メールマガジン

HICPMメールマガジン第492号

掲載日2013 年 2 月 4 日

HICPMメールマガジン第492号(2013年2月4日)

皆さんこんにちは、今日は、立春の日です。

2013年1月19日から1月29日まで、恒例の全米ホームビルダー協会(NAHB)のインターナショナル・ビルダーズ・ショウ(IBS)の開催に合わせ、BKK・HICPMが企画したカリフォルニア、ネバダ、アリゾナの3州の優れた住宅プロジェクトを観に行って来ました。特に今年は米国の住宅産業が、住宅バブル崩壊以来の差押さえ物件の処理が進み、やっと新築物件の着工が回復の兆しを示したようですが、まだ、住宅バブルが始まる前の新築戸数レベルの5分のⅠにも回復していません。

そのためこれまでIBSの中心的な展示ブースを誇っていたアンダーセン、ポジ、ペラ、ハードなどの大手既成窓会社はマービン以外、全て出展をしていません。その中で50年間継続出展している会社として、衛生陶器のコーラ社、マスコ、メソナイト、シンプソンドア、アメリカンナチュラルガス、デルタフォセット、GEアプライアンスなど、14社、また25年以上出展会社もデュポン、ルイジアナパシフィック、マービンパシフィック、ソフトプランシステム、など46社が出展していました。しかし、全体の出展者数は昨年に比べると多くなっていましたが、いずれも小さなブースになっていました。

NAHB・IBS全体像

実際住宅を建設している人たちであれば、同種の材料が前年と比べた変化を比較し、業界の住宅産業を見ます。実際この10年間の米国住宅産業の受けた打撃情況を見ると、新築住宅戸数需要が造花しない限り、IBSは厳しい環境に置かれます。出展者総数が約915社です。その出展内容は、共同住宅、小規模商業施設、住宅設備、グリーンビルデイング、その他建材・情報と5つのカテゴリーに区分され、1社で複数に関係する会社も多く、述べ数で数えると、共同住宅559社、小規模商業施設182社、住宅設備184社、グリーンビルデイング372社、その他建材・情報359社になります。住宅建設そのものを扱う業種とそれ以外やその周辺の業種とが拮抗しており、ビルダーの視点では満足できない展示会になっていた。しかし、グリーンに関する出展が全体の41%に及び、その関心が広く浸透していることを表わしていました。

IBSにホームビルダーとして参加するときは、自分の課題が建材なのか、住宅設備なのか、知ろうとする目的を持たないでいると、ブースの数が多すぎて見るべき物を見失います。今回は実質半日しか展示会場での時間がなかったので、ともかく会場全体の雰囲気を見るだけで、全体を見尽くすことはできませんでした。悪く言えば、この展示会がNAHB最大の集金の機会ですから、相当量の出展は得られましたが、それは住宅産業が好況のときにIBSに積極的に参加したときと内容は違っていました。


住宅の資産価値の現地調査

日本でも住宅の資産価値がこれからの関心事となると予測されます。そこで今回は、1934年全米住宅法(NHA)の制定時以降、住宅の資産価値は個人の大きな関心になっている米国で、制度上、モーゲージローンが、「住宅資産価値の最大の裏付」となっている実態を視察し研修するために、以下の開発住宅地を訪問しました。

(1)  1970年代に海岸埋め立て開発であったが、水面を残した「フォスターシテイ」

(2)  ゴールドラッシュ時代に開発され、現代の観光にもなっている「ペインテイッドレディ」

(3)  1960年代リゾートコミュニティ開発の先駆け「シー・ランチ・ロッジ」

(4)  サンフランシスコ鉄道駅周辺地域のニューアーバニズムによるスラム再開発「HOPEⅥ]

(5)  TOD(トランジット・オリエンティッド・デベロップメント)代表例「クロッシング」

(6)  住宅バブル時代の投資対象となったレイク・ラスベガス・ベッキオ橋(フィレンチェ)開発

(7)  住宅バブル崩壊したとき、ラスベガスの再生を目指した未来志向の都心「シティ・センター」

(8)  1960年代アリゾナで始まったサンシティ開発の新展開の華「サンシテイ・アンサム」

(9)  現代都市批判の理論に思いを託したパオラ・ソレリ「夢の実現都市・アルコ・サンテイ」

(10)グリーンツーリズムとニューアーバニズムを組み合わせた未来に繋ぐ「アグリトピア」

これらに関しては、2月28日GKK/HICPM共催の「北米ツァー報告会」で説明するほか、今後機会を見てHICPMビルダーズマガジンで紹介する予定である。


理論の検証

今回の北米ツアーでの私自身の関心事は、日本の設計者や工務店が誇る「注文住宅」の魅力がなく、例外なく値崩れを起こし、逆の日本の住宅産業が見下したように使う「米国の建売住宅」が米国の社会で国民の資産形成に大きな貢献をしている理由を、これまで私の温めてきた市場分析結果を基に確かめることでした。私の分析結果は、基本的に、米国の住宅金融モーゲージと日本の住宅金融クレジットローンにあることで、そのためには、モーゲージローンとクレジットローンの違いから説明する。


モーゲージローン(米国)は、「抵当金融」と訳され、その実態は、ローンの借受人がローン返済を滞れば、その段階で住宅金融機関は、担保となった住宅を差し押さえる。差押さえと同時にローン債務は相殺される。債務はそれ以上追及されないので、債務非追跡金融(ノンリコースローン)と呼ばれる。金融機関は担保として抑えた住宅を市場で売却し貸し金を回収する日本以外の先進工業国共通の金融を言う。それが検証する「世界中で日本だけが住宅の資産価値が失われている理由の分析結果」である。

クレジットローン(日本は「サラ金」と同じ貸し金の手段を問わない「元利回収による貸し金利益」を得る目的の金融である。住宅ローンは、サラ金の担保としてローン目的の住宅の一番抵当を金融機関が押さえる。しかし、押さえた住宅を売却した売却益がローン債務額に達しないときには、ローンの借主に債務額全額を弁済するまで追いかけるため、追跡金融(リコースローン)と呼ばれる。通常、金融機関は最終の担保として生命保険を担保に求めるため、住宅金融の最高限度額は生命保険額である。


モーゲージによる住宅資産価値のコントロール

米国のモーゲージローンによる住宅供給は、金融機関は金貸し業として、「借主は、必ず、ローンを返さないようになる」という最悪の事態でも損をしないことを考え金融をします。そのため、何時ローン返済事故があっても、住宅を差し押さえ、それを住宅市場で競売に供すれば、必ず貸し金を回収できること、つまり、住宅の資産価値の増加を条件に融資をします。別の言い方をすれば、ローン期間内に住宅が当初の住宅資産価値の維持増進することをモーゲージローンを与える条件にします。1934年世界恐慌を経験した米国は全米住居法(NHA)を制定し、モーゲージに国家としての信用を供与する方法として、連邦住宅庁(FHA)が、住宅の資産価値がローン期間中維持向上できる住宅に対して政府が債務保証する制度(MBS)を作り、MBSをFNMA(ファニーメイ)に買い取らせ、それを一般金融市場に流通させ貸し金をローン返済に先立って回収し、住宅金融原資を集める制度を作った。

米国の不動産鑑定制度

1934年NHAが制定されたのとき、モーゲージは、住宅地経営管理を問題にする住宅不動産価値評価制度(アプレイサル)と一体で実施されたため、資産価値増殖の手段として機能した。その原型がシカゴ大学で作られ、それを受けて、FHAは「クラシックなデザインの住宅」以外に債務保証を行わないことが実施された。クラシックなデザインの住宅は時代を超えて、多くの国民の嗜好の琴線にふれる(満足度の高い)住宅として、既存住宅市場で必ず需要の対象となると判断されたためである。アプレイザルの方法は、原価方式(コストアプローチ)を基本に、販売比較方式(セールス・コンパリソン・アプローチ)収益還元方式(インカム・キャピタライゼイション・アプローチ)の3方式を比較検討し、最終的にはアプレイザー(不動産鑑定士)の総合的な知識建研で不動産価格を決定するものである。その中で基本になるものは、原価方式で日本語では「推定再建築費」と考えると最も米国の原価方式に近いといえる。評価する住宅自体が社会的に建設当時の需要者同様の社会回想の嗜好に適合していれば、その推定再建築費は物価上昇分以上に上昇するという考え方を前提に組み立てられている。


日本の不動産鑑定制度

アプレイザル(不動産鑑定制度)については、日本にも米国の真似事をやって、上記のアプレイザルと同じ用語を使っているが、換骨奪胎で「似て非なるもの」で内容がまったく違う。日本の不動産鑑定制度は経済学理論に適合しておらず、政府の政策意向を反映し、政府の操作した政策意図やトレンドを正当化し、それに依存したもので、社会科学的合理性はない。日本では都市改造土地区画整理事業を列島改造事業の中心に置き、区画整理地の地価上昇率7%を正当化し、それを路線化の基準地価に取り入れた。その地価を前提にした課税標準では国民の税負担が不可能であることが分かり、租税特別措置法で固定資産税額を6分の1に減額した。また、土地に定着した住宅建築物は不動産で非償却資産である。不動産として修繕積立金を積み立て、適正に維持管理されていれば、当初の資産価値を維持する。それにも拘わらず、日本の不動産評価では住宅を償却資産として評価をする間違をしてきた。土地建物の何れの評価に関しても、スクラップ・アンド・ビルドによりGDPをさいだいにする政府の不正な経済政策を正当化するための小道具にさせられてきた。


日米住宅資産評価の違い

その結果、米国では基本的に、「住宅の価値」は、住宅市場での公正な需給関係を反映した取引価格によって決められる、という経済学理論どおりの不動産価格をもとに住宅金融が行われてきた。それ対して、日本では、ハウスメーカーは価値の低い住宅をその価値の2.5倍の購入価格で販売し、金融機関はハウスメーカーのいいなりの高い価格どおりの住宅ローンを生命保険一杯の融資をその「高利貸し」の本質を露に、超長期の融資機関と国債の低金利を梃子に貸し込み、高額の利益を得ようと共謀し、住宅価格の詐欺販売を実施して来た。それは住宅の購入者に高額のローンを認めることで、住宅の取得考慮杭を勘違いさせ、住宅を購入させるための策略であった。さらに、その詐欺販売を正当化し、それを幇助する詐欺商売の小道具を住宅性能表示制度等の「差別化」として政府が提供してきた。「差別化」は、単なる違いを経済価値の優劣のように騙し、高い価格付けを正当化する小道具である。巨額な広告宣伝費と営業マンを駆使して「差別化」を高額販売できる正当化理由として消費者に売却した高額な住宅は、購入者が「ローン返済ができないからハウスメーカーに引き取ってくれ」といっても絶対に引き取らず、その住宅を売却できても、購入価格の半額以下でなければ販売することは不可能である。その場合、金融機関はハウスメーカーに実施したようなローンを認めてくれない。

護送船団詐欺商売の餌食となる国民

住宅会社は政府及び金融機関と一体になって「差別化」(住宅性能の違いが価値の上下となる)といい、「手離れのよい住宅」といって、購入者が不正な住宅販売に気が付いたときに、「トカゲの尻尾切り」のできる(日本の不動産鑑定制度を使った)口実を与えてきた。10年以上経過してからのクレームに対しては「法定時効」という口実を与えてきた。「護送船団方式による詐欺商売」の批判に対して、御用学者たちは、「住宅購入者は注文住宅として購入し、完成したときには十分満足したではないか」という。一般の詐欺商売も騙されたことに気が付くまではみな満足している。曲者は日本の住宅産業が自慢する消費者の求めに応えたという「注文住宅」である。ハウスメーカーには時代傾向を先取りしたデザインの住宅を供給するから、流行歌を歌うようにその時代は、皆、引きつけられる。しかし、その土地や住宅注文者の歴史文化的特性を把握して住宅設計をすることの教育訓練は、日本の教育では行っておらず、ハウスメーカーでは「注文住宅」を隠れ蓑に、単に消費者をうまく騙してきただけである。そのため、居住者自信が経年するとともに違和感を抱き、自宅を取り壊そうと感じるようになる。住宅に飽き、取り壊させることがハウスメーカーの狙いでもある。日本の建築教育がハウスメーカーのお先棒担ぎをやってきた。建築教育は人文科学(ヒューマニティ)として学習し、工学部で建築学をやっている先進工業国は日本以外にない。ハウスメーカー、金融機関、政府、御用学者、ジャーナリズムが詐欺を実施する護送船団である。その護送船団で不正価格を正当化し、不正利潤を巨額な企業利益をしてあげ、それを天下り人件費、広告宣伝費、で分配しあってきたのである。

住宅の資産価値を維持してきたホームプランシステム

米国では、金融機関がローン返済不能になって差し押さえた住宅を「売却し、貸し金回収が確実にできる」住宅でないと新築住宅であっても融資(モーゲージローン)をしない。そのためには、住宅の設計がその条件に合っていなければならない。米国で販売している1冊1200円程度で購入できるホームプラン集を消費者もホームビルダーも活用する。これらのホームプラン集は、住宅設計者のカタログ集と同じ性格を持っているもので、出版者がモーゲージローンを受けられる住宅設計であることを審査して編集掲載したものである。このホームプランをベースに自分の嗜好にあわせ設計し、建築した住宅は、やはり、基本デザインは、FHAの債務保証を受けられるクラシックデザインで、現在では「ノスタルジアを感じることのできるデザイン」といわれ、時代を超えて消費者の琴線に触れるものである。そのうえ、その住宅価格は、金融機関は建設工事費のうち直接工事費(下請け業者が実際に工事に使った材料費と労務費)以外には金融機関は原則的に融資しない。そのため、融資のベースになっている見積額は直接工事費そのものであるから、その住宅をその時点で建設しようとすれば、物価上昇分以上の費用がかかり、既存住宅価格はそれだけ高い価値を持つことになる。


住宅供給業者は住宅製造業者

一方、日本では、見積価格の中には重層下請けを行い口利き料が加算され、それに広告宣伝や営業マンの販売促進費が、材料費や労務費の中に隠し込まれて見積価格が作られ、その重層下請けで加算された下請け業者の粗利のすべてを加算したものが融資の対象額になる。日本では消費者に提示する材料費を「上代価格」といい、ハウスメーカーや工務店が材料業者から調達する材料価格を「下代価格」という。ハウスメーカーや工務店は流通業者ではないから、建設業者として粗利益を得たうえで、流通利益を材料価格の名称に隠れて流通利益を隠して取ることは不正である。日本のような重層下請けを前提にした住宅価格が米国の2倍になっている理由である。その仕組みが壊れない限り住宅価格は高止まりし続けるという見方もある。護送船団による独占価格が崩壊する自由市場が形成できれば、解消する。市場では、流通業で消費者の購買力が縮小すれば、アウトレットなどの中間省略の流通業が生まれてきたように、住宅でも中間省略の傾向は高まっている。問題は、注文住宅といわれるものが、住宅購入者の要求を設計の専門性の低い建築教育しか受けていない設計者が、作成しているために、時代が過ぎると、流行歌同様、誰からも振り向かれない「中古住宅」になってしまい、市場価値を失ってしまうため、日本の「注文住宅」は、「粗大建設廃棄物」にしかならない。


今回のツアーでは、ツァーの間に機会を見て、以上に紹介した日米「注文住宅」の違いに事前知識を繰り返し説明した。そのような予備知識を学んでもらって、住宅市場で恒久的に需要対象でありつづける厳選されたホームプランから選んで作られる米国の「注文住宅」や「建売住宅」(基本的にこの間に大差がない)と、日本の間違った建築学を学び、流行デザインを追う有名になりたがる建築家の時代傾向を追うデザインで造られる「注文住宅」との違いを見てもらった。今回のツアーでは、時代を超えて高い住宅価格で取引されている米国の住宅を実地で見、不動産取引業者の説明を聞くことができた。その結果を、デザインの違いと住宅ローンの仕組みが、両国の住宅の資産形成に決定的な違いを与えていることを確かめることが出来、再確認することができた。

(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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