メールマガジン

メールマガジン第439号

掲載日2012 年 1 月 16 日

メールマガジン第439号(1月16日)
みなさんこんにちは

これまでのHICPMの取り組みを振り返って
今年のHICPMの取り組みについて、これまでの経験をふまえ、年末から「今年はどうしようか」と考えてきました。今年はHICPMが創設されて17年目に入りました。その準備期間を含めますと20年になります。当初はNAHB  (全米ホームビルダー協会)プレスから出版されていた「スケジューリング・フォー・ビルダーズ」(龍源社刊「CPMのすべて」)を翻訳出版し、1960年代の米国の住宅産業発展の原点に立った運動を始めました。

ジョージ・ロムニーとOBT
現在米国の共和党大統領選挙で先頭を走っている元マサチューセッツ州知事ウイラード・ミット・ロムニーの父親が、元アメリカンモーターズ社長からミシガン州知事を経験し、当時の連邦住宅都市開発省(HUD:Housing and Urban Development Department)長官に抜擢されたジョージ・ロムニー長官でした。
ロムニー長官の提唱した政策が、OBT(オペレーション・ブレーク・スルー:「突破作戦」)でした。この政策は、その10年前の50年代、米国の住宅生産と住宅地開発をするため、自らを「住宅産業のGM(ジェネラルモーターズ)になる)と公言し、住宅産業を根底から変革したウイリアム・レビットによる生産方式を、さらに高い生産性の実現を目指し、住宅生産を工場に持ち込もうとした取り組みでした。その成果は、モーバイルホームやモジュラーホームとして大量に米国の住宅市場供給されました。

レビットハウス、レビットタウン
レビットは、「私は住宅生産のGM(ジェネラルモータス)になる」と宣言したとおり、住宅の生産にOM(オペレイションマネジメント:生産管理)方法を取り入れ、真このやり方を全面的に変革しました。「建設現場を工場にする」ため、現場に搬入する資材は、当日使う材料以外は現場には搬入させず、現場労働者が最も働き易い環境を造り、かつ、住宅供給を住宅地全体の流れ作業による「材料に代わって、労働者が流れ作業で住宅生産をする」方法(レビットタウン)を開発しました。材料は現場での加工をせず、既製品の組立てを中心にする住宅生産方法を米国の農務省林森林研究所(フォレスト・ラボ)とNAHBの建築研究所(ビルディング・リサーチ・センター)と共同で開発しました。それが、現在の2×4工法(レビットハウスともプラットフォーム工法)と呼ばれる住宅生産工法です。

「HUD詣で」と内田元亨の「住宅産業論」
HUDがはじめたOBT(突破作戦)は、レビットが住宅団地で実施したことを、再度、自動車生産同様に、工場で住宅を生産しようとしたのです。当時、日本の住宅産業関係者は、建設省及び通産省の官僚を同行させ、「HUD詣で」と言われたように、門前市をなす勢いでHUDに出かけ、工場で住宅生産をする方法を見学に出かけました。
しかし、HUDに出かけても、そこには見せるようなものはなく、米国の住宅産業を見るならば、NAHBのビルダーズショウの時期に合わせて訪米すれば、米国の住宅産業界がわかるといわれ、その時期に訪米しました。NAHBのビルダーズショウに来た際、住宅建設現場を見た人たちは米国の住宅産業を見てその豊かさに驚きました。日本の住宅産業関係者はHUDとNAHBとが同じ組織であると勘違いするほどでした。
カラーベストやコンクリートブロック、カラー鉄板、波板鉄板やアスベスト板さまざまな材料を見つけ、日本に持ち帰り、新建材として広く販売しました。通産省の官僚内田元亨は、その驚きを日本の将来の住宅産業の姿として『住宅産業論』にまとめ、「中央公論」(1967年)に発表しました。「住宅産業」という言葉が始めて登場したときです。

NAHBとHUDとの闘い
しかし、当時米国ではHUDの進める「OBTによってホームビルダーは仕事を奪われる」との危機感がNAHBに拡がり、その対抗措置が議論されていました。その結果、到達した結論は、その後の米国の住宅産業の「礎(いしずえ)を築く」と言って良いものでした。

「OBTによる住宅政策は、住宅の生産性を上げ、消費者の住宅費負担を引き下げようとする政策であるから、その目的とする所は正しい。NAHBが同じ目的を、HUDに勝る形で実現するためには、OBTの上げる成果以上の高い生産性を、現場で実現する他にない。」

その実現は、「レビットハウス及びレビットハウスの生産方法に、工場生産管理技術であるOM(オペレイションマネジメント)の技術を導入することしかない)ということになりました。HUDとNAHBの闘いは、1992年のクリントン大統領の時代にゴア副大統領が推進したPATH(Partnership for Advancing Technology in Housing :住宅エネルギー政策)を進めるに当たり、過去のHUDがOBTで犯した政策の誤りを認め、NAHBの政策を評価し、PATHに対し、NAHBの協力を求めるというNAHBの全面的勝利で幕を閉じました。

CPM(Critical Path Method:限界生産工程管理)
当時OM(Construction Management)の技術として、最も進んでいると考えられた技術が、デュポンのポラリス潜水艦の操作技術として開発されていたCPM・CPN(クリテイカル・パス・メソッド/クリティカル・パス・ネットワーク)でした。そこでCPM・CPNの技術を住宅生産に読み替える仕事が、ジョージア大学のジェリー・ハウスホールド教授に依頼されました。そこで取り組まれたホームビルダー向けの教科書が「スケジューリング・フォー・ビルダー」だったのです。
当時のNAHB の副会長をやっていた方が、私がNAHBの版権を取って日本で翻訳本を出したことをNAHBから耳にして、来日の際、私を訪問してこられ、CPM・CPNがホームビルダーの体質改善に如何に重要で、大きな役割を果たしたかを話してくれました。

CMの導入となったHICPMとNAHBの相互協力協定
この図書がきっかけとなり、千田さん(元理事・事務局長)、近藤さん(元理事長)と協力し、その後、HICPM(Housing Institute of Complete Project Management) とNAHB(National Association of Home Builders)とが相互協力協定を締結することになりました。そして、CM(コンストラクションマネジメント)に関し、NAHBの多数のテキストを翻訳・出版し、日本の工務店がCMの3つの管理技術:原価管理(CC:Cost Control)、工程管理(CPM: Critical Path Method)、品質管理(TQM:Total Quality Management)を学べるようにしました。しかし、日本ではCPMの技術もCMの技術もコンサルタントやセミナー屋の金儲けになってしまい、本来工務店が苦労して身につけるべき管理技術を、 「口先だけの飾り」として使い、結果的にその利益を消費者に今まで還元できないままできました。そのため、既に汚されてしまったCC(コンストラクションマネジメント)の技術を、原点に立ち返り学習してもらう取り組みを、ここ数年間、実施してきました。受講者には高い満足が見られましたが、その実効が挙げられず、参加者は低迷しています。

求められている学習の機会
その理由を昨年末から考えてきました。判明したことは、工務店の方々が、真面目に自力をつけるため苦しい勉強をし、試行錯誤を繰り返しながら、テキストに決められた原則を現実に読み替えて実践する本来の努力をしていないか、または、受講者は学習したCMをやりたいと願っても、会社として実践できないということでした。
工務店が、住宅建設業の基本となる経営管理技術(CM)を基本的に知らないのです。現実は、CMの学習をせず、代わって、新材料、新工法、新デザイン、政府と一緒になった「消費者の利益」を口実にした「性能表示」や「瑕疵保証」、「長期優良住宅」、「エコポイント」といった「騙しの技術」に終始していることでした。
護送船団方式で、役人の天下り先や、政治家のパーティーの金集めと一体となったその実態は、業者と官僚、政治家の金儲け本位の政策が、消費者の利益に優先し、住宅産業を汚染してきたためであることが再確認されました。

平成23年のHICPM「住宅産業講座」
HICPMはそれらの護送船団に立ち向かっても、「蟷螂(かまきり)の斧」であることは、これまでも何度も経験してきたことです。しかし、住宅購入者の利益を守ろうとする工務店にとって取り組むべきことは、消費者に「住宅を取得することで、自らの資産形成を実現」し、高い信頼を受けて健全なホームビルダー経営をする技術を身につけることです。
そのためには、CMを実践している米国の事例に倣って学ぶことをおいてありません。HICPMはその設立の趣旨どおり、まともな工務店経営をしようとする工務店に対し、必要な住宅建設業経営管理(CM)技術を、何時でも提供する役割を果たすところが必要だと言う認識になりました。

この認識に立って、今年も工務店の学習塾として、通年的なCM(建設業経営管理)セミナーを開催することにしました。その半年分のセミナー開催予定を、先週、メールマガジンで発信したほか、ホームページに掲載することにしました。実際に工務店経営をされている方も、自らの経営を改善するために、体系的な学習をされるよう、この機会に2月から毎月開催する「住宅産業講座」にご参加ください。
(住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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