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HICPMメールマガジン第477号

掲載日2012 年 10 月 15 日

HICPMメールマガジン第477号(10月15日)
みなさんこんにちは

HICPMメールマガジン第473号から我が国で最初のニューアーバニズムによる住宅地開発に取り組んだ(株)大建が福岡県糸島市で取り組んだ「荻浦ガーデンサバーブ」野開発のノウハウ』5つのポイント」を紹介してきました。今回は第4回目です。(株)大建のホームページや有チューブでも開発の概要を調べることができますのでご覧になってください。

荻浦ガーデンサバーブ開発のノウハウ:5つのポイント(第4回)

第4.    ストーリーとヴィジョニング(歴史文化と、エコロジー環境)
全米ホームビルダー協会のNAHPプレスが発行している住宅地開発のランドプランニングのベスト・セラー・テキスト「コミュニティづくりの理論と技法」(HICPMビルダーズマガジンで60回連載)の中で、ストーリーとヴィジョニングが都市経営上で最も重要なことが繰り返し記述されていました。荻浦ガーデンサバーブの開発においては、その考え方を一貫して実践するように努めました。

住宅地に取り入れる歴史文化
フランク・ロイド・ライトが「建築の4原則」の「第一の原則」は、「土地を大切にせよ」ということです。それは土地そのものが人類の生存以前から現在までどのような使われ方をしてきたかの歴史文化を知ることであり、土地そのもの担ってきた地理、気候、風土、人間の生活文化との関係を知ることができます。それは土地そのものの持っている個性を正しく理解し、それを生かすことを指しています。長い土地の歴史を学ぶことにより、その土地の性格を正しく把握することができます。少なくとも住宅や住宅地、都市は土地に定着して形成されるもので、土地を無視して存在することはありません。
土地といえば、太陽(温熱、陽光)、水(雲、雨水、表流水、地下水)、土壌、風(風向、風力)、植生(樹木、植物、羊歯、コケ類)、動物、鳥類、昆虫、爬虫類、両生類、魚などの歴史をたどればその特性「性格」を知ることができます。これら地誌、地理、水文、森林、河川などの学問として学ぶことができます。この学問は西洋学として研究されてきましたが、東洋学でも、「風水」として古い時代から都市計画の技術として街づくりに使われてきました。
風水は、中国で生まれ、中国全土、台湾、朝鮮を経て日本にも及び、飛鳥・天平時代から江戸の街づくりまで、都市の立地選定と都市計画の基本となってきました。朝鮮では首都を決めるために風水師を動員し、まず風水の思想で選ばれた31の候補地の中から厳選しソウルが首都に選んだという経緯があります。風水の理論を西洋学的に説明する技術がなかったため、易学、陰陽学、五行説などを利用して風水の説明がそれぞれの学派によって行われたため、風水はその採用されている国ではどこでも混迷を極めています。

風水の理論」と荻浦ガーデンサバーブ
風水の基礎理論は、人間の生活環境は、天にいます「天父」と、地にいる「地母」の間の地上空間を守る四神(玄武、青竜、白虎、朱雀)で囲われた「四神相応の地」の中心(穴)に「天父」が定めた「天子(支配者:王)」の宮殿をつくると、崑崙(こんろん)の地から竜が地上及び天空を通して「気」を運んで天子に大きな力を与えます。すると、天子は大きな仕事を行い、その国は反映する、という思想です。四神の位置を東西南北に対応させる説明は、易学の説明を持ち込み、こじつけで、四神の位置と方位とは基本的に無関係です。
「気」とはエネルギーのことで、その基本は「水」のエネルギーを指します。地上を流れる水は「川」で、天を流れる水は「雲」で、雲は山(地形)と風によって流れを決定します。山(地形)を「龍脈」といって龍が「気」を運ぶという考え方です。
この考え方は、環境都市フライブルクのヴォ―バンの都市計画と同じ考えです。ヴォ―バンではシュバルツバルト(黒い森)から、水と空気を街に引き込む計画思想を基本的に取り入れています。ヴォ―バン(フライブルク)の都市計画は、風水理論でも十分説明できるものです。風水は現在、欧米でも専門家の間で見直され高い評価を受けています。
荻浦ガーデンサバーブはその土地の東に穏やかな丘陵地が拓け、そこに150年以上前から豊かな村落が開け始めました。その方角を「玄武」に見立て、住宅地の北にある敷地にある立派な農家住宅を「白虎」に見立て、住宅地の南側に7戸の戸建て住宅がアタッチドハウスとして建設される棟を「青龍」に見立て、敷地の西側のJRの軌道に面した方角を「朱雀」に見立て、この微小地形を「気」が穏やかに潤して流れる計画にしました。
四神に囲まれた空間の中心(穴)に、この敷地では降雨する雨水を貯留する地下貯水槽があって、地下から汲み上げる水が、年中同じ水温の水が、地上につくられた金魚やメダカの生息する池を潤し、住宅地内の道路を流れる計画としました。道路内に水路を設置することは福岡県の妨害でできませんでしたが、今後つくることも十分考えられます。

誰に住んでもらうか(入居者の選定)
NAHBのテキストでは、この住宅地に住んでもらう人を想定し、その地が担っている歴史文化に基づく要求(ニーズ)を明らかにしなければならないと記述されています。それがフランク・ロイド・ライトの「建築の4原則」の中の「第2の原則」と「第3の原則」です。「
第2の原則」は、同じ生活空間を設計するときも、その使用材料と工法とが、空間の担う歴史文化を規定するという考えです。この地に居住を希望する人たちは、過去の生活の中で経験した歴史文化の中で、その嗜好に適合するものに懐かしさを感じ、帰属意識を持ちます。「わが家、わが街」という意識を持てる環境は、その人たちにとっての宝です。それを「宝」と思う人が、その「宝」を大切にします。
「第3の原則」は、当時「ルネサンス様式にあらずば、優れたデザインではない」という時代を反映して生まれました。世界中からその国を代表するデザインの建築物がシカゴコロンビア博覧会で建設されました。ライトは日本から出展された宮大工が日本でプレカットした材料を組み立て展示された宇治平等院鳳凰堂の2分の1の模型を見て感動し、それをプレーリー様式のモチーフにしました。それが多くの国民に受け入れられ社会的人気を博しました。それを面白くないと思った米国の建築家から、ライトは袋たたきにあいました。
建築は住む人のニーズに応えて造られるべきで、優れた建築とされた建築物をあてがわれて生活するものではないとライトは考えました。それがライトの「第三の原則」・「箱をつぶせ」という言葉であり、ルネサンス建築に抵抗しました。
ライトは「第4の原則」で、住宅はそれぞれ居住者ごとに個性をもってつくられるものであるが、その個性は相互に尊重されなければならない(居住者はお互いに住宅地のルールを尊重し合い、そのライフスタイルの違いを尊重し合わなければならない)ということを「建築住宅は民主主義の実現」という言葉で言い表しました。

ヴィジョニング:生活文化空間
居住者が「わが家、わが街」と帰属意識を持てる住宅地をつくるためには、居住者が過去に経験した懐かしい住宅都市空間をつくらなければなりません。クラッシクデザインとは、居住者の心象風景として心の中で懐かしさを感じるデザインです。
NAHBのテキストでは、同じ空間に取り入れるデザインは、住宅地の中には、いろいろなデザインが取り入れられることがあっても、全体として調和がとれ、相乗効果をあげることのできるデザインとすることが必要です。
そのためには、デザインの基礎旋律として全体のベクトル(方向性を持った力)を決定するデザインを決める必要があるといっています。それがヴィジョニングであると記述しています。ヴィジョニングは開発する土地とそこに居住することになる人びとの歴史文化の結びつきの成果として編集されるものです。人びとは歴史文化の中でつくられた優れた環境を享受し、豊かさを味わい、それを未来の子孫に残していこうと考えています。その意味では、現在生きている人たちは、大きな住宅都市の歴史文化の現代における担い手であるにすぎません。
住宅や都市は3次元の空間をつくっていますが、それが歴史文化を担って伝承するものであるという点で、時間という4次元の空間になるのです。ビジョニングはまさにその4次元の空間の方向付けをする過去から未来につなぐ開発を指導するイメージなのです。

参考:TND開発最初の定住型住宅地ジョージタウン:ケントランドのヴィジョニング

米国のワシントンDCから45分程度のドライブで到着できるケントランド(メリーランド州)、環浸透うDCで活動する政治、経済、金融、行政等に関する国際的、又は全米を対象に活動する人たちが、ジョージタウンのようなワシントンDC内に得ることができなくなった住宅地として開発されたところです。大きな仕事をする人は個人ではその仕事をすることができず、多くの人間関係によってその理想を実現しています。そのためには、お互いを理解し合うことが必要で、そのためには公式の場での話し合いだけではなく、個人的な相互理解が必要です。そのために一緒に仕事をする人と個人的な信頼関係をつくるために家庭にその人を招き、お互いに理解し合う努力をします。そのために住宅地のロケーションはワシントンの中心から最低1時間以内で到達する時間距離にある必要があるということでケントランドが開発されました。ケそのケントランドのヴィジョニングとしては、英国から自由を平等と博愛の理想を掲げて独立した象徴として、米国の植民地時代の首都があったウイリアムバーグの領事に邸宅(マンション)と、ケントさんという昔の英国からやってきた貴族の末裔が、地元の人たちに自分の領地に大きな湖をつくり、仮や釣りを楽しめるようにした自然環境を大切にし、エコロジカルな生活を大切にすることを象徴するケントさんの大きな倉庫農業用(バーン)を、この町のヴィジョニングとして使っています。

荻浦ガーデンサバーブのヴィジョニング
荻浦ガーデンサバーブの開発は、英国の工場街ガーデンヴィレッジ、ハワードのレッチワースガーデンシティ、ヘンリエッタ女史のハムステッドガーデンサバーブ、戦後のハーローニュータウン、ミルトンケインズニューシティなど多くの住宅地開発を見学して、それに倣った住宅地として英国の住文化にあこがれる人たちを想定し、レンガによる住宅地を計画する予定でこの地の調査に入りました。
しかし、この地の隣接地に素敵な農村集落があるのを発見して、隣接地やその近隣住区と調和のとれた街づくりをしないと、お互いに相乗効果を上げることはできないと思われました。隣り合う住宅地相互が、お互いが傷つけあうのではなく、お互いが助け合うような開発にしようということで、地域のデザインを検討しました、黒の焼瓦と白の漆喰壁という計画のヴィジョニングが決定されることになったわけです。
住宅地の北側には大きな南庭を持った住宅がありました。現代の住宅会社が建設している日本の多くの住宅は南側に庭を造っています。そのような住宅を建てると既存の住宅の庭は死んでしまいます。荻浦ガーデンサバーブではこの隣地と相乗効果を上げることのできる計画とするため、隣接地の庭と視覚的に一体となる大きな公園を計画しました。緑の空間はそれを集約的に配置し、強力な「地域の緑環境」を造ります。これまでの住宅地開発が、自然を潰して住宅を建設してきたことに対し、この開発は住宅地開発によってこれまでの失われた地域の緑を復興しようと考えたものです。

(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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