メールマガジン

HICPMメールマガジン第499号

掲載日2013 年 3 月 25 日

HICPMメールマガジン第499号(平成25年3月25日)

皆様こんにちは

工務店は本当に住宅購入者の利益を考えているのか

工務店の方に「住宅購入者の満足を中心に考えるか」、それとも、「工務店の利益を中心に考えるか」という疑問をよくぶつけてみますと、ほとんどの工務店は,[住宅購買者の満足を考えている]といいます。そこで、「住宅購入者はあなたの会社でつくった住宅でご満足されているのですね」と尋ねますと、ほとんどの工務店の方が「当然です」という対応をされます。

そこで、「それでは住宅購入者の方は、住宅をお買いになって、個人資産は大きくなったということですか。」と尋ねますと、曖昧な答えですが、「お客さまが満足されていますので、きっと住宅を造られて個人資産ができたと感じていらっしゃるのではないかと思っています」という回答が返ってきます。

「それではその住宅は、建設当時の請負価格よりその資産価値は上がっているのですね」、と尋ねますと、「後購入言う後、売買はされていませんので、現在の取引価格がいくらかは分かりませんが、減価償却分くらい販売価格は下がっていると思います」とその回答はさえなくなっていきます。

「減価償却分ということは、20年経過すれば、残存価値は10%しか残らないということですか」と念を押すと、「そうです」ということがほとんどです。3千万円した住宅が20年後の300万円の価値しか残らないことで、住宅購入者はその答えに満足すると考えることができると工務店経営者が考えることができるのだろうか

住宅の価値は住宅取引市場での取引価格

住宅の価値は住宅市場での需要と供給の関係で決まる市場価格で、償却資産ではありません。それで、「住宅の価値は残存価値ということはないのではないですか」、と突っ込みますと、「詳しいことは分かりませんが、銀行に評価させても残存価値評価でよいといいます」、といいます。このようなやり取りから、工務店が住宅購入者のことを真面目に考えているようには思えません。

ハウスメーカーなどではその購買価格の半分以下にしないと売れません。ハウスメーカーに、その住宅を購入後、「ローン返済ができないから引き取ってくれないか」といって、引き取ってくれる会社はありません。「住宅購入者の満足」、とアレほど広言してきたハウスメーカーが、「住宅ローンが支払えないので、未利用の住宅ですから引き取ってくれ」といっても、請負価格ではなく、その半額でも引き取ってくれません。「買い戻せない」という理由は、「販売価格に及ばないにくい価値しかない住宅を高い価格で販売してきた」からに他ならないからです。「住宅購入者の満足」といっているのは口先だけで、その経営の中心は、「ハウスメーカーや工務店の利益が全て」になっています。

よく松下幸之助の言葉として、「消費者のニーズにこたえた仕事をやっていけば、利益は結果としてついてくる」ということを自社の方針のようにいう工務店の経営者がいます。その松下哲学で仕事をやっているという話は多くのハウスメーカーの関係者からも聞きます。しかし、「消費者のニーズに応えてと言っている」ニーズとは何か、という質問に対し、消費者のニーズを具体的に明らかにした納得の行く回答を得ることはまずありません。

「差別化」と「新しさ」

ハウスメーカーも工務店も、消費者がよく知らない新しいデザイン、新しい材料、新しい工法、新しい性能、新しい機能を備えた住宅を「差別化」と称して販売し、それに対しては住宅購入者が満足するに違いないと信じて販売しているのです。「新しい」ということは、「過去にあるもの以上に優れたもの」というニュアンスを持たせてきました。

「差別」という言葉は、「違いを優劣の関係」のように説明する言葉で、高額で販売することを正当化しようとする一種の詐欺商売でもあります。「違い」はあくまでも「違い」であって、優劣ではありません。価格差は、見積もりという方法で表現されるとおり、材料と労務に必要とされる単価と数量の関で決められるものです。それ以外の方法で決める価格は、価格操作でしかありません。

「新しさ」で市場価格が知られていないうちに、上代(消費者に売りつける見積もり価格)と下代(工務店が仕入れる価格)の2重価格を当然としている日本の建設業は、「刑法上の詐欺見積もり」をしているといわれても仕方がありません。工務店は流通業者ではありませんので流通利益を取ることは間違いです。自分の金儲けのために価格操作をして高く販売する言葉で成功したことを、顧客が満足したと見当違いの評価をしているのです。上代の見積もりによって、住宅購入者が満足したという証明はできません。

CMによらないで、「新しさ」を理由に「差別化」は不健全経営

分かり易く言えば、ハウスメーカーも多くの工務店もお金儲けが中心で住宅購入者の利益を真面目に考えているのではありません。お金が欲しい工務店が、お金を欲しいというだけならば、「乞食」になって、建築主から「流通利益分を恵んでください」といえばよい。それを「流通利益を騙してお金を取ろう」とすれば、それは「詐欺」です。購入者を脅して取ろうとすれば「恐喝」であり、無理やりの買わせようとしてお金を取り上げれば、「強盗」です。

建設業者が住宅生産で原価を公開し、20%程度の粗利を請求することは適正な商行為です。それ以上の利益を生産性を高めて得ることも健全な市場競争の中での利益取得です。市場価格の中でCMによって、生産コストを引き下げて利益を得ることは健全な商行為です。市場の取引価格を操作することは自由主義を尊重する資本主義国家ではあってはならないことです。政府が公共事業でやってきた建設業を「建設サービス業」と建設業法に違反して実施してきた建設行政の不健全さが、日本の住宅産業まで汚染させているのです。工務店が真剣に消費者に支持される経営をすると決意したときには、「原価公開」を行い、高い利潤を上げるためにはCMにより工事生産性高めるほかありません。

今回は、現在、厳しい経営に直面している工務店が、「工務店のため」といかにも住宅購買者の立場であると言いながら、「上代価格の見積もり」を平気で行っていることに疑問を持たなかったり、「販売住宅を買い戻してくれ」と住宅購入者が申し出がなされたときには、「その直接工事費で買い戻せないということは、販売価格自体が「不当な価格販売」であったと認識する程度の「健全な感覚」を持つことくらいはできないといけないと思っています。

日本の工務店が常識的にやっていることは、欧米工業先進国では犯罪になるということ程度でも理解しておくことが必要だと思います。その背後に政府の建設業政策があるということは、政府自身が犯罪をやっているというだけのことで、決して威張れることではないからです。最も分かりやすい証拠は、見積書には、建設業法で定めている見積もりは、「工事の内訳を明確にして」、と記述してあります。それに対し、請負業者の署名と捺印して作成される工事見積書に、「上代価格で見積もりがなされていること」は、「私文書不実記載」という詐欺行為に該当するからです。

(NPO法人 住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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