条第1項 の規定による伝統的建造物群保存地区
十六  特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法 (昭和53年法律第26号)第4条第1項 の規定による航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区
2  準都市計画区域については、都市計画に、前項第一号から第二号の二まで、第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号(都市緑地法第5条 の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第十五号に掲げる地域又は地区で必要なものを定めるものとする。
3  地域地区については、次に掲げる事項を都市計画に定めるものとする。
一  地域地区の種類(特別用途地区にあつては、その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類)、位置及び区域
二  次に掲げる地域地区については、それぞれ次に定める事項
イ 用途地域 建築基準法第52条第1項第一号 から第四号 までに規定する建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)並びに同法第53条の2第1項 及び第2項 に規定する建築物の敷地面積の最低限度(建築物の敷地面積の最低限度にあつては、当該地域における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。)
ロ 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域 建築基準法第53条第1項第一号 に規定する建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)、同法第54条 に規定する外壁の後退距離の限度(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要な場合に限る。)及び同法第55条第1項 に規定する建築物の高さの限度
ハ 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域 建築基準法第53条第1項第一号 から第三号 まで又は第五号 に規定する建築物の建ぺい率
ニ 特定用途制限地域 制限すべき特定の建築物等の用途の概要
ホ 特例容積率適用地区 建築物の高さの最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するために必要な場合に限る。)
ヘ 高層住居誘導地区 建築基準法第52条第1項第五号 に規定する建築物の容積率、建築物の建ぺい率の最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第16項において同じ。)及び建築物の敷地面積の最低限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第16項において同じ
ト 高度地区 建築物の高さの最高限度又は最低限度(準都市計画区域内にあつては、建築物の高さの最高限度。次条第17項において同じ。)
チ 高度利用地区 建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限(壁面の位置の制限にあつては、敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。以下この号において同じ。)に接して有効な空間を確保して市街地の環境の向上を図るため必要な場合における当該道路に面する壁面の位置に限る。次条第18項において同じ。)
リ 特定街区 建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限
三  その他政令で定める事項
4  都市再生特別地区、特定防災街区整備地区、景観地区及び緑化地域について都市計画に定めるべき事項は、前項第一号及び第三号に掲げるもののほか、別に法律で定める。

7 予定建築物が既存の都市と調和することの審査(第33条第1項第二号)
予定建築物は、その立地する場所の都市計画及び既存都市施設に与える影響が異なることから、前述した都市計画法第29条第1項に定める敷地面積以上の土地で予定建築物の計画をしているものは、その予定建築物の内容について、個別に既存の都市計画決定内容および、既存の都市環境の現状との関係で、調和のある開発ができる計画であることを都市計画法第33条第1項二号は求めている。
たとえ法定都市計画に適合する開発であっても、既存の都市施設の容量が小さすぎて対応することができないときは、開発業者の責任で、既存の都市施設と調和することができるような計画を造らなければならない。

第33条第1項第二号
主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為にあつては、道路、公園、広場その他の公共の用に供する空地(消防に必要な水利が十分でない場合に設置する消防の用に供する貯水施設を含む。)が、次に掲げる事項を勘案して、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置され、かつ、開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていること。この場合において、当該空地に関する都市計画が定められているときは、設計がこれに適合していること。
イ 開発区域の規模、形状及び周辺の状況 
ロ 開発区域内の土地の地形及び地盤の性質 
ハ 予定建築物等の用途 
ニ 予定建築物等の敷地の規模及び配置

開発許可制度は、予定建築物を建築する前に、敷地環境を既存の都市環境に調和できるように整備する開発計画を申請させ、それを開発許可権者が開発工事に先立って審査し、許可する行政事務である。そこで、既存の都市と調和するか、どうかを判断する基準が、都市計画法第33条の「開発許可の基準」である。予定建築物は、それぞれ固有の性格を持っており、又、その立地する土地もそれぞれ特殊である。そのため、個々の予定建築物が、それぞれの立地する特殊な敷地環境と調和するか、どうかについて審査することは、現実の開発が既存の都市環境に適合する開発として行われるためには、避けて通ることはできない審査である。
新都市計画法が準備されていた当時、都市人口比率自体が低く、都市施設の整備水準が低かったことから、新しい都市開発が行われると、その開発自体にとって、予定建築物を計画通り利用できないという問題が発生した。大は学校教育施設から、小は上水、下水、電気、ガス、といった問題にまで及んでいた。開発業者の多くは、開発業者自身の開発が単なる物造りと考えて、そこで発生する都市活動に関心が及ばず、全ての開発矛盾を行政機関のサービスの矛盾へ転嫁していた。悲鳴を上げた行政機関は「既存の都市施設に適合しないものを造る場合には、その分は開発業者で負担をするように」と主張した。その規定が第33条第1項第ニ号である。
この条文では、開発計画が上記のイ、ロ、ハ、ニ、の4項目の事項を勘案して、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上、または事業活動の効率上支障がないようされていることを定めている。ここで、環境と言っている内容は、自然環境だけではなく、歴史文化環境や、社会環境の全てを含んでいる。
なかでも重視されなければならないのは都市の歴史文化環境である。都市はそれ自体が歴史文化の集積であって、都市住民の都市に対する帰属意識やアイデンティティーは、長い歴史をかけて形成されてきた歴史文化環境に支えられている。
都市の歴史文化をどのように都市計画の文化的環境形成の骨組に入れるかは、世界の都市の共通に取り組んでいる課題である。都市住民に帰属意識を育てることのできる都市をつくるために、都市の歴史文化をどのように将来の都市の中に活かしていくかは、都市計画上最も重要な項目である。都市の歴史文化を担うものは建築物や建築物以外の工作物、遺跡、樹木、道路、河川などに時間を加えた4次元の都市空間文化の全てが含まれる。
この条文の適用に当たっては、その開発について個別に、この条件を満足する開発計画であることを、開発事業者が開発許可申請書の中で説明する責任があり(第30条許可申請の手続)それを受けた開発許可権者は、開発計画がこの条文に適合した内容であることを審査した上、適合していると判断したときは許可をしなければならないと規定している(第33条)。

都市計画法第33条 
都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(第4項及び第5項の条例が定められているときは、当該条例で定める制限を含む。)に適合しており、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。

8 排水施設の審査その他(第33条第1項第三号及び第七号その他)
大規模な敷地が開発されることになると、樹木の伐採と緑被が破壊され、代わって、建築物の屋根と敷地の舗装により、敷地の雨水流出係数が高まり、周辺の土地に溢水や河川の氾濫による被害がおよぶことは、多くの都市災害の事例として社会問題になっている。
東京都では高密度開発の結果、広幅員道路が建設され、上水道や下水道が巨大化した。樹木が伐採され、敷地の過半が雨水浸透のできない建築物の屋根や、道路や敷地全体が舗装化によって、雨水の流出係数が急増大している。そのため、かつて氾濫したことがなかった河川が、通常の降雨でも氾濫するといった神田川にみられる事故や、集中豪雨により下水道で発生した鉄砲水事故が発生している。都市計画法の規定は、そのようなことが起きないように都市施設の体系の中で排水問題を処理することを定めている。これらの雨水管理の問題は河川管理の問題として、河川の管理区域を単位に、河川管理行政の問題として管理されている。そのため開発許可権者は河川管理者の同意を得て開発許可を与えることになる。

都市計画法第33条第1項第三号 
排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、開発区域内の下水道法 (昭和33年法律第79号)第2条第一号 に規定する下水を有効に排出するとともに、その排出によつて開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていること。この場合において、当該排水施設に関する都市計画が定められているときは、設計がこれに適合していること。

そして4号以下でも次のように定めている。

都市計画法第33条第1項第四号~十四号
四  主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為にあつては、水道その他の給水施設が、第二号イからニまでに掲げる事項を勘案して、当該開発区域について想定される需要に支障を来さないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていること。この場合において、当該給水施設に関する都市計画が定められているときは、設計がこれに適合していること。
五  当該申請に係る開発区域内の土地について地区計画等(次のイからホまでに掲げる地区計画等の区分に応じて、当該イからホまでに定める事項が定められているものに限る。)が定められているときは、予定建築物等の用途又は開発行為の設計が当該地区計画等に定められた内容に即して定められていること。
イ 地区計画 再開発等促進区若しくは開発整備促進区(いずれも第12条の5第5項第二号に規定する施設の配置及び規模が定められているものに限る。)又は地区整備計画
ロ 防災街区整備地区計画 地区防災施設の区域、特定建築物地区整備計画又は防災街区整備地区整備計画
ハ 歴史的風致維持向上地区計画 歴史的風致維持向上地区整備計画
ニ 沿道地区計画 沿道再開発等促進区(幹線道路の沿道の整備に関する法律第9条第4項第二号に規定する施設の配置及び規模が定められているものに限る。)又は沿道地区整備計画
ホ 集落地区計画 集落地区整備計画
六  当該開発行為の目的に照らして、開発区域における利便の増進と開発区域及びその周辺の地域における環境の保全とが図られるように公共施設、学校その他の公益的施設及び開発区域内において予定される建築物の用途の配分が定められていること。
七  地盤の沈下、崖崩れ、出水その他による災害を防止するため、開発区域内の土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること。この場合において、開発区域内の土地の全部又は一部が宅地造成等規制法 (昭和36年法律第191号)第3条第1項 の宅地造成工事規制区域内の土地であるときは、当該土地における開発行為に関する工事の計画が、同法第九条 の規定に適合していること。
八  主として、自己の居住の用に供する住宅の建築又は住宅以外の建築物若しくは特定工作物で自己の業務の用に供するものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為にあつては、開発区域内に建築基準法第39条第1項 の災害危険区域、地すべり等防止法 (昭和33年法律第30号)第3条第1項 の地すべり防止区域、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 (平成12年法律第57号)第8条第1項 の土砂災害特別警戒区域その他政令で定める開発行為を行うのに適当でない区域内の土地を含まないこと。ただし、開発区域及びその周辺の地域の状況等により支障がないと認められるときは、この限りでない。
九  政令で定める規模以上の開発行為にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、開発行為の目的及び第二号イからニまでに掲げる事項を勘案して、開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全その他の必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること。
十  政令で定める規模以上の開発行為にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、第二号イからニまでに掲げる事項を勘案して、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されるように設計が定められていること。
十一  政令で定める規模以上の開発行為にあつては、当該開発行為が道路、鉄道等による輸送の便等からみて支障がないと認められること。
十二  主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為又は住宅以外の建築物若しくは特定工作物で自己の業務の用に供するものの建築若しくは建設の用に供する目的で行う開発行為(当該開発行為の中断により当該開発区域及びその周辺の地域に出水、崖崩れ、土砂の流出等による被害が生じるおそれがあることを考慮して政令で定める規模以上のものを除く。)以外の開発行為にあつては、申請者に当該開発行為を行うために必要な資力及び信用があること。
十三  主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為又は住宅以外の建築物若しくは特定工作物で自己の業務の用に供するものの建築若しくは建設の用に供する目的で行う開発行為(当該開発行為の中断により当該開発区域及びその周辺の地域に出水、崖崩れ、土砂の流出等による被害が生じるおそれがあることを考慮して政令で定める規模以上のものを除く。)以外の開発行為にあつては、工事施行者に当該開発行為に関する工事を完成するために必要な能力があること。
十四  当該開発行為をしようとする土地若しくは当該開発行為に関する工事をしようとする土地の区域内の土地又はこれらの土地にある建築物その他の工作物につき当該開発行為の施行又は当該開発行為に関する工事の実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていること。


第3章    開発許可制度の運用実態

1 開発許可制度の蹂躙
都市計画では、都市活動が健全に行われるための文化的環境と、都市生活を支える都市基幹施設(インフラストラクチャー)を含む都市施設の整備が図られなければならない。
都市計画法は、開発される敷地の規模が一定(原則は1,000平方メートル)以上の場合、そこで開発される予定建築物の内容によって、既存の都市施設で満足に負担できないことも起こりうるため、事前に審査して、第33条に定める開発の基準に適合するものに限り開発許可を与えることにしている(第29条)。開発許可の必要条件は、もっぱら開発規模(敷地面積)だけが条件であって、その開発規模を超える全ての開発は、仮に建替え工事として行う開発であっても、それが従前と相違する場合には、開発許可を受けるべきことになっている。(都市計画法制定時の国会における西村栄一大臣と政府委員竹内藤男都市局長の立法趣旨の説明。昭和42年7月14日衆議院本会議(巻末資料ⅰ)、昭和43年4月5日衆議院建設委員会(巻末資料ⅱ)、昭和43年5月9日参議院建設委員会(巻末資料ⅲ)。)
都市計画法が施行されたとき、都市施設の整備は低い水準にあったので、大規模建築物など予定建築物の種類によって、都市施設として対応することができないことが危惧されたので、地方公共団体の整備状況に合わせて、開発許可の対象面積を300平方メートル以上にまで引き下げることができるとされた(都市計画法施行令第19条)。東京都については、500平方メートル以上の敷地については開発許可を受けるべきことが定められた。しかし、この開発許可を受けるべき規模以上の開発で、しかもその開発内容が都市計画法第33条の開発許可の基準に抵触しているにも拘らず、東京都では「開発許可不要」の名の下に開発許可制度を基本的に否定する都市計画行政が行なわれてきた。

2 矮小化された「開発行為」の定義
都市計画法は、4条12項に「開発行為」の定義を置いている。それによれば、「開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう」とされる。この「土地の区画形質の変更」として定義したことは何かについては、都市計画法は再定義をしていない。法律を素直に読めば、開発敷地に形を変更したり、そこで建築できる土地利用の質的変更を指していることは明確で、解説は必要ない明確な開発行為の定義である。しかし、東京都は、『開発の手引き』(東京都都市整備局)の中で、この定義された「区画形質の変更」の文言を極めて限定的に解釈し、区画の変更とは、「道路の新設、位置の変更・廃止による区画の変更」であり、形質の変更とは「1メートルをこえる切土・盛土等による形質の変更」であるとしている。
しかしながら、このような解釈は、開発許可の対象を法律に依らないで、又は、法律改正をしないで緩和する意図を持って、牽強付会な解釈を持ち込んだものである。つまり、この解釈は、都市計画法の開発許可制度の趣旨及び文理を法律上の根拠を置かないで逸脱するものであって、誤った運用と言わざるを得ない。
現に、国土交通省の「開発許可運用指針」においても、「法第4条第12項に規定する開発行為の定義」について、「運用にあたっては、・・・例えば、単に一定規模以上の切土又は盛土を伴わないことのみをもって、『形質』のみならず『区画』の変更にも当たらないとするようなことは、法の趣旨を逸脱するものであることに留意すべきである」と記述しているのである。
前述のとおり、都市計画法が開発許可制度を導入した目的は、開発行為が行われた場合には、従前と異なった規模ないし密度における土地利用が行われることから、これを許可に係らしめることによって、当該開発行為が都市計画や既存の都市環境に適合するものであるかどうかを審査し、良好な市街地の形成を図ろうというものであった。
当然のことではあるが、開発行為の意義の解釈運用は、こうした制度の趣旨に沿うものでなければならないはずである。そうであるならば、開発行為とは、法33条以下の審査が実質的に必要とされるような、従前と異なる土地の利用行為を意味しているものと解さなければならないはずである。道路の新設や変更があるような場合はもとよりであるが、既存宅地上の建物の建替えで切土・盛土を行わない場合であっても、木造家屋を取り毀して中・高層マンションを建築するなど利用密度が変わるときには、やはり都市計画や既存の都市環境との適合性の審査が必要である。ただし、法は、こうした質的変更を伴うものであっても、規制の対象を一定規模以上(東京都では500平方メートル)のものに限っていることは既述のとおりである。
ちなみに、日本の都市計画法がお手本としたとされるイギリスの都市許可制度では、開発とは、土地にかかわる建築、土木工事および土地または建物の利用の重大な(material)変更をいい、宅地造成、建物の建築、用途の変更を含むとされている(山口周三著『イギリスの都市計画―計画許可制度の運用』至誠堂、昭和45年)。こうしたイギリス法も勘案し、前述の立法趣旨に沿って法4条12号の規定を解釈するならば、「土地の区画形成の変更」というのは、単に土地の形状や道路による区画の変更を指すのではなく、法33条以下の要件審査を必要とするような、予定建築物が従前の建物とは質的に異なる土地利用の変更を含むものと解すべきである。このような土地利用の質的な変更をも含むという趣旨で、法は「区画形質の変更」という文言を用いているのである。

3 開発行為不存在を違法に容認した「分筆、号筆」の扱い
東京都は、開発行為を土地の造成工事に矮小化している。ここに間違いの出発点がある。
開発行為のうち、都市計画法第33条に定められた開発許可の基準に抵触するような開発は、都市に混乱を引き起こすことになるため、開発許可の基準に適合するよう、開発許可を受けることを義務づけたのが開発許可制度の趣旨と目的である。従って開発許可の基準に適合させるために必要な工事は、すべて開発行為に含まれなければならない。
法律上、第4条第12項の開発行為の概念は、第33条の開発許可の基準対象とする開発行為を含む、より広い概念を指すべきであるにも拘らず、東京都は第33条より遥かに狭い概念を、開発行為の定義に定め、事実上の都市計画違反を積極的に助長してきた。開発許可逃れをする方便として、開発行為を、土地を1メートルを超えて、切土、盛土する行為、と矮小化する解説と同時に、分筆や合筆は、開発行為ではないといった運用通達が出され、都市計画行政の現場では、土木工事を伴わない開発行為は存在しないかのような都市計画法の骨抜きが公然と行われている。
都市計画法が施行されたとき、最初から開発許可制度は過大な開発費負担を要するものとして、開発許可の対象を縮小する圧力が政治から行政にかけられ、その外堀を埋めたのが「分筆及び合筆は開発許可に入らないとする」法律解釈通達であった。
都市計画法では、敷地面積が1000平方メートル以上(東京都では500平方メートル以上)は開発許可を受けなければならないと規定している。これはこの面積以上の敷地は、その敷地に建築される予定建築物によって、既存の都市環境に影響を与える可能性があるから、開発許可の審査が必要だからである。開発敷地が複数の筆で構成されていたり、又は、開発敷地が1筆の土地の一部を使うこともある。これらの敷地の筆を分筆することや合筆することは、敷地面積を増減するものではないので開発許可の対象にしないという法律解釈は正しい。しかし、現実にやられたことは、分筆又は合筆によって、敷地面積が開発許可の対照とする面積以上の場合にも、開発許可は要しないという間違った運用を始めることになった。この解釈通達が、開発許可の対象となる「土地の区画形質の変更」と定義されている開発行為(第4条第12項)の解釈を、物理的な土木工事であるかのように歪めることになった。
東京都が、開発行為を単なる土地の造成であって、予定建築物の建築とは関係がないという考えで開発許可の行政事務に当たっていることは、分筆又は合筆により敷地面積が開発許可面積を超えても開発許可を要しないとした間違った法律解釈通達をさらに拡大した間違いである。東京都は、開発許可の審査は敷地の造成であって、予定建築物の審査には及ばないから、「敷地の切土又は盛り土をしなければ開発行為ではない」、と法律に根拠のない解釈を『開発許可の手引き』に記したのである。
開発許可が問題にしていることはあくまでも予定建築物による都市施設への影響である。敷地面積が同じでも予定建築物の用途、規模、構造等によって、都市施設に与える影響は大きく違い、敷地の造成工事は必要としなくても、交通量、上水、下水、雨水等の処理に関してその開発を受け入れるためには、敷地の内部または外部の都市施設を改良しなければその開発は認められない場合がある。その審査を一切すり抜ける方法として編み出されたのが、『開発許可の手引き』に明記された「開発行為不存在」を主張する脱法的法律解釈である。
開発事業の中には、結果として特段の区画形質の変更をしなくても予定建築物を建築できる場合もあるが、都市計画法第33条に定める開発許可の基準と開発計画とを照合しない限り、開発行為の存在の有無は判断できない筈である。開発許可を出すか、開発不許可とするかの判断は、開発許可申請を受けて審査するしかない。
開発許可の要、不要の判断は、開発許可の基準に適合するかどうかの判断で、それは開発許可申請を受けて審査をしなければできない判断である。しかし、それとは全く別の審査の基準を『開発許可の手引き』で定め、「開発許可不要」とする判断を法令解釈の名の下ですることは、そもそも都市計画法で予定されていないことであり、明白な法律違反である。

4 横行する「開発許可不要」
開発許可制度は、法定都市計画と既存の都市施設の水準に対応することのできない開発は、それに適合するようにすることを開発事業者に求めるものである。「開発許可の基準」に抵触する開発が「開発許可不要」として扱われることなど都市計画法上ありえないことである。
都市計画法第29条で定める開発許可の審査の条件は、同条第1項を受けた都市計画法施行令第19条に示された敷地の面積条件しか定められていない。都知事が同条に規定されている条件と別の定めをする法律上の根拠はない。
開発審査の目的は、開発許可基準に抵触する開発を未然に防止することである。第4条第12項に定義する「開発行為」は、予定建築物を建築する上で必要とされる第33条の開発許可基準に定める、次の2点を含む土地の形質の変更である。
①予定建築物の敷地がそこに定められている法定都市計画に適合していること。
②開発地のおかれている既存の都市施設と調和する開発許可の条件に適合していること。
従って、開発許可の基準に抵触する開発は、都市計画法の実体規定違反となる。つまり、第4条で定義されている「開発行為」すなわち、「区画形質の変更」とは、第33条に定められている「開発許可の規準」に抵触する開発行為を含むものでなければならないのは当然である。現実の「開発許可不要」の行政の中で、第33条で定める「開発許可の基準」に違反した開発が、「開発許可不要」とされることで違反の事実を追及されないまま、多数発生している。
(「開発許可不要」の事例:町田市玉川学園、文京区湯立て坂、文京区関口、目黒区青葉台、世田谷区千歳烏山、茨城県守谷)

5 「開発許可不要」の背景
新都市計画法制定時には都市施設に混乱を与えないように、開発許可制度を法令どおり適正に適用することが重視された。しかし、その施行直後から開発業者からは開発負担の重さから、開発許可の適用除外を求める要求が強く、政治からも行政OBの天下り先の開発業者からも「何とかせよ」という圧力がかけられていた。
そこで編み出された「奇策」が、敷地の文筆と合筆であり、開発行為の字句解釈である。前者は、当然開発敷地の面積に影響するものであるから、開発許可の要、不要に重大な関係を持っている。しかし、敷地自体の切り土、盛り土をしなければ、開発審査をしなくてよいといった立法に違反した運用として、外堀を埋める行政として始めた。その上、都市計画法第4条第12項で定義した「開発行為は、土地の区画形質の変更」であるのでその解釈として、「土地を、1メートルを超える切土、盛土」であるとすれば、「開発行為自体が存在しない」となるので、開発許可の規定はすり抜けられると行政官僚と東京都の職員たちが考え出したのである。
その文書が、東京都都市整備局発行『開発許可の手引き』である。その中で「開発行為」の解説として、「1メートルを超える切土、盛土等により土地の形質を変更すること」という法律上根拠のない基準を作り上げたのである。このように「手引き」とすれば、行政の末端の人間にも、法律違反を犯しているという良心の呵責を感じることなく違反をやらせることができる。東京都の行政では、法律より指導通達を、さらに行政現場の運用事例を重視してきたため、法律違反を省みることはなくなってしまっている。
そして、司法や、法曹界も『開発許可の手引き』を法律に優先して扱い、行政担当者や、そのOB、又は御用学者が商業出版社から依頼を受けて書いた「法律解釈」を、法律の条文より優先して扱ってきた結果、誤った行政事件判決となっているのである。実は、この種の法律違反を行政がやっている例は、建築士法や建設業法に違反する建築工事請負標準契約約款にもある。

6 予定建築物を審査の対象としない開発審査
現実の東京都知事による開発許可では、都知事自身は開発許可権者としての権限を放棄し、特別区長や建築指導事務所長なる無権限者に許可行為を行わせている。そこでは、予定建築物自体を審査の対象にせず、例外的に予定建築物を審査したときには、建築基準法第48条の用途だけの審査に限定し、容積率や、建ぺい率、各部分の高さはまったく審査の対象にしないで、法律違反の許可をやっている。
(事例:渋谷区鶯谷、世田谷区千歳烏山、文京区関口)

開発許可の基準は都市計画法第33条第1項第一号において「予定建築物の用途が当該イ.又はロ.に定める用途の制限に適合していること」と規定されている。建築基準法の条文の書き方としては、建築基準法第4条の「建築主事」のところに示されている通り「第6条第1項」と記述されていることは、第7条の建築物の完了検査まで含むとなっているのと同じである。
「建築物の用途の制限」は、都市計画法第8条(地域地区)として都市計画決定された都市の基本計画(マスタープラン)を実現するための建築設計指針(アーキテクチュアルガイドライン)を定めた建築基準法第3章の規定を指している。)
「建築物の用途の制限」の規定の適用は、各建築物ごとに道路の接する固有の敷地を定め(建築基準法第3章第1節及び第2節)、その敷地と建築物の容積率、建ぺい率、高さは有機的な関係を持って決められるので、第3章第3節(建築物の用途)から第8節(都市計画区域及び準都市計画区域以外の建築物に敷地及び構造)までの規定を含むものである。
現実の開発許可行政が、建築物の用途を建築基準法第48条に限定することは、予定建築物が、建築基準法第3章の規定に適合するような都市計画決定された敷地と建築物の関係であることを審査することを回避するためである。開発許可の目的は、あくまでも予定建築物を建てることができるような敷地の条件を整備することであって、容積率、建ぺい率及び建築物の高さとの関係を捨象した建築物の用途(建築基準法第48条)で定める土地利用としての用途だけの審査は、開発許可の審査内容として不十分で、それに限定する意味はない。

7 環境への影響の審査を全くやってこなかった開発審査会
東京都開発審査会は、東京都渋谷区鶯谷の歴史的文化遺産として、旧石器時代から縄文時代までの遺跡が発見されて、それが発掘されたにもかかわらず、東京都および開発業者がそれを歴史的文化として開発計画に活かそうとしない開発計画を許可した事件の不服審査請求に対して驚くべき判断を示した。この事件は開発地に隣接して居住する住民が不服審査請求を申請し、歴史的環境の保全について開発審査会で口頭陳述した。
それに対し、東京都開発審査会の会長は住民の口頭陳述の途中で、「本審査に関係のない話は、適当なところでやめなさい」と発言を遮ったのである。都市計画法に基づいて環境の保全について、開発区域の周辺の状況を審査するべき開発審査をやっている都市計画の処分庁の上級庁としての開発審査会の口頭審査としては考えられない対応である。
つまり、東京都都市計画行政庁はもとより、開発審査会自体が都市計画法第33条第1項第2号に規定してある環境の保全に、「歴史的文化環境」が含まれる当然のことを、あえて開発業者の利益のために法律の規定を蹂躙しているか、または、法律を理解する能力を持たないで、開発審査会の業務に携わっているとしか言いようがない。もしかすると、日本の都市を支える学問自体が、都市工学と言ったエンジニアリングに偏重し、都市学の基本に、都市市民の生活文化を豊かに営むための歴史文化の集積であるという、人文科学的視点が大学教育に欠落している結果が行政に反映されているのかもしれない。
(事例:渋谷区鶯谷、文京区銅御殿)

8 管理者との協議が整っていない開発許可は33条第1項第三号違反である
開発許可制度は、予定建築物の敷地が、都市計画決定された地域地区の条件に適合し、かつ、既存の都市施設の状況と調和することができる開発計画であることを審査し、開発を許可する制度である。
開発する予定建築物にとっても、その立地する都市環境と調和することがなければ、たとえば、道路、河川、公園、上・下水道はもとより、幼稚園、学校、病院その他の利便施設、都市施設が、予定建築物の期待どおりの受け入れをしなくては困るし、予定建築物を受け入れる地域地区としても、その開発の結果、既存の環境が壊されたり、機能を低下しても困ることになる。開発許可制度は、そのようなことが起こらないように、開発事業者は開発による影響を事前に調査して対応するべきことを定めている。特に、公共施設の管理者との協議として、第32条をおいており、開発許可権者は、開発事業者に対して、行政上の関係者に対しては、できるだけ広く協議をするようにさせ、開発がその地域とトラブルを起こさないようにするべきことを定めている。
しかし、実際の開発は、周辺地区と利害の反するものが多く、公共施設との協議をできるだけしないで済まそうとする傾向が強い。そして、本来ならば第32条の協議は公共施設の管理者の同意を必要とするにも拘らず、開発許可権者が開発業者に対して、恣意的にその協議自体を求めず、関連公共施設の管理者等の同意がなくても開発審査を通過させて許可し、または、東京都が作成した『開発の手引き』に示された法律上に根拠を持たない解釈を根拠にして、「開発許可不要」とする判断をして、第29条による開発許可をすり抜けさせる行為が行われてきた。
東京都や町田市では、河川管理者がその開発計画が既存の河川の排水基準に適合しているとの第32条の「同意したこと」の審査をせず、開発許可の中で開発許可権者が、その権限を逸脱して河川管理者の判断によらず、河川管理者でないと法律上の責任を負えない開発許可権者自らの判断で、「開発業者の開発計画でよい」としてしまっている。
町田市の例は開発業者の開発計画は、そこで建築される予定建築物に「雨水調節施設を予定建築物の付属施設」として計画しているというもので、雨水調節機能として足りるものであることと、その管理体制が河川管理の一貫として河川管理者の指揮下に置いて管理されるとの協議は存在していない。河川管理者との協議が整っていない雨水調節施設は開発許可を出すべき条件に適合しない都市計画法第33条1項三号違反である。
又、このような雨水調節施設を建築物の空間として建設し、管理することは、建築基準法の法域にはなく、特定行政庁の監督を受けない建築物の設備ではない。よって、建築物内に作られた薄い貯留槽をその他の倉庫等の用途に変更することを禁止することは建築基準法行政に置いては不可能である。それらは、一般の建築物の床を、偶々雨水貯留に使うというだけで、河川管理上の河川施設でもない。当然河川管理上の拘束力も及ばない。
建築基準法の法域でもないものを、都市計画施設の代用施設であるとする扱いは、都市計画法の開発許可制度を骨抜きにする違反行為である。建築物と一体的に雨水貯留槽を工作物として建設することは可能である。この場合は建築物の下部に雨水貯留槽という工作物をその開発事業者の所有物又は河川管理者に移管する工作物として開発許可にかかる計画として、河川管理者との同意内容の計画として建設し、開発後の施設管理は、河川管理者の監督下に置かれることでなければならない。なお、予定建築物は、その工作物の上に建設することは可能である。少なくとも、雨水貯留槽は、構造耐力的に建築物と一体として作られることがあったとしても、それ自体は建築物とは独立した工作物として造られ管理されなければならない。
(事例:、町田市玉川学園、世田谷区千歳烏山、渋谷区鶯谷、文京区関口)

9 開発許可と建築確認
建築基準法行政は、予定建築物の敷地が、都市計画法で定める開発許可の条件を具備していることを確認して開始される建築工事に関する行政である。そのため、開発許可を受けた開発工事により造成された敷地が完成してから、建築確認申請が始まることになる。そのため、開発許可が下りても、計画が存在するだけであって、計画通りの実態は存在していない。そのため、確認申請は受け付けられない。
開発許可に関する計画の実体が完成したときは、都市計画法第36条による開発許可による工事が完了し、公告されるときである。開発許可が成されても、第36条に基づく工事完了公告が成されるまでは、開発許可の対象となっている計画内容が実現してはいないし、それが実現する担保自体が存在しない。それまでの間は、都市計画法第37条に基づき、一切の建築工事はしてはならないことになっている。また、第37条により都市計画法施行者に許される例外許可により、建築行為は、開発許可に関係する工事用の建築に限定されており、この開発における予定建築物は含まれないことは、第37条の文理上、明らかである。
都市計画法による開発許可制度では、予定建築物が建築される場合には、建築物の敷地に関する問題は、全て、整備した状態にまで土地整備を完了してから、建築基準法としての行政で対応することになっている。そのため、建築基準法第6条で定める確認では、確認申請内容が建築基準関係規定と照合して適合していることの確認をすることになっている。確認事務に関し、都市計画法との関係については、建築基準法関係規定を定義した同法施行令第9条第十二号で都市計画法第29条第1項又は第2項と定めている。
都市計画法第29条は同法第3章第1節開発行為等の制限を定めた節の最初の条文で、同節で規定する開発計画の許可から開発工事の完了までを包含するものである。ここで建築物の確認は、開発許可された工事が第36条に基づく完了公告がなされたことを確認するもので、開発計画が開発許可の基準に適合していたことで開発行為を許可した段階を指しているわけではない。
つまり、都市計画法第29条による開発許可による開発工事が完了して、その工事の完了公告が都市計画法第36条で出されることで、初めて開発許可された予定建築物が建設できる敷地環境が整備されたことになる。開発工事の完了公告されることで、建築確認申請ができるという法律の構成をとることになっている。そのため、当然開発工事の完了公告が出されるまでは、予定建築物の建築など一切の建築工事は禁止するという都市計画法第37条の条文が置かれている。
建築基準法体系では建築計画の確認申請を受けて審査をすることになる。確認申請自体は架空の敷地を前提にした確認ではなく、実際に建築しようとする場合の計画についての確認申請で、その大前提としての「予定建築物の敷地が、都市計画的に適法であるという開発許可された工事が、計画どおり完了」してなければ、計画を実施する敷地の実体が存在しないことになる。その実体がなければ確認申請自体を受け付けることはできない。仮に確認申請書が提出されたとしても、計画に係る敷地の実体が存在しないため、受理そのものできず、誤って受理したとしても、「確認できない」旨の通知を出すべきことになるという構成をとっている。
開発許可制度と建築行政との関係は、都市計画法の立法に当たって、開発許可による工事が完了して、予定建築物に対応する開発行為が完了して、完了公告をしてからでなければ、第37条に定められたとおり、予定建築物を建築しても良いとされる都市施設の整備事態が建設されていないことが繰り返し説明され、その通りの法律条文になっている。そのため、当然開発許可がなされた段階では、建築基準法第6条で確認することができないことになる。

建築基準法施行令第9条第十二号(建築基準関係規定)
法第6条第1項 (法第87条第1項 、法第87条の2 並びに法第88条第1項 及び第2項 において準用する場合を含む。)の政令で定める規定は、次に掲げる法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令及び条例の規定で建築物の敷地、構造又は建築設備に係るものとする。
(一号 ~十一号 省略)
十二  都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第29条第1項 及び第2項 、第35条の2第1項、第41条第2項(同法第35条の2第4項 において準用する場合を含む。)、第42条(同法第53条第2項 において準用する場合を含む。)、第43条第1項並びに第53条第1項

10 開発工事が完了していない時点の確認済証の交付は違法
東京都では、開発許可に伴う開発工事が完了していないにも拘らず、開発許可が下りた段階で、建築確認申請を受け付け、確認審査が行なわれ、確認済証の交付がなされてきた。つまり、開発許可に係る工事が完成していなくて、予定建築物の敷地の実体が存在しないにも拘らず、予定建築物の計画と、実体のない開発許可の計画内容だけを照合して、計画同士が照合できたから確認済証の交付をするという違反が横行している。
確認済証自体が、開発許可という計画段階の許可のみの段階で、その実現の担保はなく、実体の土地整備がなされない状態で交付されてきたことは、建築基準法違反を行政がやっていることを意味している。このように開発許可は建築基準法行政により蹂躙されてきたが、都市計画行政自体が、次に述べる都市計画法第37条但し書で予定建築物の建築を違法に実施することを助けているために発生しているものである。
都市計画法と建築基準法の行政事務の関係は、開発許可に係る工事が完了してからでなければ、建築基準法の行政は開始できないことは、都市計画法の制定時の国会での政府委員の立法趣旨の説明でも明らかであるだけではなく、現行都市計画法第36条及び37条にも規定されているとおりである。予定建築物の建築は、その敷地が都市計画上適正な建築環境に整備されていることを、開発許可により審査し、その開発行為を開発許可通りに完成させてからでなければ、建築させてはならないとするものである。
雨水貯留槽を形式的に建築物の内部に計画するということで開発許可逃れをする脱法行為が広く取り組まれているが、それは、実は開発許可による工事を完了する以前に建築工事を着手することを正当化する手段として利用されている。それは先ず開発許可において、予定建築物には事実上十分な雨水貯留槽を設けているとして、河川管理者との協議が不要であるとし、さらに、雨水貯留槽を開発許可と一体にしないわけにはいかないとして、雨水貯留槽と一体の予定建築物の建築工事を都市計画法第37条に違反して建築させようとするものである。

11 開発許可による工事と予定建築物の建築工事は全く別物
新都市計画法制定時に、開発許可による工事と建築工事を一体的にやれるようにしないと地下室を設けたりする場合には、造成工事を終わってから地下工事の掘削をすることは不経済になるので、一元的にできないかという問題提起はあった。しかし、開発許可による工事は、都市施設の整備と不可分の関係にあり、開発許可に係る工事が適法になされなかった状態で予定建築物が建築されると、都市計画に適合しない敷地条件での工事となって、取り返しがつかないことになるから、開発許可に係る工事は、工事完了公告として開発行為として行われるべき工事に一区切りをつける必要があるとされた。
しかし、現実の東京都において行われている都市計画行政は、都市計画法上許可してはならない予定建築物の建築を、第37条に定める建築工事の禁止の条文に違反して、「建築禁止の制限解除」と説明して、都市計画施行者が恣意的にできる処分であるとして例外許可を繰り返してきた。
つまり、同条文では、「開発工事を行うために必要な現場事務所、材料置場等の建築については、都市計画の施行者(開発許可権者)が例外許可した場合には建築することができる」とする条文である。しかし、その条文を「開発許可権者に無制限の建築許可をすることができる「建築制限解除」の条文である」との解釈を持ち込んで、予定建築物の建築を認めるという違反を行なっている。
現実の東京都における都市計画法の扱いは、法律条文の文理解釈をせず、開発許可権者がやりたいと思うことであって、例外として許可できるという条文があれば、その字句を根拠に拡大解釈して、法律の構成や文理解釈を無視して権力の行使が行われてきた。開発許可による工事が完了していないのに、第29条の開発許可証が交付され、第37条ただし書きを根拠として建築物の建築制限をはずすことで、予定建築物の確認済証が交付され、その建築工事を着工する都市計画法第37条違反が、開発許可権者の許可で堂々とやられている。
都市計画法第37条の例外許可は、開発許可にかかる工事をするために工事用に事務所や、材料置き場などの建築物の工事は、建築工事であっても例外的に許可しても良いとするものである。その例外許可される建築物に予定建築物など入るはずはない。しかし、東京都は開発許可が下りてしまえば、その開発許可を根拠に、現実の開発許可による開発が完成していなくても建築確認申請を受理した。
そして、開発計画による工事が実在しないにも拘らず、建築基準関係規定では開発許可証でよいという字句になっているからと言って、確認済証を交付し、都市計画法第37条の例外許可を「建築の制限解除」と称して、同条での規定の内容と全く反対の意味の違反都市計画行政として、予定建築物の建築を許可してきた。東京都のこの違反を正当化する言い訳は、「地方分権法により、開発許可権者に許された第37条の許可の範囲は、開発許可権者の裁量の範囲である」という主張である。

条文の記述の特徴
建築基準法第6条は、予定建築物の計画が建築基準関係規定に適合していることの確認であるが、その建築基準関係規定に関しては、建築基準法施行令第9条第十二号で、都市計画法第29条第1項又は第2項と記述されている。これは単に第29条だけを指すのではなく、開発許可に係る一連の行政事務つまり第37条までを含むことになっている。この建築基準法の条文の作り方は、同法第4条「建築主事」に関し、「第6条第1項に規定による確認に関する事務」という記述しているのと同じである。建築主事の事務は第6条だけではなく、第7条に定める工事完了検査の規定までの一連の事務を指している。都市計画法第33条第1項第一号いう「予定建築物等の用途」とは、都市計画法第8条の地域地区に関する建築基準法の第3章規定を指す。第3章規定の建築規制は、建築物用途との関係で、容積率、建ぺい率、建築物の高さの制限が関係している。「予定建築物等の用途」という書き方になっていて、建築基準法第48条の建築物の用途だけを指しているものではないのと同じである。

12「開発許可不要」を前提とした建築確認済証の交付は違法
東京都町田市で、敷地面積が約5ヘクタールに、10階建ての高層マンションが10棟建設する開発が、「開発許可不要」という処分がされることで、都市計画法第33条に規定する「開発許可の基準」に抵触する開発が行われ、第33条第1項のみならず、第2項の敷地の接道基準など、実体基準に違反した状態で、建築基準法による確認済証の交付が行なわれ、建築工事は完成した。
確認済証の交付処分を違反であると争った建築審査会は、その処分を適法としたことから、住民は行政事件訴訟法で処分の違法を提訴した。しかし、東京地方裁判所は審査会同様の行政庁の処分を正当であると訴えを却下した。(平成18年(行ウ)第323号及び第161号)、平成19年5月24日判決言い渡し)その控訴審で判決が下りるときには、既に入居が始まっていて、東京高等裁判所は、「確認済証どおり建築物を建築しなければならないという建築基準法の規定になっていないので、控訴審に係る確認処分を廃棄しても、それは実際建築されている建築物を取り壊せる根拠にはならない。よって、控訴人の訴え自体利益のないものであるから却下されなければならない。」という結果になった。東京高等裁判所の判決自体、建築基準法の論理としては間違ってはいないように見えるが、本当はその判決自体が以下に説明するとおりの法律違反を犯している。
建築物は、確認制度により安全な建築物を実現する制度になっていて、その確認制度がどのようにして安全な建築物を実現することになっているかの東京高裁の理解に間違いがある。
建築基準法第4条「建築主事」に規定があるとおり、建築確認制度とは、建築基準法第6条(建築計画段階の法令照合確認)から、第7条(建築工事検査確認)までの一連の行政事務を指しており、この工事では、工事検査済証の交付が建築基準法に違反して交付されていたのである。建築物の確認制度は、建築基準法第4条に建築主事の事務を明記しているとおり、計画段階から建築工事完了段階までの一連の流れに亘って建築基準関係規定に適合する工事が行われることを、設計図書及び建築工事を建築基準関係規定と照合確認することによって、適法な建築の実現を図っている。確認事務はその間、連続・継続しており、計画確認段階で完成しているわけではない。
控訴人が、建築確認申請の無効を東京地裁に提訴した段階では、まだ工事が始まっていなかった。そのため確認済証の交付の無効の訴えとして成されていた。しかし、この事件の係争中に工事はどんどん進められ、控訴審の判決段階では工事は完成し、マンションの入居は始まっていた。このような段階での控訴人の起こしている「確認済証の交付の無効」の訴えは、当然、確認制度と一連のものとされている「工事検査済証の交付」を含めるものでなければならない。しかし、高等裁判所は、建築基準法の構成が理解できていなかったのか、あえて処分庁を救うためか、法律の「文理解釈をせず」、頑なに「文字どおり適用して」、「確認済証の無効」は、第6条に規定する行政事務に限定して、第7条に規定する工事検査確認事務は、「確認事務ではなく、それとは別の事務」という建築基準法第4条違反の「却下の判決」を下したのである。

13 違反建築容認は法治国の原則に反する
建築確認制度は、正確に言えば行政処分ではなく、事実確認という行政事務に過ぎない。これは戦前の市街地建築物法時代の建築許可が、警察権の濫用になっていたという反省の基に、建築主事という独立の機関が、建築計画と建築工事と建築基準関係規定との照合確認をするという制度として立法された。しかし、確認済証が交付されない建築物は建築してはならないとする規定と、工事検査済証が交付されない建築物の使用をしてはいけないという規定によって、事実上、確認済証及び検査済証の交付は、許可処分と同様な効力を持ち、建築主事も特定行政庁の吏員という地位を併せ持っていることから、許可と変わらない運用がされてきた。東京地方裁判所の判決は、正にその誤りの上になされた判決である。
建築基準法上、その建築物が建築基準関係規定に違反しているという事実が判明して、既に成された確認が錯誤により確認できないものであったとされた場合には、違反建築物としての処分を下さなければならない、というのが建築基準法の法律の構成である。
建築主事にできる事務は建築基準関係規定との照合であって、それ以降の違反建築物の処分は特定行政庁がなすべき行政事務である。特定行政庁は建築主に対して「違反是正」を求めることになるが、その是正の方法は建築主から提案させるべき問題で、特定行政庁が具体的な指示をする場合には、それ相当の理由と根拠が必要となる。
町田市の事件の建築基準法上の基本問題は、建築確認処分として成されるべき建築計画及び建築工事の「建築基準関係規定」との照合という行政事務の問題である。建築関係規定に関しては、建築基準法施行令第9条に規定されていて、同条第十二号に「都市計画法第29条第1項」と記載されている。この規定は、開発許可に関する一連の行政処分であり、第29条から第37条までを指している。
開発許可申請の審査は、都市計画法第33条に定める開発許可の基準に適合していることによってなされるものである。開発許可基準に抵触する開発は、実体規定として都市計画法違反の開発である。当然、開発許可に違反した敷地に建築された建築物は違反建築である。東京地方裁判所の判決は、違反の容疑が争われているにも拘らず、同じ実体規定に違反が存在している事実の確認を避け、法律違反の容疑を犯した処分庁のなした違反容疑の建築物の審査を容認するもので、その処分に正統性はない。
この建築基準関係規定のうち、開発許可に関する建築基準法施行令第9条第十二号の内容の確認は、確認処分権者が内容審査をするのではなく、都市計画法の上での開発許可権者がなすべき審査である。つまり、建築主事又は指定確認検査機関が、確認済証を交付する際には、都市計画法で定められた開発許可権者の許可の有無の判断がなされたことを確認することを定めている規定である。この条文が、確認処分において期待している行為は、都市計画法の立法時点の最大の「立法趣旨」である「予定建築物の計画に適合する都市の敷地環境が都市計画決定の内容と、既存の都市施設及び都市環境に調和するものであること」という敷地の条件について、それが整備されたことを確認し、確認審査においては、その敷地以外の建築物の安全検査をするためである。
都市計画法第29条第1項で定めている開発許可は、字句どおりの開発許可という開発計画の審査事務の完了を指しているものではなく、第29条で開発許可権者の成した許可の実態が実現し、第33条の開発許可の基準どおりに完成し、完了検査に合格し、都市計画法第36条に定める完了公告がなされたものであることを指している。
建築基準法第6条で定める確認済証の交付は、その建築敷地が都市計画法に適合した開発許可どおりの実態があることの確認を求めており、開発計画が開発許可の基準に適合していることを認めて開発許可をなした段階の開発許可の実体が形成されている状態でよいとしてはいない。
都市計画法では、「敷地面積が500平方メートル以上の場合の敷地の整備は、開発許可を受けなければならない」ことを定めており、それ以外の条件はない。建築主事または指定確認検査機関が「開発許可不要」と判断する権限は法律上なく、もし、開発事業者が「開発許可不要」という申請をしようとするならば、開発許可権者からの「開発許可不要とする権限のある者の処分又は解釈」を文書により提出するか、又は、建築主事又は指定確認検査機関が、直接、開発許可権者に照会し、その正式判断を文書により受けるべきことが条件となる。
裁判所はこのような法律構成を全く無視し、行政事務をぶつ切りにし、結果的に違反建築であっても、既になされた事務の責任は問えないと言っているわけであるが、それは法治国において、「逃げるが勝ち」のようなおかしなことを容認することを意味している。

しかし、町田市のみならず、目黒区青葉台や、茨城県守谷市の高層マンション開発の例も、開発許可権者による「開発許可不要」としてよいとする公式文書は一切ない。
「開発許可不要」とする扱いは、開発許可の基準を満足する開発をしようとすれば、開発許可基準に該当する計画策定のためには多大の開発費用が掛かるので、その費用負担をかいくぐることで不正利益をあげようとするものでしかない。現に町田市の旧IBM運動場跡地での高層マンション開発に関しても開発許可の基準に適合するようにすれば、少なく見積もって50億円以上余分の費用が必要になり、開発業者にとっては道路築造費、公園整備費、雨水貯留施設費に加えて100戸程度の戸数減としなければならないため、それだけの不正利益が得られた開発である。


第4章    道路に関する法令

1 敷地と道路
開発計画は、その大前提として、予定建築物がその敷地に定められている都市計画決定に調和するものでなければ許可をすることはできない。そこでは、予定建築物とその敷地との関係を定めていることから、開発許可の審査では、基本的に予定建築物ごとの敷地の確定と、敷地と道路との関係を明確にするものでなければならない。

2 開発許可の一般的な技術的細目(都市計画法第33条第2項、同法令第25条)
都市計画法第33条第2項の「前項各号に規定する基準を適用するについて必要な技術的細目は政令で定める」との条項を受けて都市計画法施行令第25条以下が定められている。その中の最大の技術基準が開発地と道路との関係である。都市計画法施行令第25条第二号の規定は以下の通りである。

都市計画法施行令第25条第二号
予定建築物等の用途、予定建築物等の敷地の規模等に応じて、6メートル以上12メートル以下で国土交通省令で定める幅員(小区間で通行上支障がない場合は、4メートル)以上の幅員の道路が当該予定建築物等の敷地に接するように配置されていること。
ただし、開発区域の規模及び形状、開発区域の周辺の土地の地形及び利用の態様等に照らして、これによることが著しく困難と認められる場合であつて、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上及び事業活動の効率上支障がないと認められる規模及び構造の道路で国土交通省令で定めるものが配置されているときは、この限りでない。

都市計画道路の技術基準の基本的な考え方は、まず開発敷地は道路に接道するべきことを定めている。そして開発敷地の接道する道路の幅員については、開発地の交通量で既存道路交通が妨害されないようにするために「予定建築物の用途と敷地の規模」で、都市計画法施行規則第20条において住宅、住宅以外、第1種特定工作物ごとの区分において、いずれも敷地面積1,000平方メートル以上の開発では、幅員9メートル以上、敷地面積が1,000平方メートル未満の場合には、幅員6メートル以上とすると定めている。

都市計画法施行規則第20条
令第25条第二号 の国土交通省令で定める道路の幅員は、住宅の敷地又は住宅以外の建築物若しくは第一種特定工作物の敷地でその規模が1,000平方メートル未満のものにあつては6メートル(多雪地域で、積雪時における交通の確保のため必要があると認められる場合にあつては、8メートル)、その他のものにあつては9メートルとする。

3 都市計画法と建築基準法第3章との関係
都市計画法と建築基準法とは、一体不可分の行政として制度化されている。二つの行政の結節点は、「都市計画区域等に存在する全ての建築物は、固有の敷地を定めるべきこと」としている点にある。都市計画区域内の個々の敷地ごとに、敷地と建築物との関係は、都市計画決定した土地利用計画に従って、建築基準法第3章の規定に基づき規制される。結果として、個々の敷地ごとに建築基準法第3章の規定どおりに造られた建築物の集合体としての都市は、都市計画的に調和のとれた環境となる。このような法律の構成をとっているため、都市計画決定された内容を実現するべく、個々の敷地ごとに都市計画決定に対応する建築規制が建築基準法第3章で定められている。

4 都市計画区域内の敷地の基本条件(接道規定)
建築基準法では個々の建築物の敷地は、都市計画法第11条で定める「都市施設」として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接するべきことと定められている。この都市計画法第11条第1項第一号に定める「都市施設」としての道路の条件を定めた規定が建築基準法第42条と第43条である。関係条文を抜粋しておく。

都市計画法第11条
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設で必要なものを定めるものとする。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
一  道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
(二号以下省略)

建築基準法第42条  
この章の規定において「道路」とは、次の各号の一に該当する幅員4メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、6メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

建築基準法第43条 
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第44条第1項を除き、以下同じ。)に2メートル以上接しなければならない。

第42条の道路は、現実の都市交通としてのネットワーク(網の目)を担う道路としての効用を果たすべきことを前提に、その道路の築造の根拠となる法律が定められている。その際の道路については、それぞれの法つまり道路法 、都市計画法 、土地区画整理法 、都市再開発法 、新都市基盤整備法 、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 、密集市街地整備法等で定められた道路管理者が適正に管理することを前提にしている。特定の法律に基づいて築造された道路以外で、私道であっても、特定行政庁が指定した道路に関しては、特定行政庁が建築基準法の施行業務として、その道路を私的な道路管理ではあるが、道路の効用としてネットワークの一貫と担う都市施設としての道路の効用を維持することを、建築基準法の権限により管理監督することにしている。つまり、建築基準法上の道路は、都市施設としての道路ネットワークの構成道路として、私道であるか、公道であるかを問うてはいない。

5 建築基準法上の道路
(ⅰ)道路法による道路(第42条第1項第一号)

建築基準法で定義されている道路とは、都市計画区域内の建築物の敷地が、都市施設としての交通、防災、利便等のサービスを自動車の交通によって受け入れるために、前述のとおり2メートル以上は道路に接していなければならないとされる幅員4メートル以上の道路をいう。基本的には、すでに道路としての効用を果たすことができるものに限られる。
まず、一般的に公共の道路は道路法によって造られた道路(第42条第1項第一号)がある。

(ⅱ)都市計画法等による道路(第42条第1項第二号)
次に、都市計画法、旧住宅地造成事業法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市住宅供給促進法、密集市街地整備法という、事業法で造られた道路(第42条第1項第二号)がある。これらはいずれも都市開発関係の事業法によって築造される道路である。これらの道路の中で、公共の道路管理者に管理が引き渡されたものは、引き渡された段階で、建築基準法による道路となる。
この中で誤解されるのが、都市計画決定されて行われる新住宅市街地開発法や、都市計画法に基づき、開発許可を受けて都市計画決定されて造られる道路である。これらの事業は、いずれも開発計画の中で土地の管理処分計画が決められていて、事業が完了し、完了公告が出された段階で、その管理処分計画で定められた管理者の土地になる。また、これらの事業で築造される道路は、完了公告が出されるまでは、法律上の実体がないことから建築基準法上の道路ではない。
特に都市計画法による道路とは、「道路として都市計画決定された道路」をいい、単に都市計画決定される事業の中で造られた道路は、都市計画法によって造られた道路にはならない。例えば、新住宅市街地開発法(ニュータウン法)に基づく事業では、緑地内の歩道もあり、それらは、公園で管理されることもあるし、道路法で管理されることもある。
また、「一団地の住宅施設」で都市計画決定された都市施設として造られた場合には、敷地内の通路となることもあって、都市計画法の道路とはならない。
そのことは、都市計画法による開発許可によって計画された道路についても同じである。それにも拘らず、国土交通省住宅局は、都道府県知事に宛てた通達(国住街第64号平成19年6月20日付、建築基準法道路関係規定運用指針の策定についての<技術的助言>)で、「開発許可を受けて造られる道路は、第42条第1項第二号の都市計画法による道路として扱うものとする」という建築基準法違反の通達を出した。この通達は、法律上の根拠のない運用通達で、二つの点で建築基準法に違反している。一つは、開発許可による道路は、都市計画法第36条で定められている通り、完了公告がなされるまでは、法律上の実体がないことから建築基準法上の道路ではない。従って先ず法律上の実体がない点で建築基準法に違反している。
もう一つは、建築基準法第42条第1項第二号の都市計画法による道路は、都市計画決定した道路に限られ、開発許可によって造られたものは、都市計画決定はされておらず、都市計画法上の道路ではないことは法律上明らかである。

(ⅲ)現に存在する道路(第42条第1項第三号)
都市計画区域に編入されたとき、幅員4メートル以上の道路としての効用を果たしているものも、建築基準法上の道路(第42条第1項第三号)である。

(ⅳ)事業予定指定道路(第42条第1項第四号)
道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、大都市住宅供給促進法、または密集市街地整備法により、2年以内に事業が執行される予定のもので、特定行政庁が指定したものは、指定時点で道路としての効用は果たしていないが、建築基準法上の道路(第42条1項第四号)として扱われる。

(ⅴ)位置指定道路(第42条第1項第五号
これらの道路以外でも、建築基準法に基づき、建築基準法施行令第144条の4(巻末資料ⅳ)の技術基準に適合する道路を築造し、特定行政庁がその位置を指定した場合には、その道は建築基準法上の道路(第42条第1項第五号)となる。旧市街地建築物法時代に存在したドイツの都市計画法(バオゲゼッツ)に倣った「建築線」による道路予定地の道路境界線を用意するこの方法は、1950年建築基準法の制定時に廃止され、第42条第1項第五号とされた。

建築基準法第42条第1項第五号
土地を建築物の敷地として利用するため、道路法 、都市計画法 、土地区画整理法 、都市再開発法 、 新都市基盤整備法 、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 又は密集市街地整備法 によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの(巻末資料ⅴ)

(ⅵ)所謂「2項道路」(第42条第2項)
都市計画区域に編入されたとき、すでに道路としての効用を果たしているが、幅員が4メートル未満の道で、特定行政庁が都市施設としての道路であると指定したものは、法律上幅員4メートルの道路と「みなされる」。つまり、道路とみなされた土地は、法律上道路として扱われることになる。この所謂「2項道路」と呼ばれている道路は、実質的に幅員4メートルの効用を果たしていないが、建築行為が行われる度に道路とみなされた所は道路として整備されるので、都市施設としての道路網に組み入れられてもよいとする考え方である。

建築基準法第42条第2項  
この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートルの線をその道路の境界線とみなす。

(ⅶ)自動車が登場する以前の安全な道路システムに対応した道路(第42条第3項)
さらに、都市計画区域に組み入れられたが、徒歩により道路の機能を担ってきた道路については、例外的かつ個別に特定行政庁がその幅員を指定することができる。例えば、車が生活の足になる以前の時代に造られた道路で、併設して水路網や都市防火用水体系があり、徒歩による安全な都市体系が作られたところでは、その区域内には、自動車の進入を排除して、幅員4メートル未満の道路であっても、経験的に安全な通行が維持できるとして、特定行政庁が指定した幅員の道路も例外的に存在する。
都市計画は都市の歴史文化の集積であって、歴史の中で培われた都市空間の文化を、都市が形成された当時のシステムに戻すことで、個性ある歴史景観を生み出すことができる。都市環境を考えるに当たって、現代の自動車交通を前提に、それに対応する道路だけが、唯一無二の都市の機能と固定的に考えてしまう間違った環境の考え方がある。歴史文化環境の保存を前提にして、安全上、機能上、現代の要求に応える方法を考えなければ、歴史文化の集積としての都市を造ることはできない。大阪の法善寺横丁や、東京都中央区佃はその例である。
自動車が登場する以前の交通体系に合わせた生活は、全ての通路をネットワーク化することで可能である。ただその時の条件は「一団地の住宅施設」としての都市計画決定があることで、そのシステム全体に公共性を付与することがなければならない。

6 戸建住宅の開発問題
(1)    4メートル未満の「2項道路」による市街地の戸建住宅の開発

都市計画法第33条「開発許可の基準」第2項「技術的基準」に基づき定められた道路の基準は、都市計画法施行令第25条第二号である。

都市計画法施行令第25条第二号
予定建築物等の用途、予定建築物等の敷地の規模等に応じて、6メートル以上12メートル以下で国土交通省令で定める幅員(小区間で通行上支障がない場合は、4メートル)以上の幅員の道路が当該予定建築物等の敷地に接するように配置されていること。ただし、開発区域の規模及び形状、開発区域の周辺の土地の地形及び利用の態様等に照らして、これによることが著しく困難と認められる場合であつて、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上及び事業活動の効率上支障がないと認められる規模及び構造の道路で国土交通省令で定めるものが配置されているときは、この限りでない。

その技術基準は、予定建築物の用途開発の規模によって、その敷地の接道すべき道路の幅員は、都市計画法施行規則第20条で決めている。

都市計画法施行規則第20条
令第25条第二号 の国土交通省令で定める道路の幅員は、住宅の敷地又は住宅以外の建築物若しくは第一種特定工作物の敷地でその規模が1000平方メートル未満のものにあつては6メートル(多雪地域で、積雪時における交通の確保のため必要があると認められる場合にあつては、8メートル)、その他のものにあつては9メートルとする。

都市計画法施行規則第20条の解説
この条文は、法律の繋ぎ用語「若しくは」と「又は」の読み方の基礎事例である。
都市計画法や住宅関連法では、「住宅」という用途は国民の家計支出で支払われるということで特別な扱いをしているため、この条文でも次のように、A「住宅の敷地」とB「『住宅以外の建築物』(C)若しくは『第1種特定工作物』(D)の敷地」とに建築物用途による敷地の種類を2分している。法律上は「Aの敷地」又は「Bの敷地」に2分して、「Bの敷地」の中の建築物に「C若しくはD」の2種類があるという法律構成になっている。
条文では、「Aの敷地」または「Bの敷地」のいずれの敷地にあっても、その面積が1000平方メートル未満のものにあっては、敷地の接道する道路幅員は6メートルとするとし、それ以外のもの、つまり面積が1000平方メートル以上のもの(「Aの敷地」も「Bの敷地]も全てを含んで)は幅員9メートル以上の道に接することを定めている。

そこで予定建築物が住宅であっても、住宅以外であっても、敷地面積が1,000平方メートル未満の開発である場合は、その開発地での接道する道路幅員は6メートル以上でなければならない。しかし、敷地面積が1,000メートル以上の開発である場合は、幅員9メートル以上としなければならないと規定してある。しかし、東京都首都整備局の出している『開発の手引』では、都市計画法施行規則に違反して、「住宅地開発の場合には開発面積の如何にかかわらず、接道道路の付近は6メートル以上」という都市計画法施行規則第20条違反の基準を示している。
この条件を満たすことが出来ない開発の場合には、都市計画法第25条第四号に規定に基づき、その開発地から幅員9メートルの道路まで、開発地から専用取り付け道路を開発地の主要道路を延長して造るべきこととしている。

都市計画法施行令第25条第四号
開発区域内の主要な道路は、開発区域外の幅員9メートル(主として住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為にあつては、6.5メートル)以上の道路(開発区域の周辺の道路の状況によりやむを得ないと認められるときは、車両の通行に支障がない道路)に接続していること。

接道と接続のちがい
接道とは道路が敷地に接するように配置されていること。接続とは敷地と敷地外の道路をつなぐ道路。

その例外としては、その開発が、専ら住宅の開発である場合には、取り付ける道路の幅員は、9メートルでなくても、6.5メートルでも良いと定めている。つまり、このような開発をしないならば、その開発によってその地域の道路交通は、その開発によって過大の交通負荷を受けるため、第33条第1項第一号に抵触すると言っている。別の言い方をすれば、抵触する開発はしてはならないということでもある。
しかし、現実に日本の都市は、だだっ広く都市計画区域が設けられ、そこでは「2項道路」(都市計画法施行以前に9尺道路(2.7メートル)が造られていて、都市計画法が施行されたとき、建築基準法第42条第2項により、包括的に特定行政庁が「道路」と指定した。)としての市街地が形成されている。都市計画区域の道路は、都市計画法第11条第一号に定める都市施設としての道路であり、その幅員4メートル以上の道路である。都市施設としての道路は、建築基準法第42条の道路である。そこで、建築基準法が施行になったとき(都市計画区域に編入されたとき)、現に道路としての効用を果たしている道路は、実際に幅員として4メートル未満であっても、建築基準法上の道路であるから、その幅員は4メートルあるとみなすとされた。
現実の「2項道路」で構成された幅員4メートル未満の道路で造られた町は、その狭い道路幅員と、その道路沿線に構成された発生交通量の少ない緩速自動車走行の戸建住宅地である。そのため、その市街地自体は歩行者と車両共存の都市計画上も住宅地であると考えられることから、都市計画法施行令第25条第二号但し書きにおいて、そのような開発敷地が幅員4メートルの道路で区画されて、その道路に各予定建築物の敷地が接道するような場合には、建築基準法と平仄を合わせて、そのような開発でよいということを定めている。その規定が都市計画法施行規則第20条の2の規定である。

(2)開発地周辺に幅員6メートル以上の道路がない戸建住宅地の開発
開発許可を要する開発敷地が広くて、そこの開発道路を建設するばあいには、開発敷地は自動車通行を前提にした開発がなされることから、開発許可を受ける敷地は、幅員6メートル以上の道路として開発することが原則として定められている。しかし、「2項道路」のネットワークとして造られた戸建住宅地のような場合で、各敷地への発生交通量が分されていて、交通量が集約されないような場合には、建築基準法で求めている幅員4メートの道路で十分対応できる。
そのため、「2項道路」で造られた既存市街地と連担して、各敷地から直接、幅員4メートルの歩行者、自動車共存道路に取り付けられる市街地を開発することは、都市計画法上、容認している。

都市計画法施行令第25条第二号ただし書き
ただし、開発区域の規模及び形状、開発区域の周辺の土地の地形、及び利用の態様等に照らして、これによることが著しく困難と認められる場合であって、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上及び事業活動の効率上支障がないと認められる規模及び構造の道路で、国土交通省令で定めるものが配置されている場合には、この限りでない。

都市計画法施行規則第20条の2  
令第25条第二号 ただし書の国土交通省令で定める道路は、次に掲げる要件に該当するものとする。
一  開発区域内に新たに道路が整備されない場合の当該開発区域に接する道路であること。
二  幅員が4メートル以上であること。

この規定の適用にあたっては、その適用される開発地の条件が先ず問われることになる。この条文の適用は、市街地全体が建築基準法第42条第2項の所謂「2項道路」で構成されているような地区で、かつ、そこで開発される予定建築物が、各住宅が専用敷地を有する住宅(戸建住宅、二連戸住宅、連続住宅)を直接、既存の4m以上の幅員の道路に取り付いている敷地に建築するような場合で、その開発地に接続するそれ以外の道路がないような場合の開発である。
このような場合には、新しく開発されることになる住宅地からの発生交通が、既存の住宅地同様な道路に対して散在的な発生になることが、交通量の平準化の観点から望ましいことから、幅員4メートルで、既存の「2項道路」により形成された市街地と同じ住宅地が形成されることが望まれる。そこでこのような場合には、この開発地に対して幅員4メートルの道路を建築基準法第42条第1項第五号の道として築造し、その後開発地区全体に対して都市計画法第29条による開発許可を申請することになる。この開発地区内には道路の築造をする必要はなく、開発地内の交通は、周辺道路に直接サービスされることになる。
しかし、開発許可制度が発足した当時は、開発許可制度により優れた開発をするという行政の高い意欲から、「開発許可制度により築造する道路幅員は6メートル以上にし、その開発区域内に建築基準法により、「第42条第1項第五号道路」は認めないとする「行き過ぎた行政」もおこなわれていた。
その裏返しとして、東京都町田市や稲城市といった建築基準法による「2項道路」が市街地の過半の地域を構成しているところでは、ともかく開発許可に係る道路は幅員6メートルとする都市ながらも、実質6メートル道路を建設することができないので、開発敷地が道路に接する部分だけ、道路中心線から3メートル後退した道路を造ることで、それを開発許可として築造する幅員6メートルの道という法律に違反した計画で開発許可がなされてきた。しかも、東京都開発審査会は、住民の行った不服審査請求に対して、町田市長や東京都知事(多摩建築指導事務所長に法律に根拠を置かない権限委譲)のなした処分(実質幅員5メートル未満の道路)を道路中心振り分け3メートルの幅を、幅員6メートルの道路とするみなしをして正当であると法律違反を容認してきた。東京都の開発許可で容認してきた「前面道路の中心線から振り分け3メートルの幅を道路」とみなす扱いの法律上の根拠はなく、違反がやられてきた。
そのため、これまで開発許可をしようとする区域内の建築基準法第42条第1項第五号で幅員4メートルの道路を築造して、その敷地を500メートル未満の敷地に区分することを、「開発許可逃れの脱法」と言う扱いをする行政庁が多く存在した。「2項道路で形成された市街地の中に開発許可がおこなわれて、その開発敷地内の幅員が6メートルで、そこからの交通を集める道路が4メートルということになると、交通量の多い道路に、交通量の少ない道路から速度の速い交通が合流することにより危険が増すことになる。交通工学的観点からも、もし都市の部分が「2項道路」体系で出来ている区域ならば、そこでの開発も幅員4メートルの歩行者と自動車共存の緩い速度の自動車走行道路として計画することが望ましい。
都市計画法施行令第25条第二号但し書きは、このような事態を予定して作られた規定である。つまり、開発敷地を「2項道路」で構成されているような区域に開発され、その開発内容が戸建住宅地として、幅員4メートルの道路に直接接道して造られる場合には、敷地全体の規模が、開発許可を必要とする規模の開発であっても、その接道する道路は幅員として4メートル以上あればよいと定めている。
この規定の仕方は、建築基準法第42条第1項第五号の規定と同じような規定の仕方で、開発地を戸建住宅地として開発する場合には、第42条第1項第五号の道路として接道するように造れば、その開発規模にかかわらず、それ以上の道路は造らなくてもよいと言う規定なのである。


第5章    道路法令の運用実態

1 東京都「開発許可の手引き」による道路行政は違法である
前述したように東京都首都整備局の出している『開発の手引』では、都市計画法施行規則に違反して、「住宅地開発の場合には開発面積の如何にかかわらず、接道道路の付近は6メートル以上」と、都市計画法施行規則第20条違反の基準を示していながら、実際の運用では5メートル未満の道路を6メートルという扱いをしてきている。
東京都の開発許可では、建築基準法第42条第2項の道路で形成された市街地において、都市計画法施行令第25条第二号ただし書きに適合するよう、先に建築基準法第42条第1項第五号に規定の道路を築造し、その道路から直接サービスを受ける開発は、この規定の存在を事実上無視し、開発許可を骨抜きにするものとして認めず、開発地に形式上、幅員6メートル以上の図面上に記述のされた道路さえ築造すれば、開発許可の条件は満足しているという扱いとなっている。
東京都による開発許可は、東京都の定めた「開発許可の手引き」という都市計画法違反の行政手引きで、開発許可に係る道路幅員は6メートルと定め、その道路の築造は、開発許可において、建築基準法の「2項道路」と同じ「みなし道路」の扱いをすることができると、法律上の根拠なしに行っているものである。つまり、開発敷地の接すべき道路幅員6メートルの規定を基本的に蹂躙して、法律上みなし道路の規定でもないにも拘らず、敷地部分だけ中心から3メートル後退しただけの道路としての効用を発揮することのできない空地を造ることで、それを道路に置き換えてやってよいとする法律に根拠のない違法なものである。しかも、その躯体部分だけは道路管理者に移管することがあっても、その隣接地に対して、道路としての後退を義務付けることはできない。
東京都のこの扱いは、町田市、稲城市において、実際に中高層マンションなど、予定建築物から集約的な交通発生が予定される開発において、開発地部分だけが道路中心線から3メートル後退した道路として許可されており、このような開発により都市の交通混乱は一層悪化することになる。町田市及び稲城市のいずれにおいても、開発敷地部分だけの道路について、道路中心線から3メートルの後退をすることで、開発許可が出されているが、それを都市計画違反であると住民は、都市計画法第50条に基づき不服審査請求をした。
その不服審査請求を受けて、それを開発審査会では、開発事業者が事業採算上の理由で、敷地にサービスする道路を建設することができないという理由を、開発許可権者が認める「やむをえない理由」として、ことごとく都市計画法違反を容認してきた。
つまり、幅員6メートル以上の道路による開発をしないならば、地域の道路交通はその開発によって過大な交通負荷を受けるため、第33条第1項第一号に抵触するといっているのであるが、実際上、建築基準法上「2項道路」で構成された市街地に、蛇が卵を呑んだ形の開発であっても、建築基準法の「2項道路」のような形で、開発の都度、整備されていけばよいというような法律に根拠のない運用を実施している。

2 法律を蹂躙した東京都の開発許可における道路の扱い
東京都では、法律上敷地面積が1000平方メートル以上の開発にあっては、幅員9メートル以上としなければならない都市計画法施行規則第20条の規定を無視し、予定建築物が住宅であれば、敷地の規模にかかわらず、幅員6メートル以上あればよいといった法律違反の許可をしている。
法律上、「予定建築物としてマンション建設に相応しい敷地条件を開発することができなければ、その開発はやってならない」、としなければならないにも拘らず、開発許可行政では、開発業者の開発が既定事実として存在し、それを事業採算可能な範囲で、「開発許可権者が認めるやむをえないと認めること事情」として、法律に根拠を持たない運用基準で、法律違反を容認するための例外許可が成されているのである。
一方、現実の都市計画行政では、面積500平方メートル以上の戸建住宅地を建築基準法第42条第1項第五号の位置指定道路で開発しようとすると、そのような開発は、「開発許可をすり抜けるものである」と居丈高に犯罪者呼ばわりをして、その開発計画の対象とされる敷地に関しては、建築基準法第42条第1項第五号の道路は認めず、東京都が定めた幅員6メートルの道路を築造させることがやられている。つまり、周辺道路は全て幅員4メートルで緩速車線体系の市街地に、開発地から合流車線だけ幅員6メートルと言う危険な道路築造が、開発許可制度を間違って解釈してやられている。
東京都及び町田市の言い訳は、「この開発を実現するために、接道する道路全体を都市計画法施行令第25条第二号に適合するような拡幅は、経済的に困難であり。同様に同令第四号に規定する取り付け往路を造ることは困難であるから、同令第二号但し書きの規定に該当する規定であるとして、「開発許可権者がやむをえないと認めて許可することの出来る場合である」と「法律にまったく根拠のない主張」をする。東京都は「開発許可権者の正当な法律で規定された裁量権の駆使である」と言う。そして東京都開発審査会がその主張をこれまで追認してきた。
開発許可が開発地周辺の都市との調和を重視せよという立法の趣旨と、法律条文の文言を全く無視した都市計画違反行政が横行している理由は、開発審査会が、開発許可の誤りを正さず、処分庁の処分を正当化することしかやろうとしないためである。そして、開発審査会は、行政の処分を悉く追認してきた。
(事例:町田市玉川学園、多摩画を学園8丁目、稲城市)

東京都は、都市計画法施行令25条第二号による要件も、同令第四号に規定する要件を満足できない開発に対して、「同令第二号但し書き」によるとして、法律に違反した開発指導基準要綱を作り、又は開発指針を作り、開発業者の予定建築物として共同住宅の建設を前提に、法律に適合した道路の築造をしないで開発許可を与えてきた。
さらに、その開発道路が計画段階であっても、それが完了して完了公告が出されたものとみなして、建築基準法第6条に違反して、予定建築物の確認申請が受け付けられた。そして、その法律違反の確認申請には、確認済証が建築基準法に違反して交付されている。さらに、その予定建築物は、都市計画法第37条に違反して、かつ、建築基準法第6条に違反して建築工事をして良いとされている。

3 国土交通省の奇妙な通達
東京都の法律蹂躙に加えて、近年、国土交通省は、東京都の法律違反の事実を追認する形で、法律(建築基準法第42条)に違反して、次のような運用通達を出している。それは、国土交通省住宅局長の指導通達、「建築基準法道路関係規定運用指針」(平成19年6月20日国住街第64号)で、「都市計画法第29条により許可を受けた開発行為によって、同法第33条の基準に適合して整備するものは、同法第42条第1項第二号の道路に当たる」という法律に違反した運用方針を示したものである。そして、この指針を口実に、違反が更に拡大している。
国土交通省自体が、都市計画法制定当時の政府委員(都市局長)国会説明を蹂躙し、かつ、都市局と住宅局との合意で進めてきた開発許可と建築基準法との関係を無視したものである。
建築基準法第42条のこれまでの法解釈は、「道路としての都市計画決定した道路以外は、第42条第1項二号の都市計画道路ではない」とする解釈であった。開発許可はもとより、新住宅市街地開発法(ニュータウン法)として造られた道路も、「道路が完成した段階でその開発計画で定められた道路管理者の道路になるもので、都市計画道路にはならない」とする従来の法律解釈に対して、今回の指針は、「開発許可の中で計画された私道でも、道路は全て、都市計画道路とみなす」といった全く別のご都合主義の法律蹂躙をしたもので、無茶な指針なのである。


第6章「一敷地一建築物」の原則

1「一敷地一建築物」の原則とは
都市計画法によって裏付けられる公共性は、都市空間利用に関する地域地区(都市計画法第8条)及び都市施設に関する都市計画決定であり、都市計画決定の適用は、各敷地と予定建築物との関係として規定されるものであるから、敷地の確定の仕方は、都市計画決定の実現の上で基本的な事項である。そのため「開発行為」の定義で「土地の区画形質の変更」という表現で、敷地の区画決定の重要性を確認している。
敷地とは: 一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。(建築基準法施行令第1条第一号)
都市を都市計画決定通りの都市空間として整備するためには、都市計画区域内の建築物は、それぞれの敷地ごとに、都市計画決定された規制区分に従って設けられた都市計画決定に対応した「一敷地、一建築物」の原則に基づく建築基準法第3章の建築規制を遵守することによって、都市全体として調和のとれた環境をつくることができる。都市計画法と建築基準法による建築規制は、このような「一敷地一建築物」の原則の考え方に立っている。例外的取り扱いには次の二種類がある。

(ⅰ)用途上不可分な建築物
学校、旅館、ホテルなどの建築物は、一体的に経営管理されている建築物で、その建築計画上の選択肢として1棟の建築物として造ることもできるし、複数の建築物として建築することもできる。そこで、建築基準法上は1棟として建築しても、複数の建築物として造っても、一つの敷地に建築する上での計画上の違いに過ぎないことから、「用途不可分の経営管理下に置かれた建築物」は、一敷地に複数の建築物として造っても、全体として一つの建築物として扱うことが適当であると法律上判断された。
例えば、学校建築の場合には、学年ごとの教室等、特別教室棟、体育等の全ての建築物は、管理棟と有機的関係の下で用途上不可分の施設として経営されているので、それを1棟で造るか、複数棟で造るかは、計画上の選択肢の問題に過ぎず、建築基準法上では全体を一つの敷地で建築することでよいとした。
同様のことが、ホテルや旅館を計画する場合、客室を、コテッジや、離れを構成して造ることも、1棟の中に集約して造ることは、設計の選択肢として可能な対応である。これらの建築群を一敷地に計画することは、全体が有機的に計画されているため、「一敷地一建築物」の建築基準法の考え方に合致するものである。
現実には、「一団の建築物」であるため、個々の建築物には専用の敷地は存在しない。しかし、これらの建築物群が経営上の都合で、複数の敷地に分割管理されなければならない場合には、各分割された建築物は、その敷地ごとに区分され、建築基準法上の、「一敷地一建築物」の原則を満足するような「用途変更」の手続きをすることが義務づけられる。

(ⅱ)用途上独立した建築物
建築物の用途として独立した用途の建築物、例えば、住宅又は住戸は、それぞれが用途上独立しているから分離して建築することができる。これらの用途上独立した建築物を構造耐力上一体不可分として造った建築物は、構造耐力的に一体とする「構え」ごとに、1棟の建築物になっている。
「構え」の用例:建築基準法施行令第128条の3「地下街の各構えは、次の各号に該当する地下道に2m以上接しなければならない。」

共同住宅や雑居ビルなどの複合建築物はこの例で、いずれも棟単位で一つの建築物となる。構造耐力上分離して独立して建てられる建築物は、建築基準法上はそれぞれ独立した建築物として扱われる。
一方、TV塔の展望台、地下街の「各構え」のように、建築物が高架工作物や地下工作物内に造られる建築物の場合には、これらの建築物は、「各構え」ごとに、それぞれ一棟の建築物として扱われる。そして、「各構え」ごとの建築物は、構造耐力上安全であると共に、防火上、避難上、居住者が安全に地上に避難できるように造ることが義務づけられている。その方法としては、建築物は高架工作物や地下工作物に構造耐力的に安全に造られているとともに、そこを利用する人たちが、建築物から廊下、地下道、階段により安全に地上階に避難できなければならない。建築基準法は、これらの建築の条件として、廊下、地下道、階段が利用できることを定めている(建築基準法第35条、建築基準法施行令第128条の3(巻末資料ⅵ))。

建築基準法第35条  
別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1000平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

これらの避難施設は、利用できるだけでよく、建築物の一部でなければならないとは定めていない。建築基準法では、建築物から地上への安全避難を実現するために、建築物と一体的に造った廊下、階段で避難してもよいし、その他の建築物、又は、工作物の廊下、階段を利用してもよいとする避難の考え方をしている。
同様の趣旨で、共同住宅としての建築基準法施行令第81条第4項に関するエクスパンションジョイントで繫がれた1棟の建築物(「構え」)については、構造計算上それぞれが別の建築物であることになれば、各住戸が用途上独立しているから、構造上独立した部分ごとに独立した建築物になる。その際、廊下、階段については、建築物の各部分で利用できる避難施設があればよく、個々の建築物ごとに固有の避難施設を要求していない。

建築基準法施行令第81条第4項
2以上の部分がエキスパンション・ジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している建築物の当該建築物の部分は、前3項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。

「構え」をまたぐ避難上の施設としては、別棟の建築物でも、工作物であっても、建築基準法で規定している条件を具備した安全避難ができる廊下、階段に接続していればよく、そこでサービスを受ける廊下や階段があるからといって、それらによって、別の構えの建築物を一つの建築物にすることはない。避難施設や建築設備を共用しているからということは、それらで繫がれた建築物を一の建築物と扱う理由にはならない。

2 「一敷地一建築物」の例外 ―都市施設としての一団地の住宅施設―
一団地として都市計画決定される住宅施設や官公庁施設並びに流通業務団地は、その団地を構成する建築物は、いずれもそれぞれが独立した用途の建築物であって、本来ならば、「一敷地一建築物」の規定に適合しなければならない。しかし、一団地として一体的に計画決定され、管理されている場合、次の2項目に該当するものは、その団地全体が都市施設として、「一団地の住宅施設」として都市計画決定される(都市計画法第11条第八号)。
① それら自体が都市計画決定された「地域地区制度」(都市計画法第8条)に基づいて造られたられた都市計画と同等の安全内容を具備するもの。
②    既存の都市計画と調和して計画されているものと都市計画上判断されるもの。

都市計画法第11条第八号
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設で必要なものを定めるものとする。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
一  道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
二  公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
三  水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
四  河川、運河その他の水路
五  学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
六  病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
七  市場、と畜場又は火葬場
八  一団地の住宅施設(一団地における50戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
九  一団地の官公庁施設(一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
十  流通業務団地
十一  その他政令で定める施設

都市施設とは
都市計画法第11条で定める都市施設について、それらは、必ずしも都市計画決定されたものとは限らず、都市計画決定されたものも、されていないものも、全てが含まれる。都市は、都市計画されたものだけに都市施設を依存するわけではなく、都市計画決定していないものにも、都市施設の機能を分担して受け持ってもらっているのである。都市計画上では、既存の都市施設で不足する場合で、都市計画上必要であるとされる都市施設については、それを都市計画区域内の市民の合意として都市計画決定をすることで、その都市施設を築造する上で、関係権利者の私的財産権を、計画公権(都市計画決定により付与された強制権)を行使してでも、また個人の財産を収用してまでも、その都市施設を実現させることができる。

都市施設として都市計画決定された「一団地の住宅施設」等は、「地域地区制度」の規定に対応して造られた建築基準法第3章の規定に従わなくてもよいという構成になっている。つまり、「一団地の住宅施設」は、都市計画決定によって、都市計画法第8条「地域地区の規定」、つまり第3章規定の適用を除外し、同時にその都市施設の実現に対して計画公権が与えられるという法律構成である。
この構成は、昭和25年(1950年)建築基準法が制定されたとき、GHQの指導に基づき米国の建築法UBC(統一建築法規)の構成に倣ったものである。つまり、「一敷地一建築物」に対して、「一団地の住宅施設」については、全体として都市に調和する開発計画であるということを条件に、建築基準法第3章の規定に対して、都市施設として公共性があるとされた「一団地の住宅施設」に対しては、「一敷地一建築物」の規定を適用するという一般原則に対し、それと矛盾しない一種の「治外法権」として認められてきた。
都市計画法理論として、「一団地の住宅施設」の取扱いは、いわば、「一団地の住宅施設」として「面的な広がりを持つ都市空間部分」として、その都市全体と調和する独立的な都市的環境を維持する自治によって、その都市に成されている環境水準と同等以上に、関係住民の都市環境が維持され、かつ、住民の福利や安全、衛生、利便などが、「一団地として自足的に保障されている」という考え方である。
都市計画法第11条第八号の一団地の住宅施設は、全て都市計画決定されるわけではない。一団地の住宅施設の中で、都市計画区域内の都市計画決定をされていない一団地の住宅施設には、当然、建築基準法上の第3章規定が適用される。

3 建築基準法第86条の法律の文理解釈からみた適用の範囲
建築基準法第86条による「一の敷地とみなすこと等による制限の緩和」の規定は、建築基準法立法当初から「一団地の住宅施設」に対する第3章規定の適用除外の規定として設けられたものである。この条文の適用に当たっては、都市計画法及び建築基準法で対象とする敷地と建築物の関係としての技術的な妥当性というものがある。例えば、都市計画決定をしてきた「一団地の住宅施設」と都市計画決定をしていない「一団地の住宅施設」との間には、敷地規模自体として、後者の敷地規模が前者の一団地の敷地面積を超えることがあってはならないといった技術的常識である。建築物の敷地はあくまでも「一敷地一建築物」の原則を適用することであるべきである。「一団地」とするべきものを「一敷地」とすることはあってはならない。
都市計画法と建築基準法とが姉妹法であることから、都市計画決定された地域地区(第8条)の適用区域にあては、「一敷地一建築物」の原則を排除できず、現行の建築基準法第86条第8項規定により公告された対象区域は、都市計画決定された「一団地の住宅施設(都市計画法第11条第1項第8号)」でなければならず、もし、都市計画決定のされない「一団地の住宅施設」に対して、第86条第8項に基づき都市計画決定を蹂躙することが出来るとすれば、姉妹法の関係で建築基準法第3章に付与されている計画公権を背景にした強制権は、その根拠を都市計画決定によらなくても、建築基準法自体で特定行政庁に付与できるということになり、都市計画法と建築基準法の間の姉妹法の関係は崩壊することになる。

建築基準法第86条(一の敷地とみなすこと等による制限の緩和)
建築物の敷地又は建築物の敷地以外の土地で二以上のものが一団地を形成している場合において、当該一団地(その内に第8項の規定により現に公告されている他の対象区域があるときは、当該他の対象区域の全部を含むものに限る。以下この項、第6項及び第7項において同じ。)内に建築される一又は二以上の構えを成す建築物(二以上の構えを成すものにあつては、総合的設計によつて建築されるものに限る。以下この項及び第3項において「一又は二以上の建築物」という。)のうち、国土交通省令で定めるところにより、特定行政庁が当該一又は二以上の建築物の位置及び構造が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものに対する第23条、第43条、第52条第1項から第14項まで、第53条第1項若しくは第2項、第54条第1項、第55条第2項、第56条第1項から第4項まで、第6項若しくは第7項、第56条の2第1項から第3項まで、第57条の2、第57条の3第1項から第4項まで、第59条第1項、第59条の2第1項、第60条第1項、第60条の2第1項、第62条第2項、第64条又は第68条の3第1項から第3項までの規定(次項から第4項までにおいて「特例対象規定」という。)の適用については、当該一団地を当該一又は二以上の建築物の一の敷地とみなす。

建築基準法86条は、都市計画法でその計画公権を背景に適用されている地域地区の規定の適用を除外するというものである。適用除外は、都市施設として都市計画決定された一団地の住宅施設に対してであり、都市計画決定されていない一団地の住宅施設に対しては、適用除外は及ばない。
このことは、通常、工業専用地域に学校を建設することはできないが、工業専用地区に都市施設としての学校を建設する都市計画決定をした場合には第3章規定の適用は除外される。都市計画決定されたものは、同じ都市計画決定によってしか適用除外はできず、特定行政庁には都市計画決定を除外する権限はなく、都市計画決定の範囲内での調整権限しか与えられていない。
都市計画決定のない一団地の住宅施設を、単に建築基準法第86条のみの改正で、「一の敷地とみなすこと等による制限の緩和」という見出しと、それに対応した条文に変えたからといっても、都市計画決定をしていない一団地の住宅施設に建築基準法第3章の規定の適用除外はできない。つまり現行の建築基準法第86条は、都市計画決定された一団地の住宅施設以外に適用することはできないのである。
「一敷地一建築物」の例外として、一団地の計画に対して建築基準法第3章の規定の適用を除外する法律上の担保は、「一団地の住宅施設」としての計画を都市計画で決定するという都市計画法上の手続きを経て、はじめて確保されるのである。都市計画法第11条で定められた都市施設には、都市計画決定をしたものも、しないものもあるが、都市計画決定をした場合には、その都市計画決定は、都市に一般的に適用されている第8条の地域地区の都市計画に優先して適用されることになる。
建築基準法第86条は、都市計画法第11条に定める都市施設に対応する建築規制を定める条文として作られ扱われてきた。別言すれば、都市計画決定されていない一団地の住宅施設の場合には、建築基準法第86条の特定行政庁の認可または許可を受けたとしても、都市計画決定された内容の適用を除外することはできない。建築基準法第86条の規定のみで都市計画法の公法規制という強制力を排除することはできない。
しかし、現実の建築基準行政では、建築基準法第3章規定として、建築物の用途、容積率、建ぺい率、高さ等が都市計画として決定されているにも拘らず、特定行政庁の許可によって「都市計画決定と相違する計画」を建築基準行政単独の判断で容認することが行なわれている。特定行政庁の許可は、都市計画決定の枠組みの中で、個別の建築物ごとに都市計画決定の立法趣旨に適合させる矛盾が調整できるものに限り、その例外を許可するもので、都市計画決定に矛盾した計画に許可を与えるものではない。法律理論上の根拠として、都市計画決定という計画公権を与えられていないもの以外には、特定行政庁は強制権を行使することはできない。(事例:渋谷区鶯谷、世田谷区千歳烏山、文京区関口)

4「一敷地複数建築物」
第86条を総合的設計制度と名付け、都市計画決定がないのに、その区域を「特例対象区域」と定めて、都市計画決定をした都市施設と同等の法律上の扱いをしている建築行政は、都市計画法と建築基準法との基本的関係及び計画公権を蹂躙するものである。特に都市計画決定がされていない一団地の住宅施設にあっては、基本的に「一敷地、一建築物」の原則が尊重されて、建築物ごとに固有の敷地を設定し、その敷地ごとに建築物と建築敷地との関係、つまり、都市計画法第8条(地域地区)として都市計画決定された内容に対する建築基準法第3章の規定が厳密に適用されなければならない。
都市計画法第8条(地域地区)が都市計画決定された市街地では、建築物と建築物の敷地との関係は、「一敷地、一建築物」であるが、それには以下に説明するように、原則を認めながら、事実上は「一敷地、複数建築物」の建築が認められてきた。
① 建築基準法適用地区全体
複数建築物であっても、用途上、不可分であると言うことで、複数建築物でも、一敷地に建築できる。学校建築、旅館、ホテル、工場など。
建築基準法施行令第1条(用途上不可分の関係にある2以上の建築物)
② 建築基準法第3章規定(都市計画法第8条で定めた都市計画決定)の枠内
基本的には「一敷地、一建築物」ではあるが、隣接敷地等と一体的に計画することが出来ると考えられる場合で、旧第52条の2は、第59条の2に吸収されている。
旧建築基準法第52条の2(商業地域内の隣接敷地間における容積率等の移転)
建築基準法第59条の2(建設敷地周辺の環境整備に貢献した見返りの容積率等の移転)
建築基準法第60条(特定街区、都市計画決定された特定街区内の容積率等の緩和)
特定街区は都市計画の地域地区として都市計画されることにより、街区単位にスポットゾーニングで特別の容積率、高さを計画決定することになる。
③ 第3章規定の適用除外
基本的には「一団地の住宅施設」を都市施設として、として造られるが、「一団地の住宅施設」として都市計画決定されたものは、その都市施設の部分に対しては、地域地区に縛られない「都市の部分」として造ることができる。但し、「一団地の住宅施設」としての都市計画決定を指定ないものは、地域地区に縛られることになる。
建築基準法第86条(都市計画決定されていない「一敷地とみなす『一団地の住宅施設』」)
建築基準法第86条(都市計画決定された『一団地の住宅施設』)
法律の条文として建築基準法第86条は、都市計画決定された「一団地の住宅施設」に対する建築規制を規定する根拠条文として置かれていたものであるため、同条文には、「都市計画決定された一団地の住宅施設」とは書かれてはいなかった。それならば、この条文を根拠に都市計画決定しない「一団地の住宅施設」全てに、特定行政庁の権限で第3章規定の解除をさせることができると考えた。この法律解釈は、法律の裏をかく解釈である。当時「水平思考」と呼ばれていた「脱税を節税」と言う法律の文言を都合の良いところだけを自分のやりたいことを正当化するために使う牽強付会な解釈である。

5 法定容積率の限度の考え方と決め方
容積率は、都市計画区域内の都市施設(主として、道路、河川、上水、下水、雨水、公共施設教育施設、利便施設、業務施設等)の負荷の大きさを決定する上で基本的な指標となるものである。そのため、都市計画では、地域地区と一体に建ぺい率、容積率、高さ等を有機的に、都市計画決定をして、都市施設への負荷を計画する。都市計画どおりの負荷以下に押さえるために、建築基準法では、建築物ごとに固有の敷地を定めることとして、その敷地とそこに建築される建築物との関係を建築基準法第3章で定め、その基準を遵守させることで、都市全体の都市施設との対応が健全に行くように定めている。
このように、容積率は同じ敷地面積に建築できる建築物の延べ面積の上限を決定する極めて基本的な規制の指標である。容積率は、地価と直接関係するので、開発業者にとっての最大の関心事であり、都市施設のシステムや規模に大きな影響を与えるので、行政側の重要な関心でもある。
事業が実施される都市では、既存の都市施設で対応できない開発については、その開発において既存の都市施設で対応できるような対応策を造るべきことを開発業者に求めて、既存の都市にその能力を逸脱するような開発にならない開発許可の審査を行おうとしている。そのため法定容積率の遵守は、都市計画にとって最も重要な規制と考えられている。容積率は、都市の住民全員の社会的なコンセンサスとして都市計画決定をすることで、その内容に公共性を付与している。
既存の都市は、通常、建築統計上から見ても年間5%以上建て替わることはない。建築基準法第42条第2項の「みなし道路」についても、建築基準法の立法当時から、毎年5%の建築行為が行われることになるので、「みなし道路」は20年後には自動的に全面的に整備されると説明されていた。
都市計画で決められる法定容積率は、既存の開発部分の既存容積率を配慮して、これからの開発可能性と既存都市施設の能力を勘案して決められる。つまり、法定容積率は、都市の成長に合わせて、都市施設の整備改善も進むという前提の下に定められるものである。もし、都市計画区域が、現時点で、一挙に法定容積率限度一杯に開発された場合には、都市施設としては、容量的には対応できない大きさでたちまち都市機能は麻痺することになる。都市計画区域全体に働いている開発の原則は、「一敷地一建築物」で、敷地ごとの法定容積率を厳守することで、都市全体として健全な環境が守られるという法律構成になっている。そのため、敷地ごとに、法定容積率の限度を守らなければならないとする原則を厳密に守らない限り、都市施設は対応できなくなり、健全な都市を造るという公益の実現を図ることはできない。

6 容積率移転の考え方 ― 特例容積率、建築基準法旧第52条の2 ―-
都市計画法の開発のデザインとして、一団地として開発する場合において、その全体としての開発が、その位置する法定都市計画に対して矛盾せず、調和するように開発されることが確かめられた場合(「一団地の住宅施設」としての都市計画決定)には、「一団地の住宅施設」として、その団地の内部での容積の配分は、団地としての都市計画決定の範囲内で自由にしても良いことになっている。 しかし、都市計画決定されていない都市施設としての「一団地の住宅施設」の場合には、「一敷地一建築物」の建築基準法第3章の適用を免れることはできない。そこでは、土地利用計画(用途地域)として、許容される限度は、建築基準法旧第52条の2の規定で定められた隣接敷地全体としての容積か、法定容積率限度の範囲での容積率の移転でしかない。

建築基準法旧第52条の2
商業地域に関する都市計画において、この条の定めるところにより特別の容積率を適用できる区域が定められたときは、当該特例容積率適用区域内2以上の敷地に係る土地について所有権若しくは建築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権を有する者又はこれらの者の同意を得たものは、1人で、又は数人共同して、特定行政庁に対し、国土交通省令で定めるところにより、当該2以上の敷地のそれぞれに適用される特別の容積率の限度の指定を申請することができる。
(第2項省略)
3  特定行政庁は、第一項の規定による申請が次の各号に掲げる要件に該当すると認めるときは、当該申請に基づき、特例敷地のそれぞれに適用される特例容積率の限度を指定するものとする。
一  申請に係るそれぞれの特例敷地の敷地面積に申請に係るそれぞれの特例容積率の限度を乗じて得た数値の合計が、当該それぞれの特例敷地の敷地面積に第52条第1項各号(第五号を除く。以下この号において同じ。)の規定によるそれぞれの建築物の容積率(当該特例敷地について現に次項の規定により特例容積率の限度が公告されているときは、当該特例容積率。以下この号において「基準容積率」という。)の限度を乗じて得た数値の合計以下であること。この場合において、当該それぞれの特例敷地が基準容積率に関する制限を受ける地域又は区域の2以上にわたるときの当該基準容積率の限度は、同条第1項各号の規定による当該各地域又は区域内の建築物の容積率の限度にその特例敷地の当該地域又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計とする。

旧第52条の2では、商業地域の指定のある地域で、隣接敷地間でのみの容積移転を認める特例容積率の規定を定めている。それは基本的に法定都市計画を尊重するという前提で、隣接地までの範囲で、敷地全体の容積率が同じであれば、その中での容積に移転してもよいというものである。

7 建築基準法第59条の2の立法の背景と考え方
建築基準法第59条の2は、都市計画としての整備が遅れている地域に隣接して開発される一定規模以上の開発の場合で、将来の都市計画の発展を見越して出来るだけ計画的に優れた開発を進めることが望まれる、しかし、現状の周辺環境との関係では、周辺の敷地や道路との関係で望ましくない制約を受けるような場合、その計画を将来の都市計画の整備に向けて、より合理的に開発するための手段を提供しようとするものである。
そのための条件として、この開発において、「交通上、安全上及び衛生上支障なく、且つ、その建ぺい率、容積率及びその建築物の各部分の高さ」について、その周辺を含む「市街地の環境の整備改善に資する」内容の建設であると特定行政庁が認めて、許可した場合には、整備改善に貢献した反射的恩典として、建築基準法第3章に定める「一敷地一建築物」の例外として「その許可の範囲内に置いて容積率又は建築物の高さの規定による限度を超えるものとすることができる」ことが規定されている。

建築基準法第59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)
その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第52条第1項から第9項まで、第55条第1項、第56条又は第57条の2第6項の規定(巻末資料ⅶ)による限度を超えるものとすることができる。
2  第44条第2項の規定は、前項の規定による許可をする場合に準用する。
この「限度を超えるものとすることができる」との規定の都市計画法及び建築基準法上の考えは、次の通りである。
予定建築物の周辺の環境整備は、当面その内部の力では改善できそうにはない状態であるので、この新しい建築に当たって、周辺地域の環境の整備に資する内容の開発をするならば、当面周辺の市街地で、まだ利用されていない容積部分の一部を、周辺地域が享けることになる環境整備の見返りとして、この開発で使うことを認めると共に、その容積利用の関連で建築物の高さについても一定の譲歩を周辺地区が与えることができる、とするものである。
この規定の考え方は、第52条に対する旧第52条の2の規定である。第59条の2の文理解釈は、旧第52条の2の解釈を援用して行わなければならず、その前提として、「一敷地一建築物」の原則を基本的に守り、且つ、「法定容積率の決定」が都市計画決定という行為を経て、公益があるとする「計画公権」(公共性の付与)に裏付けられるものとする、譲れない法律に根拠を置いた理解がある。
この59条の2に根拠を置く所謂総合設計制度は、基本的に特定行政庁が都市計画決定を尊重して、個別の敷地の条件に合わせて、調整する範囲で法定都市計画の限度を緩和することができるという制度であって、法定都市計画と切り離して、「一敷地一建築物」の原則を前提に定められた建築基準法第3章規定の「各敷地の守るべき都市空間利用」を特定行政庁が自由裁量で決めることができるというものではない。
国土交通省は、総合設計制度に関する「準則」を定めて、形式上は、第59条の2の法の枠組みと調整すべきことを言い訳のように規定はしているが、その準則で実施できることは、法定都市計画で決められた内容を遥かに上回る容積率を提供することが出来るような内容になっていて、実質的に特定行政庁が都市計画決定を無視することを正当化する「後ろ盾」となっている。
(該当する事例)目黒区青葉台、板橋区常盤台、世田谷区千歳烏山、茨城県守谷

8 『東京都総合設計許可要綱』の制度上の基本問題
『東京都総合設計許可要綱』は、建築基準法第59条の2を根拠にして、特定行政庁の許可の範囲を定めるもの、という構成をとっている。特定行政庁の取扱いに、「1  趣旨」では「統一的な基準を設ける」(1頁)という意味では、その要綱の内容は別として、行政上の扱いとしては、それなりの意味はある。
平成13年8月10日に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が施行された際、国土交通省は、従前の関係通達については、行き過ぎた行政指導があることを認めて、一切の通達を反故にすることを明らかにしている。
東京都は、その反故にする通達を謙虚に受け止めず、「自治事務化に伴い、通達による拘束は受けないが、従来どおり建築行政の参考として位置づける」(1頁)とした上で、更なる緩和措置を行うように変更し、法定都市計画の法律上の計画公権の意味を無視し、法定容積率や建築物の法定高さの限度を無視した『東京都総合設計許可要綱』を制定した。
要綱は、小泉規制緩和を受けて国土交通省が通達した総合制度許可「準則」を基本に専ら行政内部で作成され、東京都議会で決定されたものでもない。この要綱は法律とは直接何の関係もない行政指導でしかない。これは特定行政庁が法律効果を違法に付与している以外の何物でもない。
その内容が建築基準法第59条の2に照らして余りにも行過ぎた法律違反を犯している緩和であることに気付いて、「3 運用方針」では、「この基準は、技術基準として、許可の申請に当たっての必要条件としての性格を持つものであり、許可の条件を十分に充たすものであるか否かは、具体的な計画に即し、総合設計制度の趣旨等を勘案して判断する必要がある。したがって、本制度の運用に当たっては、常に趣旨及び基本目標に照らして総合的見地から行うものとする。」(2頁)と「1 趣旨」の中で、「統一的な基準」を設けるという趣旨と矛盾して、個別判断の参考であると規定している。ことほど左様な矛盾に満ちた要綱である。

9 『東京都総合設計許可要綱』の運用実態の問題
第59条の2を根拠にするこの要綱の実際の運用にあたっては、同要綱の内容が同条の規定そのものを具体化した内容として、特定行政庁の指示に従い、建築主事や指定確認検査機関はもとより、開発業者も、設計者も、建築業者も、許可基準要綱で定めた制限が、法律で定めている権利義務を規定している最低基準であるかのように扱ってきた。つまり、開発業者は、この『総合設計許可要綱』として定められている緩和は、開発者の権利であると主張し、行政庁もその主張を全面的に容認している。
この『総合設計制度許可要綱』によって、都市計画決定された法定容積率の2倍もの容積率の緩和が行われたり(東京都渋谷区富ヶ谷、渋谷区鶯谷、目黒区青葉台)、法定絶対高さ10メートル、又は12メートル以下とすべき第二種低層住居専用地域の高さとして、地盤面の違法な操作も認めて6階建て高さ20メートルのマンションを許容する許可が特定行政庁東京都知事から交付されている(東京都渋谷区鶯谷)。

特定行政庁渋谷区長が東京都総合設計制度許可要綱に基づき認可を与えた事例
計画物件:東京都渋谷区富ヶ谷1丁目534番1他、(仮称)クリオ富ヶ谷計画
敷地面積:            2,625.13平方メートル
延べ面積:           29,099.74平方メートル
(容積率対象延べ面積:     20,553.44平方メートル)
容積率除外床面積:        8,546.30平方メートル
法定容積率:近隣商業地域          400%
総合設計制度により割り増しを受けた容積率: 383%
可能になった全体の容積率:         783%(法定容積率の1.96倍)

これらの総合設計許可要綱を根拠にした容積率の緩和及び建築物の高さの緩和は、いずれも都市計画法によってしか与えることのできない計画公権を、その権限のない建築行政が法律によって与えられた権利を越えて不当に濫用しているものである。それだけではなく、建築基準法を根拠にする形式をとっていながら、その実体は、建築基準法の文理上からはあり得ない解釈である。許可の根拠を、東京都という特定行政庁が定めた要綱という体裁に依って、あたかも法律の内容であるかのような誤解を与えるものというべきである。
建築基準法で定めている低層住居という法律概念の中に20メートル6階建ての建築物が建てられることを認めたら、法律はあってもないと同じである。


第7章 都市計画法と建築基準法の骨抜き

1 地方分権法による都市計画行政と建築基準行政
平成12年(2004年)地方分権法が施行になり、都市計画法も建築基準法のその施行主体が、機関委任事務として都道府県知事に委譲されることになった。これは都市計画行政も建築基準行政のいずれも、国民の生活に近い行政として行われるべきであるとする地方自治の考え方に立つものであるが、都市計画法と建築基準法とのこれまでの関係は、完全に踏襲されているため、同法の「姉妹法」としての関係は基本的に維持されていて、何も変化していないはずである。敢えて言えば、行政が住民に近いところで、よりきめ細かに行われるようになることを期待したものであった。都市計画法と建築基準法の二つの法律の関係は、敷地と建築物との関係を「一敷地一建築物」の原則によって、個別の建築敷地それぞれが都市計画決定されたことを遵守することで、都市計画としての目標としての優れた都市環境を形成することを目指してきた。
その関係を切り離して、開発許可による工事が完了せず、まだ都市計画法第36条による工事完了公告が出されていないのに、建築確認申請書が受け付けられたり、都市計画法第37条による建築行為の禁止条文の中の開発許可権者による例外許可を、同法で規定しているのと全く逆な「明らかに法律違反」の解釈を持ち込んで、予定建築物の建築を認めることが地方分権法への移行を契機に拡大している。

都市計画法第36条
開発許可を受けた者は、当該開発区域(開発区域を工区に分けたときは、工区)の全部について当該開発行為に関する工事(当該開発行為に関する工事のうち公共施設に関する部分については、当該公共施設に関する工事)を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2  都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、国土交通省令で定める様式の検査済証を当該開発許可を受けた者に交付しなければならない。
3  都道府県知事は、前項の規定により検査済証を交付したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該工事が完了した旨を公告しなければならない。

都市計画法第37条
開発許可を受けた開発区域内の土地においては、前条第3項の公告があるまでの間は、建築物を建築し、又は特定工作物を建設してはならない。ただし、次の各号の一に該当するときは、この限りでない。
一  当該開発行為に関する工事用の仮設建築物又は特定工作物を建築し、又は建設するとき、その他都道府県知事が支障がないと認めたとき。
二  第33条第1項第十四号に規定する同意をしていない者が、その権利の行使として建築物を建築し、又は特定工作物を建設するとき。

2 法律違反の行政運用の始まり
新都市計画法が昭和43年(1968年)に施行され、旧都市計画法による建設大臣が一元的に施行する都市計画行政から、都道府県知事が機関委任事務として都市計画法を施行することになり、建設省は新都市計画法の施行の徹底と、その指導事務自体が処理不可能な大きさになっていた。一方、建築基準行政では、都市計画決定の枠中で一元的に、画一的にやることから、地方に実情に対応できるような自由を求めて、都市計画決定からの建築基準行政の離脱を求めていた。
昭和45年(1970年)建築基準法第5次改正の際、都市計画決定のルーティン化した「一団地の住宅施設」と、市街地環境整備のための空地形成に寄与する開発には、「隣接地として開発見込みのない容積率と高さ」の移転利用を、特定行政庁の裁量に委ね、都市計画決定と切り離してやれることを、建築基準法を担当する住宅局は都市計画法を担当する都市局に対して要求していた。
建築基準法は確認制度により違反建築の出現を未然に防ぐ法律体系を構成していた。しかし、相次ぐ建築事故に対し、その責任は建築基準行政自体にあったにも拘らず、法律に欠陥があるとして、法律の基準強化を繰り返し、ますます法律遵守が困難になってきた。そこで業界は改正前基準での工事施工を求め、駆け込み確認が相次いだ。そのとき建設省は、駆け込み着工までは認めるという違法な緩和措置をとった。それがのちに国立マンション事件を左右した、牽強付会な解釈のとばっちりであった。
国立マンション事件で争われた工事中の建築物とは、現実にそこに存在する、工事の既に行なわれた建築物の部分である。法律が改正されたとき、その部分までは既得権を認めようという規定が建築基準法第3条第2項である。しかし、駆け込み着工と認めるという政治的要求を正当化するために、「工事中」と「建築物」と言う用語を分解し、「建築物とは、第2条第一号」の定義で完成した建築物であるから、「工事中の建築物は駆け込み着工した建築物の完成形全体を指す」と牽強付会な解釈を持ち込んでしまった。そして、現実には計画段階の、存在していない建築物で、その建築計画自体が改正法に抵触し、法律上は潜在的に除却義務を負うような工事を、「既存不適格建築物」として、まだ存在しない建築部分を、法律に違反して建築させることを、最高裁判所までが正当化してしまったのである。
これまでも繰り返し述べてきたように建築基準法第3章の強制権の法律上の根拠は、都市計画決定による都市空間利用の公共性に対する計画公権である。それは、「一敷地一建築物」の原則に基づいて建築基準法第3章を適用することによって実現されるという両法律の考え方である。都市計画決定された都市施設は、地域地区制度と矛盾しないような体系として同じ公共性がある都市計画で決定するものであるから、地域地区制の規定を適用しなくてもよいとするものである。その都市計画決定された「一団地の住宅施設」に対する建築規制の条文の根拠として第86条が置かれているのである。

3 住宅局の権力拡大のための詐術
昭和45年(1970年)建築基準法第5次改正当時、住宅局市街地建築課は課長補佐が中心になって、この両方の根拠を無視して、現行建築基準法の条文の文言だけを全体の流れと切り離して牽強付会な解釈すれば、現行法の枠内で、特定行政庁の許可権限内で可能な行政裁量の拡大として行なえると考えた。
「一団地の住宅施設」としての開発事例も一般化していたことから、それらを建築行政で監督できる制度化運用をすることであり、もう一つは、隣接市街地の環境改善に資する空地を提供した場合には、その見返りとして容積と高さを緩和することで、このいずれも都市計画決定をしなくてよい道を拓こうと考えていた。それが「総合的設計制度」(第86条)と、総合設計制度(第59条の2)である。いずれも住宅局の裁量として、建築基準行政によって容積と高さの緩和与えることで、住宅局の業界に対する影響力を拡大することを目的としていた。

4 都市計画法体系の崩壊
この要求は都市局及び住宅局両当事者の要求と合致して、法律上の根拠はないが、行政の内在的制約(各行政内部の所掌範囲の分をわきまえた自制)により「計画公権」は尊重されるとの前提で実行に移された。それが原因で特定行政庁による許可が、その後、地方分権法の施行により、特定行政庁の許可権の濫用が始まった。
開発の緩和を求める政治的な圧力に屈し、法律の条文の中に「特定行政庁の例外許可」の文言さえあれば、なんでも特定行政庁限りでできるという脱線である。法律の文脈や文理解釈に基づいて、おのずから緩和の限界が法文上あるに対して、例外規定による許可権のみを法律の文理と切り離して、開発許可権者や特定行政庁に例外許可をすることを迫ることが多発した。
都市計画法第37条による例外許可によって、開発許可を得ただけで、予定建築物を着工し、第59条の2に定められた特定行政庁の許可権を根拠に、総合設計制度の名の下に法定都市計画の2倍もの容積率や高さの緩和を与えてきた。
その緩和を更に徹底したものが、バブル経済崩壊後の小泉内閣による「都市再生」による容積率緩和である。小泉内閣は不良債権の解消を、容積率と高さの緩和によってできると考え、政治が建築行政に「政治的な緩和」求めた結果、建築行政は、総合設計制度の要綱や、既存の法律に違反する行政運用通達(平成19年7月22日付建築基準法運用通達)などにより、建築基準法や法定都市計画に違反するところにまでエスカレーションしている。

5 開発行為の違法運用、不正利益の取得を幇助する仕組み
都市計画法による開発許可制度は、健全な都市を形成するために、都市施設の整備水準の低いところで行われる開発に対しては、その開発により、大きな都市施設の整備などの開発費用を負担しなければならない。そのため、開発許可を受けないで造るべき施設の建設を免れ、違法の開発をして不正な利益を手に入れようとする違法行為が、後を絶たない。不正な開発は、「耐震偽装事件や耐火構造偽装事件」に見るように、業者の不正利益が目的である。 
都市計画法・建築基準法の体系は、憲法第25条、第29条で「国民に国家が保障する」と約束した「健康で文化的な生活と都市環境を守る契約」の実体規定として、違反建築を取り締まり、防止する役割を担っている。これらの行政法によって、違反対策が適正になされていれば、業者の不正利益の追求はできない。
ところが政界、官界、業界が癒着し開発を進めてきたわが国では、外郭団体への天下りや官僚と政治家との利権の癒着などで結ばれた護送船団方式によって不正利益が分配されてきた。これまで不正利益を確保するために、政界、官界、業界が一体となって開発許可のすり抜けることをやってきた事実には枚挙に暇がない。その代表的なものが、行政OBを組織的に雇用してきた民間指定確認検査機関による、「開発許可不要」という開発業者の求める不正利益容認の扱いである。そして、不正業者が行政OBの再就職先である外郭団体の会員や、族議員らの政治団体の会員になって、多額の会費や寄付を納めてきたという事実がある。
かつては公共事業を受注するために指名競争入札に参加する建設業者は、その下請け業者ともども天下り人事を受け入れている外郭団体(建設業協会)の会員として天下り人事の人件費を会費によって負担することがやられてきた。耐震偽装事件でも明らかになったように指定確認検査機関と情を通じて違反をやってきた建設業者が国土交通省の天下り人事を受け入れている団体に属し、合わせて行政に影響を持っている政治団体の会員になって、違反が暴露したときには、行政に圧力をかけてもみ消すことがやられてきた。その構造が政官業の護送船団方式なのである。

6「開発許可不要」という扱いによる不正利益の幇助
「開発許可不要」という扱いは、都市計画法第4条第12項に定める「開発行為」の定義である「土地の区画形質の変更」に牽強付会な解釈を持ち込んで、開発行為そのものが存在しないという理屈で、開発許可をしないで違法・不当な開発行為を正当化したものである。東京都は、「開発許可不要」は処分ではなく、当然不作為にも当たらない、単なる「処分性のない行政事務である」と主張する。それは、都市計画法第4条第12項に定める「用語の定義」を根拠にした法律解釈であるという。東京都は、「開発許可不要」は開発許可権者の処分でも不作為でもなく、単なる法律の条文の解釈であるから、都市計画法第50条の不服審査請求はできないと主張している。
開発許可制度には開発許可をするか、許可をしないかの2つの選択しかないという法律構成になっている。そのことが分かっていて「開発行為自体が存在しない」という、法律上ありえない法律解釈を行政がやり、司法や法曹界までがその牽強付会な解釈を容認してきた理由はどこにあるのだろうか。法律教育に間違いがあったのか、司法官制度に欠陥があったためか、関係者が法律違反を知っていて違反を犯しているのか、いづれにしても、あってはならないことがまかり通っている現実の日本である。

7「開発許可不要」を構造的にやらせている不正利益
民間指定確認検査機関である財団法人日本建築センター(目黒区青葉台)、株式会社日本ERI(町田市玉川学園)、ハウスプラス住宅保証株式会社(茨城県守谷市)は、いずれも都市計画法第33条に規定する実体規定違反の開発を、それぞれカッコ内の場所の事業で「開発許可不要」であるとして、都市計画法に基づく開発許可権者の許可をすり抜けて、建築確認済証を交付して、都市計画法違反、建築基準法違反の建築物に対して確認検査済証を交付してきた。この建築物に対して、都市計画部局と建築基準部局とは、それぞれ口裏を合わせたように、「開発許可不要」を都市計画法第4条の定義としての行政部局が発行した法律に根拠を持たない「開発許可の手引き」(東京都首都整備局)での解説で、開発行為を予定建築物とは無関係な行為であると解説し、開発行為とは「土地を1メートル以上切り又は盛る行為とする」とした運用を行なっている。
東京地方裁判所も、東京高等裁判所も、東京都町田市で長谷工コーポレーション他8社が、日本IBMグラウンド跡地で行った「ユニベルシオール学園の丘」48,000平方メートルに鉄筋コンクリート造10階建て10棟のマンションを連結した建築物を建設する開発に対して、「開発許可不要」という都市計画法上の違反と、10棟のマンションを1棟のマンションであるとの牽強付会な解釈を持ち込み、町田市の法律違反を容認した。このことで明らかなように、司法自体が法律に照らした裁判をやらず行政に迎合している。司法は、住民が法律を根拠に訴訟をしているにも拘らず、行政の主張をオウム返ししているだけである。

8 法律に矛盾を持ち込んだ小泉「規制緩和」
先にも述べたように(48頁)、現行の平成10年の第9次改正の建築基準法第86条で、「一団地の住宅施設」としての都市計画を受けていないが、相隣する、又は近接する敷地の間で、容積率の授受をしても、全体としての容積総量が一定であるならば、都市施設自体への負担が増大する訳ではないので、それを必要とする土地の権利者は、特定行政庁に、建築基準法施行規則第10条の4の3に基づき特例容積率の申請をし、関係権利者の同意を前提に、容積率の敷地境界を越えて移動させる特例容積率の適用を受けることができることになった。しかし、この取り扱いは、都市計画決定された「一団地の住宅施設」以外の場合には、「一敷地一建築物」の都市計画法と建築基準法の原則を踏み外すもので、両法律の前提を覆すものである。しかも、一団地を一つの敷地として扱うだけならばまだ地域地区の都市計画決定と敷地単位の地域地区の規制を守るという整合性は認められるが、第86条第3項では、建築基準法第59条の2の規定に違反して実施されている容積率及び高さの割り増しを、法定都市計画に違反して実施することを許すことになっている。規制緩和を無理に行政に押し付けた小泉政治が法律自体に与えた矛盾である。
建築基準法第86条は、都市計画法第11条の都市施設に関し、全体を有機的な一団地として計画して都市計画決定を行った場合、地域地区の都市計画決定に依らなくてもよい開発の場合の建築基準法の受け皿をなすものである。
第11条の「一団地の住宅施設」としての都市計画をしても、建築確認審査としてそれを審査するためには建築基準法としての審査のための技術基準を必要とする。つまり、建築基準法第3章「集団規定」の適用を外し、都市計画決定をした内容どおりの開発を実現することを建築基準法として可能にするための規定が建築基準法第86条である。
この第86条で定められた基準は都市計画決定された「一団地の住宅施設」に対してのみ適用されるものであって、都市計画決定されていない「一団地の住宅施設」に対して適用できるものではない。都市計画決定されていない「一団地の住宅施設」には通常の都市計画で決定された地域地区の規定が適用されることは法律で定めている通りである。
現在、東京都をはじめ全国的に、都市計画法とも建築基準法とも関係のない小泉内閣による行政改革による規制緩和で、都市計画決定と切り離された、建築基準法だけで規制緩和ができるかのような建築基準行政が行われている。
建築基準法第86条が、都市計画決定されていない「一団地の住宅施設」に対して、単に地域地区の建築基準法第3章規定をかいくぐるために、「用途の規制」の適用除外の根拠として、特定行政庁の許可だけで、「総合的設計制度」と名付けた「法律的には都市計画決定された一団地の住宅施設にしか適用できない技術基準」が適用されている。これは法律上の合理的根拠を持っていない。
建築基準法第86条の規定は、「一敷地一建築物」の原則、そして計画公権により公共性が付与されていている法定容積率を遵守しなければならず、都市計画決定なしに軽々しく動かしてはならないという考え方を前提にしている。
法定容積率の限界を逸脱しては無制限に法定都市計画を変える行政裁量は、基本的に、特定行政庁に付与されてはいない。

9 法律蹂躙オンパレードの東京都都市計画行政
開発業者にとって、都市計画決定によらない「総合的設計制度」敷地の有効利用を実現する手段は、高い容積率と建築物の高さ制限の解除である。建築物の高さは、都市空間の社会的利用として、景観や眺望、日照、日射、日影、ビル風等、都市環境との調和の実現に最も直接的に関係している。建築物の高さは、敷地の隣接する道路、隣地、北側との関係、及び日影規制を受けることで、相隣及び近隣の都市空間利用の調和が図られている。しかし、開発を「総合的設計制度」として第86条の規定による理由は、もっぱら第3章規定の適用を回避して、建築物に対する高さ制限を回避するためである。
世田谷区千歳烏山の開発計画は、開発前の道路と基本的に全く同じ道路を開発計画で造る再開発であるが、新しい開発では、その道路は第86条の適用を受ける「総合的設計制度」であるから道路ではなく通路である。そして、通路部分は容積率計算の基礎敷地面積に算入出来ると説明して、不当な容積加算と高さ制限を回避し、脱法行為で高密度開発を手に入れることになった。この開発計画では従前の道路と同じものを造らない限り交通機能を果たすことができない。又各予定建築物ごとには、それぞれに対応する敷地があって、一団地とする理由はない。
従前の道路を廃止しなければ、容積率の計算には合理性はなく、予定建築物ごとの敷地を決めれば、現在の開発許可を受けた予定建築物の建築は全く不可能で、その3分の1程度の住宅しか建てられないことになる。この計画は建築基準法第3章の計画公権に裏付けられた建築基準を回避することで、巨大な不正利益を手に入れることになる。その本質は、都市計画行政及び建築基準行政全体が、開発業者の不正利益の追求の幇助をしているのである。



第2部 手続論

第1章    原告適格の理論-―都市計画法及び建築基準法第3章に関係する
不服審査請求の原告適格の範囲-―
1 原告適格の問題点

(1)法律で規定する原告適格
これまでの行政事件訴訟法及び行政不服審査法における原告適格の扱いは、法律の条文としては行政事件訴訟法第9条の規定に基づいて原告適格を審査してきたといわれている。原告適格の理論の基本は、「訴えの利益のない者」には、訴訟をする権利がないとする原則の行政法への適用である。行政不服審査法及び行政事件訴訟法で審査請求人及び原告となる者は、行政処分又は不作為が行政法に抵触していることにより、行政法が国民に約束している憲法を背景にする国家と国民との間での行政法で定めた契約の履行を求めているものであるから、それぞれの行政法で定めている国民に対する法律が約束した公共の利益を侵害している場合には、国民は、その享受する権利のある公共の利益を侵害された者として、原告適格を有することになる。
よって、原告適格の議論は、不服審査請求人または原告が審査請求又は提訴した行政庁による処分又は不作為が、如何なる公共的利益を侵害しているかを審査することなしに、原告適格を確定することは不可能である。しかし、現実の審査請求または行政事件訴訟にあっては、原告適格の判断は、最終の裁決又は判決の時点で示されることになるが、事実上の審査は、審査請求や訴訟内容と切り離した原告適格者の判定が行われ、そこで審査請求又は訴訟と切り離して判断が示されてしまう。そのことは、裁決又は判決においては、原告適格は行政庁による行政法違反の不利益の要求と如何なる関係があるかについて、全く説明しないことに、審査の実態が示されている。

都市計画法第50条及び建築基準法第94条に基づく不服審査請求における原告適格は、行政事件訴訟法第9条に定める「原告適格の規定」によるべきことは、それぞれぞれの行政法で国家が保障している公共的利益の侵犯により不利益を受けた者であることを法律で定めている。重要なことは、行政法の違反によって、私益を侵犯されることになることもあるが、行政法で争われるべきことは、あくまで行政法(国家が国民に)が保障する公益である。
しかし、殆どのこれまでの行政不服審査及び行政事件訴訟における裁決又は判決では、審査請求人又は原告に私的不利益がなければ、原告適格を認めない、とする行政法に違反した裁決又は判決が出されてきた。しかも、行政法違反による私的利益の審査会及び司法による判断基準は、殆ど行政法に根拠を置く基準ではなく、もっぱら審査会又は判事の恣意的な判断(自由裁量)により決定されてきた。その結果、不服審査及び行政事件訴訟は、行政の実態から遊離し、判例と法文の字句の牽強付会な解釈という詭弁の応酬で判断が左右されてきて、本来の行政法の立法趣旨や法律の文理解釈から遊離したものとなってきている。

都市計画法第50条(不服申立て)  
第29条第1項若しくは第2項、第35条の2第1項、第41条第2項ただし書、第42条第1項ただし書若しくは第43条第1項の規定に基づく処分若しくはこれに係る不作為(行政不服審査法 (昭和37年法律第160号)第2条第2項 に規定する不作為をいう。)又はこれらの規定に違反した者に対する第81条第1項の規定に基づく監督処分に不服がある者は、開発審査会に対して審査請求をすることができる。
2  開発審査会は、前項の規定による審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から二月以内に、裁決をしなければならない。
3  開発審査会は、前項の裁決を行なう場合においては、あらかじめ、審査請求人、処分庁その他の関係人又はこれらの者の代理人の出頭を求めて、公開による口頭審理を行なわなければならない。
建築基準法第94条(不服申立て)  
建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第3条第2項 に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあつては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第6条第1項(第87条第1項、第87条の2又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる。
2  建築審査会は、前項の規定による審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から一月以内に、裁決をしなければならない。
3  建築審査会は、前項の裁決を行う場合においては、あらかじめ、審査請求人、特定行政庁、建築主事、建築監視員、指定確認検査機関その他の関係人又はこれらの者の代理人の出頭を求めて、公開による口頭審査を行わなければならない。
行政事件訴訟法第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2  裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

(2) 現実の審査会及び司法で扱う原告適格
現実は、行政機関は処分又は不作為の現実の審査に入ること自体を避けようとして、これらの原告適格の法的根拠は行政事件訴訟法第9条であるといいながら、その範囲を不当に制限し、いわゆる「門前払い」と言われる行政の違反の審査をさせないように司法に要求し続けてきた。被告である行政庁側は、審査会自体は行政OB中心の人事構成にすることで、一貫して行政の行ったことを追認する立場で行政を支持し、一方、司法は、行政法の知識を著しく欠いているため、行政法を施行している被告である行政の判断を追認することが行政法の判断として大きな誤りを犯すことはないとして、行政の判断に従属してきた。他方、審査請求人又は原告を弁護する立場にあるその代理人となる弁護士の多くも、裁判官同様、行政法の知識が極めて貧弱で、弁護を依頼されると弁護士は、行政法をその立法趣旨と法文の文理に基づく学習をしようとせず、泥縄式に、行政通達、市販の行政法解説や判例のみに依存して、依頼人の主張に対応した情報に依存して弁護活動をすることになる。
一般に行政通達、行政法解説などと言われるものは、筆者の経験から、行政法自体を素直に読めば、やってはいけないことを、法律施行後に法律に抵触して実施できないことを、「朝令暮改」の謗りを受けないで実施するために、法律を改正しないで、「法律の枠を拡大して実施」する方法として、牽強付会な解釈を持ち込んでやらせるもので、行政がよく使っている方法である。

国立マンション事件における建築基準法第3条第2項「既存不適格建築物に対する法律の不遡及の解釈」はその代表的なものであるが、都市計画法第29条に定める開発許可の解釈として、東京都が定めた『開発許可の手引き』をあたかも法律の有権解釈のように扱ってきた「開発許可不要」の行政も同じである。
同様の例は都市計画法第32条の公共施設の管理者の同意、同法第37条ただし書きに根拠があるとする「予定建築物の建築に対する制限解除」、同法第33条(開発許可の基準)第1項一号に基づく都市計画法第8条(地域地区)の規定に対する建築基準法第3章規定の適用、同条第1項第二号の審査内容、同条第2項に基づく同法施行令第25条第二号を根拠に定められた同法施行規則第20条(道路幅員)など、行政通達、運用方針、判例、法令解説には無数の明白な法律違反が、法律解釈で実施できるという説明、解説がなされている。

(3)何故、法律が尊重されないか
これらの法律解説文書の目的は、法律自体では実行することの難しい事業を、法律解釈によっては可能であることを売り物にして発行されている。都市・建築行政が法律違反を容認することで、不正利益をあげようとする勢力の要求に応えるための「抜け道ガイドブック」が法律解説書である。法律の抜け道に、法律上の根拠があるかのような理論武装や、法律違反をカモフラージュすることにより、行政の末端で行政を施行し、悪く言えば、司法の現場で司法事務を担当する裁判官や弁護士達が、法律違反に手を貸しているという精神的な苦痛を感じないで、不正に手を貸すことをさせるようにするための手引書である。
執筆者が法律施行を担当する国家公務員であり、又は、国土交通省監修等と、あたかも、掲載された法律解釈が国の機関が監修した有権解釈としてまとめられているかのような体裁をとっている。しかし、その事実はなく、これらの書籍の監修料自体も国庫に納付されていない。商業出版と同じで、公共機関が責任を持って刊行されたものではない。
小泉内閣時代になされた規制緩和に関する法律改正は、建築基準法と都市計画法の関係を無視したものであるため、「姉妹法」としての両方の法律関係に多くの矛盾を生み出し、「法律違反の法律」を生み出してきた。都市計画法及び建築基準法の解説書の多くの殆どは、小泉改革の名の下で規制緩和された都市再生と、「計画公権」の裏付けのない総合設計制度や総合設計の解説が中心になっている。

被告である行政庁側は審査会や司法の場で、被告の恣意的判断で原告適格の範囲を設定する主張をし、審査会や法廷では、それに引きずられて原告適格の範囲を、審査会や司法が行政法による利益の審査と切り離して、私的な利益に関係がはっきりと認められる公益を侵犯される者というような法律に全く根拠のない恣意的に絞る法律解釈で、これまでの審査が行われてきた。
さらに、司法は、行政事件訴訟法による裁判において、特に、都市計画法及び建築基準法に対する専門的知識が欠如しているため、法文の前提となっている都市計画と建築行政との関係が理解できていないため、法律の構成自体の行政の基盤が理解されないまま審査が行われてきた。都市計画決定に係る集団規定の行政の利害関係者の範囲についても、集団規定で言う公共の利益と単体規定で言う公共の利益とは基本的に違っているにも拘らず、その違いが分らないまま、全く同様な形で利害関係者の範囲を設定して、原告適格の適用の判断をしてきた。つまり、都市計画法及び建築基準法第3章に関する利害関係者は、都市計画法で定められた民主的な手続きで都市空間のあり方を都市計画決定することにより付与されることになる「計画公権」(「計画高権」ともいう)の行使という公益の実現に関する利害関係者を言い、その実態は、単体規定とは全く別の根拠に基づく利害者である。

(4)都市計画法と建築基準法との関係による強制権の及ぶ範囲(原告適格の条件)
都市計画決定される都市計画法第8条(地域地区)および第11条(都市施設)は都市の基本計画(マスタープラン)と呼ばれるもので、それらを計画決定したということは、その都市計画区域内の人を将来までその計画で拘束する「100年の計」として決定されるもので、都市計画決定された瞬間に実現されるものではない。この基本計画(マスタープラン)が朝令暮改されるようでは、国民は将来に向けての土地利用を計画することは出来ない。
しかし、小泉内閣は、不良債権を良債権化するため、容積率と建築物の高さをこれまでの都市計画を蹂躙する形で、土地を担保に金融を行った金融機関や不動産の価値が下落して生まれた不良債権を多数抱えた不動産業者の利益のために、都市のスカイラインを変貌させ、都市計画(マスタープラン)を破壊してしまった。
都市の基本計画(マスタープラン)を個々の建築活動に当たって実現するために、都市計画決定された都市計画(マスタープラン)に対応した建築設計指針(アーキテクチュラルガイドライン)として、建築物ごとに幅員4メートル以上の道路に接する固有の敷地を設定し、その敷地と建築物の関係を建築物の用途、容積率、建ぺい率、建築物の各部分の高さにより建築規制する建築基準法第3章の規定が設けられ、確実に実現する仕組みが作られている。
建築基準法第3章により付与された特定行政庁の行使する強制権(計画公権)は、都市計画法に基づき都市計画決定された計画内容(地域地区及び都市施設)が、都市計画区域内の住民のコンセンサスとして決定されたことによる公共性(計画公権)によるものである。
計画公権の及ぼす利害は、都市計画区域を単位として考えられなければならないもので、都市計画決定の持つ公共性の法理論を基本的に理解できていないと、原告適格の範囲を見誤ることになり、計画公権の理屈が分からないため、都市計画法及び建築基準法第3章の規定に根拠をおかないで、原告適格の範囲を不当に絞る間違いが発生している。
そのため、不服審査請求として本来審査されるべき「本案」の審査前の「原告適格」の審議において、法律上の規定に根拠を置かない無用で、不毛の審議を繰り返し、かつ、その段階で審査会又は判事から、審査請求や訴訟内容と切り離した原告適格審査が行われて、国民の権利主張に対して納得のできない「門前払い」といわれる国民の権利剥奪が行われてきた。都市計画法および建築基準法で定めている原告適格の範囲は、行政事件訴訟法で定めている定義を、法律の文理に照らして解釈すれば、以下の通りに明確である。

2 二種類の原告適格の定義
建築基準法には、建築物単体の安全衛生を背景にする公法規制に従うべきことを扱う第2章の単体規定と、都市計画区域を対象にする計画公権を背景にする公法規制に従うべき第3章の集団規定とがある。
単体規定は、構造耐力や防耐火、避難、屋内環境衛生などの人命や財産に関係する規定である。これらの場合の原告適格は、基本的にその利害関係者は、当該建築物及びその相隣の建築物の関係者となる。その利害は、建築物の安全衛生に対して建築基準法で定めた安全基準を公共性のあるとされる基準とし、国家はその基準を国民に対し建築行政により保障するものである。言い換えれば、建築物の所有者、生産者(設計者、施工者)、管理者、利用者の全てが、それぞれの立場で建築基準法の定めた恒久性があると定めた規準を遵守する限り、それぞれに対して行政上の責任は追及されないし、建築行政もその監督責任を問われることはない。つまり、建築基準法で定められた建築基準を守ること自体が、又は守らせることが、国家と国民との間の契約としての憲法で「保障する」公共性の内容である。よって、国家は確認事務及び建築行政によりその公共性の実現することが求められ、その違反処分又は不作為に対して不利益を受ける者は行政事件訴訟法第9条の原告適格を有することになる。

一方、集団規定は、都市施設に対する各敷地からの交通、上水、下水、公園等の公共施設に対する利用負荷の適正性、都市空間環境の調和保全の適正性に関し、都市空間利用の社会的コンセンサスを都市計画決定することで公共性が付与されることになる。この都市計画決定を都市計画行政及び建築基準法行政で確実に実現するべきにも拘らず、これらの行政機関による処分又は不作為と言う法律違反により公共的な利益を奪われることになる利害関係者は、行政事件訴訟法第9条による不利益を受ける者として原告適格を有する者となる。この場合の利害は、それが不利益を受ける者にとっての私的な利益を直接的に侵害する場合もあるが、私的利益に対しては、間接的であることが一般的である。
都市空間、公共水面、道路、公園、下水道等の公共施設は、その環境は社会の公共的利害に関係するものであることから、個々の法律違反が、個々の国民に直接的な私的不利益を与えるか、どうかで判断するのではなく、類似の違反が全てにおいて犯された場合、全体としての環境がどのように損傷され、社会的な不利益となるのかという社会的視点で評価されなければならない。
都市計画で定められた都市の基本計画(マスタープラン)の実現は、公共性の実現として
社会全体としての遵法によって実現できるものであるから、個々の建築物の建築に当たっても、建築基準法第3章で定める建築設計指針(アーキテクチュラルガイドライン)で強制的に従うべきことを定めており、それを遵法しないことは社会全体に対して敵対していることとして、戒められなければならない。
そこで、都市計画法及び建築基準法で定められた基準を、都市計画行政または建築基準法行政における処分又は不作為が法律に違反してなされ、それにより不利益を受けることになった者には、行政事件訴訟法第9条に定める公益を奪われた、不利益を受けた者又は受けることになる者としての原告適格があるとされる。

3 姉妹法としての都市計画法と建築基準法のあり方から原告適格の範囲を考える
日本の都市計画法と、建築基準法との関係は、大正8年に制定された都市計画法と市街地建築物法の制定経緯を、現行建築基準法と都市計画法との関係にも踏襲してきている。戦前までの市街地建築物法は、現在で言う都市計画区域しか適用の対象としていず、第2章規定と第3章規定とが渾然一体とした形で構成されていた。それが、昭和25年の建築基準法の制定に当たり、全国適用とされる第2章の単体規定と、都市計画区域を対象とする計画公権を背景にする公共性の上に強制力を持つ第3章規定に分けて規定されることになった。
つまり、第3章規定は都市計画決定を前提として、都市計画決定される内容として、地域地区〔用途地域、特別用途地域、特定用途制限地区、特例容積率適用地区、高層住居誘導地区、高度地区または高度利用地区、特定街区、都市再生特別地区、防火地域または準防火地域、特定防災街区整備地区、景観地区、風致地区、駐車場整備地区、臨港地区、歴史風土特別保存地区、緑化地域、流通業務地域、生産緑地地域、伝統的建築物保存地区、航空騒音障害防止地区〕が容積率、建蔽率、建築物の高さ、壁面の位置等と関連して都市計画決定される。
この規定は、全て、一つの建築物ごとに一つの敷地が対応して定められた強制力で裏付けられた建築設計指針(アーキテクチュラルガイドライン)で、敷地ごとに都市計画決定で決められた都市計画の基本計画(マスタープラン)に従って建築物を造ることとされる。この一敷地、一建築物の原則は世界的に共通しており、「一敷地、一建築物」の規制と呼んでいる。
地域地区(第8条)及び都市施設(第11条)に関する都市計画法計画決定(マスタープラン)に対応する建築規制が、建築基準法第3章の規定〔建築物の敷地と道路の関係、建築物の用途、容積率、建蔽率、建築物の各部分の高さ、建築物の日影、防火地域、都市再生特別地区、特定防災街区整備地区、景観地区、地区計画地区等〕である。
つまり、敷地ごとの都市計画で決められた計画通りに造れば、その集合体としての都市もまた、全体として都市計画で計画したとおりの公共性ある都市空間を造ることができるという考え方である。この計画公権を背景にした強制権が、建築基準法第3章の公法規制の法律上の強制権の根拠である。
このような法律構成をとっているため、第3章規定の原告適格は、都市計画区域全体の有機的関係を考えれば、都市計画区域単位に全ての住民に認められるべきである。基本的には都市計画法の施行の最小単位として、市町村を単位として原告適格の範囲として扱うことが、建築基準法第11条からも解釈される。さらに、市町村が連坦して市町村の行政境界を越えて都市計画区域を設定している場合には、その範囲を厳しく扱う場合でも、都市計画決定された地域地区相互の関係が、直接的な都市の地域地区の軋轢となっている。このようなことから、当該開発敷地の置かれている地域地区とその隣接する地域地区の住民には、原告適格は認められなければならない。

4 既存不適格建築物に関する行政処分の違いから原告適格の範囲を考える
建築基準法の適用以前から存在している建築物で、法律があとから適用になった際、その建築物が、建築基準法に不適合になった建築物のことを「既存不適格建築物」という。この既存不適格建築物の建築基準法上の取り扱いには、建築基準法第2章と、第3章によって全く扱いは違っていて、第2章に対する取り扱いは、第10条に、第3章に対応する扱いは、第11条に定められている。
第10条の第2章「単体規定に関する不適格建築物」の取り扱いは、不適格建築物の不適格の程度が、保安上、衛生上、猶予ができない場合には、特定行政庁は、安全の実現上の必要に応じて、是正命令をすることができる。その際の是正に要する費用は、全て命令された者によって負担されなければならない。その理由は、その命令に従うことが、命令を受けた者の利益に帰属することになるからである。つまり、第2章規定に関する利害関係者は、当該建築物との直接的な利害を問題にしているということである。
一方、第11条の第3章「集団規定に関する不適格建築物」の取り扱いは、第3章の不適格建築物は、都市空間の利用に対する公共性実現の障害ということであるため、当該不適格建築物の所有者、利用者の直接的な利益ではなく、社会公共の利益の侵害ということである。その是正命令は、当該建築物の所有者等の利害関係者に対してなされなければならないとしても、そこで発生する是正に伴う損失補償は、当該市町村によってなされるべきことが定められている。まさに第3章の不適格建築物に対する是正措置は、公共性の実現であるから、不適格建築物の是正によって生まれる利益は、公共に帰属するから、公共の利益に責任を持つ市町村で損失補償をすることになる。
つまり、第3章の利益は、直接的に公共の利益に関係するということをこの条文は明確に規定している。市町村が損失補償をするということは、取りも直さず、自治体の住民が、その財政で負担することであり、第3章の利害は直接的に、当該自治体の住民全員の利害に関係することを意味している。このように、第3章の利害関係者は、当該市町村の納税者全員が利害関係者である。言い換えれば、第3章に関する行政事件訴訟法第9条に言う「原告適格」は、建築基準法上、都市計画決定を前提にした計画公権を背景に付与された公法規制の強制力により利害関係者となる当該市町村住民の全てなのである。

5 近代的コミュニテイ論の基礎に立つ原告適格論
都市とは、都市空間に生活する人が健康で文化的な生活を享受するための場所である。都市に生活する人は、お互いにその都市空間利用についてのルールを遵守することがなければならず、そのルールに違反する行為によって直接被害を受ける人だけではなく、間接的に被害を受ける人、全てにとってルール違反の影響が及ぶことになる。
たとえば、道路が交通上不当に妨害されていれば、都市の交通全体に影響が生まれるし、都市の空間利用のルールを無視した建築物が建てられれば、都市景観が壊される。又、都市計画で決められた容積率を守らない開発が行われることにより、そこからの発生交通量により、都市の交通体系に混乱がもたらされる。都市というコミュニテイを健全に維持するためには、都市の居住者の全てが、そこで決められたルールも守ることによってできることである。
都市のルール違反に対しては、同じ市町村にいる人が、環境利益の共同体の住民として、全ての人がルール違反に対して問題にすることができるとする考え方が、工業先進国の民主国家に共通する近代的コミュニテイ論の基礎となっている。都市という単位で、ひとつの有機的な都市計画区域が設定され、固有の都市計画決定されたルールに従うことを義務付けられる関係者は、紛れもなく、行政事件訴訟法でいう利害関係のある者である。都市計画法での公共性として都市計画される内容は、その都市計画全体と不可分一体に有機的に結ばれていることから、都市計画区域単位でその行政区域内の納税者には、都市計画決定に違反した処分がなされた場合には、それにより都市計画決定が保障している利益を侵害された者全員に原告適格が認められるべきである。

6 集団規定に対する原告適格の範囲
(1)集団規定の前提

前述したように建築基準法第3章の規定の強制権の根拠は、都市計画決定によって付与される「計画公権」と呼ばれる都市空間の公共性を根拠にしている。土地は私的に所有され、民法第207条で定められている通り、憲法第29条を受けて、建築基準法等で都市計画法の空間利用についての法律上の定めのない限り、土地の所有権はその上下に及ぶことが明確にされている。
都市空間利用の法律理論は、光、空気、音、電磁波、水(雨、地下水、表流水)、鳥や昆虫、犬や猫、家畜その他野生の生物など、森羅万象、都市空間を社会的に利用して、都市空間の利益を享受している事実の上に構築されている。都市の空間利用は利用者の利害が対立するため、土地の私的利用と都市空間の社会的利用との調和は計られなければならない。都市の空間利用の計画に対して、社会的なコンセンサスを公法上の公共性の制限として法律化したものが都市計画決定である。
開発許可の基準として定められている都市計画法第33条第1項第二号で、「開発区域の周辺の状況について環境の保全がされていること」を求めている理由は、開発地を含めて、全ての土地は、都市計画上周辺環境と不可分の関係があって、開発地は周辺環境に依存するとともに周辺環境の担い手であることを規定した条文である。この都市計画決定は、都市空間という環境のあり方を、立法行為に相当する手続きで決定する行政行為である。そこで決定された都市計画決定による規制の内容が、公共性の裏付けとなる「計画公権」と言われる公共性を背景にした強制権である。
つまり、都市計画法を背景に決定をされた内容は、都市計画に関して高い専門性のある技術者が立案したものを、都市計画に関係する広い分野の専門家で構成する都市計画審議会の議を経て吟味し、それを関係都市住民に縦覧し、都市計画審議会の議を経て、地方公共団体の長(公選された首長)が決定し、それを公告することで公共性としての強制力を持つ。このように都市計画決定は、都市計画法の目的に定められたとおり、公共の福利を増進する都市空間の利用において公共性が高いと社会的な合意を得られたものである。そのため、私権は都市計画決定された内容に従わなければならないとされ、その実現のためには、都市計画行政及び建築基準行政が、都市計画決定を背景として強制権を発揮することができるとしているのである。

(2)都市計画法第29条に定める開発許可における利害関係者
開発許可は、都市施設の整備水準が必ずしも法定都市計画決定された要求に対応することができないため、開発面積が一定規模(東京都の場合、500平方メートル以上)の開発敷地で予定されている建築物が、将来及び現在の都市環境及び都市施設に対応するものであることを確かめて、予定建築物のための開発行為をすることにしたものである。開発許可において開発許可の条件(都市計画法第33条)において定めた内容が、その確認審査する内容である。
開発許可の条件、予定建築物の敷地が500平方メートル以上の場合には、満足する条件は、基本的に、法定都市計計画に適合すること(33条第1項第一号)と既存の都市施設等で担える開発計画であること (33条第1項第二号)の二つである。
33条第1項第一号は、都市計画決定された都市空間の公共的利用の限界を超えるものとして、それを逸脱した開発は、都市の公共的秩序を犯すものであるとして許可することは出来ない。つまり、「計画公権」として都市計画決定された区域の関係者全員の利害を犯すものであるとされるからである。
33条第1項第二号は、都市計画決定された「計画公権」の範囲であるから、その開発自体は法律的には許容されているが、現実の存在している都市施設等で担える要領を逸脱している惧れが認められる場合には、それぞれの公共施設において新たな予定建築物の開発で引き起こされる都市施設に対する負荷が、既存施設で担えることを確かめなければならないとしている。それは、それらの都市施設の維持のための財政を、既存の都市居住者の納税負担により維持管理してきたわけであるから、それらの都市施設等の利用に対する既得権を尊重して、新たな予定建築物を建設する場合には、既存の都市居住者の生活上の利便性に与える影響が、既存の居住者の生活に支障をきたさない範囲で開発するようにすべきと定めている。つまり、開発による影響の範囲を、関係する公共施設等の管理者に協議するべきこと(第32条)としている。
なお、東京都の場合、敷地面積を500平方メートル以上とした理由は、開発敷地が500平方メートル以上であるならば、そこでいかなる種類の予定建築物が建設されても、上記の33条第1項第一号の条件に適合していれば、都市計画法上その周辺市街地への影響は容認してよいとされたからである。

(3)利害関係者の範囲とその判断をする公共施設の管理者
開発事業者は予定する建築物の建築に先立って敷地を整備する開発行為(第4条第12項)に当たって、予定建築物の建設に伴う都市環境及び都市施設への影響について、関連の行政上の行政機関の行政技術基準に照らして、関係する公共施設の管理者と合意の得られた内容の開発計画とすることを前提に、開発許可申請をすることになっている。
しかし、開発許可申請を受けた開発許可権者が、その予定建築物による影響が、開発許可申請に添付された合意の得られた関連公共施設等の行政機関以外にも存在すると考えられるときは、開発許可権者は、開発申請者に対し、その機関との合意を求めることを、開発の条件(第32条)としなければならない。
開発許可に当たり、同意をするべきことを必要とする関係公共機関には、開発許可の基準に関するそれぞれの行政法を根拠に、それぞれの技術基準が定められており、それらの基準に適合していることの判断は、それぞれの関係行政機関でなされるものである。開発許可権者は、それぞれの行政法の施行者ではないから、それらの行政法に関し、開発計画がそれらの基準に適合していることを自ら所管する法律(都市計画法)の権限で判断することは出来ない(国家行政組織法による行政の権利義務に関する役割分担)。そこで開発許可に置いては、公共施設に関する判断は、道路、河川、下水道、水道、公園等それぞれの公共施設の施行者(管理者)の少なくとも、行政法上の適法判断は、関係公共機関との同意でもってなされる法律体系になっている。
関係各行政機関においては、それぞれの行政ごとに、開発計画によるそれぞれの行政ごとの開発計画による影響の範囲を判定することになる。雨水の氾濫、溢水、洪水に関しては、河川流域管理者がその影響の範囲を決めることになるし、道路管理者は、道路交通行政の立場から、その予定建築物の利用に伴う影響の範囲を確定することになる。
公共施設はそれぞれの行政は、それぞれの行政の管理区域があり、その行政管理単位ごとに利害が共通しているため、公共施設の管理者による審査がされない場合、つまり都市計画法第32条第1項に関する公共施設管理者の同意を得ていない場合には、その公共施設管理区域ごとに共通の利害が侵犯されることになるから、その区域内の関係者は、利害関係者として行政事件訴訟法第9条の原告適格を有することになる。
都市計画法第33条第2項で定める技術的基準に従えば、1000平方メートル以上の開発の接道条件は、幅員9メートルと規定していることから、少なくとも幅員9メートルで囲われる区域を単位に道路による影響の範囲が切れることになる。開発による既存市街地の交通への影響は、幅員9メートル以上の道路とすれば、そこでいかなる開発の影響も吸収することが出来ることになっている。その考え方を裏返せば、幅員9メートルで囲われる区域を単位に、交通上の影響範囲が区分されるということになる。細街路で構成された市街地の場合には、その細街路での交通障害は、別の利用できる細街路に交通が向い、交通が一種の「雲膜下症状」状態に分散していくことになる。交通が行き場を求めて影響が拡大するが、幅員9メートルの道路によってその影響は分断される。そのため、幅員9メートルで囲われる範囲が道路行政の利害関係の単位と考えられる原告適格の範囲である。
このように都市計画法による開発許可の場合、既存の各都市施設の容量に適合しない開発の場合には、既存の都市施設で担うことの出来ない分の負荷については、次の①から⑦のような方法で、開発事業者の費用負担で、既存の都市施設によって解決できない問題を解決することに関し、関連公共施設の管理者(施行者)と第33条で定める開発許可の基準を満足する計画であることの協議をし、その開発計画がその行政の審査に合格して、合意(第32条)を得たときには同意書を開発許可申請書に添付することで、関連公共施設の審査が完了したものとみなすように定めている。
① 開発敷地から十分交通容量のある広幅員(幅員9メートル以上)の道路までの開発敷地     からの専用道の建設、又は、既存道路の幅員9メートルまでの拡幅
② 河川容量を超える雨水調節池の建設、又は、既存河川の改修
③ 下水調節施設の建設、又は、下水道の改修
④ 上水の水圧も超えるが所への給水のための高架水槽の設置
⑤ 学校教育施設の増設又は改良を含む建設
⑥ 保育園等の社会福祉施設の建設
⑦ その他都市生活に関係する公共施設への矛盾の解決

(4)都市計画決定に関する利害関係者の範囲
一般に、都市計画法の施行が、既存の都市に適用されることになって、既存建築物が建築基準法第3章規定に不適合となり、その不適合の状態が、都市の安全衛生に関し、公共の利益にとって危険であると特定行政庁が判断し、強制する場合には、それを行うことができる。
その是正のために必要な損失は、都市の利益の実現のための犠牲となるものであるから、その損失は補償されなければならない。その補償をする者は、建築基準法により不適合になっている部分を除却することで利益を受ける都市計画区域の住民であるから、その都市計画の基本単位である自治体で負担するべきことを定めている。(建築基準法第11条)この規定は、都市計画決定による利害関係の都市計画法による計画公権の利害の及ぶ範囲は、都市計画決定の最小単位の地方公共団体である市町村と明記するものである。
建築基準法第11条は、建築基準法第3章に関する建築物の規定に限定されているが、都市計画決定は、都市計画区域における空間の利用に関する社会的利用について、社会的コンセンサスとするところを、都市計画法の定める手続きにより、公共性を付与する一種の立法行為(計画公権の付与)である。都市計画決定された内容、つまり、「計画公権」に根拠を持つ空間利用(開発許可の基準:第33条第1項第二号)に定められた公共性の内容に違反して開発行為が行なわれることは、あってはならないことである。
しかし、開発許可権者が都市計画決定の内容に違反して開発許可を開発業者に与えた場合には、「計画公権」に違反して与えたことになる。開発許可権者は、都市計画区域の住民の利益を犯したことになる。よって、当該都市計画区域の住民は、開発許可権者の都市計画決定違反により蹂躙された権利を回復するため、行政事件訴訟法上、原告適格のある者とされなければならない。

(ⅰ)東京都板橋区常盤台におけるマンション開発事件(社会的環境)の例
昭和10年に東武鉄道株式会社が、内務省技官小宮賢一のマスタープランに基づいて開発した、常盤台住宅地は田園調布や成城学園と同様、当時,急増したホワイトカラー層を対象にした徒歩の生活を前提にした人々の絆で結ばれた高級郊外住宅地として開発された住宅地である。しかし、この住宅地の環境は、その後相続のつど相続税の納税ができなくて、アパ-ト・マンションへの土地利用の転換がされてきた。さすが常盤台地区では、巨大マンション開発は不可能であるが、その周辺には高層マンションが乱立する状況になっている。この地域は高層マンションを想定した道路、公園下水道等の都市施設は整備されていない。このような事態が起きることがないように、1968年の都市計画法の制定にあったっては、「開発許可の基準」を定めた第33条で、開発計画として、周辺地区との環境との調和が図られていなければならないことを審査することが定められている。
常盤台駅に隣接して巨大マンションが建設され、発生交通量が増大し、東武鉄道交差点は「開かずの踏み切り」と言われるほどひどい状態になっているうえ、徒歩の町として開発された常盤台は、交通渋滞を避ける「通り抜け交通」が増加し、通学路や通園路で交通の危険が拡大している。このような社会的環境の変化により、徒歩の町が大きく変質を余儀なくされている。このような都市環境の破壊は、住民の生活に危険をもたらすもので、都市計画法上、開発許可の審査しなければならないことになっている。
しかし、このような交通環境の変化は、単に常盤台だけではなく、池袋を中心にする板橋区の交通体系全体に影響を与えるものである。かねてより、この地区の資産価値の熟成に努力をしてきた板橋区民が、この地区で取り組まれているマンション開発に対して開発審査会に都市計画法第50条に基づく不服審査請求に加わったところ、東京都開発審査会はその者に対して、原告適格がないと裁決した。
板橋区内の交通体系に大きな変化を与えることになるこのような開発事業に対しては、都市計画法上は「既存の都市環境に皺寄せをしないような開発計画」とすべきことを要求している。然るに、そこで計画された開発計画は、常盤台を中心に広域の交通体系に大きな皺寄せをするもので、板橋区住民の多くがこの開発の影響で不利益を受けると感じ、東京都開発審査会に対して都市計画に定められたとおりの開発許可の基準に適合するような開発にするような審査請求をしたのである。
板橋区民がその計画は住民の利害に関係があると主張して審査請求人になっているにも拘らず、それを原告適格なしとした開発審査会には少なくともその説明責任がある。法律上の根拠を挙げないで、原告適格なしとすることは、都市計画法第50条違反である。

(ⅱ) 東京都文京区「銅御殿」隣接地でのマンション開発(歴史文化環境)の例
東京都文京区茗荷谷にある重要文化財、銅御殿(旧磯野邸)は、筑波大学(旧東京教育大学)と隣接した東京を代表する高級住宅地に立つ日本を代表する木造建築である。この国の重要文化財として指定を受けている。銅御殿は、「湯立坂」の景観を構成する重要な環境の担い手になっていて、その環境をこの地区の重要な財産であると考えている住民は、銅御殿の旧庭園敷地を民間のデベロッパーが買収し、そこに高層マンションを建設することに驚きと環境破壊の恐怖を感じている。これらの地元の住民は、銅御殿自体が湯立て坂の環境の主要な構成要素として、ビル風による突風やマンションの建設工事にともなう地盤への影響で、取り返しのつかない事故が発生することを危惧するとともに、湯立坂の歴史的文化環境を著しく破壊することになるマンション開発自体に、都市計画法上開発許可の規準に違反する開発ではないかという疑問を持っている。
住民は、文京区に対してその保護を求めてきたが、特定行政庁である文京区は、このマンション開発は「開発許可不要」の開発であるとして、指定確認検査機関へ通知している。
少なくとも、この開発は現状のままで建築することでは、都市計画法第33条の規定に抵触する惧れがあり、都市計画法第29条の開発許可を受けるべき条件に該当しており、開発許可を受けるべきであることには法律上疑問の余地はない。もし開発業者が開発を進めるとした場合、湯立坂を守る関係者には、都市計画法上の都市空間の文化的環境破壊により損害を受ける利害関係者として、不服審査請求を行う原告適格があると考えるべきである。

7 単体規定における原告適格とその問題点
単体規定の原告適格として、その建築物自体に直接関連する者に原告適格の扱いがされるのは当然である。しかし、その近隣についての取り扱いの判断は定まっていない。当該建築物の処分に対して、その近隣がその違法な処分により不利益を受ける場合、その不利益の発生を放置している不作為に対する事例は、原告適格の問題を提起している。
阪神大震災における事故の中で、建築物自体の建築構造耐力自体が不足する違反建築として建築されていて、それが道路機能や性能を壊していて、震災後の救済活動を妨害して、それが物損や人命に大きな損傷を与えることになった。その原因を分解して考えると、建築物単体自体の欠陥という問題と、その建築物自体と周辺の建築物との相隣関係の問題とに分解することができる。
単体規定は、建築物自体の安全と衛生を取り扱っているものではあるが、その建築物で引き起こされる問題は、必ずしも、その建築物で完結するわけではない。その建築物が原因になって近隣に不利益を与えることになった場合には、建築物の所有者は、その建築物の善良管理義務違反で、損害賠償を請求されることもありうる。このような考え方に立って、建築基準法第10条では、既存不適格建築物の場合、その建築物が安全衛生に関し(保安上)著しく危険であると、特定行政庁が判断した場合には、当該建築物の所有者に対して、その者の負担に置いて、著しく危険であると判断する部分の是正を命じることができると定めている。
このことは、その建築物に関しての利害関係のある者、つまり、原告適格のある者は、当該建築物の所有者等と、そこで危惧される建築物の危険の影響を受けることになる近隣関係にある直接的な影響を受けることになる範囲にある者ということになる。


第2章 行政不服審査請求期間 ―最高裁判所の2判例批判―

1 開発許可制度の法律解釈の誤り
この章においては、以下の2つの最高裁判所判決について、不服審査請求の出訴期間について検討する。
最高裁判所第2小法廷判決/平成3年(行ツ)第46号
最高裁判所平成9年(行ツ)第24号開発許可取り消し請求事件
(1)広義の開発許可
この2つの最高裁判所の判決は、開発許可に対する不服審査請求、又は、行政事件訴訟事件は、開発行為に関する工事検査済み証が交付された以後は、既に開発許可自体を問題にする訴えの利益は消滅しているから、開発許可申請自体の処分取消しはできないとしている。その判決が都市計画法違反であることを世田谷区千歳烏山の事件との関係で解説する。
最高裁判所は都市計画法第29条の開発許可の規定を、字句の解釈として、狭義にしか読んでいないため、第29条と第36条とを独立した別の処分であるとする大きな法律解釈の誤りを犯している。
第29条の開発許可制度は、昭和43年(1968年)の都市計画法の立法の経緯及び立法の趣旨ならびに文理解釈及び都市計画法及び建築基準法の法文の表現方法を詳細に調べればわかる通り、広義の開発許可という概念と狭義の開発許可という概念から構成されている。
広義の開発許可という概念は、予定建地区物の建築に先立って、その敷地に関しては、「開発許可の基準(第33条)に適合することを完了してからではないと、予定建築物は建てさせない」とする予定建築物が既存市街地の現状の環境に皺寄せをしないような敷地の整備を完了しない限り、一切の建築行為は認めないとする一連の開発許可処分を指している。
都市計画法と姉妹法の関係にある建築基準法では、建築確認に関する都市計画法関連の「建築基準関係規定」(建築基準法第6条及び同法施行令第9条第十二号)との確認事務として、「都市計画法第29条第1項」と照合確認することが定められている。
この「第29条第1項」との照合とは、広義の開発許可を指していて、建築物の確認申請は、都市計画法に基づく開発許可に定めた開発行為が完了し、完了公告がなされないかぎりは、開発許可をした開発行為の実体が存在していないから、確認審査はもとより、確認済証の交付をしてはしてならないという意味である。
最高裁判所の先の判決のように解釈すると、開発許可の計画が許可されれば、開発行為が始まっていなくても、敷地の実体が開発許可どおりできていなくても、確認申請はもとより、確認審査も、確認済証の交付もできるといったことになる。この法律解釈は、明らかに確認制度を蹂躙することになる。

(2)建築基準法と都市計画法の条文の記載方法
判決理由の中では、確認制度に関しても、開発許可の法律解釈と同じ間違いが犯されている。建築基準法第4条で建築主事の事務が「第6条第1項」と規定されている。それは広義の確認の規定で、第6条から第7条の6までの規定を指すことは、建築基準法行制定以来の法文の書き方である。このように開発許可も確認事務の規定も、開発許可、又は確認のいずれも、申請から工事の完了までが一体不可分である行政事務は、その最初の条文を記載することで、開発許可、又は確認事務の完了までを指すことにするという、都市計画法及び建築基準法の姉妹法の共通の書き方になっていることを無視した法律解釈なのである。
つまり、開発許可又は、確認事務はいずれも計画段階の開発許可(都市計画法第29条)、又は、計画確認(建築基準法第6条)と、工事段階完了後の予定建築物建築開発許可(都市計画法第36条)、又は、建築工事検査確認(建築基準法第7条)とがそれぞれ一対の「不可分一体」の許可処分、又は確認事務であり、開発計画段階の開発許可、又は建築計画段階での確認事務では、開発許可処分、又は確認事務は完結せず、それだけで法律は違反を防止しないという法律構成になっている。

(3)狭義の開発許可
狭義の開発許可は、開発許可全体の業務の中の計画段階の完了の節目として、開発許可を受けた場合には、開発事業者は開発許可を受けたとおりの開発行為をその権利として行ってよいとするものである。
開発許可した段階では、開発許可した敷地の実体は存在しておらず、広義の開発許可の一部である計画段階の承認手続きを完了したにしか過ぎない。開発許可権者が行った開発許可の手続きは、開発許可申請を受け付けてから始まり、開発計画が開発許可の条件に適合して開発許可がなされたときに、計画内容が適法であるとの行政上の判断が出されたということである。
そしてそれ以後は、開発許可されたとおりの整備、即ち、開発許可の基準を満足するような開発行為を継続し、開発許可どおりの開発行為がなされたとき完了報告がなされ、それに基づく工事完了検査において開発許可の基準に適合し、完了検査に合格し、完了公告がなされることで開発許可が完了する。
この関係は確認事務の場合も同様であるが、確認は行政権を背景にした許可ではなく、あくまでも建築主事による建築確認関係規定との照合確認事務である。しかし、確認済証が交付されていない建築物は建築してはならないという規定及び、工事検査が交付されていない建築物は使用してはならないという規定により、確認制度も事実上、行政処分と同様の効果を発揮している。

2 行政不服審査請求の出訴期間
(1)出訴期間の開始時期

開発計画に対する開発許可がなされたときから、狭義の開発許可が開始され、開発行為が完了するまでの間は、狭義の開発許可処分が継続した状態にある。そして、完了公告がなされた時点で、開発許可の目的物が実現することで、開発許可が完了する。狭義の開発許可は、開発許可証が交付された時点だけではなく、広義の開発許可が完了するまでの間、都市計画法上継続している。
しかし、開発許可を狭義の開発許可がされた時点に限定すると考えて、行政不服審査請求
期間を、次のように定めている。

行政不服審査法第14条
許可処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、しなければならない。ただし、天災その他審査請求をしなかったことについてやむをえない理由がある時は、この限りでない。
2 前項ただし書きの場合における審査請求は、その理由がやんだ日の翌日から起算して、1週間以内にしなければならない。

処分庁は開発許可を行った時点、又は、それを開発地区の看板に表示した日をもって、行政不服審査法第14条でいう「知った日」と主張して、出訴期間の開始時期を計算し、その経過したことをもって審査をしないで却下することを求めてきた。所謂「門前払い」の請求である。
開発許可の基準に適合しない開発行為を未然に防止する法律の目的を考えた場合、開発許可に係る内容が、事前に関係住民に十分周知され、開発内容に関し法律上の争点について、納得できる説明がなされた場合には、狭義の開発許可がなされた時点を出訴期間の開始とすることも法律に照らして納得できる。開発計画に対する狭義の開発許可に基づき開発行為は開始され、開発行為は都市計画法第36条に定めた完了公告を持って終了する。このときが広義の開発許可がなされたときである。狭義の開発許可に対して不服審査請求をなしていた間に広義の開発許可がなされた場合には、その開発行為が開発許可されたと同じ条件で完了公告がなされているとしたら、狭義に開発許可はそのまま広義の開発許可として、開発許可に対する審査請求として継続されるという扱いがされるべきである。

(2)開発許可申請及び審査の実態
開発許可申請の図書は、一般的には、建築士法や建設業法に基づき登録された業者が作成・申請し、それを都知事の部下である開発許可審査職員による審査の結果として開発許可がなされたものであるから、開発許可された開発計画に法律違反があるということはあってはならないことである。
国民は、都市計画法上の開発許可権者の行った処分は、適法になされたと思っているのが当然である。開発許可に関し専門知識のない一般市民が不安を持ち、現在のように開発許可権者が都市計画法違反を、業者の利益擁護の立場で幇助し、住民の不服審査請求の妨害をしているため、行政処分に疑いを持たざるを得ないという状態は異常である。
しかし、現実には開発計画に関しては、開発事業者はもとより、開発許可権者からも、事前に開発計画の説明すらなされないか、なされても形式的でなおざりなもので、実情は詳細に説明されないことが一般的である。
計画内容に疑問を持った住民が、開発許可権者の担当審査窓口に説明を求めても、肝心なところは説明されず、やむを得ず、住民自身が調査を始めても、開発事業者からはもとより行政機関からの情報はなかなか得られない。情報公開を求めても、個人情報開示制度を理由に、処分庁は不当に情報公開を妨害しているのが実情である。
そのため、開発許可処分がなされてから、開発計画が開発許可の基準に適合しているかどうかの検討が始まっても、通常、住民が行政的な専門の審査をするわけではないため、狭義の開発許可に法律違反があることを発見した時期は、当然開発許可がなされてから相当の時期が経過してからになる。この現状をかんがみると、行政不服審査法に規定する出訴期間の開始時期は、開発許可処分に違反が発見された時点を、「都市計画法違反の処分があったことを知った日」とされるべきである。

(3)第14条第1項ただし書き
しかし、現実の開発審査では、開発許可処分のなされた時点、又は、看板掲示などで処分がなされたことを知った時点という扱いがされている。処分は適正になされたならば、基本的に不服審査請求をする理由はない。開発許可処分が適正になされたかどうかを知るためには、相当期間を有すると考えても無理はない。住民が資料な満足な提供もなしで検討をして処分の違反を発見したときは、常識的に考えて、行政法に精通している人が関係して、その一部が早く分かったとしても、2ヶ月近くは必要である。
現行の都市計画法が昭和43年(1968年)に制定・公布されたときの開発審査会創設の趣旨を考えても、狭義の開発許可、すなわち、開発計画に対する許可という行政処分に時点に拘るとするならば、不服審査請求の出訴期間の始まりは、開発許可処分が違反であることを知った時点と読み替えることが行政不服審査法第14条ただし書きの規定に照らして適当である。
行政不服審査法第14条ただし書きは、「天災その他審査請求をしなかったことについてやむを得ぬ理由があるとき」として、現在の開発許可制度の運用を予定していたわけではないと考えられるが、現在の状況は正にこの審査請求ができなかった理由として、行政の妨害という審査請求人にとって不可抗力の事態によることが原因であることから、この条文によって審査請求期間を住民による開発計画の検討期間を算入できるとすることは合理的根拠があると言える。
開発許可処分の違反は、処分庁からの資料の公開につれて拡大する。開発許可処分の違反の発見が複数個所になれば、その発見された都度、その違反に関する審査請求期間の開始時期が設定されなければならない。しかし、広義の開発許可行政処分の完了時点は、いずれの狭義の開発許可処分違反も、開発許可された開発行為が完了して工事の検査済証が交付され、完了公告がなされた時点に一斉に完了することになる。
出訴時期は、狭義の開発許可処分違反が発見された時期から計算され、広義の開発許可が完了するまでの期間継続すると考えることが開発許可制度に対し、開発審査会の機能を鑑みた場合、都市計画法の立法の趣旨に最も適したものであり、このように開発許可の審査請求期間の設定を考えることは、都市計画法の趣旨にも適合する。このような法律解釈こそ、開発許可処分に対する住民の不安を払拭し、住民主体の都市環境を実現する都市計画法の立法趣旨に適合する開発審査会に対する不服審査請求の出訴期間の解釈である。
開発審査会は、不服審査請求制度を通して開発許可処分の利害関係者に対し、十分な審査期間を与え、最終的に開発許可の基準に適合した正しい判断を導き出すことになるもので、都市計画法の目指した開発許可制度の実体にも適合する。
都市計画行政が、開発許可制度を住民主体で運用するようにするためには、開発事業者に対して開発計画の内容を関係住民に納得できるように説明するようにさせるか、又は開発許可権者が、開発許可の内容を利害関係の説明するようにすれば、不服審査請求そのものを起こす必要がなくなる。開発許可権者が、開発事業者と共謀して、住民に隠れて不正な処分をし、開発許可申請関係資料を利害関係者に供覧することを妨害しているとことに、行政不服審査請求をゆがめる原因を作っているのである。

3 開発許可制度自体としての行政処分の責任の取り方
(1)検査合格した開発行為の法律上の意味

上記1で指摘したとおり、最高裁判所の判決で、開発許可処分を計画段階で完了し、これと独立して完了検査が存在するとした理由の説明は、開発許可という一連の許可処分を、法律上の根拠を示さないで、2つの別の行政処分であると決め付けたもので、明らかに都市計画法違反の解釈で、都市計画法の立法の経緯を無視したか、又は、それを知らずに間違った法律解釈をしたものである。
少なくとも、内閣法制局による政府提案の立法解釈を前提に立法した内容には、三権分立の民主主義国家にあっては、司法もまたそれに従うべきである。都市計画法の立法時の国会でなされた政府委員による立法趣旨の説明及び法律条文に対してなされた文理解釈を、司法が軽々に変更することは、最高裁判所であっても許されないことである。
世田谷区千歳烏山事件においては、都市計画法上の開発許可権限を持たない世田谷区長が、開発基準に違反した開発許可を行っていることから、その同じ処分庁が開発許可を行った開発行為が完了した場合、その開発計画が開発許可の基準に違反しているという不服審査請求や行政事件訴訟法が係争中であっても、処分庁である世田谷区長は、係争中の開発行為に対する工事完了報告に対して、狭義の開発許可をなしたと同じ内容であるからとして検査合格を出し、完了公告をする可能性はきわめて高いと言える。
最高裁判所の判決は、完了公告がなされた場合には、開発許可に関する行政処分とは別の段階の完了検査という行政処分がなされたことは、その時点で実施された開発行為は適法とされるわけであるから、それ以前の開発許可段階の訴訟は、別の行政段階に入ったということで「覆水盆に返らず」であるから、開発許可の問題としての追及できないと判断せざるを得ないという理論構成である。

(2)都市計画違反の開発行為に対する対策
その論理に立って、最高裁判所の判決の言うことは、開発許可処分自体は完了検査に合格したとして幕を引かざるを得ないとしても、もし、開発許可、又は、開発許可に基づいてなされた開発行為に開発許可基準に違反があったことを、開発許可権者が錯誤により容認していた場合には、既に開発許可に関する処分は完了しているので、開発許可処分という法律上の枠組みでは争えない、さりとて開発許可基準に違反しているものを都市計画行政の施行者として容認して置くわけには行かない、そこで最高裁判所が考え出した理屈が、その都市計画法違反は、都市計画法違反全般の違反是正を扱った第81条に基づき、都知事が都市計画法全体の施行者として、違反是正に当たれればよいとするものである。
最高裁判所の判決は、平たく言えば、「完了公告が出れば、第29条の開発計画を開発許可の基準に適合したことを認めて開発許可をした行政処分は、検査済証の交付という開発許可とは別の段階に行政処分がなされたものであるから、前段階にまで戻ることは出来ない」ということである。
この最高裁判所の判断は、都市計画法に根拠を置くものではなく、全く判事の勝手な解釈で、都市計画法の立法趣旨、文理解釈を無視したものである。上記(1)で説明したとおり、開発許可の広義に内容は、第29条から第36条の、完了公告がなされるまでを含んでいる。その間、開発許可の基準(第33条)に適合する工事として開発許可を受けた開発業者は、仮にその計画に開発許可の基準に違反した内容が含まれていても、許可権を背景に開発許可されたとおりの工事をする権利があるため、仮に錯誤による開発許可であっても、開発許可権者の錯誤による開発許可処分に対する社会的責任は、追及されることになる。
行政事件訴訟は開発許可権者の行った狭義の開発許可の基準に違反がある行政処分がなされた場合には、狭義の開発許可違反の処分に対してはもちろん、広義の開発許可違反の処分対しても、利害関係者には不服審査申請をし、また、行政事件訴訟をすることが出来なければならない。
行政事件訴訟法に基づく裁判において、行政処分が違法であるとされた場合には、最裁判所が言うように、第81条により建設大臣又は都道府県知事が是正命令を出すのではなく、開発許可をなした処分庁が責任を持って適法にする義務を果たさなければならない。

(3)違反是正の考え方
都市計画法による開発許可処分に違反があれば、開発許可処分の体系の中で、違反是正をするべきことが法律上の考え方である。最高裁判所の判決のように開発許可処分に違反があっても、開発許可処分の段階を経過してしまえば、それで開発許可処分権者の責任を問うことは出来なくなり、都市計画法違反一般の体制で是正処分をすることとなるとの考え方である。このような考え方は、都市計画法自体には全く存在しない。開発許可制度により、一切の都市施設に禍根を残す開発行為は、開発許可制度で阻止するとした都市計画法の立法の趣旨及びそれを受けて作成された現行法の法律の文理解釈を蹂躙するもので、最高裁判所判決の「創作」である。
開発事業者が都市計画事業の専門の業者であれば、都市計画法及び建築基準法を知るべき立場にあり、違反工事をすることは許されないことである。開発事業者は、建設業法の登録業者で、かつ、建築士法の登録業者であって、行政法により排他独占的に営業を保護されていることから、社会的に適法な計画と適法な工事をする義務がある。しかし、利潤追求を目的とする開発業者は、自らの事業利益の最大化のために、開発許可基準及び建築基準を犯してでも利潤を高めようとする結果、法律解釈を開発に有利にしようとする動機は、開発業者には常に働いている。
耐震偽装事件のとき、確認審査は、「申請者の性善説」に立って行っている、といって行政機関が責任回避をしていた。しかし、行政法の実体は、初めから「申請者は利己的であるため、違反を犯してでも利益の高い計画をするとする性悪説」に立っており、その不正利益の実現を未然に防ぐため、行政法があり、その適正な施行を確実にするために、優秀な公務員に国民の税金で高い給与を支給して行政事務がやられているのである。
また、開発許可権者は、国民の納税義務の反射的行政義務として、国民との社会契約として結ばれた憲法で、国民に保障した公共的利益の実現を、関係行政法を総ての国民に守らせることにより確実にするという義務がある。そのような観点で、開発許可権者は開発許可基準違反を取り締まる義務を負っている。

(4)行政責任のとり方
しかし、開発許可の権限を間違って行使したことによる行政庁の処分責任は追及されなければならない。この行政機関の責任は、あくまでも開発計画と開発行為の審査責任である。開発許可権者が審査したからといって、開発計画に違反のある開発審査をし、又は、開発行為において、違反を容認した開発許可がなされても、開発業者の開発許可基準に違反した責任がなくなることもなければ、処分権者に移転するわけでもない。開発事業者自身が違反工事を是正することは、開発許可権者からの是正指示がある、なしに拘わらず、是正するべき義務を負っていることは当然である。
違反是正に対し、開発事業者の同意が得られなければ、開発許可権者は行政代執行法によってでも是正させなければならない。その際の是正に伴う損失負担は、違反を犯した業者と処分庁との間で、その責任に応じて負担することになる。行政庁が負担した損失に関しては、その違反の内容、性格により、国家賠償により損失を負担するか、もしくは、処分の違反が処分庁自身、又は、職員の瑕疵がある場合いには、その個人に対して、その責任に応じて負担をさせることが必要である。

(5)国家が行政に与えている天下の宝刀
最高裁判所が言う第81条による違反是正を処分庁の裁量でやることになるという判断は、全く都市計画法の法律制度を無視したものである。処分庁が違法な処分をして、結果的に実現した実体違反の開発行為を、その違反処分を行った処分庁が素直に是正することは期待しにくく、結果的には、違反の実体は放置され、違反は容認されることになる。特に、業者の不正利益を幇助する目的で違法な処分をして業者に不正利益を与えた処分庁が、開発業者が手にした不正利益を奪うことは期待できない。
最高裁判所の判決には、行政処分が行政機関に瑕疵がある処分をした場合の行政機関の責任の取り方がまったく示されていない。憲法で規定している国民主権と公務員の公僕としての義務の関係をわきまえておらず、全く国民無視の判決といわなければならない。
国家は憲法により国家と国民との関係を規定しており、国家は行政機関に対して、行政権の行使を担保するために行政代執行法により行政処分を強制的に実行することを可能にしている。法治国は、法律を守らない人に強制的に、国家の権力を使ってもそれを実現することで、国民に法治国の国民に保証している利益を確実に提供することができるのである。そこには、最高裁判所がその判決で書いているように、行政処分により違反をそこで正さなくても、行政法一般の違反是正で対応すればよいといった処分権者の責任回避を容認したり、行政責任を「連帯責任は無責任」に転嫁の思想の入り込む余地はないはずである。


第3章 行政事件訴訟の条件:審査会の裁決の前置

1審査会の裁決の意味
(1)審査会前置の規定とその法律上の意味

都市計画法第52条又は建築基準法第96条において審査請求と行政事件訴訟の関係の定めが置かれている。これらの規定で定めていることは、都市計画法第50条又は建築基準法第94条で定められている行政不服審査法の手続きにより、都市計画法または建築基準法に基づく開発許可又は確認に関し、その処分又は不作為に関し不服がある者は、開発審査会又は建築審査会に対して不服審査請求をなすことができるという規定を受けて、その処分に対する司法上の訴訟の提起は、それぞれ、審査会の裁決を得た後でなければすることはできないとするものである。
つまり、都市計画法又は建築基準法で不服審査請求のできる処分又は不作為に対する司法上の訴訟の提起は、審査会の裁決を経なければすることはできない。
これらの規定は、開発許可又は確認処分は、それぞれ技術的に高い専門性を要する行政事務であることから、処分庁または不作為庁の行う処分又は不作為に対して、錯誤も起こりうる可能性が高く、それをより迅速に高い専門性をもって是正処理するために、それぞれ都市計画法又は建築基準法において、開発申査会又は建築審査会という処分庁の上に上級処分庁を定めて、行政上の最終的判断を審査会の裁決として行うことを制度化した。そのため、開発審査会又は建築審査会には、それぞれ都市計画法第50条又は建築基準法第94条の処分又は不作為に対する不服審査請求を利害関係者が審査請求した場合、迅速に審査し、専門的な立場で上級の行政判断としての裁決を下すことのできる委員で構成された審査会が設置された。そこで、審査機関を原則1ヶ月以内での迅速な審査が行われることになっている。

(2)審査会の運営及び裁決の現実
しかし、現実に機能している審査会は、開発審査会の場合も、建築審査会の場合も審査請求人の主張に対し、行政法を根拠にして審査することがなされず、殆どの裁決が処分庁の処分又は不作為を追認することに終始し、法律が期待した審査請求の機能がなされずにいる。なかでも問題とされている最大の問題は、処分庁の処分又は不作為が、明らかに都市計画法の開発の基準に抵触していたり、または建築基準関係規定に抵触しているにも拘らず、いずれの審査会も、処分庁の違反を救済するために、違反事実の審査を行わないで、処分庁又は不作為庁の主張を一方的に追認することがやられてきた。
しかし、それもできないときには、処分庁又は不作為庁を救済するために、不服審査請求人に対して、判断の客観的な基準を示さない審査会の恣意的な判断で、「審査請求人としての資格がない」として却下する裁決が相次いでいる。これを一般的には「門前払い」と呼んでいる。行政不服審査請求で取り上げている問題は、処分庁が行政法に違反した処分または不作為によって、国家が行政法をとおして国民に約束した公共の利益を侵奪または蹂躙したことによって、国民が期待した公共の利益を奪われたことによる不利益を回復するためである。
この国民に行政法上の実態的不利益が及んでいるにも拘らず、「門前払い」の問題が、法律の実体規定違反により公共的利益を奪われる住民に与えられべき第1章で扱った原告適格の問題である。ここでは、それに加えてもう一つの原告適格の問題を取り扱う。それが訴訟に先立ち問題にされる審査会前置の問題である。

2 審査会の裁決に対し納得できない場合の救済方法
(1)審査会の裁決の意味

審査会前置の問題に入る前に、もう一度、審査会の機能について確認しておく必要がある。
都市計画法又は建築基準法に基づき、開発審査会又は建築審査会に対してなされた不服審査請求に対して、よく原告適格がないという理由で、実体としての法律違反の基本事項(本案)の審査をしないで、「門前払い」する例が多数ある。原告適格の有無は、行政法違反の実体(本案)を審査しないで、原告適格の判断をすること自体間違った審査である。なぜならば、処分庁又は不作為庁が、行政法違反がなければ、不服審査請求自体が成立しないからである。
原告適格がないとする判断は、処分庁又は不作為庁に行政法違反がないと判断されたときか、又は、処分庁又は不作為庁の成した公共の利益の侵害に関し、訴えている行政法が不服審査請求人の行政法で保障されている公共的利益を侵害していなかったときに限られる。よって、原告適格の審査は本案審査を終えた結果明らかになるべき内容であって、「本案前審査」と称して、処分庁又は不作為庁の違反審査をしないで原告適格審査をすること自体が間違った審査なのである。
審査申請人は、処分庁又は不作為庁が行政法に違反しているという事実を証明して、審査請求をしているのであるから、審査会は、審請求人の主張に対して、行政法に照らして合理的で納得のいく裁決をする義務がある。
しかし、審査会の裁決に対し審査請求人が納得できないとき、行政機関での最終の法律判断であり、その判断に納得がいかなかったとき、つまり、審査請求人にとって審査会の裁決は行政法に照らして間違っているから受け入れられないとするときは、審査請求人は、三権分立の原則に従って、裁判所(司法)に行政事件訴訟を提起することになる。「審査会前置」の意味は、裁判所(司法)での審理は、行政機関としての最終判断がなされるまでは、できないという意味である。

(2)行政法が保障する利益
審査請求人が都市計画法第50条又は建築基準法第94条で求めている裁決は、いずれも、都市計画法第29条に基づく許可、又は、建築基準法第6条に基づく確認が適法になされるべきことであって、それが実現しても、審査請求人の個人的な利益が得られたり、特別利益が高められるものではなく、法律が保障している内容が実現されるだけである。都市計画法又は建築基準法が法律によって保障している法益は、法律の目的としているところの実現であって、それ以上でも、以下でもない。
行政法の施行区域内の居住者は、例外なく、その行政法規である都市計画法又は建築基準法を遵守する義務があると同時に、これらの行政法規を国家が国家権力によって守ることで都市空間の公共的利益を保障されている。そのため、その行政区域内で都市計画法又は建築基準法が侵犯されるような処分又は不作為がなされたときは、その行政区域内の居住者は公共的利益を奪われたことにより、行政事件訴訟法第9条で定める原告適格があるということになる。

(3)行政不服審査請求と審査請求人
行政不服審査請求は、行政事件訴訟法第9条に該当する者であれば、誰でも原告適格を有するものとして、不服審査請求が出来る。その請求は、基本的に行政法違反を無くせということであるから、審査請求人が一人でも、複数人でも、結果は同じである。ただし、不服審査請求で求めている違反処分に関し、指摘された範囲外であれば、放置してもよいというものではない。
法治国にあっては、基本的に違反を容認するという法律の仕組みになっておらず、不服審査請求された内容以外であっても法律違反を犯した処分があった場合には、すべて違法を解消するようにする義務が処分庁又は不作為庁には残っている。審査請求において法律違反の処分又は不作為が認められたときは、本来その不服審査請求された処分又は不作為に限定するのではなく、処分又は不作為のすべてを無効として、全面的に審査のやり直しをさせるべきである。
しかし、現実の審査会は、審査請求された部分に限定しようとし、指摘されない違反処分はそのまま容認するというやり方が取られているが、行政法には時効はなく、違反是正義務違反は不作為に当たり、不作為は、それが是正されるまでは不作為状態が継続することから、出訴期間は終わらないため、法律上の時効はありえない。このような法律構成になっているため、不服審査請求は、誰か原告適格のある人が行えば、それは原告適格を有する者のすべてが行ったと同じ意味を持ち、同じ効果を有するものである。その点民事訴訟として行われる損害賠償請求事件とは全く事情が異なる。

3 行政事件訴訟法で扱うべき「審査会前置」の法律上の扱い
(1)行政事件訴訟法の原告適格

行政庁の処分又は不作為が、行政法に違反して成された場合、その行政区域内の居住者の誰が不服審査請求をしたとしても、その要求内容は、都市計画法または建築基準法に適合しない行政処分又は不作為の是正である。一人が訴えても、全員が訴えても、訴える内容は「法律に照らして正しい処分をせよ」ということ以外にはないから、不服審査請求をする人は、誰でもよく、審査請求をしなかった人は、開発審査会又は建築審査会での審査の成り行きに関心を持っておればよい。
複数人が不服審査請求を出しても、求める裁決には、個人的利益の主張や回復は入ることはなく、「違法な開発許可または確認は、取り消せまたは確認できない旨の通知をせよ」であることに限定されていることでは共通している。
開発許可処分又は確認が、都市計画法又は建築基準法にどのように違反しているかという説明に違いがあっても、求めている処分は「適法な処分の実現」で同じであり、行政上実現しなければならないことは、法律違反をしないということで共通しているから、不服審査請求は一人が出しておれば「審査会前置」の条件に適合させるために複数人による共同申請をする必要はない。

(2)「法律上間違っている」行政及び司法実務
しかし、現実の行政不服審査請求における行政実務においても、それを受けた司法による行政事件訴訟法における司法実務においても、「不服審査請求人ごとに審査請求も行政事件訴訟も、事件ごとに利害関係は異なる」といった私的利益を争う民事訴訟の原則を、公共の利益を争う行政法の問題に拡大解釈して、法律上適用の境界条件を逸脱したところに、荒唐無稽な「民事訴訟の一般論」を展開し、行政不服審査請求をしなかった者は、「審査会前置」の用件を充足していないから原告適格はない、という理屈で訴訟する権利を剥奪された例は無数にある。
前述のとおり、行政不服審査請求は同じ行政区域内の誰が請求してもそこで出される結論は、公益の実現、つまり、処分庁が都市計画法又は建築基準法に照らして正しい処分をする、という同じ要求であり、行政の最高審査機関である開発審査会又は建築審査会で、行政機関としての最終的審査を経て判断が出されてからであれば、同じように、すべての行政境界内に居住する住民であれば、行政事件訴訟を提起できるというように都市計画法又は建築基準法の文理は構成されている。
現在、司法が行政事件訴訟に関しても、属人的な訴訟という扱いをしている理由は、行政法が国民に保障している利益は、公共の利益(公益)であるとする正しい認識がなく、私的な利益の侵奪ということを行政事件での救済内容と勘違いしていることにある。

4 「審査会前置」における原告適格
(1)法律で規定している「審査会前置」

都市計画法第52条又は建築基準法第96条で規定している条文を、文理的に解釈するとそこには都市計画法第50条又は建築基準法第94条に基づいて不服審査請求を求めている事項に関しては、いずれも処分庁又は不作為庁の処分又は不作為は、いずれも行政庁としての最終判断としていないので、その最終的判断として開発審査会又は建築審査会の最終行政判断を得てからでなければ裁判所(司法)に事件を持ち込んではならないとしているだけである。
しかも、行政上の処分又は不作為はいずれもその処分又は不作為のすべてに関して適法であることを求めており、審査請求又は確認申請された中の一部又は全部に違反部分が残存してよいということはない。という意味で、不服審査申請された事件を、その申請全体を適法にしなければならず、行政区域内の住民は、適法な処分という共通した結果を求めている。よって、住民の誰か一人が審査請求をしていれば、その処分に対しての審査請求は審査会になされたことになるから、直接審査請求人となって行わなかった人でも、審査会の裁決結果を見て行政事件に参加することは、都市計画法上又は建築基準法上出来ると解釈すべきである。

(2)「審査会前置」規定のもつ立法趣旨と、なすべき審査
つまり、行政事件訴訟事件の提起は、都市計画法の開発許可または建築基準法の確認処分に関しては、それぞれの法律で定めた法律上の処分又は不作為に関する行政上の最終判断を終えてからでないとできないため、それぞれの処分庁のなした開発許可又は確認全体に関し、開発審査会又は建築審査会が最終の審査をすることを求めているもので、そこでの審査は必ずしも不服審査請求にかかることだけの審査を求めているものではない。
審査請求人は、都市計画法または建築基準法に関しての総合的知識を持つ専門家ではなく、一般の市井の人として、気がついた事項に関して処分庁の法律違反を指摘したものである。行政法に素人の国民一般が発見することのできるような法律違反を犯す処分には、その全てに違反処分の嫌疑がかけられておかしくはない。都市計画法第50条または建築基準法第94条にもとづく不服審査は、両方に置いて審査会が行政処分の最高の判断機関として設置された立法趣旨を考えると、そこでは、単に不服審査申請事項に留まらず、処分庁のなした不服審査請求対象の事案全体の適法性の審査をするべきである。

(3)「審査会前置」の原告適格
上記(2)で説明したとおり、審査会前置は、あくまで処分庁又は不作為庁のなした処分又は不作為に関する行政機関の最終判断であることから、その審査会での最終判断が出されたということを確かめることができたら、その審査会の判断が関係行政法に照らして違反であると判断した人であれば誰でも行政事件訴訟を提起できることになる。そこには、「行政事件訴訟を提起する人が不服審査請求をしなければならない」といった法律上全く根拠のない無茶な司法上の運用が入り込む余地はない。

第4章 行政の「不作為」と不服審査請求

1 違反建築と不作為
(1)問題提起―目黒区が違反建築物を放置している理由

違反建築物が放置されていることが、行政不服審査請求の対象とする不作為に当たるかという疑問に対して、東京都目黒区は、次の二つの理由で不作為ではないと主張する。
① 建築基準法第9条は、義務規定ではないから、特定行政庁の裁量のできることであるので、違反建築物を放置していること自体は不作為に当たらない。
② 違反建築物は、申請に基づく処分をしなかったものではないので、行政不服審査法上の不作為には該当しない。
この問題を議論するに先立ち、まず、具体的な目黒区の事例について考える。

(2)目黒区の「道路上の違反建築物」の社会的問題
目黒区にあって、昭和25年(1950年)建築基準法施行時点で、同法第42条第2項により、特定行政庁が包括的に位置指定を行った所謂「2項道路」が、現在においても「幅員4メートルの道路を実現せず、実質2メートル強の幅員しかない部分があって、現実にその部分、つまり、道路部分に建築基準法第44条に違反して、建物が突き出して建築されている敷地に、対面する敷地で、そこで建築工事を行うことは交通上、困難であるとされた。
当然、この「2項道路」自体は、車が行き違うことができず、防災上、安全上著しく危険である。東京大地震の発生が危惧されている現在、過密都市東京目黒区にとって猶予できない問題を内在させていることには、全く疑問をさしはさむ余地はない。
その上、近年高齢化が進んでいて、介護者の増加に伴う道路横断の危険性の拡大、高齢者の車椅子の使用頻度の増大や、扶助杖を利用した通行も増え、狭い道路での共存は、危険が増大している。救命救急車の利用事例も増えており、宅配便などの増大による路上駐車の常習化によって、都市交通の妨害が生まれ、交通の渋滞と言う問題も無視できなくなっている。4メートルの幅員が確保されていれば、何とか道路の効用を果たすことができても、2メートル強では、道路自体が頻繁に麻痺することになる。

(3)違反建築物形成の実態
この現状を分析すると、現在この「2項道路」に面して建てられた建築物のすべてが、昭和25年の特定行政庁による道路位置指定以降に、新たに建築されたり、建て替えられた建築物である。これらの建築物が建築基準法どおり建築されていたならば、現在、この道路は、幅員4メートルになっていたはずである。
「2項道路」上に現在建っているこれらの建築物は、間違いなく、特定行政庁が道路位置指定した以後、道路内に建てられた建築物である。このような建築物が存在できた理由としては、次のような可能性が考えられる。
① 建築基準法をはじめから無視して、確認申請の手続きをせず、違反建築物を建築し、または増築し、特定行政庁は、違反建築を容認して建築をさせ、その後、特定行政庁が違反建築物を現在まで放置していた。
②    建築基準法の手続きにおいて、申請者が確認申請書に4メートルの道があるかのような虚偽の図面を添付して「適法」の内容とし、建築主事が、それを容認して確認済証を交付し、竣工後、工事検査済証を交付し、特定行政庁が放置してきた。
③    建築基準法に違反した、4メートル未満の道路内に建築物が建つことが明らかな確認申請に対して、建築主事が確認済証の交付をし、竣工後、工事検査済証を交付し、その後、特定行政庁は違反建築物を放置してきた。
④    建築物としては適法建築物として建築されていたものが、その後、建築基準法上建築確認申請の手続きを要しない工事、または、建築主が建築確認申請の手続きを要する工事であったにもかかわらず、それを知らずに行った建築工事によって、結果的に違反建築が形成された。

2 建築行政による裁量のできる不作為
(1)申請をしなかった建築工事の取り扱い

確かに、建築基準法第9条において定められている条文は、特定行政庁により、「違反是正することができる」という裁量規定となっている。しかし、違反建築物となった原因として、上記①及び④は、建築主事は知りえなかったかもしれないが、特定行政庁は知るべき立場にあり、それを放置してきた事実は、建築基準法第9条に定められた特定行政庁としてなすべき行為をしなかったことになる。

建築基準法第9条(違反建築物に対する措置)-条文の全文は巻末資料ⅷ-
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

また②および③にあっては、建築基準法第6条により、建築主事がなすべき処分、つまり、「確認することができない旨の通知」をするべきであった、その通知をしなかったことは「法律に違反した不作為」であり、ましてや確認済証の交付をしたということは、建築行政上の「法律に違反した処分」であることにまったく疑問をさしはさむ余地はない。

建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)-条文の全文は巻末資料ⅸ-
3  建築主事は、第1項の申請書が提出された場合において、その計画が次の各号のいずれかに該当するときは、当該申請書を受理することができない。
一  建築士法第3条第1項 、第3条の2第1項、第3条の3第1項、第20条の2第1項若しくは第20条の3第1項の規定又は同法第3条の2第3項 の規定に基づく条例の規定に違反するとき。
二  構造設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第20条の2第1項 の建築物の構造設計を行つた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によるものでないとき。
三  設備設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第20条の3第1項の建築物の設備設計を行つた場合において、当該建築物が設備関係規定に適合することを設備設計一級建築士が確認した設備設計によるものでないとき。
13  建築主事は、第4項の場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないことを認めたとき、又は申請書の記載によつては建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定により第4項の期間を延長した場合にあつては、当該延長後の期間)内に当該申請者に交付しなければならない。
(1行あける)
建築基準法上に定められた確認申請をすべきと定められた規定に違反して、確認申請をせず違反建築物を建築した行為についての目黒区の「申請をしていないので、それに対する確認済証の交付、または、検査済証の交付ができないと旨の通知が出されていないことは、行政不服審査法上の不作為に当たらない」とする主張は、法律の構成及び文理に照らして、次の理由から正当ではない。

ⅰ 行政が「不作為に当たらない」と言うことの間違い
例えば建築確認申請をしないで建築した建築物を、その完成後、保存登記をする必要があったために、建築主事に対して、建築基準法第7条による工事検査済証の交付を求めたとする。もし、その建築物が実体規定に関し建築基準関係法に適合していた建築物の場合、建築主事はこの建築物に対して、工事検査済証の交付を拒否できるか。このような問題に対する法律上の正しい取扱いは、次の通りである。
この建築物は、確認申請という手続き違反をしたことで、建築主は特定行政庁から「手続き違反の処分」を受けることになる。しかし、建築物自体には実体として違反部分がない限り、特定行政庁はその建築物に対し違反の是正を義務づける根拠はない。よって、建築主事は建築主の要求に応えて、工事の完了検査を行い、それが適法であれば、検査済証の交付を行わなければならない。
しかし、一部の建築主事は、第7条の検査済証の規定は、第6条により確認申請を行った建築物に対する規定であると言って、検査済証を受けるためには、その段階で、確認申請書の提出を求め、それに対する確認済証を出してからでないと完了検査は行えないと言い、現実に工事が完成しているのに確認申請書を提出させている事例が少なからずある。実は、この建築主事のやっていること自体が法律違反なのである。その理由は、以下の通りである。

ⅱ 建築基準法の法律の構成
建築基準法は、その手続きの規定として、確認申請手続きをしなかった場合の規定を置いていない。法律上やるべき手続きに違反があったから、それ以降の手続きの全ては無効とするように、法律は構成されていないし、そのようにする必要もない。
確認申請をしなかったことは、単にその事務をしなかったというだけであって、確認申請をしなくても現に建築物を建てることができるから、確認申請事務の行政事務が法令上不要になったわけではない。しかし、やろうとしても時間を戻して、確認申請をすることもできない。
建築基準法の条文は、全て適法な手続きがなされたという前提で組み立てられている。そのため、途中で手続き違反があった場合には、その条文以降の規定の適用に当たっては、それまでの手続きは適法に行われたという前提で法文を適用することになる。
つまり、建築物が完成してしまっているのに、その段階で確認申請を提出させる事務は、建築物は完成しているのであるから、全く確認申請事務の目的に適っていない法律に違反した要求にしか過ぎない。「覆水盆に返らず」である。
確認申請は、建築しようと計画した段階で、その計画が建築基準関係法令に適合していることの確認に過ぎず、建築物が完成しているのに、建築計画の確認申請を求めることは、全く行政上の意味を持たない蛇足である。
建築基準法の施行という法律の流れにおいては、法律で定められた規定は、全て適正になされているという前提で、なされていない法律上の違反については、違反として処分しなければならいという構成である。
それでは、確認申請がなされないで、建築主事が建築されることを知りえなかった結果、確認申請を出させることができず、確認済証の交付もできなかったという場合に、それを行政不服審査法上の不作為であるとすることができるか、という疑問に対しては、以下の理由により、然りと考えるべきである。
建築主事制度は、市街地建築物法時代の警察による建築許可が警察権を濫用した行政であったという反省の下に、現行憲法の下では取り締まり行政と不可分な許可制度を廃止して、建築技術の専門職である建築主事による建築基準規定との照合確認に改め、行政権が建築工事の許可に介入しないことにした。そのため、建築主事からの確認済証の交付がされたならば、建築行政上の許可なしで、建築工事をしてもよいという構成にされた。建築行政の施行主体である特定行政庁は、実際に建設される工事や、すでに建築された建築物を、建築基準法に適合していることを監視監督するという構成が法律上作られた。
特定行政庁は、その管轄区域を常時監督して、建築基準法第8条を根拠に第12条(巻末資料ⅹ)の定期調査を併用して違反建築物が造られないようにするべきこととなっている。

建築基準法第8条(維持保全)   
建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
2  第12条第1項に規定する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。この場合において、国土交通大臣は、当該準則又は計画の作成に関し必要な指針を定めることができる。

特定行政庁は、手続き違反をして建築している場合には、それを第9条に基づき阻止することができるようになっていて、無確認建築物に対しては、建築工事を中止させ、それまでの工事の法令適合検査をするとともに、それ以降の工事計画について、建築確認申請を行わせることになっている。
このように特定行政庁の行政管内のパトロールを前提に、建築主事は建築確認業務が法律上必要とされている全ての建築物に対して、法令との確認及び検査を行えるようになっている。つまり、特定行政庁がその管内の建築物全体の監視監督を行うことにより、最終的に建築基準法施行責任を果たすことになっている。
上述した違反建築物が造られる4つの全てにおいて、違反建築物が形成された事実を特定行政庁が行政責任を自覚せず、放置してきたことに全ての原因がある。

(2)違反建築物は行政の不作為
以上説明してきたとおり、全てに確認申請を受けるべき建築物は、それらが適法として確認済証を交付されたか、不適合として確認できない旨の通知を受けたか、確認手続きをしなかったか、に拘わらず、建築基準法上の確認事務の手続きは適用されるものであり、建築基準法の施行主体である特定行政庁は、建築主事の確認事務が的確に行われるように管内の監視を行う義務があり、手続き違反が発生していることは、建築主による確認申請事務が行われなかっただけで、建築行政としてなすべきその事務が法律上不要になったわけではない。
違反建築物が現存する理由は、法律上なされるべき確認申請に対して、「確認できない旨の通知をしなかった」という「不作為」により発生しているわけであるから、行政不服審査法上の「不作為」そのものに該当することになる。改めて説明し直せば次の通りである。
特定行政庁は法律上建築主のなすべき確認申請の手続きを行わせず、その結果「確認できない旨の通知」をすべき法律上の事務を建築主事が行わなかった結果、違反建築物が発生したのである。
法律上の手続き条文は、前後に関連しあっているが、それぞれの事務ごとに適用されるものであり、前置されている事務をしなければそれ以降の事務がすべて無効になるものではない。既に手続きとしては経過していて、戻ることのできない事務を、時間を遡ってやるようにという不可能なことを要求したり、無意味な辻褄合わせを、「事後の確認申請」や「申請書の内容の差し替え」によって行うようなことを要求しているわけでもない。
本件のような場合には、確認申請がなされなかった手続き違反があっただけで、それ以降の事務を行わせるべき法律構成になっている。それは、建築確認申請をさせることができるならば、やらせなければならないが、法律で期待した確認事務をさせることができないときには、その事務は、単に、やらせられないといっているだけである。そして、手続き違反に対してはそれに対応する行政処分が建築基準法第9条で決められている。
この不作為は、直接的には建築主事の不作為であるが、建築主事は建築基準法施行主体である特定行政庁のもとでその事務を行っていることから、その行政管轄区域の違反建築を知る立場にある特定行政庁にもその不作為に対して連帯責任がある。
建築基準法により確認自体が適切に行われていたら、道路上の建築物は建築できなかったのであるから、確認できない旨の通知(処分)をしなかった不作為により不利益を受ける者は、その私道の沿道の居住者だけではなく、目黒区の道路体系全体に関係することから、目黒区住民に原告適格があるとされるべきである。

3 放置することができない違反
(1)道路上の建築物

「2項道路」は、特定行政庁が道路の位置指定をした時点では、現実に幅員4メートル未満の道路である。しかし、都市計画法上、都市として整備すべき都市施設としての道路のうち、建築物の敷地が接道すべき道路は、幅員4メートル以上とすべきことが、都市計画法及び建築基準法が一体的に定めていることである。建築基準法第3章は、都市計画区域に適用される強制法規で、その強制力の法的根拠は、都市計画決定という計画公権によるものである。
つまり、都市計画区域という都市計画決定をすることによって、その区域内のすべての敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に接道するべきことが定められている。(建築基準法第41条の2、第42条)

建築基準法第41条の2
この章(第八節を除く。)の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する。
建築基準法第42条  
この章の規定において「道路」とは、次の各号の一に該当する幅員4メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、6メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

都市計画区域では、都市の交通ネットワークを構成する都市施設としての道路は、原則として、幅員4メートル以上であることを定めている。建築基準法上、都市のネットワークを構成する道路は、建築基準法第42条の道路と規定していて、その中には道路法の道路や、都市計画決定した道路と同列に特定行政庁による指定道路がある。そこには、私道であるか、公道であるかの法律上の分け隔てはない。
「2項道路」は、土地利用の既得権を尊重して、既存建築物に対しては実体規定に違反しているが「既存不適格建築物」として適法建築物の扱いをしているが、それらの建築物が「道路上の建築物」であり、違反建築物であるという事実を否定するものではない。

(2)公共性の実現方法
法律上は、既存不適格建築物に対して、何らかの建築工事をしようとするときまで違反状態を猶予する、としているものである。しかし、既存不適格建築物であっても、その違反の程度が猶予できないほどの危険性が認められるときには、建築基準法第11条により特定行政庁は、不適格部分の是正を命ずることができる。この強制権の根拠は、計画公権を背景とした都市計画区域としての都市計画決定にある。しかし、その強制権を行使する場合には、違反部分の是正に伴う損失は、市町村が負担せよという規定になっている。なぜならば、都市計画決定による恒久性実現による利益を享受するのは、都市計画の最小単位である市町村住民であるので市町村が負担して、補償するべきとされている。
このように都市施設として計画公権の裏付けをもって造られ、管理されるべき道路上に、建築物を建築することは建築基準法第44条で禁止されている。

建築基準法第44条(道路内の建築制限)
建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない。

法律上「道路」と「みなされている土地」であるにもかかわらず、建築主が所有権を根拠に、その私的な利益を主張したのが違反建築物出現の理由である。
都市計画法及び建築基準法は、都市計画決定された都市空間の公共性のある利用内容を行政として担保する義務があり、「2項道路」上の建築は違反建築物であることから禁止されなければならない。違反建築は、私権の主張が公共の利益を破壊するときに生まれるもので、公共の利益を守るべき特定行政庁による容認、黙認がない限り起こりえない。
法治国の基本は、行政による行政法の厳正な施行によって担保されている。特定行政庁が建築基準法や都市計画法を破ることに手を貸せば、都市環境の法秩序は破壊されてしまう。特定行政庁は、違反建築物を取り締まるべき立場にあり、違反を知っていて違反を容認したということは、違反の幇助をしたという罪を犯したことにもなる。

4 違反建築物の容認
(1)裁量の限界

東京都目黒区は、違反建築物是正は行政の裁量であると言っているが、目黒区は特定行政庁であって、行政という文字通り法律に基づき決定された政治を実行する、建築基準法の施行者の立場にある。その施行主体に法律違反を容認する裁量は基本的に与えられていない。違反建築物は原則的に是正され、違反者は罰則を加えられなければならないが、例外的に法治国の行政にあって、可罰性のない違反という概念がある。それは、次の二つの要件を満足するもので、かつ、特定行政庁がその形成を知りうることができなかったという条件がなければならない。
① 違反という事実は認められるが、その違反を犯すに当たって、建築主等に、違反を犯しているという意図がないこと、または、違反自体による社会的な問題はないと判断して犯した違反。
② 違反建築自体が公共に与える不利益が極めて小さくて、違反建築でなくても類似の問題が認められる建築物の違反。
可罰性の判断は、社会的な不利益という観点でなされるべきもので、①は法治国の法令遵守のモラルという観点で判断されるべきであるのに対して、②は実際上の損失及び、実質上の「法の下の平等」という憲法上の規定から検討されるべき問題である。
この中には違反建築が当然のように横行しているから、違反建築物を取り締まれないというような言い訳は入れられない。当然、このような違反対策は、恣意的にやってよいわけではなく、最終的に違反建築をなくするという全体計画を立てて、そのスケジュールの中で遅い早いはあっても法の下の平等に配慮しながら違反是正するべきである。

(2)緊急を要する対応
目黒区のような都市施設として道路網の一部を構成する道路で、現に幅員4メートルの道路上に違反建築物が突き出しているため、幅員2メートル強しかない道路にあっては、それが既存不適格建築物であった場合でも、強制権を行使して幅員4メートルを実現すべき必要が認められるもので、まさに、緊急性が求められている。
このような事例が、仮に多数あるとした場合には、行政の許す能力の範囲で住民の要求も考慮して必要度の高いものから取り組むべきである。そこには違反建築物の是正を躊躇しなければならない正当な理由は存在しない。
少なくとも、目黒区のような過密状態で市街地が形成されている地区にあっては、ネットワークとして構成されている道路交通は、一つの道路の渋滞が道路全体に混乱をもたらすことになることから、交通渋滞の影響は目黒区全体に波及する危険性が高いものである。東京大地震の再来が危惧されている現在、道路整備は防災避難上緊急を要する取り組みであり、放置してよい理由は存在しない。

5 指定確認検査機関が行なった違反確認処分に対する特定行政庁の不作為
(1)頻発している違反確認済証の交付

指定確認検査機関が、集客のための不適正な営業行為として、脱法を容認する確認が営業の手段となり、耐震偽装事件をはじめとして、接道条件の違反、容積率違反、高さの違反、階数の違反、確認条件の違反など、指定確認検査機関の法律の解釈を口実とした違反建築物容認が頻発している。
確認処分自体は建築基準法に基づき、特定行政庁による建築基準法の施行責任の下で指定確認検査機関に行政事務を行わせるという法律構成をとっているため、指定確認検査機関の行った確認及び検査結果は特定行政庁に報告させ、そして指定確認検査機関の行った確認及び検査処分が適法なものであったことを確認し、誤りが認められたときは、その処分を無効にしなければならないことが定められている。(建築基準法第6条の2第11項、第7条の2第7項)

建築基準法第6条の2
前条第1項各号に掲げる建築物の計画(前条第3項各号のいずれかに該当するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第77条の18から第77条の21までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
11  特定行政庁は、前項の規定による確認審査報告書の提出を受けた場合において、第1項の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した同項の規定による指定を受けた者にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該確認済証は、その効力を失う。
12  前項の場合において、特定行政庁は、必要に応じ、第9条第1項又は第10項の命令その他の措置を講ずるものとする。

建築基準法第7条の2(国土交通大臣等の指定を受けた者による完了検査)
第77条の18から第77条の21までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者が、第6条第1項の規定による工事の完了の日から4日が経過する日までに、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかの検査を引き受けた場合において、当該検査の引受けに係る工事が完了したときについては、前条第1項から第3項までの規定は、適用しない。
6  第1項の規定による指定を受けた者は、同項の検査をしたときは、国土交通省令で定める期間内に、国土交通省令で定めるところにより、完了検査報告書を作成し、同項の検査をした建築物及びその敷地に関する国土交通省令で定める書類を添えて、これを特定行政庁に提出しなければならない。

7  特定行政庁は、前項の規定による完了検査報告書の提出を受けた場合において、第1項の検査をした建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、遅滞なく、第9条第1項又は第7項の規定による命令その他必要な措置を講ずるものとする。

指定確認検査機関と特定行政庁との関係は、行政の内部関係であって、確認申請者または確認処分による利害関係者との間では、申請行為では直接結ばれていない。しかし、行政事務としては、確認申請という申請事務に対して、確認処分をするか、それとも確認することができないとするかの建築行政上の判断をするものであるから、その処分または不作為が、申請者または利害関係者に直接影響を与えることになる。
通常、確認処分を直接行う指定確認検査機関の処分または不作為が不服審査請求の対象になる。しかし、特定行政庁が法律に違反した確認または検査を行うような指示を指定確認検査機関にしていると判断される場合には、その処分または不作為は、特定行政庁の指示に従ったということで適正であるという扱いをされることになる。
このような場合には、特定行政庁が確認処分を無効にしなかったことを行政不服審査法で定める不作為として特定行政庁を相手に不服審査請求することが適当である。東京都は指定確認検査機関による確認処分の特定行政庁への報告は、指定確認機関からの申請に基づくものでないから、行政不服審査法にいう不作為に当たらないという主張をしてきた。
しかし、指定確認検査機関と特定行政庁との関係は、まさに行政の内部関係である。確認制度にあっては、建築主の申請に対して建築行政として行うべき処分または不作為が二重構造になっているだけで、その行政の内部構造を理由にして不作為に当たらないという理屈は、処分または不作為を問題にすることを定めた建築基準法第94条ならびに、第6条の2及び第7条の2の文理及び条文の趣旨に照らしてありえないことである。
よって、建築基準法の確認処分または不作為に対して、不服がある場合には、特定行政庁または指定確認検査機関のいずれをも相手にして行うことができると解すべきである。

(2)特定行政庁の指定確認機関に対する責任
違反建築物が社会的に存在できる理由は、特定行政庁が違反建築物の存在を容認しているためである。建築基準法では、建築物を建築、増築、改築、大規模な修繕、大規模な模様替え、用途変更などをした場合には、確認の手続きを取ることを義務付けている。その確認の中には、第6条で定める「計画確認」と、第7条で定める「工事確認(検査確認)」とがある。

第6条「計画確認」(前出)
第7条「工事確認(検査確認)」(建築物に関する完了検査)
建築主は、第6条第1項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
2  前項の規定による申請は、第6条第1項の規定による工事が完了した日から4日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3  前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から4日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
4  建築主事が第1項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から7日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。
5  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。

このいずれについても、当該建築物の計画又は建築工事自体が、建築基準関係規定に適合しないときには「適合しない旨の通知を出すこと」になっている。この不適合通知を交付すべきであるにも拘らず、それを交付せず、逆に確認済証や、検査済証を交付した結果、違反建築物が社会的に存在することになったわけである。
違反建築物は、それが存在する限り、社会に対して不利益を与えており、それを排除しなければならない。建築基準法第9条は、違反建築の是正措置を特定行政庁がやるべき法的根拠をはっきりさせたものである。
しかし、特定行政庁の違反建築物の是正義務が、本来的には特定行政庁の建築主事の不作為を特定行政庁が放置してきたことに原因がある場合、この不作為により不利益を受ける関係権利者は、建築主事の不作為及び特定行政庁の業務不履行に対する不服審査請求は、建築基準法第94条で定めるそのものである。
指定確認検査機関による確認処分(第6条の2による確認済証の交付、及び第7条の2による完了工事検査済証の交付)において、それを建築基準関係規定に違反して行われた場合には、特定行政庁がそれを取り消すべきことを定めている。(建築基準法第6条の2第11項、
第7条の2第7項)この民間建築主事制度は、一般的に行政事務の簡素化、合理化を図るために作られた制度で、既存の確認制度に屋上屋を重ねる制度ではない。
そのため、指定確認検査機関からの特定行政庁への報告は、確認審査内容のすべてを報告するものではなく、指定確認検査機関が行った処分の概要を報告するものになっている。そのため、その報告のみで指定確認検査機関の行った審査の適否を判断できるとは考えられない。当然、特定行政庁は、報告を受けた確認結果を再検査するべき義務を課せられたものでないことは建築基準法の立法趣旨と条文の構成から明らかである。
しかし、それは、特定行政庁が確認処分の最終的な行政責任を負わなくてもよいといっているわけではなく、指定確認検査機関による確認検査は、基本的に間違いなく行われるという大前提の下に、例外的に発生する間違いを如何に排除、是正するかという構成になっている。
つまり、指定確認検査機関で行った処分に対して、関係権利者がそれを問題にし、法律上は、第94条による不服審査請求をする道が残されているが、それに先立って、指定確認検査機関の行った処分に疑義がさしはさまれたものについては、特定行政庁は指定確認検査機関から提出された確認済又は検査済の報告書を確かめて、それに限って再確認することを期待して設けられた規定である。
特定行政庁は関係権利者からの通報などで指定確認検査機関の処分に疑義がある場合、それらの機関から提出された報告書により住民等関係権利者の訴えとしての指定確認検査機関が処分を行った事実を報告書の提出で、確認することができる。
しかし、現実は、指定確認検査機関の行った処分を再検討するのではなく、それを正当化することに汲々として、法律で期待された再確認の事務が行われていない。そのため本来法律が期待した特定行政庁がなすべき確認の取消しを行っていないという「不作為」が、第94条を根拠として争われることになる。

(3)隣接地の権利者にも行政庁の不作為に対して建築基準法第94条による不服審査請求ができる
建築基準法は、建築物が土地に定着してその効用を果たすことから、その社会科学的性格は、土地と建築物とは、不可分一体の関係にある。日本以外の世界の工業先進国では、例外なく、土地と建築物とは一体の不動産として扱われている。建築基準法第2章規定の場合には、その単体的な影響は相隣の建築物に及ぶと考えられるが、第3章の規定に関しては、都市計画区域全体にその利害は及ぶと建築基準法第11条で定めている。

建築基準法第11条(第3章の規定に適合しない建築物に対する措置)
特定行政庁は、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途(いずれも第3条第2項(第86条の9第1項において準用する場合を含む。)の規定により第3章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が公益上著しく支障があると認める場合においては、当該建築物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限り、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、修繕、模様替、使用禁止又は使用制限を命ずることができる。この場合においては、当該建築物の所在地の市町村は、当該命令に基づく措置によつて通常生ずべき損害を時価によつて補償しなければならない。
2  前項の規定によつて補償を受けることができる者は、その補償金額に不服がある場合においては、政令の定める手続によつて、その決定の通知を受けた日から一月以内に土地収用法 (昭和26年法律第219号)第94条第2項 の規定による収用委員会の裁決を求めることができる。

行政不服審査法で不作為に対して不服審査請求できる者は、その申請を行った者に限られると定めているが(行政不服審査法第7条)、この規定は、通常の場合申請者以外は利害の直接的関係はないからである。しかし、不動産の場合には、不動産は土地に定着しているため、建築行為の影響を避けることはできない。そのため不動産の特殊性にかんがみ、第94条では、利害関係者であれば、不作為に対して不服審査請求ができると規定された。

行政不服審査法第7条(不作為についての不服申立て)
行政庁の不作為については、当該不作為に係る処分その他の行為を申請した者は、異議申立て又は当該不作為庁の直近上級行政庁に対する審査請求のいずれかをすることができる。ただし、不作為庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときは、異議申立てのみをすることができる。
建築基準法第94条(不服申立て)  
建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第3条第2項 に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあつては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第6条第1項(第87条第1項、第87条の2又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる。

(4)都市計画決定に基づく都市空間の公共性
そこで、各建築物の都市空間における受忍すべき限度は、都市計画決定された都市空間の公共性と判断される社会的コンセンセンサスを都市計画法によってオーソライズされた「計画公権」の範囲であるとされる。そのため、確認処分または不作為により利害関係を受ける者は都市計画区域全体に及ぶため、建築基準法第94条では、行政不服審査法の特別法として、その利害関係者に不服申請をすることができるという権利を認めているのである。
行政不服審査法第7条では、「行政庁の不作為については、当該不作為に係る処分その他の行為を申請した者は、異議申立て又は当該不作為庁の直近上級行政庁に対する審査請求のいずれかをすることができる」と申請者主義を採っている。これは、申請者以外者は利害関係者ではないとする考え方に立っているためである。
しかし、建築基準法第94条は申請者以外であっても利害関係者は審査請求ができることを定めている。
その具体的事例として、新住宅市街地開発法による多摩ニュータウンにおける確認無効訴訟で、判決自体は法律違反を容認した不当なものであるが、以下のとおり、申請者以外に不作為の原告適格を認めている。
事案は、東京都が新住宅市街地開発法で造られた都有地で、緑地(帯状の緑地の幅4―6メートル)内に設けられた路面の幅員3メートルの歩道に接する多摩ニュータウン内の宅地を、建築基準法第42条第1項第二号による都市計画法で造られた道路として販売した。東京都のこの説明はそれ自体、宅地建物取引業法における「重要事項説明」の虚偽記述という違反行為に当たるものである。東京都が幅員3メートルの歩道を建築基準法上の道路であると扱った結果、歩道を挟んだ反対側にある宅地の建築物が、道路斜線制限と耐火建築物の延焼線の規定に抵触することになった。そこで、幅員3メートルの歩道を建築基準法第42条の道路とした確認処分は違法であるとして、道路を挟んだ反対側の敷地の所有者が不服申請を行った。
この不服申請は、申請者以外の者が利害関係者であるから行うことができた建築基準法第94条による不服審査請求である。この審査請求に対して、東京都建築審査会は、「請求人の訴えは、請求した建築物の建築に影響を与えるものではないので意味がない」として却下した。
東京都建築審査会の裁決は、審査請求人の請求内容をそらした裁決である。

(5)支離滅裂の再審査裁決
それに対して、再審査請求がなされ、国土交通大臣は、不服審査法第7条を根拠に、建築基準法第94条の規定を否定する採決をした。つまり、不作為に対して申請人でない者は訴えることができない、とする行政不服審査法(一般法)の扱いが説明され、建築基準法第94条で国民に付与されている不動産に適用されるべき特別法で定めた国民の権利を否定した。再審査請求で国土交通大臣の行った裁決は、東京都の行った処分、その処分に対し行われた審査請求、及び、建築審査会が行った裁決のいずれにも触れず、まったく別の理由を持ち出して、却下の裁決をした。しかもその裁決は、建築基準法第94条に違反して、不動産に対する行政の不作為によって発生した不利益に対して法律で認めた不服審査請求権を、建築基準法の所管大臣が否定したのである。
これに対して行政事件訴訟法で争われた裁判の判決は、法律上の根拠を明確にすることはせず、歩道の事実認定を全く避けて、争われなければならない道路自体が、建築基準法上の道路でないことを調べようともしなかった。その挙句、処分庁である東京都知事の主張どおり、歩道の路側にある緑地を道路幅員に採り入れた行政の判断を根拠も示さずに不当ではないとして、訴えを棄却とした。しかし司法は、建築基準法第94条の不作為に対する不服審査請求権(原告適格)を否定することはできなかった。
建築物は土地に定着して効用を発揮する不動産で、隣接建築物がこの例のように法律違反の建築確認により被害を受けることになった場合でも、隣接建築物は移動して避難することができないことから、隣接地の権利者にも行政庁の不作為に対して建築基準法第94条による不服審査請求ができることを定めているのである。


第5章 都市計画法による開発許可権者

1 地方自治法と都市計画法の関係について
都市計画法第29条は、開発許可権者は都道府県知事の許可を受けなければならない、と定めているが、都道府県知事に準じる権限を有する指定都市、中核市、又は特例市(以下「指定都市)という。)の長に対しては地方自治法の規定によって、都道府県知事の開発許可に関
する権限の行使をやることができると定めている。その理由は、都市計画法に基づく計画公権の大きさ及びその重さは、それを行使するにふさわしい行政能力の裏づけのある機関に担わせなければならないという考え方である。この都市計画法第29条の規定は、個々に限定列挙された都道府県知事及び指定都市の弔意外には開発許可の権限を行使させることはできないと規定しているものである。
現在東京都では、実質上この条文に違反して特別区長及び建築指導事務所長に対して、東京都条例にも根拠を置かないで、都市計画法上の開発許可権者という法律上の権限をその職名(東京都知事)と職権上の公印(東京都知事の印)を使って、処分を行っている。法律上の根拠を置かない者の職名(特別区長や建築指導事務所長)及び職権上の公印(特別区長の印、又は建築指導事務所庁の印)による処分は無効とされなければならないにも拘らず、その処分を不服としてなされた都市計画法第50条に基づく不服審査請求は、悉く却下されてきた。

都市計画法第29条(開発行為の許可)
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市、同法第252条の22第1項 の中核市又は同法第252条の26の3第1項 の特例市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。

この都市計画法によって道府県知事等に付与された権限を、都市計画法に根拠を置かない手段によって、知事等以外の者に移すことはできない。平成11年東京都条例106号は、地方自治法第252条の17の2を根拠に制定されているが、次の5つの点で法律に違反し、または法律に規定していない間違った使われ方をしている。

平成11年東京都条例106号(特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例)
(趣旨)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2第1項の規定に基づき、知事の権限に属する事務の一部を特別区が処理することとすることに関し必要な事項を定めるものとする。
(特別区が処理する事務の範囲等)
第2条 次の表の上欄に掲げる事務は、それぞれ同表の下欄に掲げる特別区が処理することとする。
七 都市計画法(昭和43年法律第100号。以下この項において「法」という。)に基づく事務のうち、次に掲げるもの
上欄    下欄
(1) 法第29条第1項及び第2項の規定による開発行為の許可 各特別区

地方自治法第252条の17の2
都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。

ⅰ 東京都条例の根拠と地方自治法
条文上明らかなとおり地方自治法第252条の17の2は市町村を対象にするものであって、特別区を対象にするものではない。従って、東京都条例106号によって特別区に事務の一部の処理を移譲したとしても、地方自治法上、特別区に対し東京都知事の行う事務の移譲は行えない。

ⅱ 地方自治法で可能な規定

地方自治法は、他の行政法の上位にある法律ではない。地方自治法によって、都市計画法で定められた権限の行使を変更することはできないし、法文上も定めはない。一般論としても全く別の法律体系の権限を、他の法律によって変更することは、法律の構成上も、国家行政組織法上もありえない。地方自治法でも、都市計画法でも、東京都知事の権限を特別区長や、ましてや建築指導事務所長に委譲できるとはどこにも書かれていない。地方自治法第252条の17の2は単に、「知事の権限に属する事務の一部を、市町村が処理することとすることができる」と規定しているだけである。
地方自治法281条は「特別区は市が処理することとされるものを処理する」として、地域における事務について特別区は市と同格であることを規定しており、特別区が市町村の規定を読み替えて市長村同様の事務を実施できる根拠は第283条におかれている。
地方自治法では市町村または特別区という地方自治体に対して、委譲しているのは、事務の一部であるから、市町村と特別区という団体に対する事務の委譲と定めていて、自治体の権力者である首長に対して権限を委譲するとは規定していない。地方自治法によって、都市計画法等地方自治法以外の行政法で規定されている権限を、それらの関係法律の根拠を持たないで、勝手に、都市計画法等の行政法で決められた行政権限を、法律で決められていない行政権者に移譲することはできない。都市計画法第29条では地方自治法によって権限を行使できるようにした指定都市の長に関しては、都市計画法上明文が設けられているから実施できるだけで、そこに明文のおかれていない特別区長に権限委譲などできるわけはない。

地方自治法第281条  
都の区は、これを特別区という。
2 特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務並びにその他の事務で法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされるもの及び法律又はこれに基づく政令により特別区が処理することとされるものを処理する。
3 第二条第四項の規定は、特別区について準用する。
地方自治法第283条(市に関する規定の適用)
この法律又は政令で特別の定めをするものを除くほか、第2編及び第4編中、市に関する規定は、特別区にこれを適用する。
2 他の法令の市に関する規定中法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされている事務で、第281条第2項に規定により、特別区が処理することとされているものに関するものは、特別区にこれを適用する。
3 前項の場合において都と特別区又は特別区相互の調整上他の法令の市に関する規定をそのまま特別区に適用しがたいときは、政令で特別の定めをすることができる。

ⅲ 「権限の委譲」と「事務の一部の委譲」
地方自治法のこの規定は、一種の事務処理上の専決規定であって、「東京都知事が、その行使する開発許可権限について、都知事の監督下において、都知事が定めた対象の行政事務を都知事の定めた方法で、その事務を執行したものについては、都知事の監督下において、都知事の署名、捺印を行って都知事の権限を行使することができる」と解するべきである。
それは、市町村長や、特別区長や、建築指導事務所長が、都市計画法に定める「都知事でないとしてはならない権限」の行使に当たって、自らの職名に都知事の名前を冠してよいといっているわけでもなければ、市町村長や特別区長や建築指導事務所長が、その名前とその公印を使って、「都知事でなければしてはならないと都市計画法で定めた権限」を行使してよい、といっているわけでもない。
一般的に、行政処分は法律に基づいて、大臣、都道府県知事、市町村長、特別区長などの権限の行使がされるが、その事務処理においては、全て、法令で定められた権限を持った者の名前と、その公印を使って行われる。しかし、その事務は、技術的または事務的な裁量や、判断の難易により、組織規程でその手続きや、専決処分の仕方が詳細に決められている。そこで決められた事務処理を経たものに対しては、法令で定められた権限を有する者の名前と公印を使うことが制度上できることになっている。この例と同じことを地方自治法で定めているだけのことである。

ⅳ 都市計画法で定める権限行使の責任負担能力
地方自治法による事務の一部を移譲する場合、許認可処分に対して、全ての責任は法律で決められた権限を有する者に帰することになる。例えば、特別区長が開発許可権限を行使した事件の場合、都市計画法第29条の開発許可の権限を有する者は東京都知事で、その処分に対する都市計画法第50条に基づく不服審査請求は、東京都知事を相手に開発審査会に求めることになっている。この審査請求は、開発許可処分庁を相手に都市計画法に基づき行っている。
特別区長は、東京都知事の権限を法律に違反して、開発許可権を行使し、事実上、都市計画法上の東京都知事の開発許可権を実行し、その効力を発生せしめていることから、都市計画法上の東京都知事が行ったと同様の効力に着目して、開発許可の効力を発生せしめた処分庁である東京都知事を相手に、都市計画法第50条に基づき不服審査請求をしているところである。
法律の文理解釈どおりの採決をすることになれば、この不服審査請求の対象になる「処分庁」の特別区長は、「不服審査請求の当事者資格がない者」であるとして、この不服審査請求自体を無効であると開き直る主張も可能である。しかし、そのような裁決をすることは、自動的に特別区長の行なった開発許可処分は、同じ理由により、無効とされなければならない。特に、建築指導事務所長に至っては、東京都知事の部下として、その一部の事務を行っているだけの職員であって、都知事と対等の権限など法律上委譲できるはずはない。違法というより、法律体系を無視して、無茶苦茶をやっているとしか言いようがない。結論的にはこの開発許可処分自体が無効であることには変わりはない。

ⅴ 法律が定める行政不服審査請求の請求先
地方自治法に基づく行政不服審査請求であれば、特別区長の行なった処分に対する不服審査請求は、特別区長に開発許可権の行使を認めた東京都知事に対して行わなければならないことになる(行政不服審査法第5条)。

行政不服審査法第5条(処分についての審査請求)
行政庁の処分についての審査請求は、次の場合にすることができる。
一  処分庁に上級行政庁があるとき。ただし、処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときを除く。
二  前号に該当しない場合であつて、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に審査請求をすることができる旨の定めがあるとき。
2  前項の審査請求は、同項第一号の場合にあつては、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁の直近上級行政庁に、同項第二号の場合にあつては、当該法律又は条例に定める行政庁に対してするものとする。

一方、特別区長は都市計画法上の行政機関として開発許可処分を与える権限は全く有していないのである。そのため、その処分に対する責任を問うことは都市計画法上できない。
特別区長が東京都知事の事務をやれることは、「地方自治法の法域」での事務であって、「都市計画法の法域」での事務ではない。よって、都市計画法上の権限に対しては、法律上の権限を有する者は、常時、その権限の行使上、関係する事務が適正に行われていることを、組織的に監督し、遺漏のないように努めなければならないことに法律上もなっている。建築指導事務所長の場合にあっては、地方自治法上の根拠もなく、その都市計画法上の処分に対し全く責任能力を持たないため、不服審査請求自体行うことができない。

2 都市計画法上の権限と権限行使に付随する事務処理
(1)行政権限と責任能力

これまでの東京都の違法な事務処理に対する批判に対して、東京都及びその主張を支持する意見として、「権限と事務処理とは一体不可分である」との議論がある。この議論は法律的には、「権限」と「事務処理」と言う明らかに異質なものを混淆する極めて稚拙な誤りに立脚したものである。「権限」つまり、「権力」とは、基本的に国家権力を背景にして、強制的に実行するものであり、権力の行使には、それを実体的に権力で裏づけするために「事務処理」が随伴することは事実であるが、法的に誤った権力行使をして、それに事務処理を随伴させることは誤った行政でよく行われていることである。
しかし、法律上の権限を行使することができると定められている者は、その権限行使に伴う全責任を追及されることになる。一方、法律上で権限を付与されていない者がなした権限行使に対しては、権限行使に伴う責任能力がないため、その責任追及をすることは法律論として不可能である。
町田市など政令指定都市を除く、東京都23区及び多摩地域において、都市計画法の施行者として都知事にしか行使が認められていない開発許可権は、その行政責任能力を斟酌して、都市計画法によって都知事に限定しているものであって、地方自治法によって都市計画法で決めた権限を移譲することはできない。現行の地方自治法が、市町村または特別区に対して、「事務の一部を処理」と規定している理由は、そのような法律論を背景にするものであって、「権限移譲」には言及していないし、それができない当然の前提に立っている。

(2)権限の行使と公印と権限を行使できる者の名前
地方自治法で市町村及び特別区に対して事務を移譲している前提は、東京都知事の監督下に東京都知事の権限を、その名前と公印を使って実施することを規定しているだけである。市町村長や特別区長に都知事権限を委譲するという規定にはなっていないし、それは法律論として不可能なことである。
現在、東京都で特別区長や、多摩建築指導事務所長が「開発許可権者」と言う肩書きで、自らの名前とその職権の公印を使って開発許可権限を行使しているが、その法律上の根拠は無い。よって、特別区長及び建築指導事務所長の名前で行われた開発許可は、全て法律上、権限行使を法律上認められていないものの行った処分として、無効とされなければならない。

(3)法律を無視した行政処分に対する審査会の対応
然るに、現実に東京都で行われている事例の代表的なものは、目黒区長の行なった目黒区青葉台地区での処分である。建築基準法によって国土交通大臣が建築確認業務を実施する「指定確認検査機関」と指定された財団法人日本建築センター(理事長は歴代の国土交通省住宅局長経験者)は、建築基準法第6条の2に基づく確認済証を交付するに当たり、第6条で定められた建築基準関係規定として同法施行令第9条第十二号に定められた「都市計画法第29条第1項」との照合が義務づけられている確認審査にあたり、以下の対応をしたと陳述をした。建築審査会はその全てを法律的に適法とした。
同確認検査機関は、目黒区の開発審査事務担当者に口頭で(電話交信)で、「開発許可不要」という話を聞いて、確認申請書に、押印した日時や担当者の記述は無く、複製可能な所属も不明な「開発許可不要」とのゴム印を押し、一切の都市計画法上の開発審査をすり抜けさせ、都市計画法第33条に違反する内容の開発を容認して、以下に示す基本的な疑惑を全く審査しないで確認済証を交付した。
この開発地は、従前の地下2階の事務所ビルを取り壊した後、地盤は従前の建築物を取り壊した状態で、地盤自体を従前の地盤に回復させないで、あたかも従前どおりの地盤が存在しているかのような虚構の確認申請書を、現場照合という基本的な審査をせずに確認済証を交付した。東京都建築審査会は、不服審査請求として提起されたこの問題を、その全てを不問に付して、指定確認検査機関の確認を適法であると裁決した。

(4)法律上の手続きは全く無視されていても建築審査会は容認
この件は、目黒区の開発許可不要自体には処分性が無いので、都市計画法上の不服審査請求の対象にはできないとされ、問題は、もっぱら建築確認を行った日本建築センターの確認処分であるとされている。その東京都建築審査会の口頭審理に当たって、目黒区長(代理人)は、開発許可権者として出席し、審査会もその法的立場を承認して弁明の機会を与えた。そこで、目黒区長(代理人)は、開発許可不要という判断に間違いがないと弁明を繰り返した。そのうえで、日本建築センターの行なった確認済証の交付は、目黒区長の判断を斟酌して適法であると弁明したである。
東京都は、地方自治法に違反した都条例106号を根拠に、開発許可事務のみならず、開発許可権限を目黒区長に委譲して行使させており、開発許可不要という法律に規定されていない違法な解釈を日本建築センターに示した。確認事務処理に必要な建築基準関係規定として同法施行令第9条第十二号で定めた「都市計画法第29条第1項」に適合している判断は、日本建築センターにはできない。
この開発が第33条に定める開発許可の基準に適合していないことは、実体規定であるため、建築関係者であれば、容易に判断することはできる。日本建築センターは、その事実を知ることができる立場にありながら、第33条に適合していなくて「開発許可不要」とする目黒区の判断に従うのは、目黒区ともども開発業者の違反を容認しているということである。

(5)違反建築容認のための都市計画法と建築基準法の実際上の連携
目黒区長は、少なくとも都市計画法第29条、第33条を解釈する能力を有しないか、さもなければ、有していても都市計画法違反をやらせているかである。
目黒区長は、都市計画法上の処分をした訳ではないから不作為の責任追及はありえないと決め込んでいる。建築行政では、都市計画法で目黒区長のやった都市計画法上の判断と言う口実で、建築基準法関係規定として定められた都市計画法第29条第1項に適合していなくても、開発許可不要という目黒区の判断を根拠にして、確認済証が交付されたのである。
開発許可不要という扱いは、都市計画法第29条の開発許可制度に矛盾した、法律手続き上あり得ないものである。然るに、開発許可不要には処分性が無いという、法律論ともいえない無茶苦茶な見解が、東京都と東京都開発審査会が採っている。都市計画法と建築基準法という姉妹法の間に不正をもぐらせ、正当化しているのである。
東京都開発審査会は東京都の全ての処分や判断によって公共の利益に反する不利益が発生していることを知っていて、それに対する不服審査請求を却下するためだけの役割しか果たしていない。不服審査請求を却下するためには、審査請求の根拠として示された法律上の理由に対して、法律の根拠に基づかず却下することは明らかに、都市計画法第50条の規定を蹂躙するものである。

都市計画法第50条
第29条第1項若しくは第2項、第35条の2第1項、第41条第2項ただし書、第42条第1項ただし書若しくは第43条第1項の規定に基づく処分若しくはこれに係る不作為(行政不服審査法 (昭和37年法律第160号)第2条第2項 に規定する不作為をいう。)又はこれらの規定に違反した者に対する第81条第1項の規定に基づく監督処分に不服がある者は、開発審査会に対して審査請求をすることができる。
2  開発審査会は、前項の規定による審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から二月以内に、裁決をしなければならない。
3  開発審査会は、前項の裁決を行なう場合においては、あらかじめ、審査請求人、処分庁その他の関係人又はこれらの者
以上


巻末資料ⅰ(関連本文29頁)
昭和42年7月14日衆議院本会議
都市計画法案(内閣提出)の趣旨説明

○副議長(園田直君) 内閣提出、都市計画法案について、趣旨の説明を求めます。建設大臣西村英一君。
〔国務大臣西村英一君登壇〕
○国務大臣(西村英一君) 都市計画法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
近年における人口及び産業の都市集中に伴い、都市及びその周辺の地域における市街地の無秩序な拡散が、公害の発生等都市環境の悪化と公共投資の非効率化の弊害を生ずるに至っており、この際、これらの弊害を除去し、都市の健全な発展と秩序ある整備をはかるための対策を確立することが緊要の課題となっております。
現行の都市計画法は、大正八年に制定されて以来半世紀を経てまいりましたが、その内容は、もはや昨今の都市の問題に十分に対処することができないものとなっております。すなわち、都市の秩序ある発展をはかるための総合的な土地利用計画の確立、都市計画における広域性及び総合性の確保、国と地方公共団体間の事務配分と都市計画の決定手続の合理化等、新しい時代の要請に応じた新しい都市計画の制度を早急に確立することが必要となってきたのであります。
今回、これらの諸点について十分な検討を加え、都市計画の制度を全面的に改革し、もって現下の要請にこたえることとした次第であります。
以上がこの法律案の趣旨でありますが、次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、都市計画区域は、必ずしも市町村の行政区域にとらわれず、都市の実態及び将来の計画を勘案して、一体の都市として整備、開発及び保全する必要がある区域を定むることができることといたしました。
指定の手続としては、都道府県知事が建設大臣の認可を受けて指定することとし、特に必要がある場合には、建設大臣が二以上の都府県にわたって都市計画区域を指定することができることといたしました。
第二に、都市計画の内容として、用途地域、その他の地域地区、道路、その他の都市施設及び土地区画整理事業、その他の市街地開発事業を定むることとするほか、新たに市街化区域と市街化調整区域の区分を定めることといたしました。すなわち、優先的かつ計画的に市街化をはかるべき区域を市街化区域とし、市街化を抑制すべき区域を市街化調整区域とし、都市計画区域をこれらの両区域に区分することにより、秩序ある市街地の形成をはかることといたしております。
第三に、都市計画の決定主体につきまして、広域的見地から決定すべき事項、または根幹的な重要な事項に関する都市計画は都道府県知事が、その他の事項に関する都市計画は市町村が決定することといたしました。この場合、市町村は都道府県知事の承認を要することとする等により、都市計画の一体性を確保することといたしております。また、都道府県知事が都市計画を決定するに際し、一定の場合について建設大臣の認可を受くべきこと、必要がある場合における建設大臣の指示等を規定することにより、国の立場から必要な調整をはかることができることといたしました。
なお、二以上の都府県の区域にわたる都市計画区域にかかる都市計画は建設大臣が決定することといたしております。
第四に、開発許可の制度を創設し、市街化区域または市街化調整区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないものといたしました。この場合、良好な市街地が形成されるような一定水準の道路、下水道等の都市施設を備えたものでなければならない等の要件を規定するとともに、市街化調整区域内につきましては、さらにその区域内に立地することが支障なく、またはやむを得ない行為に限り許可することといたしました。
なお、市街化区域及び市街化調整区域の区分及び開発許可制度は、当分の間、大都市及びその周辺等の区域以外の都市計画区域については適用しないものといたしております。
第五に、都市計画施設または市街地開発事業の区域については、一定の建築物の建築を規制することとし、特に重要な都市計画施設等の区域については、建築を許可しないことができることとする反面、土地所有者の申し出により土地を買い取る制度を定めております。
第六に、都市計画事業は、市町村が都道府県知事の認可を受けて施行することを原則とし、一定の場合には都道府県、国の機関、または民間の者が認可を受けて施行することができることとし、この場合には、土地等の収用または使用をすることができることといたしました。
第七に、この法律により権限に属させられた事項及び都市計画に関する事項を調査審議するため、建設省に都市計画中央審議会を、都道府県に都市計画地方審議会を置くこととしたほか、開発許可にかかる不服審査を処理する機関として、都道府県に開発審査会を置くことにいたしました。
第八に、農地法の一部を改正し、市街化区域内の農地等については、農地法に基づく農地転用の許可等を要しないことといたしました。
第九に、この法律の施行に伴い必要な事項につきましては、別に法律で定むることといたしておりますが、開発許可制度を創設いたしましたこととの関連におきまして、本法により住宅地造成事業に関する法律を廃止することといたしました。
以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)


巻末資料ⅱ(関連本文29頁)
昭和43年4月5日衆議院建設委員会
○小川(新)委員 それでは、提案理由に基づきまして総括的な質疑に入っていきたいと思います。
三ページに、今回の都市計画法の改正の最も要点は、何がいままでの計画法と違っておるかということがこの提案理由の説明になっておりますが、一口に言いますと、何点あるのですか。
○竹内(藤)政府委員 提案理由にございますように、大きな点は八点ございます。
○小川(新)委員 それを説明してください。
○竹内(藤)政府委員 提案理由にございますように、大きな点は八点ございます。
○小川(新)委員 それを説明してください。
○竹内(藤)政府委員 第一は、都市計画区域のきめ方でございます。従来は市町村単位でございましたけれども、必ずしも市町村の行政区域にとらわれずに、一体の都市として整備、開発、保全する必要のある区域を、都市計画区域として定めることができるようになったことと、都市計画区域の指定の手続につきまして、都道府県知事が建設大臣の認可を受けて指定することを原則としたということでございます。
第二点は、都市計画の内容といたしまして、従来は、都市計画というのは、概括的に何でも都市計画としてきめられるというような形になっておったのでございますけれども、都市計画の内容を列挙いたしまして、用途地域その他の地域地区、道路その他の公共都市施設、それから土地区画整理事業、その他の市街地開発事業の三種類を都市計画の内容とし、それぞれについて限定的に列挙して書いたということであります。
そのほかに、さらに、都市計画の内容として重要な点は、市街化区域、調整区域という区分をきめまして、市街化区域につきましては、既成市街地のほか、優先的、計画的に市街化をはかるべき区域と定め、市街化調整区域化を定めて市街化を抑制すべき地域としたことでございます。
第三点は、都市計画の決定主体を変えたことでございます。従来は、御承知のように、建設大臣が地方の都市計画審議会の議を経て決定するということであったのが、今回は広域的あるいは根幹的な事項につきましては、都道府県知事がきめる、それからその他の都市計画につきましては市町村がきめる、そういうことにいたしたわけでございます。
それから第四番目は、開発許可の制度をつくりまして、市街化区域及び調整区域におきまして開発行為をしようという者につきましては、知事の許可を受けなければならない。その場合に、良好な市街地が形成されるようないろいろな都市施設を備えたものでなければならぬ、あるいはまわりに迷惑を及ぼしてはいかぬというような要件をつけるとともに、調整区域につきましては、やむを得ないもの以外は開発行為を許可しない、こういうことにしたわけでございます。


巻末資料ⅲ(関連本文29頁)
昭和43年5月9日参議院建設委員会

○政府委員(竹内藤男君) 都市計画の決定はだれがやるのかという問題でございます。ただいまお話がございましたように、基本的には市町村が都市計画を立案するわけでございます。ただ、この新しい都市計画法におきましては、広域的な都市計画というものをねらっておりますので、数市町村がまとまったような地域におきまして、広域にわたる都市計画というものは知事が定めるということになっております。しかし、市町村が定めます計画につきましても、知事の承認を得るということにいたしております。知事の定めます都市計画同様、承認にあたりましては都市計画地方審議会の議を経る、こういう形にいたしました。したがいまして、先生おっしゃいますように、国の上からのだんだんおりてくる計画、市町村が立てます自主的な計画の調整をどこでとるかということは、法律上は知事の段階でとる、こういう形になろうと思います。ただし、特に重要な都市計画あるいは大都市周辺であるところの首都圏、近畿圏というような地域にかかります都市計画につきましては、特に大臣の認可を要する。これは非常に各県にわたるような問題でございますので、大臣の認可を要する、こういうような形にいたしておるわけでございます。
○政府委員(竹内藤男君) おっしゃいますように、開発行為というものを単に宅地開発にとどまらず、建築行為まで含めるべきじゃないかというような意見もあったわけでございますが、実は建築につきましては、先生御承知のように、都市計画的な意味の建築のチェックと申しますかそういう面と、それから建築物単体の構造なりその他の耐力なりというものをチェックする意味の建築の確認ということが、現行法では建築基準法で両方統一して行なわれているわけでございます。さらに都市計画の開発許可制の中で、いわゆるその都市計画的な意味の建築の確認制を取り込むということも考えられるわけでございますけれども、そういたしますと、宅地開発の段階で許可が要る、都市計画の建築許可の段階で許可が要る、さらにまた単体の規定で許可が要る、こういうふうに許可が三重になってくるということもございますので、一応わが国におきまして基準法という体系がございますので、建築行為につきましては基準法のほうで行なっていく。しかし当然建築の前の段階におきまして宅地開発行為があるわけでございますので、宅地開発行為についての許可条件の合わないようなものは建築のほうで確認しないということは、これは現在の基準法の法律でそういうふうに臨めるわけでございますので、そういうことによりまして建築のほうの規制もリンクさして行なう、こういう考え方であえて建築行為まで取り締まらない、こういう考え方でございます。)


巻末資料ⅳ(関連本文45頁)
建築基準施行令第144条の4(政令で定める基準に適合する道

法第42条第1項第五号 の規定により政令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
一  両端が他の道路に接続したものであること。ただし、次のイからホまでの一に該当する場合においては、袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。以下この条において同じ。)とすることができる。
イ 延長(既存の幅員六メートル未満の袋路状道路に接続する道にあつては、当該袋路状道路が他の道路に接続するまでの部分の延長を含む。ハにおいて同じ。)が35メートル以下の場合
ロ 終端が公園、広場その他これらに類するもので自動車の転回に支障がないものに接続している場合
ハ 延長が35メートルを超える場合で、終端及び区間35メートル以内ごとに国土交通大臣の定める基準に適合する自動車の転回広場が設けられている場合
ニ 幅員が6メートル以上の場合
ホ イからニまでに準ずる場合で、特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認めた場合
二  道が同一平面で交差し、若しくは接続し、又は屈曲する箇所(交差、接続又は屈曲により生ずる内角が120度以上の場合を除く。)は、角地の隅角をはさむ辺の長さ2メートルの二等辺三角形の部分を道に含むすみ切りを設けたものであること。ただし、特定行政庁が周囲の状況によりやむを得ないと認め、又はその必要がないと認めた場合においては、この限りでない。
三  砂利敷その他ぬかるみとならない構造であること。
四  縦断勾配が12パーセント以下であり、かつ、階段状でないものであること。ただし、特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
五  道及びこれに接する敷地内の排水に必要な側溝、街渠その他の施設を設けたものであること。
2  地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認める場合においては、条例で、区域を限り、前項各号に掲げる基準と異なる基準を定めることができる。
3  地方公共団体は、前項の規定により第一項各号に掲げる基準を緩和する場合においては、あらかじめ、国土交通大臣の承認を得なければならない。


巻末資料ⅴ(関連本文45頁)
建築基準法施行規則第9条、10条(特定行政庁からその位置の指定を受けたもの)

第9条  
法第42条第1項第五号 に規定する道路の位置の指定を受けようとする者は、申請書正副二通に、それぞれ次の表(省略)に掲げる図面及び指定を受けようとする道路の敷地となる土地(以下「土地」という。)の所有者及びその土地又はその土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者の承諾書を添えて特定行政庁に提出するものとする。
第10条  
特定行政庁は、前条の申請に基いて道路の位置を指定した場合においては、その旨を公告し、かつ、申請者に通知するものとする。

巻末資料ⅵ(関連本文53頁)
建築基準法施行令第128条の3(地下街)
地下街の各構えは、次の各号に該当する地下道に2メートル以上接しなければならない。ただし、公衆便所、公衆電話所その他これらに類するものにあつては、その接する長さを2メートル未満とすることができる。
一  壁、柱、床、はり及び床版は、国土交通大臣が定める耐火に関する性能を有すること。
二  幅員5メートル以上、天井までの高さ3メートル以上で、かつ、段及び8分の1をこえる勾配の傾斜路を有しないこと。
三  天井及び壁の内面の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つていること。
四  長さが60メートルをこえる地下道にあつては、避難上安全な地上に通ずる直通階段で第23条第1項の表の(二)に適合するものを各構えの接する部分からその一に至る歩行距離が30メートル以下となるように設けていること。
五  末端は、当該地下道の幅員以上の幅員の出入口で道に通ずること。ただし、その末端の出入口が二以上ある場合においては、それぞれの出入口の幅員の合計が当該地下道の幅員以上であること。
六  非常用の照明設備、排煙設備及び排水設備で国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものを設けていること。
2  地下街の各構えが当該地下街の他の各構えに接する場合においては、当該各構えと当該他の各構えとを耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で第112条第14項第二号に規定する構造であるもので区画しなければならない。
3  地下街の各構えは、地下道と耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で第112条第14項第二号に規定する構造であるもので区画しなければならない。
4  地下街の各構えの居室の各部分から地下道(当該居室の各部分から直接地上へ通ずる通路を含む。)への出入口の一に至る歩行距離は、30メートル以下でなければならない。
5  第112条第5項から第11項まで及び第14項から第16項まで並びに第129条の2の5第1項第七号(第112条第15項に関する部分に限る。)の規定は、地下街の各構えについて準用する。この場合において、第112条第5項中「建築物の11階以上の部分で、各階の」とあるのは「地下街の各構えの部分で」と、同条第6項及び第7項中「建築物」とあるのは「地下街の各構え」と、同条第9項中「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物」とあるのは「地下街の各構え」と、「建築物の部分」とあるのは「地下街の各構えの部分」と、「準耐火構造」とあるのは「耐火構造」と、同条第10項中「準耐火構造」とあるのは「耐火構造」と、第129条の2の5第1項第七号中「第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造」とあるのは「耐火構造」と読み替えるものとする。
6  地方公共団体は、他の工作物との関係その他周囲の状況により必要と認める場合においては、条例で、前各項に定める事項につき、これらの規定と異なる定めをすることができる。


巻末資料ⅶ(関連本文62頁)
第52条第1項から第9項(容積率)
建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値以下でなければならない。ただし、当該建築物が第五号に掲げる建築物である場合において、第3項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域に関する都市計画において定められた第二号に定める数値の1・5倍以下でなければならない。
一  第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物
10分の5、10分の6、10分の8、10分の10、10分の15又は10分の20のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
二  第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物又は第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域内の建築物(第五号に掲げる建築物を除く。)
10分の10、10分の15、19分の20、19分の30、10分の40又は10分の50のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
三  商業地域内の建築
10分の20、10分の30、10分の40、10分の50、10分の60、10分の70、10分の80、10分の90、10分の100、10分の110、10分の120又は10分の130のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
四  工業地域又は工業専用地域内の建築物
10分の10、10分の15、10分の20、10分の30又は10分の40のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
五  高層住居誘導地区内の建築物であつて、その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の3分の2以上であるもの(当該高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、その敷地面積が当該最低限度以上のものに限る。第56条第1項第二号ハ及び別表第三の四の項において同じ。)
当該建築物がある第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域に関する都市計画において定められた第二号に定める数値から、その1・5倍以下で当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合に応じて政令で定める方法により算出した数値までの範囲内で、当該高層住居誘導地区に関する都市計画において定められたもの
六  用途地域の指定のない区域内の建築物
10分の5、10分の8、10分の10、10分の20、10分の30又は10分の40のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの
2  前項に定めるもののほか、前面道路(前面道路が二以上あるときは、その幅員の最大のもの。以下この項及び第12項において同じ。)の幅員が12メートル未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を乗じたもの以下でなければならない。
一  第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物
十分の四
二  第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域内の建築物(前項第五号に掲げる建築物を除く。)
十分の四(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあつては、10分の6)
三  その他の建築物10分の6(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあつては、10分の4又は10分の8のうち特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの)
3  第1項(ただし書を除く。)、前項、第7項、第12項及び第14項、第57条の2第3項第二号、第57条の3第2項、第59条第1項及び第3項、第59条の2第1項、第60条第1項、第60条の2第1項及び第4項、第68条の3第1項、第68条の4、第68条の5(第二号イを除く。第6項において同じ。)、第68条の5の2(第二号イを除く。第6項において同じ。)、第68条の5の3第1項(第一号ロを除く。第6項において同じ。)、第68条の5の4(ただし書及び第一号ロを除く。)、第68条の5の5第1項第一号ロ、第68条の8、第68条の9第1項、第86条第3項及び第4項、第86条の2第2項及び第3項、第86条の5第3項並びに第86条の6第1項に規定する建築物の容積率(第59条第1項、第60条の2第1項及び第68条の9第1項に規定するものについては、建築物の容積率の最高限度に係る場合に限る。第6項において同じ。)の算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1メートル以下にあるものの住宅の用途に供する部分(共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一を超える場合においては、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一)は、算入しないものとする。
4  前項の地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3メートルを超える場合においては、その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。
5  地方公共団体は、土地の状況等により必要と認める場合においては、前項の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域を限り、第三項の地盤面を別に定めることができる。
6  第1項、第2項、次項、第12項及び第14項、第57条の2第3項第二号、第57条の3第二項、第59条第1項及び第3項、第59条の2第1項、第60条第1項、第60条の2第1項及び第4項、第68条の3第1項、第68条の4、第68条の5、第68条の5の2、第68条の5の3第1項、第68条の5の4(第一号ロを除く。)、第68条の5の5第1項第一号ロ、第68条の8、第68条の9第1項、第86条第3項及び第4項、第86条の2第2項及び第3項、第86条の5第3項並びに第86条の6第1項に規定する建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。
7  建築物の敷地が第1項及び第2項の規定による建築物の容積率に関する制限を受ける地域、地区又は区域の2以上にわたる場合においては、当該建築物の容積率は、第1項及び第2項の規定による当該各地域、地区又は区域内の建築物の容積率の限度にその敷地の当該地域、地区又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。
8  その全部又は一部を住宅の用途に供する建築物であつて次に掲げる条件に該当するものについては、当該建築物がある地域に関する都市計画において定められた第1項第二号又は第三号に定める数値の1・5倍以下で当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合に応じて政令で定める方法により算出した数値(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内にあつては、当該都市計画において定められた数値から当該算出した数値までの範囲内で特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て別に定めた数値)を同項第二号又は第三号に定める数値とみなして、同項及び第3項から前項までの規定を適用する。ただし、当該建築物が第3項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある地域に関する都市計画において定められた第1項第二号又は第三号に定める数値の1・5倍以下でなければならない。
一  第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域(高層住居誘導地区及び特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)又は商業地域(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)内にあること。
二  その敷地内に政令で定める規模以上の空地(道路に接して有効な部分が政令で定める規模以上であるものに限る。)を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上であること。
9  建築物の敷地が、幅員15メートル以上の道路(以下この項において「特定道路」という。)に接続する幅員6メートル以上12メートル未満の前面道路のうち当該特定道路からの延長が70メートル以内の部分において接する場合における当該建築物に対する第2項から第7項までの規定の適用については、第2項中「幅員」とあるのは、「幅員(第9項の特定道路に接続する同項の前面道路のうち当該特定道路からの延長が70メートル以内の部分にあつては、その幅員に、当該特定道路から当該建築物の敷地が接する当該前面道路の部分までの延長に応じて政令で定める数値を加えたもの)」とする。
第55条第1項  
第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内においては、建築物の高さは、10メートル又は12メートルのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならない。
第56条
(建築物の各部分の高さ)建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。(以下省略)
第57条の2第6項
6  第四項の規定により特例容積率の限度が公告されたときは、当該特例敷地内の建築物については、当該特例容積率の限度を第52条第1項各号に掲げる数値とみなして、同条の規定を適用する。


巻末資料ⅷ(関連本文93頁)
建築基準法第9条(違反建築物に対する措置)

特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
2  特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
3  前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から3日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
4  特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取の請求があつた場合においては、第1項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
5  特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第1項の規定によつて命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の2日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
6  第4項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
7  特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前5項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
8  前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から3日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第4項から第6項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から5日以内に行わなければならない。
9  特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第7項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第1項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第7項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
10  特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第2項から第6項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。
11  第1項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
12  特定行政庁は、第1項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法 (昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
13  特定行政庁は、第1項又は第10項の規定による命令をした場合(建築監視員が第10項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
14  前項の標識は、第1項又は第10項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、第1項又は第10項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
15  第1項、第7項又は第10項の規定による命令については、行政手続法 (平成5年法律第88号)第3章 (第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない


巻末資料ⅸ(関連本文93頁)
建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)

建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
一  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの
二  木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの
三  木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの
四  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成16年法律第110号)第74条第1項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
2  前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときについては、適用しない。
3  建築主事は、第1項の申請書が提出された場合において、その計画が次の各号のいずれかに該当するときは、当該申請書を受理することができない。
一  建築士法第3条第1項 、第3条の2第1項、第3条の3第1項、第20条の2第1項若しくは第20条の3第1項の規定又は同法第3条の2第3項 の規定に基づく条例の規定に違反するとき。
二  構造設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第20条の2第1項 の建築物の構造設計を行つた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によるものでないとき。
三  設備設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第20条の3第1項の建築物の設備設計を行つた場合において、当該建築物が設備関係規定に適合することを設備設計一級建築士が確認した設備設計によるものでないとき。
4  建築主事は、第1項の申請書を受理した場合においては、同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から35五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から7日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。
5  建築主事は、前項の場合において、申請に係る建築物の計画が第20条第二号又は第三号に定める基準(同条第二号イ又は第三号イの政令で定める基準に従つた構造計算で、同条第二号イに規定する方法若しくはプログラムによるもの又は同条第三号イに規定するプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。次条第3項及び第18条第4項において同じ。)に適合するかどうかを審査するときは、都道府県知事の構造計算適合性判定(第20条第二号イ又は第三号イの構造計算が同条第二号イに規定する方法若しくはプログラム又は同条第三号イに規定するプログラムにより適正に行われたものであるかどうかの判定をいう。以下同じ。)を求めなければならない。
6  都道府県知事は、当該都道府県に置かれた建築主事から前項の構造計算適合性判定を求められた場合においては、当該建築主事を当該構造計算適合性判定に関する事務に従事させてはならない。
7  都道府県知事は、特別な構造方法の建築物の計画について第5項の構造計算適合性判定を行うに当たつて必要があると認めるときは、当該構造方法に係る構造計算に関して専門的な識見を有する者の意見を聴くものとする。
8  都道府県知事は、第5項の構造計算適合性判定を求められた場合においては、当該構造計算適合性判定を求められた日から14日以内にその結果を記載した通知書を建築主事に交付しなければならない。
9  都道府県知事は、前項の場合(第20条第二号イの構造計算が同号イに規定する方法により適正に行われたものであるかどうかの判定を求められた場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、同項の期間内に建築主事に同項の通知書を交付することができない合理的な理由があるときは、35日の範囲内において、同項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に建築主事に交付しなければならない。
10  第5項の構造計算適合性判定に要する費用は、当該構造計算適合性判定を求めた建築主事が置かれた都道府県又は市町村の負担とする。
11  建築主事は、第5項の構造計算適合性判定により当該建築物の構造計算が第20条第二号イに規定する方法若しくはプログラム又は同条第三号イに規定するプログラムにより適正に行われたものであると判定された場合(次条第8項及び第18条第10項において「適合判定がされた場合」という。)に限り、第1項の規定による確認をすることができる。
12  建築主事は、第4項の場合(申請に係る建築物の計画が第20条第二号に定める基準(同号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同号イに規定する方法によるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。)に適合するかどうかを審査する場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、同項の期間内に当該申請者に第1項の確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは、35日の範囲内において、第4項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に当該申請者に交付しなければならない。
13  建築主事は、第4項の場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないことを認めたとき、又は申請書の記載によつては建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定により第4項の期間を延長した場合にあつては、当該延長後の期間)内に当該申請者に交付しなければならない。
14  第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
15  第1項の規定による確認の申請書、同項の確認済証並びに第12項及び第13項の通知書の様式は、国土交通省令で定める。


巻末資料ⅹ(関連本文95頁)
建築基準法第12条(報告、検査等)

第6条第1項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第3項において同じ。)は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者にその状況の調査(当該建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、当該建築物の建築設備についての第3項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
2  国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第一号に掲げる建築物その他前項の政令で定める建築物に限る。)の管理者である国、都道府県若しくは市町村の機関の長又はその委任を受けた者(以下この章において「国の機関の長等」という。)は、当該建築物の敷地及び構造について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は同項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。
3  昇降機及び第6条第1項第一号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
4  国の機関の長等は、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の昇降機及び国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第一号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物に限る。)の昇降機以外の建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は前項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。
5  特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途又は建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況に関する報告を求めることができる。
一  建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、工事監理者又は工事施工者
二  第1項の調査、第2項若しくは前項の点検又は第3項の検査をした一級建築士若しくは二級建築士又は第1項若しくは第3項の資格を有する者
三  第77条の21第1項の指定確認検査機関
四  第77条の35の5第1項の指定構造計算適合性判定機関
6  建築主事又は特定行政庁の命令若しくは建築主事の委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員にあつては第6条第4項、第6条の2第11項、第7条第4項、第7条の3第4項、第9条第1項、第10項若しくは第13項、第10条第1項から第3項まで、前条第1項又は第90条の2第1項の規定の施行に必要な限度において、建築監視員にあつては第9条第10項の規定の施行に必要な限度において、当該建築物、建築物の敷地又は建築工事場に立ち入り、建築物、建築物の敷地、建築設備、建築材料、設計図書その他建築物に関する工事に関係がある物件を検査し、若しくは試験し、又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者に対し必要な事項について質問することができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
7  特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに第1項及び第3項の規定による報告に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する台帳を整備し、かつ、当該台帳(当該処分及び当該報告に関する書類で国土交通省令で定めるものを含む。)を保存しなければならない。8  前項の台帳の記載事項その他その整備に関し必要な事項及び当該台帳(同項の国土交通省令で定める書類を含む。)の保存期間その他その保存に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。



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