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メールマガジン第460号

掲載日2012 年 6 月 18 日

メールマガジン第460号

皆さんこんにちは、

今回は、先月末に実施した「アメリカ建材セミナー」についてお話します。

5月28日から、ワシントン州政府主催のアメリカ建材セミナーキャラバンが開催され、横浜の洋風街造り研修ツァー(28日)を皮切りに、東京(29日)、仙台(30日)、盛岡(31日)、岩手震災地視察(6月1日)、と約1週間、北米からの建材販売業者と共にセミナーをして回りました。

アメリカ建材セミナー
HICPMの理事、小金沢さんと私がキーセミナーを担当しました。私自身このセミナーに10年近く関係しますが、参加者の顔ぶれは大きく変化し、住宅産業界の構造変化を感じています。20年前、円高が昂進し、1986年頃のプラザ合意後の輸入住宅を政府が牽引していた頃と円高環境はよく似ていますが、セミナーの雰囲気も、参加者の意気込みにも、その当時の面影は全く見ることはできません。それでも、例外的に、当時の輸入住宅に取り組んだ人もいて、懐かしく感じますが、輸入住宅に対する関心も全く変化し、お互いに相手側が分からないほど老人になっているのを感じます。

輸入住宅ブームで無視された課題
円高が急激に進行したことだけは共通していますが、基本的な経済関係の違いは、住宅産業が為替差益を手に入れようと建材輸入に業界上げて取り組んでいる時代と、住宅市場自体が経済の衰退で先行き賃金上昇が見込めず、輸入住宅事業で円高による為替差益が得られる旨みがなくなって、輸入建材によって住宅価格を引き下げることに期待できなくなった時代の違いです。当時も日本と米国の住宅価格差は約2倍あり、米国のホームビルダーと同じ経営をすれば、日本の工務店が供給している住宅を半額で販売しても、米国のホームビルダーが得ていた利益と同額の利益が得られると考えられていました。手に入れられる利益をみすみすも逃すことはないと言う感覚が、当時は社会全体に漲っていました。

日米価格差の原因は住宅建設業者の経営(CM)生産性
日米住宅価格差は、建材の価格差にもありますが、その差は、材料費の為替差益による部分では、どれだけ大きく見込んで間住宅価格の10%程度にしかなりません。そのほとんどの90%が両国の住宅建設業者の経営(CM)にある問題で、その問題解明は為替差益の獲得と、その後に続くバブル経済の中で、米国のデザインの住宅は高い価格付けで売れるとして、高級住宅やリゾート開発の販売技術として利用されました。しかし、工務店の住宅建設業経営の技術(CM)として学ばれることはありませんでした。そして、高額住宅は住宅購入者を自己破産に追い込み、輸入住宅ブームは国民に悲惨を産んだと言うことで、時代から消し去られていきました。その結果米国の住宅建設業経営技術(CM)は全く解明されず、活用されないまま、積み残されて現在に至っています。

建材の安価買い付けをCMと結びつけること
現在の日本では、関心は、「目先の建材購入を、如何に安くするか」に関心が向けられています。建材価格で競争する場合には、ハウスメーカーやいわゆるパワービルダーのような建材の大量買付けをする企業が優位になり、統計上、工務店のシェアーは大手住宅会社に奪われているという状況になっています。しかし、日米の住宅価格に関しては、同じ品質の住宅であれば、まだ2倍の価格差があり、その原因が日本の住宅建設業者の経営体質にあるため、「米国の住宅産業に学ぼう」という気持ちが生まれず、建材の背後に隠れている米国のホームビルダーの高い生産性が見えないため、米国建材セミナーに工務店が集まらない理由になっています。

高い工務店利益と高い建設職人賃金の実現
全米ホームビルダー協会の中にもジャイアントビルダーといわれる大手住宅建設業者のシェアーは拡大しています。年間2-5戸の小規模ホームビルダーは、地の利を活かし過去の事業の信用で、紹介客による営業費ゼロの小規模な小回りのよさで、その地方ではジャイアントビルダーと対等の競争をしています。それでも、下請け業者の生産性を高めるために、地方のホームビルダー協会では競合しあうホームビルダー間で仕様の共通化、ディテールの標準化、規格化、単純化、共通化に取り組み、下請け業者が生産性を上げ職人によい賃金を与え、結果的にホームビルダー自身の「期間あたり粗利利益」を最大化する取り組みをしています。その中でジャイアントビルダーの資材購買力に対抗できるように、使用材料をホームビルダー同志で共通化する取り組みが行われてきました。

ホームビルダー(米国)の関心と、工務店(日本)の関心
米国のホームビルダーは住宅製造業者として生産性を高めることに関心が向かっているのに対して、日本の工務店は建設サービス業として、1戸当たりの粗利を大きくすることに関心があっても、生産性の向上にはほとんど関心を持っていません。日本の工務店は、受注さえできれば粗利が入るという考えで、顧客を獲得することに関心が向いています。
一方、日本の住宅を生産する工務店として、期間当たりの粗利や労賃を最大にし、優秀な専門工事職人を獲得しようとすることには関心がありません。下請け業者は、相互に競争させあって、安い下請け代金で使おうとします。そして、競争相手で働くときは、自社で使った技能を使えないようにしようと考え、ディテールや仕様を変えようとします。それを住宅会社は「差別化」といっています。結局、生産性が悪い分だけ建築主に大きな負担をかけさせることになります。

米国の住宅産業のシステムを受け入れること
工務店の関心が、顧客を獲得することにあって、現場の生産性向上に向かっていないため、米国から来日した企業の関心も、専ら、工務店の関心事である材料の品質の説明に特化することになります。米国内で優劣を競っている「生産性の問題」は、日本では検討問題から外されています。米国ではホームビルダーの関心事は、住宅購入者のニーズにあった住宅をその購買力の範囲で供給し、「工事期間当たりのホームビルダーの利益を如何に最大にし、また、職人の期間粗利の賃金を最大にするか」にあります。しかし、日本では一戸当たりの住宅で最大利益を上げることに関心が偏っています。

バブル崩壊後の米国の住宅産業で取り組まれていること
昨年NAHB(全米ホームビルダー協会)のリモデラーショウに出かけたときに、そこで実践していた催しは、「如何に、現場で生産性を高めることのできる材料であるか」、ということを強調していることと、住宅産業界自身が住宅製造業という姿勢を見て、あらためて感心しました。そして、日本の工務店が高い利益を上げるために米国から学ぶべきことはこの「生産性の向上」に集約されるのではないかと思いました。そのためには、まず住宅の価値を工務店が決めるのではなく、住宅取引の現場である「直接工事費を市場価格に反映」しなければならないと思います。それは金融機関がモーゲージローンとすることで、金融で住宅の価値を裏付けることがまず必要だと思います。

住宅の資産が向上し続ける住宅の作り方
価値が金融機関で評価されることにより、住宅を資産価値という視点で見ることができるようになります。現在の日本では、住宅を購入者が、それを売却しようとしたら確実に購入価格より販売価格が下落するという状況です。このような状況では、住宅は資産として考えることはできず、負債を購入することになってしまいます。今回の米国建材セミナーでは、私は住宅の資産価値とは何か、売買差益の得られる住宅地経営とはどのようなものか、そして住宅の取引価格を高めるためにどうすればよいかという話をしました。小金沢さんもこの点を、「無理、無駄、斑」をなくするCMの話しをされ、相乗効果が出せたのではないかと思います。

「ホームビルダー20」の取り組み
私達は、この時点にあって、今回、「新しいHICPMの取り組み」を始めようとしています。
それは住宅建設業経営(CM)を学んで、経営自体を会依然しようとしている工務店を対象に、工務店がグループ化して工務店経営の経験交流と情報を交換し建材供給、設計図書の供給、建設業経営管理(CM)の知識を一体的に学習する米国のNAHBが実践している「ホームビルダー20」の日本版を実施に移すことだと考えています。ご関心のある形はお問合せください。本メールマガジンでも、取り組み情報はお知らせすることに致します。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

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特定非営利活動法人 住宅生産性研究会(HICPM)
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