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メールマガジン第500号(4月1日)

掲載日2013 年 3 月 29 日

HICPMメールマガジン第500号(4月1日)
皆さんこんにちは

今日はHICPMメールマガジン発行500号です。エイプリルフールに重なってしまっていますが、HICPMの創立以来の基本的に欧米からの先進的な技術移転の業務と、私の住宅産業関連の人生とを重ね、これからの取り組むべき500号を、記念すべき内容にしようと思います。

HICPMの活動目標
住宅を取得することで国民が幸せになるために、欧米では、次の3つのことを考えてきました。
これが住宅に関する国際的な標準的な考え方であり、日本においてもその実現を図るようにしなければならないと思っています。この考え方は、NPO法人住宅生産性研究会が発足以来、一貫して追求してきたもので、欧米から日本の住宅産業に対する技術移転が目標です。
(1)    家計支出の中の負担(年収の3倍以内の住宅価格)で、購入できる住宅であること
(2)    住宅に住んでいることで、文化的に豊かな生活を楽しめる住環境であること
(3)    住宅資産を所有していることで、物価変動以上に個人資産を増殖できること
この3つの「欧米社会の住宅の常識」が実現できる具体的な展望ができれば、誰でもが住宅を購入するときだけではなく、生活するときも住宅を資産として関心を持つようになります。

半世紀の人生でたどり着いた途、これからも行く途
私は半世紀ほど前、1960年日米安全保障条約を改定したときは学生でした。学生時代、戦後NHKラジオでマチスなど西洋絵画の講座を持っていた徳川美術館館長熊沢五六先生に美術の講義を受けていました。熊沢先生は真面目に授業に出席していた私を大変可愛がり、美術の授業ではご自身が学生時代、河上肇から学ぼうと京大時代に学んだマルクス、レーニン、エンゲルスなどの著作を勧めてくださいました。熊沢先生は、当局からにらまれた左翼運動・生活協同組合運動(宮崎世民)に関係し、治安維持法関係で警察に拘束された経験者でした。熊沢先生は徳川美術館で多くの社会的地位の高い人や文化人を接待されていました。私が自宅で内輪の結婚式に参列していただいたお礼に徳川美術館に伺ったとき、高松宮が徳川美術館においでになったときに使った国宝の天目茶碗でお茶を振舞っていただきました。熊沢先生のマルキシズムは、人道主義的な歴史観に立った社会科学論で、学生当時の私には物足りない感じでした。そこで独学で『資本論』を勉強し、中でもエンゲルスの『自然弁証法』、『住宅問題』、『フォイエルバッハ論』に魅かれ、それが結果的に、私が社会政策としての住宅行政を実施する官僚の道を選んだきっかけになっています。

未開放部落屋、山谷・釜ヶ崎スラムの改良
建設省に入ってからも公営住宅法、住宅地区改良法といった貧困者の問題を対象とする住宅政策の施行に関係し、(1)山谷(玉姫)や釜ヶ崎(愛隣)、高橋列車転用のどや、池袋バス転用住宅などの都市スラム改良、(2)昭島の兵舎転用住宅、北海道と九州にある炭鉱閉山後の炭住などのスラム改良、(3)貧困者、全国各地に散在する未開放部落、在日朝鮮人問題と不可分の関係にあった貧困を再生産スラムの改良、(4)闇市と一体化した都市スラムや都市改造土地区画整理事業で取り残された都市スラムの改良を取り組む中で、住居費負担、住環境の生活との結びつきを実感し、「住宅に、より豊かな国民生活の実現する住宅行政の途」を仕事の選択としたことは正しかったと考えてきました。
建築行政と住宅産業政策との関係
公営住宅で小型コンクリートパネルプレハブ住宅の導入およびプレハブ住宅関係技術者教育制度の創設に関係した他、1970年代にはカナダ政府の招待でカナダの2×4工法を調査し、それがカナダの住宅産業の高い生産性のカギを握ることを知り、2×4工法を日本に導入する仕事も取り組みました。最終的に国民に満足のいく住宅を供給するためには、住宅生産に携わる人と企業が満足のいく賃金と経営利益を上げるためのものにするためには、住宅産業という製造業にとっては、高い生産性が重要であると考え、誰でもが2×4工法の技術基準を作成する仕事をしました。たまたま建築基準法第5次改正を担当し法律改正を経験したことで、2×4工法の法律(告示)も一挙にな留めることになりました。
わたくしの中では貧困対策としてのエンゲルスの住宅問題から、産業人のための住宅産業界政策、やがては人々の豊かな生活を享受するための「わが家」「わが街」と誇りの持てる住宅地の景観・環境づくりが必要と考えました。そして、社会科学的合理主義と、歴史文化に根を張った帰属意識の持てる環境づくりと一体化して、住宅の取り組みを考えなければならないと考えるようになってきました。

世界の常識、日本の非常識
行政官人生に行き詰まりを感じ、48歳で退官後、民間人として輸入住宅問題に取り組むことになり、全米ホームビルダー協会との交流も始まりました。毎年のように住宅問題のメッカともいわれる英国、住宅産業が世界で最も進んでいる米国、歴史文化の豊かな西欧先進工業国など、世界各地を訪問し、人びとの豊かな生活を実現している住宅地、都市を調査し、書籍を購入して回り、住宅、建築、都市に対する日本の住宅、建築、都市の常識が世界の常識と大きく違っていることに気付き調べてみました。
日本では工学部(エンジニアリング)で扱っているこれらの問題は、日本以外の国では人文科学部(ヒューマニティ)で扱っていました。考えてみれば当然のことで、住宅、建築、都市は人びとの歴史文化の集積であり、人間の生活空間が景観環境として美しくなければならないことが判ってきました。もちろん、優れた住宅、建築、都市をつくり、経営するためには、各種技術に関する工学(エンニアリング)や経営に関する社会科学(ソーシャルサイエンス)が必要でそれらの関係学問と協力しあっています。
しかし、それはあくまでも住宅、建築、都市空間をつくり維持管理する技術です。住宅、建築、都市空間そのものは、人びとが帰属意識をもち、豊かさを扱う学問は歴史文化を反映した空間づくりの人文科学です。住宅、建築、都市空間は、人間の文化的生活空間を扱う人文科学として扱われていることが判りました。日本の建築工学や都市工学で扱っていることは、欧米ではシビルエンジニアリング(平和工学)で扱っています。日本のように土木工学、建築工学を別の工学として分離し、同じコンクリートが土木と建築では違い、鉄筋・鉄骨コンクリートの扱いが土木と建築で違っているというような馬鹿げたことは欧米ではありません。

「モザイク画」と「モザイクの石」
欧米では、都市計画も住宅地計画も住民が主体性を持って作ります。都市計画は都市計画法をもとに決定されるのに対して、住宅地は開発業者が住宅購入者と住宅地経営管理協会との民事契約に基づいてつくります。人々が生活する美しい街並み景観の担い手として建築物が建てられます。相隣する建築物や近隣の建築物が相乗効果を発揮して美しい生活環境をつくることが住宅、建築、都市の大きな目的です。美しい都市の生活環境をつくることが重要です。その全体の計画が基本計画であり、基本計画に対応する建築規制が建築設計指針です。住宅地の基本計画とそれを実現する建築設計指針を関係住民全員参加の民事契約で決定します。その民事契約を住民自治組織で守ることで資産価値の向上する都市がつくられることになります。住宅地は住む人によって個性のある住環境とすることで帰属意識が生まれます。
欧米の建築教育では、そのハードな街づくりを「モザイク画」と「モザイクの石」の関係で説明します。お互いの建築物や住宅は「モザイクの石」として、「モザイク画」のなかでそれぞれの役割を担うという考えです。お互いの違いを尊重し合ってお互いに助け合う関係をつくらなければ、みんなが住みたくなる資産価値の向上する良い街はつくられません。欧米の資産価値を増進している上記の都市経営を、HICPMでは、資産価値の増進できる「三種の神器」と整理してきました。

住宅地開発、住宅建設は製造業
優れた都市づくりをすることは、都市開発、住宅建設といった開発事業、建設工事、増改築工事(リモデリング)という生産をすることです。建設業は生産する事業〈製造業〉です。同じ設計図書を使っても、同じ価格で生産されるわけではありません。建設工事を安く実施(生産)するためには、工業生産がOM(オペレーションマネジメント:生産経営学)に支えられて高い利益を上げたように、建設業ではCM(コンストラクションマネジメント:建設生産管理経営学)によらなければなりません。特に建設業のCM技術は、生産工場を移動してつくりながら住宅地を開発し、住宅を建設をするわけですから、工場生産によるOMよりはるかに複雑で難しい対応を迫られる経営管理技術です。
HICPMでは、冒頭に掲げた3原則を実現するために、工務店の生産性を高めるためのCM教育と、優れた住宅資産を計画し、住宅地全体を総合的に計画し、建設し、経営することを住宅産業界の皆様に働きかけてきました。しかし、日本の現状は、住宅地を宅地ごとばらばらにし、相互に対立させ、優劣を競合させる「差別化」を進めてきました。その結果、住宅は敷地との関係での合理性を追求する結果、敷地ごとに見ると優れた開発に見えても、近隣に矛盾を押し付け、街並みは調和を失わせる自己主張になっています。近隣の住宅と相違することを優秀な住宅であると勘違いし、欧米の常識の機能しない住宅産業になってしまっています。住宅が相互に差別し合う結果、中古住宅はお互いに傷つけ合い、資産価値を下落させ続けています。

太陽と緑と水と風と地方的文化を育てる住宅地
住宅地開発により道路河川下水道等の都市施設ができ、公園は開発地の隅に追いやられ、すべての宅地がバラバラに都市施設にぶら下がり、宅地が敷地いっぱいに開発されると自然が壊され、大きな樹木は失われ、水は下水道で海に流され、水の失われたヒートアイランドが造られています。
欧米の住宅地開発は住宅地の中に太陽と緑と水と空気が行き渡る計画とし、子どもやハンディキャップを持った人びとが車の危険から守られる自由に往来できる空間があり、住宅所有者全員が主体となった住宅地経営管理協会のもとで、多様なライフスタイルをもった人びとがお互いの違いを尊重し合う管理する住宅地経営が行われています。その計画理念・計画技法を米国ではニューアーバニズム(代表例:シーサイド)、英国ではアーバンヴィレッジ(代表例:パウンドベリー)と呼び、安全で住宅による個人資産の増進に貢献する街づくり技法として一般的に使われるようになっています。

HICPMでは、住宅購入者の利益を守る仕事をする工務店を支援するために、欧米の街づくりの考え方、技術を今後もこれまで同様、軸足をしっかり据えて進めていこうと考えています。
[NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世]



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