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HICPMメールマガジン第495号(2013年2月25日)

掲載日2013 年 2 月 25 日

HICPMメールマガジン第495号(2月25日)
皆さんこんにちは
新しい住宅傾向

「週刊ダイアモンド」という雑誌に荻浦ガーデンサバーブの記事が掲載されていることを住宅設計家の若林さんが教えてくださって、その掲載誌を送ってもらいました。
実は若林さんとは宮崎のHICPM理事の谷口さん(アービスホーム)の下で、6戸のブリック住宅を設計されたことで、このブリックの住宅地計画で、私との関係がある方です。
私は、プリンスチャールズが提唱された「周囲の環境が崩れても、最低限自分の住環境を守ることのできる最小限規模の開発」として「コモングリーンを囲んでサステイナブルハウス6戸の住宅」と言うコンセプトをアービスホームのブリックの街としてエスキースを作成し提案しました。
結果は、アービスホームは、その基本提案を変更して、「コモングリーンを歩車共存のコモン(共有地)としてのクルドサック(袋路)にして、その周囲に多様なブリックの住宅を建築した計画」でした。
この中央広場では、これまでに何度か夕方から夜に音楽演奏をするなど素敵な文化空間が造られていましたが、なぜか、販売が計画通り進まず、せっかくのレンガ住宅の事業もこの計画以上に展開できませんでした。多分、時代の先を行き過ぎていたのかもしれません。

アービスホームのレンガの街
チャールズ皇太子が提唱された基本コンセプトを成功裏に進めた事例が工藤建設㈱の「ガーデンヒル」でした。アービスホームの事例はアサヒグローバル㈱の「泊山崎ガーデンテラス」に先立つHICPMとしての提唱事例でした。当時、このようなコミュニティを形成するクルドサックで積極的に造った住宅地は、戦前東武鉄道㈱が「常盤台」において内務官僚の小宮賢一さん(建築基準法制定当時の建設省指導課長補佐)が、欧米の住宅地デザインに倣って提唱した住宅地の他にはほとんど例がありません。
道路面積を少なくするための袋路の例は沢山ありますが、袋路にコミュニティの中心を置く計画をした例は、常盤台を除けば、数は極めて少なく、アービスホームの例は特筆されてよいと思います。
しかし、私はそれをさらに進めたTND(伝統的近隣住区開発)の考え方で進めた提案をしたため、谷口さんからは受け入れられず、現在の計画を若林さんがまとめました。若林さんは米国の自動車による住宅地開発を良く研究しておられたので、このように計画とされたと思います。
アービスホームの事例は、年を経て熟成し、とても良い住環境を造っています。販売に苦労した理由は、コミュニテイ(住環境)という概念自体が、まだ受け入れられていなかったためかもしれません。現在、福岡県糸島市で㈱大建が住環境を販売している「荻浦ガーデンサバーブ」が、そのコンセプトの理解が手間取って、販売で苦労しているのも共通な問題のようにも思えます。

消費者動向を無視できない住宅地開発
若林さんが送ってくださった雑誌を見ても確認できることですが、この1-2年と言う短い期間に住宅を取り囲む環境が大きく変わってきたことが住宅開発に現れています。失業の増加と将来的な賃金低下傾向を受けて、住宅の購入者と住宅ローンを供与する金融機関の考え方に大きな変化が生まれ、コストカットをして豊かな環境を作る方向に検討が進んでいることです。
住宅購入者は「賃金の上昇を前提にしたローンは組めない」と考え、また、金融機関は「償還の見込めないほどの高額な融資はしない」となりつつあります。その結果、「高い地価を反映させないで、これまで以上の品質の住宅を供給する方法」を模索するようになっています。HICPMが19年前に創設されたときから一貫して追及してきた「年収の3倍以内の価格で適正な品質の住宅を供給する」と言うところに、現在の日本の住宅産業も動かざるを得なくなってきています。

HICPMが進めた「サステイナブルハウス」の成功と挫折
HICPMは1999年に、故成瀬大治副理事長とHICPM会員とが協力し、「サステイナブルハウス」プランブックシステムを創設し、全国的には1,000戸程度のサステイナブルハウスを建設して、一時は社会的にも高い広がりを持つようになっていました。
このサステイナブルハウス・ホームプラン・システムはCM(コンストラクションマネジメント)技術の改善と両輪となって、工務店の生産性向上に寄与する予定でした。しかし、成瀬さんの突然の逝去で、それをホームプランシステムとして完成させられなくなりました。
また、サステイナブルハウスの考え方で生産性を高め、工務店の経営改善をしようとした実践が取り組まず、「サスティナブルハウスで既に成果が上がったので、建材の安い買い付けで更なるコストカットする」と勘違いし、CM技術を研鑽することがおざなりにされました。
その運動を牽引していた理事が退会し、CM学習運動が途切れました。そのうえ、米国の住宅産業の現場情報や資材情報を供給していたHICPM会員小汐さんが急逝し、それ以上の発展をさせられませんでした。それまでに仕掛けた仕事をまとめた本が『アメリカの注文住宅が分かる本』(本の泉社)です。

現在の世界の住宅産業の取り組目標
HICPMは、英国、米国、ドイツ、カナダの住宅産業をその後も調査研究する中で、いずれの国でも「国民にとって、住宅資産形成を確実にできること」が、国民にとってはもとより、国家の政治の安定の上でも重要であり、そのための施策が講じられてきたこと、を確認することができました。それは次の二つの内容です。
(1)    住宅を国民の家計支出の範囲で(年収の3倍以下)で住宅を供給する。
(2)    住宅地の経営管理によりセキュリテイを高め、生活を危険から脅かされなくする。

住宅購入者のアフォーダビリテイを拡大する住宅
前者(1)は、住宅地経営としてダブルインカムを実現するとともに、住宅地で生活する人の能力が相互に尊重され活かされることで、相乗効果を発揮し、ローカルマネーの考え方と同様の考え方で、住宅地の中での貨幣の流通を高めることで生活を豊かにすることです。特に世界の工業先進国では共通して地価が住宅価格を高値硬直させていることが問題にされてきました。その解決策として地価自体を住宅の取引価格に反映させないリースホールドの方法と、地価を高密度開発によって、その影響を引き下がる方法とが実施されてきました。
戸建て住宅でそれを実現する方法として、米国では「独立住宅地の環境を共同住宅の価格で実現する」タウンハウスは、高い耐震・耐火、遮音性能をもち、米国政府のモーゲージに対しFHAの債務保証を受け、約半世紀の歴史を持っております。米国の住宅バブル経済崩壊後、そのタウンハウスの米国住宅市場での支持は再認識されています。
さらに、一番家計支出に左右されやすい「食」を住宅地経営に取り入れ、居住者の生活の安定を図ることです。この考え方は国際的にはアグリカルチュラルアーバニズムとして、2002年からオランダから世界に広がっています。

住宅のセキュリティの増進とニューアーバニズム
後者(2)は、直接的には住宅地ごとに「ハードなルール」(マスタープランとアーキテクチュラルガイドライン)と「ソフトなルール」(民亊契約を基本とした生活ルール)とを決め、それを住宅地経営管理協会(HOA)の下で一元的に管理することで実現するもの(三種の神器)で、1980年台米国でTNDとして始められました。今では米国の住宅政策に取り入れられ「ニューアーバニズム」の考え方及び技法として確立しています。

HICPM平成25年の取り組み
ここ数年マンション建て替え円滑化法で2人の老人の生命財産が国家権力の手で蹂躙される事件と、大田区池上で地域の歴史文化環境と周辺住宅地の生活環境が違法なマンション建設で脅かされてきた事件を、法律にのっとって是正しようとする訴訟事件に大きな時間を割いてきました。
それと工務店の建設業経営能力を高めるために欧米の住宅産業技術を国内に移転する仕事は、同じ国民の住宅問題の別の側面で、国民の住生活の維持向上のためにHICPMの取り組むべき問題です。
工務店の建設業経営能力を改善するためにHICPMが平成25年にする取り組みを2月末までに取りまとめることにし、来月にはHICPNビルダーズマガジンとともに会員に送付することにしています。HICPMのホームページにも掲載する予定です。

「HICPMの工務店向け研修セミナー」の骨子は、以下の3種類の方法で行うとするものです。
(1)    HICPMが月例セミナーとしてCMとホームプランデザインセミナーを行う
(2)    個人、団体、企業のための不定期セミナーで、希望に応じテーマを選択で行う
(3)    団体、企業からの要請を受けて講師派遣して行うセミナー、コンサルタントです
セミナーもCM(コンストラクションマネジメント)やOM(オペレーションマネジメント)同様、その3大要素(費用、時間、品質)が鍵であると思っています。受講者の支払い能力、学習に割ける時間、求める知識・技術内容、とHICPMの組織維持に必要な経費、割ける時間、HICPMで提供できる能力のバランスで、実施条件を決定しました。HICPMとしては、まず会員の要求に応えることのできる対応をしたいと思っています。

2月20日に実施しました「低層高密度開発」のセミナーは参加者に好評でした。セミナーの検討条件は、「敷地形状おおよそ32m.×35m.建蔽率60%、容積率150%の土地に何戸詰められるか。即ち、
「区画整理地区でスーパーブロック開発された土地の半分(1,134㎡)、言い換えれば、独立住宅として8戸建設できる土地に、現行の都市計画法及び建築基準法に適合する開発として、地価負担を最大限引き下げた戸建住宅を、独立住宅地以上の住環境を整備して最大限何戸造ることができるか。」という問題に対する解答というべきセミナーです。皆様もご検討してみてください。

その回答は「独立住宅で供給する住宅と同じ延べ面積の車庫付の住宅を18戸とゲストルームと集会室、HOA事務所を持つコモンハウス(130㎡)とそこに高木と池を持つ500㎡以上の公園を建設する」、という計画です。このセミナーのための資料は、取りまとめるために数ヶ月を要したもので、このレベルの小規模都市開発のテキストとしては多分何処にもないと思います。資料の文章構成は不十分でしたが、内容は今すぐ使える技術で作られています。この「低層高密度開発」のセミナーはできれば希望に応じて、または個人レベルでも実施したいと思っていますので、ご関心のある方はお問い合わせください。
(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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