メールマガジン

メールマガジン第447号

掲載日2012 年 3 月 12 日

メールマガジン第447号(3月12日)
皆さんこんにちは

HICPM/GKK。NAHB・IBSとニューアーバニズム住宅地調査報告とセミナー
先週3月7日は、住宅生産生研究会で2月8‐16日のHICPM・GKK北米ツァー(NAHB・IBSとニューアーバニズム住宅地研修ツァー)報告会を開催しました。私としても出来るだけ多くの人に聞いて欲しいとお誘いし、募集期間が短かったにも拘らず、18名の参加者があり、ご熱心に聞いてもらい、所期のセミナー成果を上げることができました。今回の報告の目的は、日本で「工務店がハウスメーカーに食われている」現状に対し、米国では1960年代に住宅都市省(HUD)が始めた工場製作住宅政策(OBT)に対決し、全米ホームビルダー協会(NAHB)が勝利した理由を調べ、納得の行く理由を発見したことを、工務店の皆さんに伝えたかったのです。

工務店がハウスメーカーに食われている

日本で「工務店がハウスメーカーに食われている」ことに関し、昨年HICPM近畿支部主催のセミナーで、HICPM副理事長の竹山教授が、統計を根拠に指摘されました。その理屈を今回のセミナーで日米住宅産業の比較をすることで、確認しました。

工務店が、ハウスメーカーと同じ住宅で競争すれば、工務店がハウスメーカーと同じ営業、設計、施工をしている限り、勝てる見込みはありません。そこで現実の工務店の取り組みは、トリプルガラス窓や、遮熱シート、特殊な床材など少量発注によって、「ハウスメーカーと差別化」し対抗してきました。これらの材料は、大量発注・大量生産するハウスメーカーにとっては割高になるため、手が出せないできました。工務店のやっていることも、基本的には、ハウスメーカーと同じ「差別化(本来優れてもいないのに優れているとする詐欺商売)」をやっているだけで、消費者にとっては迷惑なことです。

米国では、「消費者の求めるものを、如何に安く提供するか」に関し、ホームビルダーと工場生産住宅業者が競争し、ホームビルダーがCM技術を駆使し、生産性を高めることで勝利したのです。日本の工務店は、ハウスメーカーと同じ住宅では勝てないので、単に、「ハウスメーカーの造っている住宅と少し違う住宅」を「優れた住宅である」と差別して販売しているのです。「相違」は、「優劣」を表していません。

「ハウスメーカーが消費者の要求に応えていない住宅」を供給していると工務店は説明していますが、工務店が供給している住宅に比べ「どうして優れている」といえるのですか。「ハウスメーカーが供給している住宅と同じ住宅」を「ハウスメーカーより安く供給できますか。」できなければ、それは工務店の能力がハウスメーカーよる低いということです。米国では、ホームビルダーが工場生産住宅に、コストで勝利したのです。

以下、先週に続き米国のニューアーバニズム調査の報告です。

住宅による資産形成の実現

米国人の心に響いたケネディーの呼びかけ
「国家が国民に何をしてくれるかを求めるのではなく、国民が国家にどのような貢献が出来るかを考えよう」と呼びかけたJ・F・ケネディーの言葉に、米国人が共感したように、米国人の住宅に対する考え方も、その考え方が集約されています。
「自分の住宅資産を守るために国家が何をしてくれるかに期待するのではなく、国民(同じ住宅地に住宅を持っている人たち)は、自らの資産を高めるために、どのような努力をしなければならないか」が問われていると、米国人は考えてきました。

米国の歴史を振り返ってみると、米国に移住したときから、西部劇にみられるとおり、子供の教育のために皆がお金を出し、学校を建て、教師を雇い、治安維持のためにシェリフを雇うというように、住宅の資産価値を守るために、所有者自身が「自らの財産を守ることを、経済的に自立するために必要な取り組み」と考え、主体的に「治安対策を中心に自治による住宅地の環境管理」を行ってきた歴史を持っています。

住宅資産価値向上とその実態
人々は、住宅という「その所得に比較したら、飛びぬけて高い資産価値」を守る方法として、住宅地が「いつも人々が住みたいと憧れる住環境」として維持管理し、「売り手市場」としてきました。常に「高い需要」によって支持される住宅地とすること、即ち、その住宅地で、多くの人々が憧れる生活をすることが、需給関係に反映され、住宅を高く取引させ、資産価値を高められることを経験してきました。
取引きにより決定される住宅の価格を引き揚げることが、住宅資産の価値を高めることになり、金融機関による「エクイティローン(純資産担保金融)の評価を高める基礎」となります。米国人は、住宅の価値を高めることを、住宅のエクイテイ(純資産信用)ローンを通し「社会生活の中の経済学」で、経験的に学んできました。

即ち、「好きなときに、いつでも」、購入価格より高い価格で住宅を買却出来る「売買差益の得られる住宅」として、どのように自分の住宅を管理するべきかを学んできました。(住宅の価値は、需給関係を反映して、住宅価格として表現され、住宅性能により固定的に定められるものではありません。住宅の効用であるデザイン、機能、性能では、住宅の価値(貨幣額として)は測れず、直接に決められません。)

住宅購入者の求めているもの:住環境
住宅の市場で需要者が求めている住宅は、単体としての住宅ではありません。その住宅を生活の場(立地)の中心に営まれる就業、就学、医療・福祉、ショッピングなどの利便生活とともに、住宅需要者は、セキュリティや「近隣住民とが、相互に生活を尊重しあえる関係」も住宅環境の一部に取り込んだ「生活環境」を求めてているのです。人々それぞれが個人として尊重される基本的人権の尊重される生活環境(「ライトの第4原則」:居住者の生活文化のニーズに応えた土地と一体となって歴史文化を担う建築デザインの住宅画相互に尊重しあってできる住宅地)にこそ、最も豊かさを感じさせる住宅地として、人々が求めているものなのです。

シーサイド(フロリダ)は、リゾートコミュニティとして開発されたにもかかわらず、世界が注目した開発です。この開発方法を、その後、一般住宅地に展開しました。それは、ワシントンDCになくてはならない世界のあらゆる分野で最高の活躍をする人にとって必要な住宅地「ジョージタウン」の再現を思わせる一般住宅地開発・ケントランド(メリーランド州)が開発され、話題となりました。それらのTND開発が展開されてきた経験をにらんで、アイズナーの2つの目標に応えるリゾートライフを、日常生活空間に豊かさを採り入れた事業として、セレブレーションの開発事業が始まりました。

セレブレーションの計画思想:「ハワードにも叶えられなかった夢」の実現方法
この開発は、居住者の就業の場所「セレブレーション・プレイス」、医療福祉機関「セレブレーション・ヘルス」、学童・生徒の教育施設「セレブレーション・スクール」、人々の都市生活を楽しむ「セレブレーション・ダウンタウン」の建設営業を先行させて街造りの基盤整備がされました。その後に、セレブレーションの建設入居が始められました。アイズナーが計画したとおり、「最初に入居した人にも、街が熟成したときのアメニティの享受できる都市」という「ハワードの叶えられなかった夢の実現」に成功しました。

この地域のディズニー関連のテーマパークは環境事業関係者には街造りの計画として知らされていました。また、セレブレーション・ダウンタウンにそれを「都市博覧会」というテーマパークのひとつと勘違いしてきた人たちが訪問し、実際の住宅地のためのダウンタウンと聞かされ、この地に居住したいという人が、開発以前に多数ウエイティングリスト化していました。このような高い入居希望者のあったことも、街造りが、計画通り、最初から多数の居住者によって営まれるようになった鍵でした。

アクテイブ・リタイアメント・ライフの受け入れ
特に、ダウンタウンのショッピング建築物の上階には、「アクティブ・リタイアメントの都市的ライフスタイルの高所得者たちのコンドミニアム」が多数建設されました。これらの人々は、ダウンタウンでの生活を楽しみ、建設当初から、多くの常住人口になりました。そこでの生活を一緒にしていない家族たちがディズニーリゾートの長期的滞在の宿泊基地として賑わい、魅力ある街を提供していました。このように裕福な生活を営めるアクティブ・リタイアメント・ライフを楽しむ生活環境を先に計画しました

物造りではなく、生活者を取りこんだ生活文化造り
結果的に、ディズニー関連企業を含む現役の勤労者世帯の利用できる豊かな日常生活の拠点を建設しました。新規の一般の普通世帯に取って、「アクティブ・リタイアメントの人たちの定住環境」を造ることは、最初の入居者に利便施設としてだけではなく、実際に豊かな生活を支える賑わいのあるダウンタウンを提供した計画としました。それはセレブレーション・ダウンタウンのリタイアメントライフの都市居住者を、一般世帯の豊かな生活環境の「基礎的な経営及び賑わいの雰囲気づくりの支持者」として計画したのです。そこには、ソフトな生活環境の一部として、いつも「豊かな時間とお金をもった人たち」を常住させ、彼等自身の生活だけではなく、友人、家族を呼び寄せて、楽しんでいる生活を取り入れて計画したところに、過去にない計画の新しさがありました。(セレブレーション・ダウンタウンは、計画当初から有機的に繫がっている住宅開発計画とは、経営的には別の事業で経営されてきました。)

街造りの思想:「モザイク画」
欧米の都市計画や住宅地造りの考え方は、「モザイク画」作りに例えて説明されてきました。住宅地は、モザイクの下絵として作成された「マスタープラン」の考え方に沿って示された「モザイクの石」を埋め込む方法を指示されます。それが「アーキテクチュラル・ガイドライン(建築設計指針)」です。
個別の建築は、アーキテクチュラル・ガイドラインに従って造られ、街は最初の基本計画とおりに造られて行きます。全体の「モザイク画」としての完成図の実現に向けて、街が造られていくのであって、個々の敷地と建築物の関係だけを考えていて、最良の計画通りの住宅地が出来るわけではありません。

最良の住宅地を建設するために、個々の住宅地が担うべき役割(住宅建設)を果たす「一人は皆のために、皆は一人のために」という理念の下に、街造りと住宅地経営がなされなければなりません。セレブレーションの実験は、人々にとって豊かさとはどうゆうものか」という生活文化の視点に立って取り組まれたというところが、この計画を大きな成功に導いた鍵があるのです。(以下次号に続く)
(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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