メールマガジン

HICPMメールマガジン第479号

掲載日2012 年 10 月 29 日

HICPM メールマガジン第479号(平成24年10月29日)
みなさんこんにちは

今月の後半はアメリカ建材セミナーのキャラバンが静岡、名古屋、大阪の3都市で行われ、それに引き続き、神戸でGKK/HICPM共催で輸入住宅と国内での「ガーデンシティに学んだ事例」と宮脇檀と積水ハウスの事業をアメリカ住宅地研修バスツァーとして行い、私が講師として参加しました。我田引水ではありませんが、HICPMが取り組んできた事業は、欧米で積み上げてきた科学的な住宅の知恵を日本で学ぶものであり参加者に住宅産業の取り組むべき王道を示すもの、と自負しています。

SVヴィレッジ
SVヴィレッジプロジェクトは、日銀総裁、前川春雄がプラザ合意時点で輸入住宅を提唱し、中曽根首相、河野住宅金融公庫総裁が円高の経済環境で取り組んだ経済政策でした。私は、神戸のSVヴィレッジプロジェクトの中途から、建材輸入全体を担当責任者になりました。最後の総括で住宅金融公庫は事業が経営的に失敗した責任関係の真実を隠蔽し、建材供給業者がスケープゴートとされかけました。公庫は総括を避け、当初の計画をあたかも実績のように解説した本『ツーバイフォー輸入住宅神戸建設プロジェクト実践レポート』を井上書籍から出版し、計画を実践の結果とお茶を濁しました。大きな損失を被った施工者・神戸市住宅公社は、この事業後2×4工法での事業を継続できなくしてしまいました。
SVヴィレッジは事業経営では失敗しましたが、住宅地開発で小規模な環境計画手法を紹介したことで大成功をしました。しかし、経営に失敗した理由は、住宅金融公庫を指導するべき建設省が全く指導力を発揮せず、輸入住宅の現場は、住宅金融公庫建築指導者が米国での2×4工法には無経験の設計者と一緒に、CM(コンストラクションマネジメント)の正確な経営技術・知識無しに事業を進め、「連帯責任は無責任」で事業を私物化して進め、「推測」で神戸市供給公社を指導し、事業を進めたことにありました。
米国とカナダの優秀な建築家、住宅設計家が設計をしたのですが、それを日本の住宅建設に繋ぐ役割を担った日本の建築事務所が、2×4工法の技術とCMの知識がなく、工事をしながら、建築工事詳細や工事の納まりを決定するやり方をしました。さらに悪いことには、現場工事を指揮するスーパーバイザーが同じくCMの知識がなく、住宅金融公庫から「工事見積りと工事施工の材工分離」を間違って教え込まれ、日本の経験で現場を指揮したため、建設廃棄物を大量生産する現場とカナダや米国の関係者から、米国やカナダではやらない工事といわれるものになりました。しかし、その誤りは総括されませんでした。

SVヴィレッジの成果と影響
当初SVヴィレッジは、日本で60万円/坪を、米国では30万円/坪で造っていた状態であったものを建材同様に住宅を完成物にして輸入すれば、米国での建材船積み価格の1.5倍で、流通業者に20%の利益と流通経費を加算しても、建設現場に持ち込めたので、住宅全体でも、米国の1.5倍で日本でも建設できると読み替えて目標価格を設定しました。
社会経済的な取り組みの目標が高かったためと、日本経済がバブル経済に膨張し始めたときでしたから、SVヴィレッジは計画段階から完成段階までに約50万人の関係者がセミナーや現場見学会に参加しました。
その後、SVヴィレッジに関係したABC開発に神戸市から米国のNAHB・IBSに相当するものが神戸市でできないかという要請を受け、KIHF(神戸インターナショナルハウジングフェアー)を神戸市と民間3者で実施しました。その事業で、モデルホーム8棟11戸と3日間の技術セミナーと4日間の建材展示会を実施しました。このときのモデルホーム建設も、施工のための実施設計図と現場での施工経営管理技術(CM)と2×4工法の知識経験が欠如していたため、SVヴィレッジほど致命的ではありませんでしたがそれと基本的にと同じ失敗をしました。
そのとき米国の高品質の住宅を安い価格で供給している理由は住宅の生産性であることを確信しました。早速米国の工務店の住宅生産性を高めているスケジューリング(工程管理計画)がCPM/CPNによっていることを確認し、NAHBプレスで発行していたスケジューリング・フォー・ビルダーズを翻訳し「CPMの全て」を龍源社から発行しました。現在それに解説を加えHICPM翻訳・編集「住宅建設の工程管理」(井上書院)として発行しています。(目下HICPMで取り扱い中)

ワシントンヴィレッジ
その同じ時期に、兵庫県がワシントンヴィレッジを和風の兵庫村と一対の計画で三田市のウディータウンで計画し、その1年後にワシントン州が基本的にプロジェクトを指導する形で実施されました。この計画の発足当時、私は大阪府庁にいて非公式に事業説明を受け助言し、兵庫県と一緒に事業をしていた神戸市の工務店と意見を交換しました。
しかし、日本側が「建材を購入してやる」という傲慢な立場でプロジェクトを支配し、米国から学ぶと言う基本姿勢を持っていませんでした。ワシントン州はそのもてる力を全て投入して、全体の事業計画を立案し、ステージコンストラクションにより資産価値の増殖する計画を立案しました。日本側では計画は拘らないので、早く仕事をして儲けたいと考え、その儲けをどのように分配するかでもめていました。今回のツアーでこのワシントン兵庫村も見学し、当初のワシントン州の基本計画がしっかりできていたことを、建築後30年弱経過したプロジェクトで確認することができました。

ガーデンシティの反面教師「ガーデンシティ舞多門」
今回は、ガーデンシティの技術を基礎にした米国の住宅地開発と比較として神戸芸術大学佐伯学長が指導した英国のレッチワースガーデンシテイに習ったと宣伝されている「ガーデンシティ舞多聞」を見学しました。これまでにも佐伯学長とは直接会い意見交換をしたほか、過去3回現地を見学しています。
私から見ると、この事業は正に「反面教師」として参考にするべき事例です。エベネザー・ハワードが、資産形成するために守るべきといっていることは、ハードな計画とソフトな計画を住宅地経営管理主体が責任を持って経営管理しなければならない、ということです。しかし、この事業は基本的にハワードの考え方を蹂躙した住宅地経営です。この地区に建てられた住宅はいずれも高額な費用を投入し建てられたことは一見して分かります。残念ながら、そこに建築された住宅がハードなデザインのルールもなくソフトな生活のルールもなく無政府状態に建てられた住宅は、ヴィレッジスケープとして決めるべき屋根勾配や屋根材料がばらばらの上、ストリートスケープとして決められる外壁と窓に基本的なルールがなく、住宅は相互に相殺効果を発揮し、不調和な街並みを形成しています。ドイツのBプランを地区計画制度に読み替えるとき、街区の詳細設計を間違って計画規制とした結果、豊かな3次元の都市空間造りの手段になっていません。ドイツの制度を間違って取り入れた地区計画制度のモデルが「ガーデンシティ舞多聞」です。

日本の大手ハウスメーカーによる間違った住宅地計画
その後、積水ハウスが隣接地で大和ハウスなどと並列して住宅地開発をしている最新の事例を見学しました。率直に言って、「売り逃げに徹した住宅地開発」で、最近流行の目新しさを新建材を使い演出したデザインの住宅と、政府が指導する高性能な住宅をセールスポイントにし、かつ、郊外地での自動車利用を考えた利便性中心の住宅地です。
5千万円もする住宅前面に100万円程度の駐車場を計画した街並みです。道路とパーキングが一体として計画され、隣棟間隔は広くなっていますが、その分、背割り宅地の隣地境界線に面し隣棟する壁面間距離は狭く、採光、通風、眺望、プライバシーは、「裏長屋の隣棟空地同然に狭小で悪い環境になっています。
「流行歌は時代とともに廃れていく」とおり、ハウスメーカーは有名建築家同様、時代の流行のデザインを追いかけ、それで高い値付けをし、間違った不動産評価を消費者に押し付け、その心をわしづかみして、住宅を売り抜けてきました。積水ハウスも大和ハウスも、流行のデザイン、機能、性能の住宅はこれまで彼等が供給してきた住宅同様、基本的に時代の流行を追っているだけで、時間が経過し、流行の夢が覚めたときは、醜い素顔を現すことになります。その証拠にハウスメーカーが10年前に販売していた住宅を10年後の現在、中古市場で売ろうとしたら、購入価格の半額以下でしか売却できません。同様のことは現在購入した住宅の10年後の姿です。そのとき売却できる価格が、その住宅の「本当の価値」を表している「価格」です。経済学の教科書どおり「価値は価格として表わされる」のです。中古住宅を販売しようとしたとき、詐欺に掛かったといって争っても、既に商法上の法定時効は経過し、争い自体ができません。その詐欺商法の元締めである国土交通省は、その事実を権力で強制的に否定し、「住宅は償却資産であるから詐欺商売に当たらない」と強弁しています。不動産を償却資産として扱っている国が日本以外に地球上にありません。

日本のランドスケーパー宮脇檀(まゆみ)の設計した事例
最大規模のハウスメーカーの住宅地開発を「反面教師」として見学した後、日本の街並み計画を住宅生産財団と協力して推進してきたランドプランナーである宮脇檀(まゆみ)がその最大のスポンサーとしてきた積水ハウスの開発地「六甲アイランドCITYイーストコート5番街」を見学しました。宮脇のランドスケープデザインは、時代とともに色あせる醜い流行を売りにした住宅を石積みと樹木で隠してしまうと言うものです。そのストリートスケープは緑樹で囲われた道の景観であって、住宅という建築物が構成する街並みではありません。道路も「歩車道分離」のラドバーン計画の道路計画と似ています。
しかし、実際の住宅地の計画は、歩車道混合で空間は車道を歩行者ように使えるため広いように見えます。この途に車が入ってくると見通しが悪く危険の大きい計画となっています。住宅地が大きな生垣で囲われ、住宅を見えなくしていることで、居住者に大きな庭のある豪邸感覚で、安く建築できた住宅を高い価格の購入させられ、うっとうしい樹木に囲われています。道路の舗装を石張りのようにし、豪華に見せ、車が高速で走れないようにしたことは良いことですが、その道路にぶら下がるクラスター(ぶどうの房)状の4戸の住宅で造られる空間は、あえて玄関を道路に対し横向きにつくり、クラスターの技法と矛盾し、相隣がお互いにソッポを向いた計画になっています。近隣住区理論を取り入れているようでいて、その技法で歩行者の安全を否定してしまるという、してはならない計画になっています。宮脇にとってデザインは、単なる見せ掛けで、背景となる歴史文化はないのです。
(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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