メールマガジン

メールマガジン第480号

掲載日2012 年 11 月 5 日

メールマガジン第480号(11月5日)
皆さんこんにちは
デンマークの高齢者福祉研修ツアー

10月20日から6日間のツアーで、ゴールドトラストの社長以下9名の方と10名で、世界の最も進んだといわれるデンマークに高齢者福祉の勉強に出掛けました。
私はこれまで米国やカナダのリタイアメント・コミュニティ、プレ・リタイアメント・コミュニティやナーシングホームといった多種多様な高齢者福祉施設を訪問し、経営の考え方や、運営の仕方を見聞したことがありました。しかし、ヨーロッパの高齢者施設を外から見た程度で経営の仕方まで踏み込んで聞くことはありませんでした。
そこで、予めデンマークの老人福祉の勉強として数冊の関係書籍とデンマークの福祉案内書には目を通し、日本で得られる情報を収集しました。高齢者問題に関しては、私の知人でもある米国の貧困者と高齢者福祉と医療の問題を研究してこられた阪南中央病院内科長岡本祐三さんが「デンマークに学ぶ豊かな老後」(朝日新聞社)を米国との比較で書いておられたのを読みました。

資本主義的高齢者福祉と共産主義的高齢者福祉
米国やカナダで私が見たことは、高齢者の多様なニーズに対して、「費用対効果」において最大のサービスを与えようとする合理主義に徹した国であるということで、企業経営という観点で見た場合には非常に優れたものを、合理的な方法で提供しているということでした。つまり資本主義的自由主義の上での高齢者福祉対策です。
一方、デンマークで取り組んでいることは、企業ではなく、国家が国民に対して、納税義務の反射的な政策として、どこまで責任を負わなければならないかということでした。そこには貧富の差は問題にされず、国家と国民との関係が政治を通して決定され、国民の権利として、国家の義務として高齢者福祉の内容が決定されているということでした。「国民がその能力により働き、その必要によって得る」という共産主義の理想の実現に取り組んでいる資本主義国です。
その意味では、本来高齢者福祉をどのように考えなければならないかという考え方を教えてくれる国ということで極めて興味ある国を訪問したことになります。

空港に漲っていた個人主義の空気
「百聞は一見に如かず」といいますが、私の事前の調べは空港を降りたときから、事前に勉強してきたことが、何か色褪せてしまったような気がしました。それは社会の常識と何か基本的な違いがあるという感じでした。
一人ひとりがしっかりしていて、相手におもねたり必要以上に気を使ったりするという感がありません。その反面、相手から無視されることなく、尊重されているという存在ということ、を意識しているという感じが空港職員の対応にも漲っていることでした。事前に調べた資料の中で「徹底したエゴイズムの国」であるということが書いてありましたが、主観的に見るとそのように説明できるかもしれません。
しかし、私は、この説明は、本当は間違っていて、「個人主義の国」というべきだと思います。日本人に理解しやすく皮肉をこめて言えば、エゴイズムの国といえるかもしれません。エゴイズム(利己主義)とインディヴィデュアリズム(個人主義)の違いは、自己中心的な自分の利益本位なのか、個人の利益を他人の利益と同様に、相手の立場に立って考えるかどうか、のかの違いです。

資本主義的な「効率主義」は、人間を「もの」として扱うこと
自分が高齢者になり、介助といった支援が必要になったときに、誰かに頼んでやりたいことをやってもらうということは、「楽に良い結果が得られること」で、生活上の不便を解決するひとつの方法です。高齢者が、専門家に代行してもらうやり方ですから、最も効率が良く、短期的に高い成果が上げられるという意味で費用対効率が良いことになります。資本主義的考えの中で支持されてきた「分業の考え方」を支持する合理主義です。
「お金持ちが召使を使って、それぞれ生活に必要なことをやってもらう」という考え方も、基本的に同じ考え方に立っています。その合理主義を所得に低い人に、「福祉の利益」を与えるために、所得の低い人に対して、国家の予算で必要な支援をしたらよいという考え方が、「資本主義社会の合理的な福祉の考え方」です。この考え方を福祉産業が、さらに、「自己利益本位に拡大」すると、認知症患者をベッドに縛り付け、支援作業員一人当たりの作業効率・支援事業成果の効率を高めるという取り組みになります。その結果、援助を受ける者は「人」ではなく「物」として扱われることになります。

デンマークにおける「ノーマライゼイション」
デンマークで最も重視されている高齢者福祉政策は、健常ではない福祉支援を必要とする高齢者を、特別視せず、福祉を必要とする「普通の人」として扱うという政策を取っている、ということです。それをデンマークでは「ノーマライゼイション」と呼んでいます。
一般の社会で身体的な機能は人によって大きな差があり、目や耳の機能の低い人の中には、機械の支援を得たり、盲導犬やときには介護支援者の支援を受けて生活している人もいます。ヘレンケラー女史のように全盲、全聾であっても、サリバン女史の支援を得ながら、独立した人間として健常な人々以上の大きな仕事をしてきた人も多くいます。
サリバン女史はヘレンケラーの思想を社会に伝達するという、彼女でなければできない大きな仕事をしました。ヘレンケラー女史という身体不自由な人がいて、その人間としての生き方を追及することを通して、人類に共通する大きな仕事を発見し、多くの人が何百倍、何千倍の人類に必要な仕事を行っ敵増した。
保険・医学上の健常者と同様に、保険・医学上の非健常者が社会の対等の構成メンバーであり、その間には人格的な優劣はありません。能力の優劣は、求められる技術、知識により違い、健常者か非健常者かによって決りません。

デンマークの「高齢者福祉の3原則」
デンマークの高齢者福祉の考え方の基本は、[高齢者は、高齢者として尊重されなければならない]という児童憲章と基本的に同じ考え方に立ち、「高齢者本人にとって最も大切なことは自立した生活が送れること」としたことです。そのために大切なことは、以下の「3原則」を尊重して高齢者福祉対策を行うことであるとされてきました。
(1)    高齢者生活環境を円滑に発揮するためには、生活環境を急変させず、高齢者の能力を円滑に発揮できるような連続した環境を保障するようにすること
(2)    高齢者の環境の中でこれまで保持してきた能力(残存能力)を、使わずに眠り込ませるのではなく、できるだけ発揮できるようにすること
(3)    高齢者の生活要求に応えるために多様な選択肢が与えられたときには、高齢者にとって自立するためにはどのような解決手段を選択することが、本人にとってどれが一番ためになるかを、[本人自身が判断し、決定」するようにすること

今回デンマークで見聞してきたことを米国やカナダとの高齢者福祉と比較し、これからの日本の高齢者福祉を考えるために必要なことを皆様に映像を交えてセミナーを行います。この機会に、グローバル研修企画が計画している国内外の研修プログラムをご紹介する研修会を11月15日(木曜日)住宅生産性研究会会議室で午後1:30から開催します。

ps・前回のメールで神戸芸術大学長の氏名が間違っていました。正しくは、斉木崇でした。お詫びして訂正いたします。
(NPO法人HICPM理事長 戸谷 英世)



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