メールマガジン

メールマガジン第487号

掲載日2012 年 12 月 24 日

HICPMメールマガジン第487号(12月25日)
皆さんこんにちは、

メリークリスマス。今年最後のメールマガジンをお送りします。
「靴に足を合わせる対応」から「足に靴を合わせる対応」へ
今年はHICPMがこれまで実施してきた通年的な月例セミナーを経年的に実施することができませんでした。それに代わり、個人的な、又は企業による連続セミナーを実施する機会が増えて、気が付いてみれば、毎月のようにセミナーを実施してきました。HICPMでこれまで作成したテキストや資料を、私が活動できる間に使ってしまわないと、せっかくの資料が活かされないとも考え、セミナー参加費は会員3,000円を維持し、その際の資料やCDは、特別価格又はセミナー代金に含まれるという形で、経営的には損を出して提供してきました。そのようなわけもあって私個人としては、結構、忙しく過ごしています。

消費者の利益を中心に考える経営の支援
このようなHICPMの運営方針を、基本的に来年にも踏襲したいと考えています。それは、日本の住宅産業も政府の間違った住宅政策もあり、自らの利潤追求に偏りすぎ、「住宅購入者に資産価値のある住宅地経営化の住宅を供給することがほとんど実施できない」ことがはっきりしたからです。それを復興するためには、消費者のことを真剣に考える工務店(ホームビルダー)の育成を具体的に行わなければなりません。
具体的な対策として、欧米の中小零細なビルダーが自らの住宅建設経営管理(CM)技術を高め、消費者のニーズに応え、結果的に社会に不可欠が建設業経営として地域で尊敬されるホームビルダー経営を実施しているので、それに倣おうとするものです。
HICPMはこれまで一貫して生産性重視の考え方で実施してきました。それはHICPMが考えた工務店に必要な学習プログラムでした。しかし、今年の傾向は、それを受講しようとする工務店の求める要求に応える形に軸足が移そうと考えています。

企業のデザイン研修の総括
ある企業からは、営業力を強化するために「企業としてのデザイン力を強化したい」と、6回にわたり企業内セミナーを実施してきました。その過程で、セミナーを担当してデザインの意味がHICPMと、工務店との考えていることが全く違っていたことが判りました。
デザインを歴史文化の所産と理解し、それを住宅地の立地する街並みに調和させ、居住者のアイデンティテイ(わが家)となる形でデザインする、という「世界の常識」と、近隣住宅地の中で目立つ、時代の先駆けとなるデザインを実現し周囲から目立たせて顧客を満足させて販売しようとする「日本の住宅産業の常識」の違いです。
前者は、時代の連続性と、相隣関係や近隣関係という横の関係を意識し、相互で相乗効果を挙げられるデザインをすることによって、少ない努力で周囲に引き立てられ、また、周囲を引き立てるデザインを実現することになります。しかし、後者は、既存の町とも対立し、近隣や相隣と競合し、対立し、相手をねじ伏せるように自己主張をするデザインであるため、建築後も周囲とデザインの相殺効果が生まれて、相互に傷つけあっています。

デザインは工学ではなく、人文科学
このような間違った意識で住宅デザインに取り組んでいる設計担当者の様子をみると、彼等は共通して大学や高等専門建築教育(工学)を受け、建築士の資格やデザイナーの資格を取得しています。しかし、彼等は欧米の建築教育のような人文科学としての建築教育を全く受けていません。私自身大学で建築学科を卒業し一級建築士の資格を取得しているだけでなく、建設省住宅局建築指導課で建築士班長として、建築士資格及び建築技術者の指導監督や、建築士の受験資格としての大学及び高等建築技術者教育を審査格付けをする国の責任者を5年以上やってきました。その行政から長く外れ、海外の建築にばかり関心が向い、日本の建築教育を検討し直すことを忘れていました。工学教育としての日本の建築教育は、人文科学教育と一環としてなされる世界の建築教育とはまったく違っています。

デザインは歴史文化の所産
「豊かな建築空間とはどのようにデザインするか」という建築デザイン教育を全く受けていない日本の建築技術者に、居住者が豊かな気持ちになれる住宅を設計すれば集客できるといわれても、住宅生能の高い住宅設計しかできない人(建築士)には設計できません。しかし、国土交通省も、東京大学以下日本の建築教育では、歴史文化を作る人文科学教育として建築教育をしないで、安全、衛生、省エネルギーという工学的性能偏重の建築工学(エンジニアリング)を教育してきた技術者に住宅設計をさせているのです。
工学では、人の心を掴む文化的な感性に訴える設計はできません。彼等は困って流行設計で著名な「建築家」の真似をします。有名建築家の多くは、高い感性を持ち、時代の先駆けをするデザインを海外で吸収してそれを自分の創作のように言って建築設計します。そして世界的に流行作家になった建築家もいます。しかし、時代が流れていっても、日本の中でも、ボーリスやレイモンドや吉村順三のように高い評価を受け続ける建築家は少ないのです。これらの建築家は全て建築設計を人文科学として学んだ人たちでした。

文献と平行して実物調査・見学
HICPMは建築デザイン研究所ではありませんが、住宅デザイン研究を研究会発足以前から取り組み、海外の優れたデザイン都市の翻訳、解説書の作成、優れた建築デザインの海外調査研究を毎年複数回実施するとともに、調査研究をとりまとめ報告を毎年実施してきました。こと住宅に関しては欧米の非常の沢山の優れた実例を何度も訪問し、その良さを調査してきたことでは、国内でも最右翼にあると思っています。著書の中で住まいの図書館なkら発行した『アメリカの住宅生産』は、その集大成の一つです。そのような訳でどのようなデザイン学習をすればよいかに関し、これまでいろいろな提案をしてきました。試行錯誤を繰り返してきた結論は、欧米の設計の標準化、規格化、共通化の方法として、19世紀から欧米社会で一般化してきたホームプランシステムがあり、それが国民の資産価値を向上させる上で住宅産業界の設計レベルの下支えをしてきました。そのことが今回の企業研修を通して再確認でき、その方策を住宅会社のデザイン能力向上の方策として採用するよう提案してきました。

金融機関に裏付けられた住宅の価値
現実に米国では、モーゲージローンと住宅の不動産評価(アプレイザル)が連動する形で、住宅の資産価値を金融で裏打ちする形が実現できています。米国の設計者は金融機関で融資の認められない設計をしても、顧客は設計を依頼してきませんから、モーゲージが得られる設計をすることになります。金融機関がモーゲージを認める裏には、そのモーゲージがFHA(連邦住宅庁)によって債務保証され、MBS(モーゲージ保証債権)として金融市場で貸し金を回収することが必要です。米国が1929年の世界恐慌から立ち直り1934年に全米住居法(NHA)を制定しFHAがモーゲージの債務保証を与えるようになったとき、既存住宅が市場取引されるためには、クラシックデザイン以外には債務保証はしない扱いを始めました。そのときFHAの債務保証が得られる建築家の住宅設計カタログとして登場したものが現在のホームプランシステムです。

HICPMによる企業支援(一般的技術から開発プロジェクトまで)
HICPMではこれまで、故・成瀬大治副理事長と協力して開発したサステイナブルホームプランを皮切りに、ホームプランシステムに取り組んできました。しかし、HICPMのホーム・プラン・システムは、まだテイクオフできないでいます。その一部として今回HICPMの会員の住宅会社で6回の研修の総括として、企業のデザイン力を高める方策として、ホームプランに取り組んでもらうよう働きかけました。このようにHICPMはその会員各社のニーズに応じて、会員企業の立場に立ってできる改善を支援しています。HICPMとしては住宅単体から街並み設計にまで設計技術支援の手を拡大しております。
(最新の開発プロジェクト事例
現在取り組んでいる事例は、宅地分譲地で8宅地(1宅地140平方メートル)、全体で約1100平方メートルの土地に対し、提案している計画では、中央に450平方メートルの公園を取り入れた専用庭付きアタッチドハウス(隣地境界線に接して建つ独立住宅)18戸(1戸当たり延べ面積120平方メートル)を「三種の神器」による住宅計画を提案をしています。提案が軌道に乗ったときには、また、ご紹介したいと思います。
ニューアーバニズムの理論を取り入れた街並み計画を実際にやれる組織は目下HICPMしかないと思います。過去の事例は「サステイナブルコミュニテイの実現」(HICPM刊¥1500円)に掲載されていますので、ご関心のある方はHICPMにお問い合わせください。
(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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