メールマガジン

メールマガジン第440号

掲載日2012 年 1 月 20 日

メールマガジン第440号(2012.01.20)

皆さんこんにちは。

新春住宅産業セミナー

1月18日(水)に、3年ぶりにHICPM近畿支部でHICPMの新春住宅産業セミナーを開催しました。実は、下HICPM事務局長の猪谷さんが身体を壊し、リタイアされて以来、近畿支部では近畿能力開発大学校の田島教授が、年間2回ほどHICPMと共同で研修をしましたが、それ以外は実施できませんでした。昨年東京でNAHBリモデリングショウの報告会をしたとき、報告会参加者の反応がよかったので、それを近畿でもやろうと考え、近畿支部の理事の皆様に持ちかけました。それが新年になって、突然18日に開催ということになり、近畿支部理事・幹事4人が中心となり、セミナーを実施することになりました。


竹山教授の現状分析と警告

支部長の竹山教授には、学者の立場から、「現代の住宅産業をどのように理解するべきか」というテーマで話して頂きました。「調査のないところには、発言権なし」という言葉を学者として実践している竹山さんは、「近年の住宅産業階の動向をデータを使い冷静に見て、工務店はハウスメーカーに食われていきます。このまま放っておくと、やがて工務店はハウスメーカーに食い尽くされていきます。」ということをデーターから導き出し、皆さんの関心を惹きました。その説明の中で、ハウスメーカーの「生き残りにかけるハングリーな努力」が営業成果に繫がっているということを竹山さんは鋭くしっかり指摘していました。


竹山教授の提言

竹山教授の「工務店がハウスメーカーに食われている」という指摘は、非常に重要だと思います。その指摘に基づき、「ハウスメーカーの作る住宅と工務店の造る住宅とは異質なものでなければいけない」から、工務店の生き残りのためには、特性を発揮できるものを開発しなければならないという結論でした。竹山教授は、「住宅生産は、工業化の方向ではなく、地方的なものでなければならない」という示唆し、「大企業ではできないものを探すべきだ」と、取組みの方向を提案しました。また、「住宅の平面計画においても4寝室住宅こそ中心的な平面計画として取り上げなければいけない」という持論を語ってくれました。


現状の社会経済環境(戸谷の認識)

日本の住宅産業が世界の経済、日本の経済と非常に強く結びつくようになった理由は、TPPやFTAのような国際的な自由化政策と深い関係があります。私は、先進工業国がそれらによって惹き起こされる問題が、失業の増大となり、また、税収の縮小による国債依存の財政になっていることを説明しました。そして、金融危機が生まれているグローバルな認識が、工務店の長期の経営をする上で重要性を持っていることを指摘しました。

現在、世界を揺るがしているユーロ危機、日本の国債危機という財政と金融危機との関係で、住宅産業のおかれている外部環境を考えるべきです。国民の所得が縮小している中で、当然住宅産業において、購買力の縮小という住宅産業の経営基盤に大きな影響を与える問題が重く押しかかってきています。全ての中心が家計支出の縮小傾向が継続的に進行している中で、住宅生産コスト削減が産業界最大の問題となっています。


NAHBとHUDとの戦いから導き出された教訓

その中で先週初め米国共和党のロムニー大統領候補者が、かつて米国のロムニー住宅都市開発省(HUD)長官であったことに関係しメールを作成しました。当時、住宅生産工業化に対抗して全米ホームビルダー協会(NAHB)が建設現場の生産性を高めることにより、工場生産政策に勝利した歴史的事実を紹介しました。

(1)   米国の国民が求めている住宅は、HUD(住宅都市開発省)が進めた工場生産住宅も、NAHBが供給しようとしていた住宅も基本的に同じでした。それは、国民の住生活要求を満足させることで社会的に基本的に同じであるからです。求められる住宅は住宅地環境で、土地と切り離された住宅ではありません。工務店は、ハウスメーカーと同じ住宅(環境)を供給して、競争で勝てる能力を如何に蓄えられるか。そのためには住宅地計画と住宅地経営に取り組むことをおいてありません。


(2)   NAHB(全米ホームビルダー協会)がHUDに勝利した理由は、同じ住宅を工場生産より安く供給させることができたからです。その勝利の武器はCMであり、同じ住宅で住宅の販売価格も、価格構成(粗利、材料費、労務費)が同じ住宅であっても、工期の短縮で高い生産性を上げたものほど、工務店は、期間当たりの粗利を高め、建設労働者は、期間あたりの賃金総額を高められました。そこで、今年の3月からHICPMビルダーズマガジンで入門CM講座を開講することにしました。


地価を住宅取引きに持ち込むな

日本では、政府が金融機関と一体となって、不当な地価(公示地価)操作をやることにより、金融機関の信用を不当に「水ぶくれ」強化し、固定資産税及び都市計画税といった地方財政収入を不動産所有者の犠牲の下に守ってきました。その結果、国民は確実に値下がりする土地を高い価格で買わされ、高い土地関係税負担をさせられ、資産を失い、消費を圧迫させられてきました。住宅産業関係者は住宅を購入し又は住宅を賃借してくれる人たちの負担で、自らの生活の糧を得ている自覚があるならば、最低限住宅の販売で、住宅購入者が大きな損失を被らないようにしなければなりません。


ガーデンシティとリースホールドによる都市開発

そのもっとも直接的な方法が、リースホールドによる住宅販売です。それは日本の似非「定期借地」のように、地主に建設廃棄物を押し付けるための借地をさせるのではなく、世界のリースホールドのように、熟成する住宅地を形成し、地主にも、住宅所有者にも、「住宅によって、資産形成が出来るリースホールド」でなければなりません。そのためには、「ガーデンシティ」の提唱者エベネッツァ・ハワードが明言しているように、「開発地単位に有機的な環境を形成管理できるよう、一人の法人土地所有者がいて、そのうえで1人の法人住宅地管理者(HOA)による経営管理がされなければならない。」ことを指摘しました。


CIDと「向こう3軒両隣」

カリフォルニア(米国)では最小単位の開発(CID:Common Interest Development))は、2戸からといい、英国のプリンス・チャールズは、「コモン・グリーン(共有緑地)」を囲んだ6戸であるといいます。それを日本語に訳すと「向こう3軒、両隣」です。これは複数の住宅群が協力すれば、環境形成に相乗効果による環境利益が拡大することを指しています。

国民の所得が急激に収縮しているときに、居住者の生活空間(容積)を、同じ費用で最大に造る方法として、デュプレックス、フォープレックスなどのアタッチドハウスを建てることにより、材料と労務量を最小限にします。そして、同じ材料と労務を使って最も短い期間で住宅を建設することにより、安価で優れた住宅を造ることができます。このことを米国はもとより、世界の優れたホームビルダー経営から学ぶことを説明しました。


美しいブリックを使った住宅の秘密

HICPMの大熊監事のブリックプロダクツ東京の常務取締役の黒瀬さんが、同社の設立から現在までの歩みを総括し、日本でのブリックの拡大の可能性を展望して見せてくれました。そのうえで、ブリックの販売をする中で学んできたことをブリックの担ってきた文化を、ブリックプロダクツ東京の関係した住宅事業との関係で分かりやすく説明し、ブリック建築の魅力や面白さを30分の講義時間で興味深く伝えて、日本には、ますます今後ブリック住宅が広がる土壌のあることを示してくれました。


注文住宅のためのホームプランシステム

その講演に続き、夢現設計室社長の前野理事から、工務店の注文住宅販売を優れた住宅設計を効率的に利用する方法として、「カストマイズして利用できるホームプラン」を、これまで挑戦して、纏めきれなかったものを、今年中半までには纏めるとして、これまで取り組んできたサステイナブルハウスによるホームプランの作業を説明されました。この作業は、モット具体的な作業をしないと皆さんには取り扱える確信が持てない感じがしました。前野社長の無限設計室では、これまで何度も挑戦してきたテーマであるので、今回は必ず纏め上げると決意の程を語ってくれました。


創作住宅と注文住宅

前野社長の説明を受けて、戸谷が「注文住宅」は創作住宅ではなく、「ノスタルジアを感じるクラシックな住宅デザイン」(HICPMホームプラン)の中から消費者がその感性に合うものを注文すると理解するべきではないと認識を改めるべき提案を行いました。住宅購入者が自分の感性に合うアイデンティティを感じる住宅を選択することが注文住宅です。機能や性能という内容は時代の文明水準に対応するものであり、同じ文明水準にあれば、基本的に共通し、その優劣を争うことには、住宅販売上、左ほど大きな意味はありません。


試行錯誤の中で見つけた工務店経営

ハイランドの社長の岩本理事が、HICPMが1999年にサステイナブルハウスの取り組みを始めたときから勉強をし、一歩一歩、歩んできた試行錯誤の歴史を説明しました。映像で紹介された岩本社長の実践した多くの事例には、それぞれ手抜きをせず、最善を尽くしてきた仕事の後が見え、セミナー参加者には、岩本社長のような努力を惜しまぬ探究心の大切さを聞くことができ、仕事の取り組み方もわかり、大変盛り上がりました。


新春セミナーの総括

最後に近畿能力開発大学校の教授の田島幹事がセミナーの総括と質疑応答の取りまとめました。住宅産業経営の原則は、社会経済の変化により変化するように見えながら、経営の原則は、住宅産業、住宅地経営、住宅設計いずれにおいても基本は変りません。社会経済環境に合わせ多様な対応をしますが、対応の原則は変わらないことをHICPMのこれまでの取り組身が説明していると総括しました。HICPMがCMと「ニューアーバニズムによる三種の神器」の経営教育を、今年の社会経済環境の下で取り組むことを要約した総括でした。


これからの展開

セミナー後、多数の参加者が夜遅くまで酒を酌み交わして、驚くほど真面目な議論を楽しんでいました。こんなセミナーをまたやろうということでした。「全国各地でこのようなセミナーが開催できるといいな」と思い、HICPMでは、これまでの技術の蓄積と情報とを生かして、何とか会員との交流だけではなく、学習したいと考える工務店との交流と技術移転をしていきたいと思っています。現在の経済環境を考えて、基本的には、実費で採算が取れるベースでやりたいと考えていますので、学習をご希望の方はお問合せください。。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)




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