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メールマガジン第458号

掲載日2012 年 6 月 4 日

メールマガジン第458号
みなさんこんにちは

5月28日にはGKK・HICPM共催バス研修ツアーを実施とし、「資産価値を形成する住宅地開発」として、マボリ・シーハイツ(タウンハウス)、披露山(ひろやま)庭園住宅地、プリリアテラス町田、サンクタス二俣川、サンクタス三ツ沢公園の5住宅開発をバスで研修ツアーを実施しました。以下、見学地で研修したものを紹介します。

米国の2×4タウンハウス(耐火建築物)とランドプランニング
米国で1960年代以降「アパート並みの住宅費負担で庭付き戸建住宅並みの住環境を提供する住宅地開発技術として「2×4タウンハウスとランドプランニング」が、米国の住宅地開発として「燎原の火」のように拡大し、米国の住宅産業を発展させることになりました。
米国は2×4工法住宅の耐火性能確認大火災実験カナダの成果(1958年、セントローレンスバーンズと呼ばれるダム決壊後の廃村での実験)で、「2×4工法タウンハウスに対し、耐火建築物ができる」とするカナダ及び米国の建築法の改正を受け、米国連邦住宅庁(FHA)が、2×4工法タウンハウスのモーゲージに債務保証(MBS)を与えた。その結果、タウンハウスに対してモーゲージが実行されることになった。タウンハウスは戸建住宅に対し、1.5~2倍もの土地の高密度利用可能にするだけではなく、エンベロップ面積を少なくして建設コストを30%以上引き下げることになり、「戸建住宅並みの住環境を、共同住宅並みの価格で取得できる」として全米に広がって行きました。

マボリシーハイツ(タウンハウス)と2×4工法タウンハウスモデル事業
日本でも2×4工法を普及させる取り組みが今から35年ほど前、住宅金融公庫が2×4工法タウンハウスをランドプランニングの技法で進めることで活用しようとして取り組んだ事業の一つが、青山正昂(NOVAS設計事務所)が設計し、西武不動産が施工したマボリシーハイツ(タウンハウス)です。この開発による住宅は、現在も建設当時の価格以上で取引され、依然、高い需要に支持され、2×4工法タウンハウスの優秀性を発揮した開発です。この事業には、以下の米国の2×4工法タウンハウス・ランドスケーピング技術が、住宅の資産形成技術に採用されています。
1.前面壁面後退技術:道路幅員と同じ幅のセットバックをする
2.集合駐車場:集合駐車場により歩車空間の分離を図る
3.中庭空間:中庭空間を設けることで間口を狭め、奥行きの長い住宅とし密度を高めている
4.ランドスケーピング:土地利用密度を高め優れた住環境を形成する
当時、全国各地で同様の優れたタウンハウスが、建設され、住宅地環境としての街並みを作る事業として社会的に評価を高めていました。

政府がハウスメーカーの要求に迎合して潰したタウンハウス事業
しかし、残念なことに、中途で大多数の差別化戦略で住宅販売を拡大しようとするハウスメーカー利益と、それと癒着した官僚、日本住宅公団理事、大規模宅地開発業者とそれらに関係する政治家の利益のために、ランドプランニングを駆使したタウンハウス事業は抹殺されることになりました。
この技術は、欧米先進工業国では優れた街づくりの技術として使われており、現代の日本においても国民の利益になる日本の住宅産業にとって救いの技術として、もう一度復興させるべき技術です。これらの実例は、この技術が日本において、30余年経過してどのような街に育っているか、そして、住宅購入者の利益になったかを知ることができる参考事例です。GKK・HICPMは,マボリシーハイツ(タウンハウス)を優れた事例として評価し、すでに今回を含めて3度目の研修地としてツアーを実施し、高い研修効果を上げてきました。今後も、再度、研修地として利用する予定です。

マボリシーハイツ(タウンハウス)に関係することで、本開発の2×4工法の特色と研修内容に関係する「以下の秘話」は、バス内でのセミナーで不十分にしか説明できませんでした。
1.米国とカナダが国民の利益を増すための2×4工法の推進した「愉快な話」
2.官僚と御用学者が彼等の利益のため、国民に不利益を与え2×4工法を妨害した「怒りの話」
その秘話は、現在の日本の2×4工法が、欧米と違って国民に期待通りの利益を与えていない理由になっているので、2×4工法を正しく理解し応用するために、次号で解説することにしました。

披露山庭園住宅
TBS興産が40年ほど前に米国の優れた住宅地に倣って開発した日本を代表する高級住宅地です。田園調布にも共通していますが、この高級住宅地も米国の優れた住宅地を手本にしたと説明されています。高級住宅という意味で共通していることは、金持ちと考えられる人たちが住んでいるということでだけで、住宅地の空間は無政府的です。コシノジュンコが安藤忠雄に設計させた住宅のある関西の高級住宅地「奥池」は、時代の流行のデザインの住宅で埋まっています。
建設当時は建築雑誌を賑わした住宅が、流行が過ぎ去って、今は色あせた住宅地です。関西最高級住宅地といわれる六麓荘も似たり寄ったりで、これらの住宅地を見ると如何に関西の財界人が、「芸者遊び」のように「建築家遊び」をしてきたかを証明しています。
米国のハリウッドにも、お金持ちがその時代の有名建築家に建てさせる「成金趣味の建築物」もあることは否定しません、しかし、クラシックデザインが中心となっているため色褪せてはいません。その理由は、設計を担当した建築家の多くは、安藤忠雄や黒川紀章や高松伸のような流行作家ではなく、歴史的な建築様式の知識、経験を持っている建築家が、建築様式の歴史を理解し建築主のニーズに応えているためです。欧米の多くの建築は、それ自体が歴史文化を伝承して設計され、流行だけを追う住宅は、政府(FHA)がそのモーゲージに債務保証をせず、「どぶにお金を捨てるもの」と考えられています。
日本の高級住宅地に流行建築家が建てている住宅は、金融機関が資産価値の評価をしない住宅であり、建築主の個人信用によりローンが出されている遊びのための住宅のためです。披露山の高級住宅でも、居住者が入れ替わる都度、確実に「高級住宅」は建て替えられ、そこでの生活を維持できなくなった人は、必ずそれまで住んでいた「高級住宅」を取り壊して転出しています。既存の「高級住宅」はこの地では、持ち主が代わる都度、その住宅は「建設廃棄物」になると考えられています。
自分が住んでいる間だけは、その住宅地に住んでいることで、その財力を誇っていますが、居住者自身も、そこに移住しようとする人も、社会的にそこに建てられた「高級住宅」自体が価値のある住宅と評価することはありません。
相隣の住宅は、相互の勝手気ままな「差別しあう」デザインによって、お互いに傷付けあい、お互いをけなしあっているように見えます。欧米の住宅地に建つ住宅は、相隣の建築物を相乗効果をあげるように配慮し、お互いの住宅を引き立たせるように建築されているのと対照的です。
披露山庭園住宅地は、住宅なのか、それとも事務所建築なのかが分らない大きな窓を持った近代建築も沢山建っているため、高級住宅地であるという説明を聞かないと、住宅地なのか、研究所団地なのか、事務所団地なのか当地を歩いて見るだけでは分りません。

この地に住宅を構え建築設計業を営んでいるHICPMの会員であるOさんの奥さんの案内で、ご自宅と披露山住宅地の案内をしてもらいました。プールが玄関の対称の位置の裏庭の位置に造られた素敵な住宅です。その住宅が建設された当時、裏庭の背景として存在していた住宅を、Oさんは「自宅からの眺望」に生かして計画していました。しかし、居住者がこの地から転出すると同時に取り壊されてしまい、その住宅を生かした眺望計画は、大きく狂わされてしまいました。

このように近隣から景観に取り入れられていた住宅を壊すことも、悪質な住宅を建てることも、住環境の破壊に繋がることになります。披露山の開発の「資産価値のある住環境を造っていくという開発の理念に共感して入居したOさんご夫婦は、自宅のある披露山を美しい街並みにするように努力されたとのことです。しかし、この住宅地経営自体が、一部のボスたちによる業者丸投げの植栽管理中心の「似非HOA」であるため、これまでのOさんの努力は多くに人から取り上げられず、徒労に終わっているようでした。

プリリアテラス町田、サンクタス二俣川、サンクタス三ツ沢公園
いずれもHICPMの渋谷理事が設計された住宅で、そこに建っている住宅は、それぞれ個性をもち違うデザインの住宅として設計されています。しかし、相互にデザインが相乗効果を発揮し、全体として魅力ある街並み景観を作っている点で披露山住宅と興味深い対照となっていました。この3つの住宅地は、いずれも米国の建築様式とその建築のディテールにこだわり、忠実に生かそうとしたものでした。そのため、いずれの住宅デザインも時代の中で吟味された「年をとらないデザイン」として、見る人に感動を与えるものとなっていました。
時代を超え飽きることのない住宅のデザインで造られるのが街並みは景観文化です。居住者にとって建築デザインは自己のアイデンティテイを示すものです。自分の好きなデザインを歴史文化のなかから見つけ、それを日常生活の中で楽しみ、それを次世代に伝えて行くことのできる住宅が住宅購入者の求めている住宅です。

そのような住宅は、居住者が住み代わっても、取り壊されることはなく、その建築文化を楽しむ人によって住み継がれ、「わが街」(アワーストリート)のデザインとして、居住者が帰属意識を持てる街並み景観となり、その景観を居住者がまもり育てていくことになります。そして住宅地は時代とともに熟成して行くことになります。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)



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