メールマガジン

HICPMメールマガジン第474号

掲載日2012 年 9 月 24 日

メールマガジン第474号(9月24日)
みなさんこんにちは、

先週福岡県糸島市の「荻浦ガーデンサバーブ」の事業の中間総括をする機会がありました。以下その内容をこれから5回に分けてご紹介します。

荻浦ガーデンサバーブ開発のノウハウ:5つのポイント(第1回)

第1.    住宅取得による個人資産形成
購買層の想定:年収の3倍以下で、かつ、その住居費負担が毎月の所得の25%以下の負担で購入できること(住宅事業者が金儲けをすることを目的にするのではなく、住宅購入し者が幸せになるための事業をすることを目的にしました。)

住宅は個人の購入する物のうちで最も高額な物です。住宅は欧米でも、年収の3倍程度の価格以上の住宅を購入することは住宅購買者の生活を破壊するので、金融機関がそれ以上のローンを組ませません。年収の3倍ということは、3年間「飲まず、食わず」の生活をしないと貯まらないお金が必要ということです。実際はローンには金利がかりますので、住宅ローン返済総額はその2倍の年収の、6年分の所得が使われることになります。住宅は、そのような高額な買い物ですから、購入した住宅が資産としての価値を維持向上するか、それとも住宅の資産の価値を下落するかによって、住宅購入者は、豊かにもなり、貧しくもなるのです。荻浦ガーデンサバーブは、住宅を購入者が、住宅を購入したことで生活が苦しくなったり、資産を失ったりしないようにしなければならない、ということを基本において開発計画を立案しました。

荻浦ガーデンサバーブの開発は、欧米の住宅、中でも英国のガーデンシテイが追及してきた目標として、「人々が豊かな生活を営むことができ、そこで生活することにより住宅自体の資産価値が向上(資産が増殖)し、将来的に住宅の資産価値を頼りに、経済的に安定した生活が営める」ことを目標に、この開発に取り組みました。

その具体的な方法としては、我が国の中産階級(世帯年収600万円から700万円程度)をイメージして、住宅規模としてあらゆるライフステージの変化に対応できるフレキシブルな住宅として、延べ面積150平方メートル程度の住宅を供給したいと考えました。
すると、年収の3倍程度の住宅価格で、住宅ローンは年収の2.5倍程度以下という購買者層が決まります。販売価格は2,000万円前後を目標にします。その購買層としての所得水準としては、当面、賃金が先行き上昇することを期待することができませんので、世帯年収として600-700万円ということになります。すると、購買層はダブルインカムか、または、親からの遺産相続や住み替えなど頭金を多くして住宅ローンを引き下げるような方法で、住宅ローン返済、地代、維持管理、修繕積立、保険、HOA費その他住宅費負担がすべて合算して毎月の所得の25%以内(15-17.5万円)に収まる購買層を想定しました。
今回提供した品質の住宅で、延べ面積150平方メートルの住宅は、この周辺では、土地付きで3,000万円程度でないと購入できません。

アグリカルチュラルアーバニズムの考え方の導入
2002年にオランダで始まった近未来の都市のあるべき姿・アグリカルチュラルアーバニズムの取り組みが世界的に広がり始めました。この取り組みは先進工業国の都市のあり方を考える上での基本問題を提起したものでした。
仮に、皆さんの所得が少なくなったとき、家計支出の中からどの費用を節約しますか。ほとんどの場合、食費ではないでしょうか。昼食の単価の切下げ、朝飯抜き、弁当持参など、既に現在、その取り組みが見られます。実は、食糧へのしわ寄せの大きな変化が、先進工業国では地球規模で起きています。
昔は南北問題、即ち、先進工業国と発展途上国は、資本集約的産業と労働集約的産業という産業種類で「2極の分業」が成り立っていました。しかし、発展途上国の教育水準が向上し、先進工業国の資本が発展途上国の優秀で安い労働力を求めて移動することにより、先進工業国から資本集約的産業自体が発展途上国に移動し、先進工業国では資本収支の上の利益を奪う産業経営や金融関係の業務は残りました。全ての産業部門で、労働力として使われる人間は、発展途上国で現地の人たちが、労働力の中心になりました。

インドやパキスタンといった数学教育の進んだ国では、欧米のIT関係の業務を担い、一般的に、重厚長大産業はほとんど発展途上国に移りました。先進工業国では産業の国外流出で、公害がなくなったと同時に雇用機会もなくなっていきました。
その結果、発展途上国では労働機会が増え賃金が上昇しました。賃金が増えたときにまず増加する支出は食費です。美味しい食事を腹いっぱい食べるという欲望を満たすため、食費が増大します。
すると、発展途上国では、これまで先進工業国に輸出していた農・漁業生産品が生産地である発展途上国で消費される比率が高まります。その拡大速度は急激で、その価格上昇も急速に進んでいます。そのため、生産地での消費量が拡大し、先進工業国への輸出はこれまでの量及び価格での供給は不可能になってきます。
先進工業国では、今後、長期にわたって先進工業国と発展途上国の賃金が平準化する時代が来るまで、一貫して、失業が増え、賃金が下落傾向を辿ります。
発展途上国ではその逆の現象、即ち、雇用機会が増大し、賃金が上昇し続け、食糧庁費が急拡大することになります。その結果、先進工業国では「食の問題」が、供給量と価格の問題で緊迫してきています。
かつて、農本経済の時代にマルサスの『人口論』が、経済学の中心にありましたが、その後の産業革命でマルサスの理論も有効ではないと言われるようになって久しくなりました。しかし、現代、再び、先進工業国において、マルサスの『人口論』を、食糧自給の上現実の問題として考えなければならないという議論が広がっています。

荻浦ガーデンサバーブのアグリカルチュラルアーバニズム
荻浦ガーデンサバーブでは、将来的に農業を住宅地経営と一体的に考えるという課題を視野に置き、当面住宅地の中に市民農園用地を準備するとともにアグリカルチュラルアーバニズムの理論の中で提起されている「バルコニーでのプランターによる野菜栽培」を実施することも視野に置き、地域の農家の産地直売といった農業問題を考えてきました。
ドイツでクラインガルテン(市民農園)が、第2次世界大戦前に、初めは、シュライバー医師の市民の健康という提唱で始められました。しかし、その後、第一次世界大戦で法外な賠償で苦しんだドイツは「土地を耕すことは愛国心の発揚」として、ヒットラーユーゲントの愛国運動の一環にも組み込まれました。しかし、第2次世界大戦後は、軍国主義の再発防止のため、米国がマーシャルプランで敗戦国の経済援助をしたことから、「クラインガルテンは戦時下の農業生産中心から、園芸」に転換しました。
しかし、現在は再び、園芸を農業に戻す必要がアグリカルチュラルアーバニズムの方向で提起されています。荻浦ガーデンサバーブでは居住者が生活の環境を見て、プランター園芸から、やがて「サラダの野菜はプランター栽培」に向かうことを計画した組み込みが始まっています。

ダブルインカムの実現
一家の働き手の所得が、先行き拡大しないときはどうするかというテーマに、荻浦ガーデンサバーブはダブルインカムを実現する必要があると考えました。そのため、主婦の家事・育児労働の軽減や要介護者のケアーが必要になり、住宅地として、学童保育や育児、デイケアー等の仕事を導入する必要があります。育児には、子どもの年齢や成長に合わせ、学習の補助、音楽や芸能など子どもの情緒教育や才能の開花を促す場も必要です。
日本は高学歴社会になっているので、教育カリキュラムやテキストがあれば、一般の主婦が子どもの教育の手助けをすることは決して難しくありません。既存の学習塾や外国語や音楽教室のシステムを利用して、主婦が塾や教室を開催することもできます。これらの仕事もそれ自体が荻浦ガーデンサバーブの住民の所得を生み出すものになります。
荻浦ガーデンサバーブの位置している糸島市は九州大学が移転してきたところで、その学生を下宿として受け入れることも可能です。そして親からの仕送りが厳しくなっている学生に子供達の教育の世話をしてもらうことは、アルバイトの機会も減少した学生の収入を増やす機会になります。
そのような無数の可能性を実現できるように、半地階で46平方メートルもある空間を全ての住宅に用意しました。一家の所得を支えている世帯主も、雇用先の賃金のほかにサイドワークとして所得を増やすことをしなければ生活全体に余裕は生まれません。その要求に応えてホームオフイスも容易につくれます。老親との同居することにより住宅ローン負担を2世代でシェアすることもできます。

「ローカルマネー」の考え方
荻浦ガーデンサバーブは入居者が育てていく住宅で、住む人たちによって個々の生活自体が代わっていきます。個々でダブルインカムといっていることも、入居時点からダブルインカムのライフスタイルで入居する人もあれば、入居後、生活困窮度により、大きな経済的余裕を作るためにダブルインカムになる人もあるかもしれません。
さらに、この住宅地で計画していることは、この住宅地に生活している人びとの間で、お互いにその固有の能力を活かし、それが所得を得ることのできる機会にすることもあります。住宅地の生活者全体の所得総額が同じでも、例えば、学生を安く下宿させ、学生には子どもの教育の世話をしてもらい、学生には居住者が市民農園の野菜も使って食事のサービスをするという循環が生まれます。お金(お足)が行き来することで関係者の所得は拡大します。学童保育や育児支援をする人も所得が増え、主婦は働きに出られ所得を高め、地域外からこの住宅地にお金を持ち込むことになります。
このようなシステムは居住者がそれぞれの生活を模索する中で造り上げられるもので、最初から整備されているわけではありません。コモンハウスがあり、荻浦ガーデンサバーブにはゲストルームと集会室があります。住宅は全て半地階の多目的利用の空間があります。それらを住民たちがどのように活用してダブルインカムを可能にする生活空間にしていくかは、入居者が考えることです。
現在おかれている社会経済環境の中で居住者が自力で豊かな生活を実現しようとするとき、それが叶えられる空間が必要です。居住者が生活を始めてから、生活の中でお互いに役に立てる能力を発見し、活用することがダブルインカムに繫がる生活を可能にします。
その過程でIT技術の学習や、会計経理技術、育児技術、食事、健康、福祉などの技術も必要になります。荻浦ガーデンサバーブではそこに住宅地経営管理協会があり、㈱大建がその技術的な下支えをすることで、安い費用でITなど必要な技術を学び、居住者がダブルインカムへの途を拓くことを支援することになります。

来週以降4回にわたり荻浦ガーデンサバーブの計画について紹介してまいりますのでご覧いただきご意見をお寄せくださることを期待しています。また直接(株)大建のホームページをご覧になると、現在の状況をご理解いただけます。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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