メールマガジン

メールマガジン第448号

掲載日2012 年 3 月 19 日

メールマガジン第448号(3月19日)
皆さんこんにちは、
今日は政府に突きつけられている住宅政策転換の話題を紹介します。

破綻を認めざるを得なくなった国土交通省
最近私の方に直接・間接に伝えられる国土国交省の住宅政策は、1965年から40年続いたスクラップアンドビルドの間違った「居住水準向上政策」が、日本の経済力衰退の条件下で継続できなくなり、完全に破綻したことを認めざるを得なくなったことを示しています。もっと具体的に言えば、日本国民に住宅資産をスクラップした損失を補うに足りるほどの所得が失われたことです。住宅を建て替えることは、既存の住宅資産を建設廃棄物にすることです。かつては、使える住宅を壊してGNPを増やし、新しく住宅を建築してGNPを増やし、GNPを拡大していた時代には、インフレ率は高く、住宅ローンは目減りし、土地の高密度利用をすれば、既存住宅を壊しても、経済的な損失破壊とすら考えられていました。既存住宅の残債が残っていて新たなローンを組む2重ローンを問題にしない時代があったのです。
しかし、現在は使える住宅はデフレ時代に入り住宅ローンは重くのしかかり、既存住宅を利用しないと生活を維持できないほど生活の余裕はありません。新築住宅を建築する場合にも、家計支出の範囲で建てなければならない当然のことが理解されるほど、所得が少なくなったのです。政府が主張してきた年収の5倍もの価格の住宅を購入することは、たとえ住宅ローンが安い金利になってもそれは無理なことです。
住宅の建て替えは、東日本大震災の津波の被災者同様に、2重ローンの負担を押し付けることであることが理解されるようになってきました。住宅ローンが安くなったことは、預金金利自体がゼロになり、社会の物価自体が低迷しているためで、将来的な賃金は物価上昇分上昇するのではなく、引き下げられていきます。政府はなりふり構わず税制改正をして税収を高めようとしています。国富自体の減少を抑えない限り国家は成り立たないことが次第に理解され、住宅政策に関しても、「新築中心の住宅政策から、既存住宅中心に政策」に軸足を移さざるを得なくなっています。

税収増の仕組み(償却資産の仕組み)
国土交通省が進めてきたスクラップアンドビルドの住宅政策は、「住宅を償却資産であり、その価値は残存価格である」と国民を騙し、住宅金融公庫を中心に金融機関に対して、「既存住宅の価値は残存価格であるから、建設廃棄物同然のもの」であると既存住宅を取壊して、ハウスメーカーに住宅を販売することに力を貸してきました。建て替えに追い込んできた政策は、国民の実際の富を無残に廃棄物にしただけではなく、結果的に固定資産税、相続税を減少させ、中央政府と地方政府の財政収入を減少させてきました。国民の富である国民の住宅を粗末にした結果、税収が減少させてきました。経済成長を背景に支えてきた経済・財政政策の仕組みが崩壊し、中央政府が交付税財源に困り国債を乱発し、地方政府に地方債の乱発を許し、ついに国債及び地方債で首が回らなくなってきました。しかし、40年続けた間違ったスクラップアンドビルドによりGDPを拡大してきた住宅政策の変更に、国土交通省も財務省も取り組む勇気がないのです。しかし、時間の猶予がないところまで追い詰められてきています。国民の住宅資産は国民一人ひとりにとって最大の財産です。それを粗末にして国民の資産の全体である国富が増大し充実することはありません。欧米ではどの国を見ても、国民の住宅資産価値を高めることで国富を大きくし、国民の生活を豊かにしてきました。住宅の資産価値を高める取り組みを実践的にわが国で進めてきた例が「サステイナブルコミュニテイの実現」(HICPM刊)に紹介されています。

以下は、今月訪問した米国の住宅調査は、住宅に資産価値を高める住宅経営をしている熟成し続けている米国のニューアーバニズム報告の続きです。

都心型ニューアーバニズム開発:ボールドウィンパーク

米軍の飛行場跡地に開発されたボールドウィンパークの開発は、セレブレーションの最初の入居が始まってから数年遅れて開発されました。立地条件はオランドの都心近くで、オランド(フロリダ)の都市成長を睨んで、将来的に高い所得の、より都心的なライフスタイルを求める人たちを対象に計画されました。計画段階でセレブレーションの爆発的な人気に押され、ボールドウィンパークの開発はディズニーの計画を参考にし、それに負けない計画をより都市的な開発として取り組まれました。開発地の中には、NAHBによるTNAH「ザ・ニュー・アメリカン。ホーム」が2年連続して建設されました。このことは、地場のホームビルダー「工務店」及び全米ホームビルダー協会(NAHB)が、この開発にディズニーに対抗し、如何に力をいれていたかを示しています。

今回の研修ツアーでは、ボールドウィンパークのプロジェクトの中の計画上の特色を以下の3ヶ所について見学研修しました。
(1)    究極のTNDの戸建注文住宅モデルホームが展示販売された街区:
TNDとして建築される注文住宅は、デベロッパーが居住者階層の所得やライフスタイル、デザイン嗜好を調査のうえ想定し、それらの住宅購入予定者の求める代表的な伝統的な住宅様式(ハウススタイル)の前面にリビングポーチを付けたものに絞りモデルホームを建設した街区です。「注文住宅」は、いわゆる「創作住宅」ではありません。注文住宅とは、「専門的な設計力があり、過去の伝統的な建築様式の住宅について設計者の豊かな知識経験にもとづいて提案した中から顧客が、選択(注文)する」ものです。注文住宅の定義に基づいて、ボールドウィンパークではモデルホームとそれに対応したホームプランの中から顧客が選択「注文」するレストランの食事や、テーラーでの洋服を注文のやり方と同じです。住宅のデザインは、単に3次元(空間)のデザインではなく、居住者にノスタルジアを感じさせる4次元の空間デザイン(歴史文化)です。TNDのデザインは建築様式として歴史文化の形状を担うものに限られます。ボールウィンパークの戸建住宅は、多種多様なデザインで造られていますが、モデルホームを基本にホームプランブックを利用して顧客が、「気に入った住宅を注文して」住宅が建てられているといいます。

(2)中央に大きな池と親水散策公園を囲んで造られた最高所得者向け住宅街区:
ボールドウィンパークの中心の一つが、約20戸余の大邸宅が大きな三日月池と高木と潅木と芝で埋め尽くされた親水型プロムナードを取り囲んで造られた公園住宅地です。この計画ではジョルジュ・オースマンがパリ改造計画で実施したように、公園を市民に開放する考え方に立っています。公園の回りに建てられた大豪邸群の全てが大きな池を囲んだ緑の空間を享受するだけではなく、そこに建てられた大豪邸地区全体が親水公園の構成要素として、居住者に「自分たちの宝」と意識できる都市型公園を提供しています。これらの豪邸はこの親水公園の雰囲気造りに不可欠な景観になっています。大豪邸群が存在しなかったら、親水公園の面白さ・重厚さは非常に削減されたにちがいありません、

(3)都市的居住としてのTND開発に挑戦した都心型中高密度開発地区:
ボールドウィンパークのダウンタウンは3階建ての共同住宅(コンドミニアム)や連続住宅(テラス)が駐車場を囲んで造られています。全ての住宅は、車道に顔(ファサード)を向け前面道路から6メートル以上セットバックして造られています。後退部分に高木による植栽とアーケードを多く取り込んだサイドウォーク(側道)が計画され、ヨーロッパの街並みの雰囲気をTNDの理論で実践したものです。
集合住宅地の駐車場は、住宅で囲われた表の道路からは見ることのできない中庭に造られ、路上の駐車は来客だけに限られています。駐車場が各住宅からの裏庭の眺望になっているため、駐車場は、植栽を多い庭園計画がされ、無味乾燥になりがちの駐車場の中庭が、公園の眺望として計画されています。表道路から車が進入し、人々が出入りする通りは、中庭が全て公園であるかように緑が計画されています。特に、居住者が駐車場に出入りしたり、駐車場から街並みに直接出入りする通りの眺望は、景観的にさまざまな工夫がされ、アーチや柱列を細部にわたって取り入れた空間造りとなっています。

道路計画はボンエルフ(歩車道共存道路)と呼ばれる歩行者優先の自動車の速度をハンプ(障害突起)と、道路幅を狭め植栽帯を広くし、駐車スペースを広く取り緩速にする道路計画です。道路に張り出してテーブルを広げ、アウトドア・カフェー、アウトドア・レストランは、都心の賑わいある景色を楽しみながら食事やお茶を楽しめるよう計画されています。都心で人間の往来を楽しむ生活空間として、賑わいを景観に取り入れた街造りとなっています。誰かに出会うかもしれないといった「お祭りに出かけるようなわくわくした期待を感じさせる空間が、都市の大きな魅力です。その演出がされているボールドウィンパークは、ヨーロッパ風の高密度な市街地のかもしだす雰囲気と、広く展望できる水面に開かれた広場を持った誰でもがこの街を散策しようと思う空間を造っています。私たちもそこを訪問し、疲れを忘れて散策し歩き疲れて、カフェーやレストランで食事をし、熟成しつつある都市の魅力を楽しみました。短時間でしたがボールドウィンパークの都市生活の一部を経験し、開発者の意図と具体的なしつらえを経験できました。景色として見ている風景の中に入ってみることが、計画者の意図を理解できました。

ボールドインパークが、「なぜ住む人にとって楽しくなるのか」、そのために、「どのようなランドスケーピングがなされているのか」、ということを半日の見学研修で学ぶことができました。ボールドウィンパークの計画は、非常の奥の深いランドスケーピングの知識を背景に、道路と建築物の関係を、居住者や当地への来訪者に見せるかという検討の集積がされています。優れた著作は、それを読む都度、新しい発見と興味を駆り立てられるような都市空間には、歴史文化が提供し与えてくれる興味の4次元空間が含まれています。設計者自身が気づかないで取り入れた柱やアーチのデザインや建築の様式、部材の形、材料の中に、歴史的な形態が担っている奥深い歴史文化の言葉を、生活者や来訪者に伝えていることも多く、人々はその文化を発見して豊かな気持に浸ることが出来ます。

HICPM月例セミナーの開催;

日時:3月22日木曜日

場所:HICPMセミナールームで

13:30-17:00:CMと住宅地経営管理の「三種の神器」

参加料。5,000円(HICPM会員3,000円)

(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷英世)



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