メールマガジン

HICPMメールマガジン第496号

掲載日2013 年 3 月 4 日

HICPMメールマガジン第496号(3月4日)
皆さんこんにちは
北米ツァー報告会

先週、2月26日に、GKKとHICPMによるNAHB(全米ホームビルダー協会)の関連ツァーの報告会を、映像とツァー報告書を使って実施しました。16名の方がご参加され、熱心に聴講してくださいました。私自身今回のツアーは住宅バブル崩壊後10年間の住宅産業不況下の米国が、「どのような方法で再生しようとしているか」という観点で米国の住宅産業を見てきましたが、今回のツアーはその点からも大変大きな収穫がありました。

米国では住宅産業は平均像の需要者を狙うのではなく、明確にターゲットを具体的の定め、実数としては少なくても、入居対象を絞って合目的な事業をして、住宅購入者に高い満足を与えています。
顧客に満足を与えることがホームビルダーの評判を高めます。その営業圏をできるだけ狭くすることで、効率的に仕事ができるだけではなく、地域におけるシェアーを高め、住宅需要者がその出来上がった住宅に出会う頻度が高まり、営業効果が高まります。

モーゲージによる金融は、直接工事費分にしか融資が行われないため、住宅建設業者は、営業宣伝費を押えざるを得ないことになります。住宅建設業者はそのうえで、利益を拡大するために基本的に生産性を高め、直接工事費の圧縮を図っており、コストカットを実現しています。

資産価値が上昇している米国の住宅地
今回のツアーでは1960年代に開発が始まったシーランチや現在まだ建設が続いているTOD(トランジット・オリエンティッド・デベロップメント)の代表的な開発クロッシング、アクティブ・リタイアメント・コミュニティ・サンシテイ、レイクラスベガスの住宅地、ラスベガス・シティ・センター、アグリトピア(アリゾナ)など、いずれもエポックメーキングな開発を見て回りました。

いずれの事業からも、米国の住宅開発は、居住者が住みたいと感じる環境を造り、運営し、確実に資産価値が上昇する住宅地経営管理システムを持っていることを確信することができました。その最大の理由は、「三種の神器」(ハードなルールとソフトなルール、住宅地の経営管理主体)による住宅地経営がなされていることです。

住宅地経営と並んで、米国の住宅産業では、ホームプランシステムが大きな役割を発揮していることをあらためて確認することができました。米国のホームプランシステムは、流行のデザインを追うのではなく、クラシックな、時代を超えて人々の琴線にふれる住宅デザインを使っていることに、資産価値の維持向上する住宅供給ができている秘密があることを説明しています。

金融機関がモーゲージローンを実施するとき、その融資期間内にローン返済ができなくなったとき、金融機関は建物を差し押さえることで、債務を相殺し、貸し金は、差し押さえた住宅を売却して回収することになります。ホームプランシステムでは、そのような条件に該当する設計図しか取り扱いません。ホームプランを採用すれば、そのホームビルダーの設計力はその使用したホームプランのレベルにまで高まることになります。

日本の注文住宅
日本では、「米国の住宅は建売住宅であるのに対して日本の住宅は注文住宅である」といって、日本の住宅がより消費者のニーズに忠実に対応した住宅のように説明します。しかし、日本人が米国と比較して優れていると考えてきた住宅は、確実に価値が下落して購入者を不幸にするのに対して、日本人がさげすんで「米国の建売住宅」と呼ぶ米国の住宅は、それを購入した人の住宅の資産価地を確実に上昇させてきました。

その理由は日本の住宅産業関係者の設計能力が低いためです。欧米の住宅に感動した消費者の洋風デザイン要求に対して、日本の建築家は洋風住宅デザインの基礎ができていないため全く対応できず、貧しい設計能力で思いつきの対応をするため建築主の期待には応えられず、設計者と建築主があきらめたときに設計業務が終わるのです。しかし、工事段階にその不満は蒸し返され、設計変更を繰り返しても建築主の思い通りにはならず、完成後手直しをする場合もあります。

その住宅が気に入らず中古市場で売却しようとすれば、3割から5割も値崩れを起こすため、怖くて売却できず、我慢して住み続けている場合が多いのです。日本の注文住宅は必ずしも高級であるわけではありません。日本では、まともなデザイン教育はされておらず、流行のデザインを造っている有名建築家の真似をすることを建築設計のように考えている人が多いのです。建築デザインが歴史文化を担っていることを学ばないまま、時代のトレンドを追うため、注文住宅購入者破損を被ることになります。

上昇し続ける米国の住宅の価値
米国では住宅の価値が上昇し続けていましたから、投機会社や投資会社が住宅モーゲージ証券(MBS)を投機や投資の対象にしました。その結果、住宅価格が振り回されて高騰し、急落し大きな社会問題になりました。米国は住宅バブル崩壊後、10年かけて差し押さえ物件がほぼ整理され、差押さえ物件の整理で既存住宅価格が低くされていたため、その差が新築住宅を売れなくしていた価格差が縮小しました。やっと新築が既存物件の影響を受けないで供給される状況が作られてきました。

米国のアプレイザル(不動産鑑定制度)で明らかになっているとおり、不動産の評価は、住宅が高い需要に支持されている限り、その住宅の不動産価格は物価上昇以上に上昇し続けます。その理由は、住宅の現時点の価格は、その不動産を造るための土地、材料を現時点で調達し、現在の職人を使って建築したらいくら必要かという推定再建築価格として評価されるからです。それは、しっかりしたデザインで建築された住宅は物価上昇分以上の価格で取引されるということを意味しています。

米国には年金制度や医療保険制度は国家の制度としては持ってはいません。そのため病院に救急車で連れ込まれても、医療保険によって、診療拒否されることも例外ではなくあるそうです。資産価値が確実に上昇するしっかりした住宅を持っていることが個人の生活を守ってくれる、といいます。そのため米国でアメリカンドリームとは、持ち家を持つことだとも言われています。住宅の資産価値は住宅政策と金融機関と住宅産業によって守られているのです。

農業経営者が取り組んだ住宅地経営:アグリトピア
4年ほど前訪問した米国の小規模農業経営者が始めた住宅地経営は更なる成長をしていました。住宅バブル崩壊の影響を受けながら、その住宅はバブル崩壊前の状態に回復し、その後、高齢者向けのアシステッドハウジングも成功し、これからダウンタウンでのコンドミニアムをミックスドユース(住・商・業務の混合した)の街として建設するということでした。目下、新しい都市に居住する人たちのために農業生産を拡大する計画を説明してくれました。

アグリトピアでは居住者の「食の安全」に対する関心が高まっているため、有機栽培農産品を生産しているこの住宅地においては、居住者に消費価格で供給するため大きな利益が得られ、農業生産経営として順調に農業経営は発展しているようでした。先進工業国では、発展途上国での食糧需要の拡大を受け、先進工業国への輸出は縮小せざるを得ません。その結果、発展途上国から先進工業国への農業供給は不足し、先進工業国内の農業生産を拡大しなければならないと指摘されています。

アグリトピアは。先進工業国内で総体的に農業生産性の低い所規模農業経営で農業経営を進める方法としてヨーロッパにグリーンツーリズムやアグリツーリスモを米国の小規模農業に読み替えて実施し、大きな成果を上げた事例です。それを側面的に支えた事情が「食の安全」に対する国民の関心と有機農業でした。

セミナーは映像を軸に実施しましたが、HICPMでは今回のツアーで発見した興味ある住宅や住宅地開発のことをビルダーズマガジンでこれから少しづつですが紹介してまいります。

CM(コンストラクションマネジメント)
米国の住宅生産を健全な状態に維持させている理由は、CMによる建設業経営管理がしっかり行われているといってよいと思います。今回NAHB/IBS(インターナショナルビルダーズショウ)を訪問しても、建設現場での生産性を高めることに対する関心は高く、標準化、規格化、単純化共通化が企業の枠を超えて産業界全体で取り組まれていることを感じました。

HICPMが創設されて今年が19年目になります。創設以来CMの教育に取り組んできましたが、
HICPMのCMセミナーに参加し、学んでも実践する人はほとんどいませんでした。しかし、工務店経営としてCMに取り組まなくてもよいというような猶予がなくなってきていると思います。
CMを学習したい人がいれば、独りでも教育しなければと思い、今年もHICPM月例セミナーとしてCMセミナーを実施することにしました。

偶々2月27日大阪で、「緑とすまいの環境フォーラム」と「HICPM近畿支部」と「ホームビルダー研究会」の3団体がCMセミナーを開催してくださったので、講義時間として3時間半のセミナーを実施しました。私もこのセミナーに合わせてちょっと分厚い講義メモを作成しました。参加者の皆さんとても真剣に聴講してくださって、CMがコストカットを実現するために、日本でも現実的に求められている時代がやってきていると実感しました。
CMは、無理、無駄、斑をなくする生産管理技術で、かつて工場生産で取り組んだZD(ゼロディーフェクト)と同じ目的を持っています。住宅の生産過程に介在する欠陥を見つけ、それをなくすれば、その欠陥がなくなった分だけ利益が上昇します。CMは決して高度な技術というわけではなく、努力して欠陥を見つけ、それを排除したらその分だけ利益の増大としては反映されるという、分かり易い利益改善技術と考えることができると思います。

HICPMの年間セミナー計画は、今月のHICPMビルダーズマガジンに同封して送付する予定です。
(NPO法人 住宅生産生研究会(HICPM) 理事長 戸谷 英世)



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