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HICPMメールマガジン第504号〈2013年4月30日〉

掲載日2013 年 4 月 30 日

HICPMメールマガジン第504号(4月30日)
皆さんこんにちは

すでに連休に入っていますが、今日は連休の間に読書を考えてもらいたい本をご紹介いたします。

E・F・シューマッハ著『スモール・イズ・ビューティフル』
40年前の1973年に出版された本で、石油危機の時代に異常なベストセラーになった本です。この本は、内容がいろいろな書籍で紹介され、また引用されたこともあって、その内容はいつの間にか多くの人を読んだ気分にさせ、書名『スモール・イズ・ビューティフル』だけが一人歩きしてきました。
同じように社会的に大きな影響を与えた本に19世紀のアダムスミス『国富論』、カール・マルクス『資本論』、1960年代のベストセラー・ガルブレイスの『アフルエント・ソサイティ』などがあります。いずれも多くの人が読み、影響を受け、書名を引用して自己主張を補強してきました。
また、『スモール・イズ・ビューティフル』に登場する仏教経済学の視点は、ウイリアムモリスに大きな影響を与えたジョン・ラスキン『この最後の者にも(アン・ツー・ディス・ラースト)』に記述されたキリスト教経済の思想に対比される内容で、西洋経済学と基盤の違う経済学で興味のあるものです。
『スモール・イズ・ビューティフル』は予想以上に難しい本ですが、現在の日本のように財政が逼迫し、景気回復のために政府が指導力を持てず、アベノミックスのように、「国債の日銀買い付け」を容認する「ハイパーインフレへの途」しかない閉塞感のある現代の日本にとって、「豊かさの実現を考える原点」を示している唯心論哲学にも思考方法を伸ばした本です。

ビレッジホームと『スモール・イズ・ビューティフル』
この本は、米国がベトナム戦争の泥沼に入り、ドル危機・石油危機を迎え、成長率ゼロのゼロサム社会に直面し、国家の経済政策として「八方塞り」の時代に書かれた「経済の処方箋」でした。
マイケル・コルベットがビレッジホーム(カリフォルニア州、サクレメントカウンティ、デービス市)という自己完結型の住宅地開発に取り組みました。当時、地球を緑の宇宙船にたとえ、ビレッジホームは、エベネザー・ハワードのガーデンシティの理論に加え、太陽熱利用と地価の恒温性を利用したアース・シェルタード・ビルディング(土で構造物を覆い、地下同様の温熱環境の建築物)を建設し、自動車を排除し、自転車と徒歩による生活空間を造り、菜園や果樹園を住宅地に取り入れ、人びとの生活を自己完結型にした住宅地を実施したことで世界的に話題になりました。このビレッジホームの計画思想が『スモール・イズ・ビューティフル』の思想と共通するものでした。

1980年代のお金を使わないで豊かさを享受する取り組み
1980年代、経済場成長したEUの形成時代に、ヨーロッパでは、フランスの自由時間都市や、ドイツ、英国でのグリーンツーリズム、イタリアのアグリツーリズム、米国ではTNDやサステイナブルコミュニテイが豊かな生活の実現に向けて展開されました。
いずれの取り組みも『スモール・イズ・ビューティフル』の思想と理論に大きな影響を受け、現代のアグリカルチュラルアーバニズムに連続する取り組みとして、21世紀の都市農村計画の基本と考えられるようになってきました。
日本のバブル経済の崩壊や米国の住宅バブルが崩壊、リーマンショック以降、世界は経済不況に直面し、社会全体に閉塞状態が広がっています。1970年当時の経済の閉塞した時代に『スモール・イズ・ビューティフル』の地球の未来に向けての展望を与え、同書が社会に果たした役割を思い出し、現代にも読まれるべき書籍であると思い、ご紹介しました。

アベノミックスの危険性
安倍内閣はアベノミックスといって、黒田日銀総裁と共謀し、国民の合意の形成を待たず、輸出企業におもねる形で円安と株価の引き上げ、景気を刺激するハイパーインフレの途に踏み出しました。
日本経済がデフレ、と騒いでいる原因は、実は騒いでいる日本政府自身が、国民の税収で返済できないほどの赤字国債の増発することで起きている問題です。国債は国家の借金ですから、税金で返済するしかありません。国債は、税収の返済能力範囲で発行されている間は、安い金利で発行できます。
日本では、国債を政府指導で多くの金融機関に購入させています。そのため、国民の預金や保険を安い金利に引き下げたお金で国債を買わせ、安い資金調達を可能にしました。国債発行額を消化できなくなれば、返済金利を高め、高リスク、高金利で国債の発行が行われます。しかし、日銀に買い取らせると国債消化はできますが、流通通貨量が増えてインフレが進みます。

日本のデフレ現象
日本では、政府が国民のお金を国債の安い金利で買わせ、金融機関に金利(貸出金利と預金金利)水準を下げさせ、限られた財政収入でできるだけ効率よい財政支出を実施し、政策的にデフレを作ってきました。日本の金融機関は住宅金融に現れているように、不動産を評価する能力も資金を運用する能力もなく、政府の言いなりの「国債買取を安全な資金運用である」という馬鹿げた金融をしてきました。
さらに狂っているのは、金融が、直接工事費が販売価格の40%程度の大手ハウスメーカーの住宅に100%の融資を政府の指導で行っていることす。
住宅以外の全ての投資において、金融機関には投資を合理的に実行する能力が欠如しています。金融機関は頭を使う合理的な投資や融資を行わず、政府指導の国債買い付けに偏った理由です。政府と金融機関依存の国債がデフレ的な日本経済をつくってきました。

借金返済不能社会の国のモラルハザード
キーワード・「日本の国債残高」でコンピューターを開くと、超スピードで国債残高が増大している様子が分かります。民主党政権時代に消費税率を増額し、「消費税額と福祉費総額とが同額程度の話」を「福祉を充実するために消費税額を引き揚げる」と話をすり替え、消費税改正を実施しました。
一方、安倍政権は周辺国との軍事緊張を高め、赤字国債の日銀引き受けにより軍事予算の拡大を図る軍需景気依存の政策を進めました。戦前の軍国主義に進んだ財政と同様、「国債の制御は可能」と「口先だけの騙しの経済政策」です。日本の国債依存体質を改めず、財政主導の経済政策は、円安と株高の操作で経済にカンフル注射をしましたが、麻薬のようなもので決して長持ちはしません。
高い賃金を得た国民が、バブル経済後賃金が縮小し、少ないお金で生活をしなければならなくなったときに、「お金がなければ豊かな生活はできない」と勘違いし、不正なお金の誘導を考えました。置き引き、強盗、「俺おれ詐欺」に始まり、投資詐欺などお金のあるところの襲撃が無数に横行しています。

税金の政治家と官僚による私物化
日本の社会の中で最も悪質なものは、政治家と官僚が共謀して、国税の使途を勝手に決め、合法的な方法で私物化していることです。政策実現を口実に、怪しい制度を作り補助金の支出をするものです。
住宅性能表示や、木造住宅振興による補助金は、高価格住宅の詐欺商売の支援になっています。NPO法人や一般社団法人を利用した補助金の迂回受給、政治資金規制法を口実にした資金集めなど、法律上不正を正当化する仕組みを作った上での不正が横行しています。
ここでいう詐欺商売は、住宅の価値と乖離した住宅価格を、住宅ローンを追認することで、住宅購入者が販売価格の半分の市場価格でしか売却できない住宅を購入させられていることです。詐欺ではないと反論するならば、住宅を金融機関か住宅会社にローン残高かで引き取るか、販売価格で買い戻せるかを考えたら分かると思います。
モラルハザードをストップさせるためには、社会的にお金が切れた70年代にていきされ『スモール・イズ・ビューティフル』が、豊かさを誇った80年代に、お金を使わないで豊かさを享受する方法を示唆し、自由時間都市やグリーンツーリズムを実現したことを思い出して、現在あらためて『スモール・イズ・ビューティフル』の理論を実践に移すことを考えてほしいと思います。

『スモール・イズ・ビューティフル』に倣おう
お金があるときも、水や土などの自然に親しむ農業、果樹・園芸、ペット、フイッシング、セーリングなど、人びとは種蒔、育成、収穫、調理などの価値の創造を楽しみ癒されてきました。お金を儲けない農業や漁業に人びとが魅力を感じるように、豊かな住まい造りも、価値の創造として魅力のある仕事のはずです。農業や漁業でお金を儲けようとすれば、これらに投資した費用を取り返すことはできないかもしれません。しかし、自身が必要な農業・漁業を楽しんで行い、余剰生産物はお互いに物々交換をすれば、お金がなくても手に入れられます。生活に必要なものは、直接生産すれば、「お金を獲て、そのお金でほしいものを買う」不効率な手間を省けます。
住宅を購入する消費者に損を押し付けて自分の利益を求めて平気な住宅産業であってはならないはずです。「住宅産業が美味しい生活をするために、住宅購入者はその犠牲になれ」という理屈はありません。住宅開発を農業と結びつける『スモール・イズ・ビューティフル』の開発は、住宅購入者本位の住宅のノウハウです。
(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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