メールマガジン

HICPMメールマガジン第497号

掲載日2013 年 3 月 11 日

HICPMメールマガジン第497号(3月11日)
皆さんこんにちは
これまでの中間総括

㈱大建の「荻浦ガーデンサバーブ」の取り組みは、売り出し以来、約1年間かけて、来場者の要求に応える試行錯誤を繰り返しながら、計画の基本的な考え方を住宅購入者のニーズに適応させる方向で、前進を続けています。売り出した段階の住宅は、購入者に荻浦ガーデンサバーブの可能性を考えてもらい、自由に夢を膨らませることのできる住宅として売り出しました。大建の職員はそれまでの計画と工事を通じて荻浦ガーデンサバーブの可能性と面白さに自信をもっていました。しかし、この住宅地をTVや雑誌で現代の取り組むべき課題に挑戦した話題性のある事業と高い評価見てやってきた住宅購入者は、これまでの住宅と違って、すべて完成しているわけではありません。
完成した住宅の特性を「差別化」(住宅の優勢したもののように説明)して、一挙に制約に持ち込むというやり方と違っていました。完成させた部分で必要な生活はできるように造られていますが、それ以上に、居住者の夢を発展させる可能性をもった住宅に、一緒になって購入者の立場で未完成をそれぞれの生活に合わせて充実させる住宅でした。そのため、逆に、購入者は戸惑いを感じ、「購入者の具体的イメージを㈱大建に作ってもらわないと購入できるかどうかわからない」ということで成約は進みませんでした。それでも来場者はその可能性に魅かれて、繰り返しの来場者も含んで、現在まで続いています。

1.試行錯誤を繰り返して成長している「荻浦ガーデンサバーブ」
日本での最初の本格的なニューアーバニズムによる考え方による街づくりです。そこでは、現代の住宅産業が抱えている多くの問題に、欧米の経験を活かして、一挙に解決しようと取り組んできました。その中心になっている問題が、住宅購入者が主体性を持って住環境を育てることで資産形成を実現することでした。この計画で実施した内容が住宅購入者に伝わらないため、販売状況はかばかしくありません。来場者は、18戸の販売住宅に対し1000世帯以上を得ています。それにもかかわらず、現在の入居者は3世帯で、ほぼ確実に成約段階まで来ている世帯が4世帯、商談進行中は数世帯ありますが、まだ全体の半数が成約に向けての具体的な商談にまで進めない状態です。私が今回出掛けた1泊2日の丸1日の滞在期間にも2世帯の来場者があり、ニューアーバニズムの取り組が多くの住宅を求めている人の関心を引き付けている様子を感じました。
私は、計画段階からほぼ毎月出掛けていろいろな相談にも乗り、個別の対応をしてきました。私が出かける都度、住宅地は見てはっきり分かるように来場者の疑問に応える対応策を示して成長しており、「最初売り出したときとは全く別」といってよいほど街並みが整備され、公園住宅地に様変わりしています。今回、丁度、帯道の居住者菜園に植えられている花桃の並木が満開で、菜の花と調和し見事でした。この機会にもう一度この開発計画と基本コンセプトが具体的に展開されている様子の中間総括をすることにしました。

2.    アフォーダブルハウス:年収の3倍の住宅
当初から、世帯年収として600万円の住宅購入者を予定し、販売価格が1、800万円の住宅を計画していました。この住宅は半地階として約50㎡の空間を持つ人工地盤の上に、約90㎡の2階建てタウンハウス(隣地境界線に接して建てられた独立住宅)が建てられています。
現在の国際的な社会経済環境では、アベノミックスで輸出産業は潤っても、輸入産業は倒産と失業の拡大と賃金下落傾向を深刻化しているように、国民の生活設計は不安な状態にあります。荻浦ガーデンサバーブでは、人びとの7つのライフステージに対応した7種類の平面計画の住宅が用意されており、全てが人工地盤上に建てられた住宅部分で足りるように計画されています。その上に、半地階空間は個人の生活要求に合わせて利用できる収入の増大を考えたん余剰空間として提供してきました。
特に、「所得の不安を解消するためにダブルインカムを実現する空間」として半地階空間が用意されていますが、これまでの来場者との対話の中で、その空間が家計支出の拡大に向けて効力を発揮できないでいました。しかし、このダブルインカムを得られるようにする半地階空間の利用が想像しがたく、「生活を豊かにする」ためのオーデオ/ビデオ空間や、夫や妻または子どもの遊びの空間と考えてしまいます。そうすればその内装工事費が嵩み、2,000万円を超える住宅になり、購入することが逆に、難しくなるという悪循環が生まれていました。その点の見直しをしました。

3.原点に立ち返っての再検討:住宅ローン負担ゼロ
九州大学が糸島市に移転してきたことも考慮し、糸島市の住宅産業が、「九大移転に対してできる対策は何か」ということが必要であるとこれまでも考えてきました。その一般論の検討から、学生が直面している経済環境に立ち戻って、今回は、具体的の住空間の供給という視点で「荻浦ガーデンサバーブでは何ができるか」という検討を行うことで、具体的な対応を考えなおすことをしました。
現在大学生をもつ親の立場としては、子どもへの仕送りが厳しい状態になっている上、大学生にも高い賃金を期待できるアルバイト先は少なくなっています。受験塾も過当競争で、家庭教師も甘くはありません。住宅産業としたら「学生に安い家賃で安心できる住宅を供給すること」が肝要です。
「荻浦ガーデンサバーブ」は、日本で最も進んでいる「三種の神器」による住宅地経営を、タウンハウス、NCZ工法、雨水の完全循環を取り入れたエコロジカルな環境、太陽光発電などを取り入れた住宅地で、これからの住宅産業に関心を持つ学生たちにとって、生活環境の実験都市として、これまでも九州大学と共同研究してきました。このようにこの地に生活をすれば、米国のカリフォルニア大学デービス校や、アーバイン校のように、それを研究の対象にできるだけではなく、学生たちは住宅産業の取り組まなければならない多くのことを学べることになります。
そのうえ、50㎡の半地階空間は学生下宿として、4人または3人のシェアーリビング、1戸または2戸の独立したアパートとして利用できます。今回はその基本計画と経営採算を検討しました。その結果、個室を持ったシェアーリビングの住宅(一人当たり13平方メートル)では、1ヶ月2万5千円から3万円で、個人用アパート(1戸あたり25㎡)では5.5万円、学生結婚した2人には小所帯用アパート(50平方メートル)が9万円で供給できることが分かりました。
学生たちにとって、環境の優れたこれからの進むべき住宅地経営を生活の中で経験でき、その住居費負担が市場の同水準のアパートに比較して80%以下で供給できるアパートは、親からの厳しい仕送りでの生活をするうえで大きな助けとなると思います。場合によっては、朝食つきで1万円アップ(B&Bアパート」でご飯と味噌汁を十分食べる)ことが出来れば、親たちは少ない仕送りでも、子どもたちは、餓死する心配がなく学業に遷延できるようになり、安心することができます。このいずれのアパート経営をした場合でも、家賃により、住宅所有者は毎月9万円の家賃収入が得られることになります。すると家主には自分の住宅のローン負担がほぼゼロになります。

4.単身世帯が急増している社会
ワンルームマンションは、自己中心主義の人間を増やし、反社会的な行動を助長する温室になります。単身者と家族で構成される世帯の違いを尊重し、家族の温かい家庭を感じることの出来る環境の中に、単身世帯がうまく組み込まれることが単身者と家族世帯との助け合いを促進するよい住環境が形成されるという考えがニューアーバニズムの考えにあります。
世代の違いを、「優劣の関係」で捉えるのではなく、「世代の違い」として理解し、助け合う環境が社会全体を豊かにすると考えられているからです。同じ住宅の中に、大家さんの住宅と店子の住宅やアパートが一緒に計画されているという住生活空間は、古今東西全ての社会で豊かな生活環境をつくってきたという理解が、ニューアーバニズムの住宅地経営の考え方です。
ワンルームマンションを集合共同中住宅として供給したところは、居住密度は高いですが、人びとはばらばらで没交渉な関係で、匿名性の高い居住環境は、犯罪の危険性が高いとこるになる場合が多いのです。居住する人びとのライフステージとライフスタイルの違いを尊重しあって、お互いに干渉せず、不必要なトラブルを引き起こさないようにするためには、相手を意識し、相手の生活を尊重しあうことで、そこには犯罪が侵入することを防止できるということがニューアーバニズムの研究の中で明らかになってきました。

5.「三種の神器」による住宅地経営
ニューアーバニズムによる住宅地は、日本の住宅開発のような住宅会社が住宅を高い値段で「売り逃げ」したら、「手離れの良い住宅」として住宅購買者の追及を回避する街では、「住宅会社が責任をもてる住環境」を提供することは不可能です。日本政府が音頭を取り住宅産業が「住宅産業の得意技」のように得意気に言っている「差別化」と「手離れの良い」住宅販売は、「詐欺」行為そのものです。
荻浦ガーデンサバーブのように、住宅地全体を有機的(優れたマスタープランとアーキテクチュラルガイドライン)により計画し、その計画どおりの居住環境管理を民亊契約により取り結び、それを住宅所有者全員が強制的に加入する住宅地経営管理協会(HOA)によって経営管理します。その経営を技術的にサポートする実行部隊として、住宅地を設計し、建設した㈱大建という専門家集団が、HOAとの契約に基づいて、計画通りの経営管理を実行することになります。HOAが主権者の意思決定をする政府に相当するとすれば、㈱大建は専門家集団である官僚機構に相当する役割を担うことになります。
欧米の資産価値が経年とともに高まっている優れた住宅地は、基本的に荻浦ガーデンサバーブでなされていると同じ住宅地経営が成されています。この住宅地の豊かな住生活を享受したい人は、何時の時代になっても、この住宅を建設するときに必要とされた土地、建材、労務を必要とします。その調達費用が必要となる上、居住者が築いた人間の営み、絆という無形の財産がこの住宅地と住宅地の周囲の環境を熟成させることになります。そのためこの住宅地は物価上昇以上の資産価地を高め、個人の財産基盤が守られることになるのです。
(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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