メールマガジン

メールマガジン第444号

掲載日2012 年 2 月 22 日

メールマガジン第444号(2012年2月20日)
皆さんこんにちは。
NAHB・IBSとニューアーバニズムによる住宅地開発
2月8日から15日まで全米ホームビルダー協会(NAHB)が主催するインターナショナルビルダーズショウ(IBS)と同事業の一部として2012TNAH(ザ・ニュー・アメリカン・ホーム)、NAHBコンセプト・ホームと次世代省エネルギー住宅を見学しました。その関連で米国の最先端の住宅地経営を見学するため、フロリダ州にあるニューアーバニズムの計画理論で造られた全米を代表する住宅地経営を実施しているセレブレーション、ボールドインパーク、アバロンパークを見学し、さらに、ニューアーバニズムの原点でもあるTND(伝統的近隣住区開発)を全米で最初に実施したシーサイド、そこに隣接して開発されたウォーターカラー、ローズマリービーチを見学研修してまいりました。

(1)日本と米国の住宅産業人の考え方の違い
連日、現地見学ツアー参加者全員による見学研修成果の発表と意見交換により、見聞したことを多角的に考えるようにしました。また、これまでHICPMが調査研究した成果をもとに、参加者の疑問に答える総括をし、単独旅行では吸収できなかった多くの米国の知識、技術、経験を学ぶようにしました。
住宅を単体の「もの」として、「住宅販売で住宅会社が如何に設けるか」としか見ていない日本の住宅産業の貧しい見方に対して、米国の住宅産業は、「個人の豊かな生活実現する空間」と「住宅による将来の生活の支えとなる自己資産形成」という住宅購入者の基本的な利害関係で、「如何にして自らの住宅環境を造り、販売し、経営するか」を考えています。
アメリカンドリームの基本は、住宅を取得する「将来における自己資産の維持増殖の基本を造り、家族全員の生活の安定を図る」という「消費者の利益を高める結果、住宅産業が潤う」という経営の考え方が、このツアーで理解できたはずです。

(2)リゾートハウスと定住型住宅地の共通点と相違点
特に今回の調査で興味深かったことは、リゾート住宅地経営と定住住宅地経営の連続性と、その遷移の仕方の面白さでした。もともと米国南部には、経済的自由を求めプランテーション栽培などで大きな富を獲得した人たちや、北部の産業革命による重厚長大産業や金融業で大きな富を手にした人たちのリゾート地でのホリデイハウスが開発された歴史があります。
TND開発に最初に取り組み、シーサイドのプランナーとして大きな事業を計画したDPZ(アンドレス・ドゥワーニーとエリザベス・プラター・ザイバーグ)は、マイアミに仕事の拠点を置き、米国南部にある優れたリゾート地の住宅を調査し、豊かさを感じる住宅地の計画手法を発見しました。優れた住宅地として高い評価を受けている住宅地は、基本的に非定住型のホリデイハウスやリゾート地開発から始まり、その後、人口の増加に伴い定住住宅地に変質したものでした。その共通点がTND(伝統的近隣住区開発)であり、相違点は住宅地を経営管理する手法の違いであることが分かってきました。

(3)セレブレーションの方向とボールドウィンパークの方向性
今回の調査で、米国の社会の住宅バブル崩壊後の傷跡の大きさが、住宅市場回復に依然大きな陰を落としていましたが、住宅地経営にも大きな影響を与えていました。それを象徴するものがセレブレーション開発とボールドウィン開発の違いに現れていたと思います。
セレブレーションは、ディズニー社長アイズナーの発意で、最初の居住者でも住宅地が熟成したときのアメニティが享受できる定住型住宅開発を目指していました。しかし、実際は、その住宅地の立地がディズニーのテーマパークの計画地に隣接して開発されたことから、ディズニーリゾートライフを、何時でも我が家のように利用したいと考える世界中の金持ちのセコンドライフの拠点として購入された住宅も多数ありました。このディズニー王国での勤労者の常住住宅地であることも事実ですが、非定住者が多数住宅所有するホリディ住宅地であるという性格もある住宅地です。
世界が好況のときであれば、文字通りお金にゆとりがあるセレブが集中することになります。お金持ちが絶対量として増えるわけですから、セレブレーションは大いに需給関係を反映し、価格が上昇し続けます。しかし、世界的に景気が後退している現在は需要が冷え、当初のような高い需要による支持は、勢いを失っています。
しかし、基本的なポテンシャルのある住宅地ですから、現在でも住宅の取り引きは売り手市場です。やがて、米国の景気が向上すれば、それを反映し、再び以前の盛況を迎えることは十分期待されます。
一方、ボールドウィンパークは、オランド自体の経済発展を反映し、確実に定住人口は拡大し、勤務に非常に便利な立地で、都市的豊かさのある空間ですから、所得の高い事業主、経営者、勤労者の憧れの住宅地として高い需要に支持され続けています。そこには都市の熟成という実態のある生活が息づいているため、オランドという都市圏の限られた住宅に対して増大する需要が集中するため、需給関係の良循環が継続し、その需給関係を反映し、街の活性が停まりません。

(4)計画コンセプトの重要性
シーサイド、ウォーターカラー、ローズマリービーチのいずれを取ってみても交通が不便で、大都市から飛行機を使っても、そこに到達するのは大変不便です。それであるにも拘わらず、10年前や5年前頃と比較して、いずれのリゾートコミュニテイも確実に熟成度を高めており、しっかりした社会の変動を読み込んだ住宅地経営が行われていました。この3地区だけで3、000戸程度の住宅があります。それがいずれも、しっかりとした環境を維持向上しているのは、国民のリゾート需要に対応したコミュニテイ経営が行われているからに他なりません。
日本の別荘開発がバブル開発後、衰退し、住宅が朽ち果てて行った事例が多数ある理由は、全て土地を端切れにして分譲し、そこに土地購入者が思い思いの住宅を建て来ました。お互いが恣意的にデザインを競い合い、傷つけ合った住宅を建設し、街並み景観として相殺効果しか生まれないリゾート住宅地経営になってしまい、リゾート地全体の魅力が殺がれ、アメニティも薄れ、共倒れしたのです。
それに対して、シーサイドに象徴されるように、住宅地全体が一人の住宅地経営管理協会(法人)により経営管理され、国民のリゾート需要に応えることの出来る環境管理経営がされているため、人びとが集まってきて、各住宅の経営を成り立たせたことにあります。3、000戸の住宅といえば大きな量ですが、全米の世帯数に比較すれば無視できるほどの数値でしかありません。この事実は、リゾート地としての経営管理がしっかりされていることの重要性をはっきり説明していると感じました。

今月の相次ぐ研修事業
来週(2月20-21日)は、今回一緒に研修旅行に参加した淡路市議会議員の竹中さんが、市議会議員及び市職員の研修旅行として東京にこられます。そこでHICPMの渋谷理事および小林理事ともども受け入れ側として研修業務を担う予定です。今回米国で実地に学んだ住宅地経営を参考にし、日本のとっての先進事例といわれる住宅地をみて、そこから学んでもらうものと、米国に比較してみると反面教師として学ぶべきことを正確に伝えるための準備を始めたところです。
翌週(2月26日―3月3日)は、再び、ポラス・グリーン開発の皆さんと米国住宅地経営調査に出かけます。そこで、現地で見学する住宅地の説明役として、今回の研修ツアーと同じ都市と住宅地を訪問する予定です。過去3回の欧米の研修ツァーで実施したように、現地で表面に見えてわかるものの背景に隠れている歴史や制度、業務の仕組みについて解説し、米国で実現している技術を日本の条件に読み替えて適用できるようにする力をつけてもらいたいと願っています。
わが国の住宅産業人にこの種の研修ツアーをお誘いすると、「忙しい、余裕がない、既に行ったことがある」といった理由で参加をしない人が多いのですが、その人たちは決して米国の住宅産業人がやっているような進んだ仕事ができているわけではありませんし、又そのような技術を習得しようとは思ってはいないようです。消費者のために彼等の利益になる仕事をする必要性を認めていないから学ぼうとしないのです。

住宅産業人に必要な能力育成のための海外研修ツアー
自社の経営の都合で、住宅産業によって金儲けをしているわけで、自分のやっている仕事で顧客が資産形成が出来ることを真剣に実現しようとは思ってはいませんし、それを実現する能力も、現在はありません。「顧客のため」というのは口先だけで、自社の金儲けが中心で、儲かったら、そのときは、「遊びに海外に出かけてもよい」といった考えです。
ポラスはこれまでも積極的に欧米に学ぼうとし会社として学ぼうという姿勢で海外に研修旅行をされる点は立派だと思います。今回研修ツアーに参加された企業は、米国の住宅産業が保有している技術を消費者の要求に応えるために必要と考えて参加されました。
その共通した認識に立ち、「職員の能力を高め、顧客のニーズにこたえる仕事をしよう、そのためには職員教育をし、その能力を高めよう」という姿勢が大切です。
HICPMでは、街造りの学習は、実際の現場で体験をしないとそれを支えている技術は説明しきれないと考えおります。そこで、オン・ザ・ジョブ・トレイニングをし、参加者に主体的に学んでもらおうと考え、国内外の研修ツアーをGKK(グローバル研修ツアーと共同で実施してきました。

今回のツアー報告会
来る3月9日、今回の「米国の住宅デザインとニューアーバニズム視察ツアー」の報告会をHICPMの会議室で開催します。その際、研修報告会の報告書とあわせて、今回、私が撮影した写真のCDも差し上げることしています。ご参加された方も、できなかった方も是非ご参加され、米国の住宅産業から学ぶべき知恵を受け取って欲しいと思っています。
(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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