メールマガジン

メールマガジン第483号(平成24年11月26日)

掲載日2012 年 11 月 26 日

HICPMメールマガジン483号(11月26日)
皆さんこんにちは

11月14-16日ジャパン・ホーム・アンド・ビルディング・ショウ2012、が東京ビッグサイトで開催されました。このショウのために上京される方に参加してもらおうと、GKKとHICPMが「デンマークとアメリカの高齢者対策のセミナー」を開催しました。しかし、このセミナーへの参加は、現在の日本の住宅産業界の関心からは外れていたようで、参加者は少数でしたが、高齢者福祉に高い関心をお持ちで、日本、米国、デンマークの福祉の違いの理解に向け、活発な議論をしました。

日本の住宅産業の関心
ビッグサイトで開催されたビルディングショウの最終日16日に出掛けました。そこでは、米国大使館上席商務官や米国ワシントン州政府からアメリカ建材セミナーへの米国建材の出展者、アメリカのパッケージハウスを採用し街造りに取り組んでいる方など、顔なじみの人たちが沢山参加していましたので、これらの多くの人と意見交換をすることができました。意見を交わした参加者の共通した「来場した工務店のニーズ」についての感想は、工務店はいずれも、「儲けを確保するために、少しでも安く材料を購入しようと非常に熱心に、目新しい材料で高く値付けができるもの」を探していた、ということでした。米国のホームビルダーなら、「住宅購入者の低い家計支出に応えられる安い材料を探すために眼を皿にする」と思います。日米では、同じ安い価格の建材さがしでも、工務店の利益第1か、消費者の利益第1か、という参加の目的が違っているようです。

建設製造業か、建設サービス業か
米国のリモデラーショウで見たときのことですが、米国では、工事の実演をしながら、「材料価格のコストカットではなく、住宅価格のコストカットのために、「材料の施工生産性」を高められる施工方法が材料メーカーの説明の的になっておりました。
そのような施工生産性を訴えるものがこのショウにもないと探してみましたが、全く見当たりませんでした。出店材料会社の方に、施工生産性のことを尋ねてみましたが、出展者にも生産性への関心がなく、ほとんどが「材料性能と材料価格」が説明者の提供できるものになっていました。その理由は、日本の住宅産業界には、施工生産性に関する関心が低いためで、住宅産業が住宅製造業(製造者が生産によって労働価値を生み出す業者)の意識ではなく、住宅サービス業(住宅建材の仕入れ価格と販売価格という売買価格差としての取り扱い差益を手にする業者)になっているためでした。

コンストラクションローンとモーゲージローンの関係
日本では、住宅価格は基本的にハウスメーカーや工務店(住宅業者)が値付けをし、金融機関がその言いなりの住宅ローンを行うのに対し、西欧先進工業国では、住宅建設業者が価格を決定しても、金融機関の住宅ローンはその言いなりではなく、材料費と労務費という直接工事費分しか行わないというのが原則です。標準的には、「住宅建設業者の粗利は取引価格の20%」しか認めない住宅の見積価格が、住宅ローンの対象の住宅価格となります。住宅ローンを受けるモーゲージは、直接工事費に粗利20%を加算した住宅価格です。住宅ローン額は、その80%で、残りの20%に対し金融保険で融資が加算され、住宅価格の98%まで住宅ローンを受けることもできます。しかし、住宅価格そのものは、原価(直接工事費)がベースになっています。それは工事中の工事部分に対する先取り特権に対する建設ローン(ホームビルダーに与える建設工事費ローン)とモーゲージローン(完成住宅に対する消費者への住宅ローン)の見積りが「同一でなければならない」としているからです。原価を下げるためには、生産性の向上は避けて通れない問題です。

米国の住宅バブル崩壊後の傾向
一概に、「米国では、」と言い切れないかもしれませんが、私が調査し、観察した結果では、ホームビルダーが対象とする顧客の購買能力が縮小している現在、消費者の購買力に合わせてコストカットにまじめに取り組んでいます。
(1)    住宅のエンベロップ(外殻)面積を最小限化するために何をしなければならないか。

(2)現場での生産性を高めるために、いかに計画通りの生産をするかを考えます。
別の言い方をすれば、工事段階になって計画の変更をしない工法、つまり、工業化工法の導入が取り組まれるようになっています。工業化工法の米国における面白い位置づけは、工場化した工事内容の「変更は難しい」と顧客に説明して、「計画どおりの工事が進められること」が工業化の利点であると総括されています。米国では、「顧客とのトラブルなく、計画通りの工事をする方法は、工業化である。」としていることです。ここで「工業化といっていることは、工場での生産性が高い」といっているのではなく、「設計段階で決めてしまわないと工事ができない」ようにする工法が、最も合理的な住宅生産方法になっているのです。つまり、米国では工業化工法を、工事段階での設計変更を要求されにくい方法として取り入れられているのです。

米国のコストカット、日本のコストカット
米国では金融機関が見積書の適正を問題にします。それはモーゲージだからで、金融機関は、直接工事費にしか融資しません。そのこともあって、住宅価格は極めて透明性が高いようになっています。米国のコストカットは、住宅取得層の低下した住宅取得価格に見合って、「優れた住宅を供給することに、ホームビルダーはその将来を掛けている」のに対し、日本の工務店は、消費者のためではなく、「自分の利益を確保するために安い材料を探し」、自らの利潤を確保しようとします。
「住宅購入者の利益を第一に考えることが、結果的に顧客がホームビルダーのために紹介客を連れてくることになる」と、米国のホームビルダーは考えています。住宅購入者の所得レベルが下がったなら、その購入能力で購入できる高品質の安価な建材を探し、住宅に使用することで、消費者の感謝を得て、紹介客を紹介してくれることが、ホームビルダー経営にとって最も重要である」と米国のホームビルダーは考えています。
消費者の利益を中心に考えることが、結果的に、「よい顧客を紹介してくれる」という、ホームビルダーにとって最も利益が大きい営業力強化になることを、米国にホームビルダーたちは理解しています。
それに対し、日本の工務店は、目先の顧客確保のために広告宣伝と営業に膨大な営業経費を使っていますが、それは「お金をどぶに捨てる」と同じ「非生産性」のお金の使い方です。消費者の身になって、良い品質の建材を安い価格で購入することこそ、消費者をホームビルダーの営業マンにすることになります。長い目で見て工務店のするべきことは、一にも二にも、消費者の利益となることを中心に考えることでなければなりません。
(NPO法人HICPM戸谷英世)



コメント投稿




powerd by デジコム