メールマガジン

メールマガジン第451号

掲載日2012 年 4 月 9 日

メールマガジン第451号(4月9日)
皆さんこんにちは

試練に挑戦している㈱大建の「荻浦ガーデンサバーブ」の取り組み
先週は福岡県糸島で㈱大建が取り組んでいる「荻浦ガーデンサバーブ」の事業のために現地に出かけてきました。㈱大建が、これまで日本の住宅産業の悪習に染まっていなかったため取り組めている良い面と、日本の悪い住宅産業環境に汚された住宅市場を相手に取り組まなければならない難しさで、大きな試練への挑戦を余儀なくされています。
顧客は、日本の悪い住宅産業を相手にしたため、住宅建設業者に疑心暗鬼で、建設業者が供給する住宅を見るまでは信用しない対応をしています。そのため、㈱大建では、「住宅地を全部造ってから判断してもらう」対応をしようと決意しました。
私は、㈱大建の駆け引きのない松尾社長の実直な対応に立派であると感じながらも賛成できません。私の福岡滞在中、HICPM会員の内海さんが訪問され現地でアドバイスをしてくれました。内海さんも松尾さん同様、住宅産業の建設生産業者として、非常に進取の気性を持って取り組んでいる経営者です。顧客の想像力の欠如した現状に対して、そのレベルを考えた取り組をしなければならないという的確なアドバイスをしていました。

誤った日本の注文住宅地開発
日本の住宅地開発は、住宅都市整備公団(現在のUR)の開発に象徴されています。
住宅地開発業者は道路、公園、上下水道、電気、ガス等のライフライン、学校、ショッピング施設等の利便施設を造るとともに、公共住宅用地を用意し、民間デベロッパーに卸売りする共同住宅地と、ハウスメーカーのために分譲住宅を用意する街造りです。
住宅地を経営管理する考え方は存在せず、宅地の売り逃げです。公共賃貸住宅は賃貸住宅を経営しても、「住宅環境を育て、住宅地経営をする」視点はほとんどありません。公共分譲住宅も全て売り逃げです。
公団は、優れた住宅地は「全て道路によって、優れた利便の最良な宅地になった」と説明し、周辺の宅地がどのような街並みが開発されるかには関心をもちません。仮にもっても、宅地購入者が購入した宅地は、十分な自由を持って開発できると説明し、又は、それぞれの周辺宅地が自分の購入した意図通りに開発してくれると説明し(騙し)、できるだけ高く売り逃げてしまうやりかたです。
そのため、個々の住宅は、全て公団が宅地分譲した敷地ごとに、「敷地との関係で最も効率の良い住宅を建築すること」に終始し、住宅地全体として経営管理する視点はありません。公団や公社の住宅地開発は、住宅地全体を美しい住宅地を造るという意図はありません。全ての住宅地を宅地購入者の購入能力に対応した土地に分割し、全ての宅地が道路によって開発地内のどの施設にもスムーズに行けるから、良い宅地であるとして売り逃げてきました。

「腐っていく住宅地」と「熟成する住宅地」
このような宅地の上にハウスメーカーが「差別化」といい、住宅性能や材料や工法が違う住宅を、「違いを住宅の優秀性である」と差別(騙)して販売してきました。
出来上がった住宅地は「無政府状態の貧しい住宅地」となって行きました。そのため、住宅地に住宅が建て詰まる都度、住宅地は相殺効果により腐っていきました。欧米の都市計画や優れた住宅地開発は、全体を「モザイク画」造りであり、都市計画や住宅地開発は、「モザイク画の下絵」であると説明されています。
個々の住宅地は「モザイク画」を構成する「モザイクの石」の相乗効果を発揮すると説明されています。人々は敷地と住宅を買うのではなく、住宅環境を購入すると考えます。住宅購入者は、マスタープランと住宅地に立てられる住宅に対する建築設計指針を見て、都市や住宅地が熟成する将来の住環境を容易に具体的に想像し、自らが住環境の担い手として熟成する住宅地に夢を乗せて住宅を購入します。公団や公社の住宅はもとより、民間の住宅開発を見てくると、住宅開発はほとんどが「腐っていく住宅地」であって、「熟成する住宅地」は例外にしかありません。

「荻浦ガーデンサバーブ」の人びとの生活
「荻浦ガーデンサバーブ」は、一般的な世帯年収600万円の国民が年収の3倍以下の価格で手に入れられる「欧米の優れた本格的な注文住宅地開発」を目指した日本で最初の開発です。
糸島市荻浦の歴史ある穏やかな既存集落と融合した住宅地に、新婚世帯から、子育てが終わって子供達が巣立っていった世帯(エンプティネスターズ)までの7段階のライフステージの人たちを対象に住宅を供給しています。住宅専門の設計者が、全ての世帯の多様なライフスタイルを想定した住宅設計を用意しました。住宅購入者はその中から自分に合った住宅を選択し注文し、家族の嗜好を盛り込んだ住宅を造ります。
この住宅地には、全ての世帯が豊かな近隣関係を育てられるように、子どもが飛び跳ね、水遊びをし、その様子を見ながら、近隣の人が談笑できる池のある公園が住宅地の中心にあります。
そこには来客や家族が宿泊することのできるゲストハウスや、皆で話し合い、居住者の趣味や関心を深める活動のできる集会場、子育てを支援する託児施設があります。
全ての住宅が、学習塾や習い事教室をすることのできる兼用住宅を基本とする住宅地が供給されています。これからの賃金の上昇が望めない時代に向けて、全戸が市民菜園をもち、自宅で居住者のできる能力を生かした店舗を持ち、仕事ができるダブルインカムを実現できる住宅で構成されています。人々は創意工夫を凝らし、自らの生活要求に合った生活を近隣との良い関係のもとで作り上げられます。この住宅地は住民が全員参加した住宅地経営管理協会を作り、㈱大建はこの住宅地の計画、設計施工を担当した専門業者として、建設後の住宅地経営管理協会の支援業者として半永久的に住民の生活を支援します。

住宅購入者が住宅を購入することで資産形成ができる住宅地
日本は人口が減少し、高賃金のため国内から企業が流出し、今後宅地は供給過剰が続き、地価は下落し続けます。㈱大建は、「地価下落の損失を住宅購入者に与えてはいけない」と考え、土地を住宅販売から切り離すことをしました。
世界の住宅地経営の最も優れた理論として現代も世界の住宅地経営理論としている英国のエベネッツアー・ハワードの都市経営理論「ガーデンシテイ」の経営に倣い、相続のない法人土地所有者の下で土地を売買の対象にしない借地経営と、住宅所有者全員加入がガーデンシテイ株式会社の支援を受けて住宅地経営管理を始めました。
住宅地を細分化し住宅を押し込めるのではなく、住宅地全体を全ての居住者が楽しめる環境とし、全ての住宅と居住者が環境の担い手であり、その良さを享受する受益者としての住宅地経営とすることにしました。
土地を売買の対象から外した住宅地経営により、住宅はいつも「多くの人たちが住みたい」と願う環境として維持されます。優れた環境管理ができる限り、住宅の資産価値は「今、その住宅を建てようとしたらいくらの費用がかかるか」(推定再建築費)で見積もられます。つまり、住宅の価値は物価と連動して評価され、地価が下落してもその影響を受けません。この住宅地は人びとが生活を始め、近隣と一緒に育てていく住宅です。神輿と同じように、皆がこの住宅地のルールを守ってお互いの生活を尊重し合い、お互いを大切にし合う良い住環境が育てられます。神輿にぶら下がるのではなく、神輿を皆で高く担ぎ、祭りを楽しむように、此処での生活を豊かにすることができるのです。

基本的に変えることが必要となる住宅販売の方法
これまでの住宅販売は、大きな土地を端切れに分割した宅地の上に住宅を建築するもので、その住宅は、隣とは絶縁された「一国一城の主」かもしれません、しかし、それは「端切れ国」の王様です。「荻浦ガーデンサバーブ」は、日本の中世にあった「堺」や「近江八幡」やイタリアの「フィレンツェ」のような「市民社会の都市国家」を造ろうとしています。
お金持ちもそうでない人も、様々な職業の人も、住民として対等な関係で尊重しあいます。豊かさを享受する戦後の開発ではほとんど例を見ない住宅地開発です。欧米の現在の住宅地開発では、ニューアーバニズム(米国)、アーバンビレジ(英国)と呼ばれ、居住者にセキュリティと生活の質が高い住宅地として高い人気に支えられてきました。1980年代以降、欧米先進工業国では、資産価値の向上する住宅地として急拡大しています。

自己責任で自分たちの生活を守る街づくりへのチャレンジ
現代の日本では、年金会計、保険会計など老後の生活を支えるシステムが赤字国債に蝕まれ、頼れなくなっています。中国の諺に「恒産なければ恒心なし」とあります。国民が資産価値の維持向上できる住宅をもつことで自衛をする必要があります。自分の住宅は家族にとって最も高額な資産です。自由主義国の最先端を走っている米国における国民共通の「アメリカンドリーム」は資産価値の維持向上できる住宅を持つことで、自分の生活を守ることができます。米国では、住宅が個人年金の役割を果たしてきました。
㈱大建は、国民の立場に立って住宅事業に参入しようとし、その供給している住宅を住宅需要者にいかに伝えるか、という日本で前例のない大きな挑戦をしています。
(NPO法人住宅生産生研究会理事長 戸谷英世)



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