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メールマガジン第508号(5月27日)

掲載日2013 年 5 月 27 日

HICPMメールマガジン第508号(5月27日)
みなさんこんにちは
北米建材セミナー

2013.05.21から23まで、つくば、宇都宮、新潟の3市で開催された北米建材セミナーは、日本の経済不況を反映して参加者は各会場とも20名程度、合計60名の参加者だった。
このセミナーは現在国内で継続されている住宅建材セミナーとしては最も工務店にとって内容の高いセミナーの一つである。今回は米国から6人の講師がやってきて、国内の5講師とあわせ11名の講師陣という豪華版であった。小金沢さんと私が45分づつの日米住宅産業比較を基本にした住宅産業に関する基調講演、各講師による各15分づつの材料技術解説を行った。セミナーは、参加企業が取り扱っている建材の特性や使いかたその周辺の材料知識、施工知識など、工務店にとって専門的な材料技術知識に関する講義である。工務店の材料や工法に対する知識を高めるために、特に施工生産性に対する技術を高めるために、北米建材セミナーは受講する価値の高いものであった。

私の基調講演は「サステイナブルコミュニティの実現」である。それは「日米の住宅産業比較」という形で、住宅の資産価値が持続的に向上(サステイナブル)するための住宅経営を、10項目に分けて説明した。特に、米国の住宅バブル(2002~2007年)崩壊後、2008年からの住宅産業の回復を図る方策として、米国の住宅産業では、住宅のエンベロップ(外殻)の総面積を減らし、基本的に4出隅で造る「無理、無駄、斑」を最小限にし、生産性を高める対応を実施した。その結果、優れた住宅地での住宅取引価格は、この8年でバブル崩壊前の価格水準に戻っている。つまり、住宅購入者の購買能力(年収の3倍)に対応したコストカットと、住宅地の経営を「三種の神器」で行い、「人びとが住みたくなる売り手市場」を形成する住宅地経営を図った、ということである。これらの取り組みは、「住宅の生産性向上重視のホームビルダー経営」として、わが国が手本とすべき経営であることを示している。

「米国に倣う工務店の経営改善の10項目」
第1:住宅の資産価が持続的(サステイナブル)に向上する社会の建設
米国においては、国家にとっても個人にとっても、住宅の資産価値が向上することが重要であるという共通認識ができている。住宅取得が個人の資産形成になるためには、住宅価格が購買力を基礎にすることでなければならない。個人資産価値の増大は、地方財政収入の基礎である固定資産税を増大する。住宅による「アメリカンドリームの実現」は、取得した住宅の資産価値の物価上昇率以上の増大にある。住宅による個人資産の増大が、個人年金制度や医療保険制度を補っているのが米国政府の住宅政策の基本にある。

第2.住宅の価値とその評価方法
住宅の価値は住宅の需要と供給の関係で決まり、住宅ごとに固定的に決るものではない。日本では住宅会社が巨額の広告宣伝費と営業費用とを多額に掛けて販売した住宅は、購入者がその住宅を市場で売ろうとすれば、購入価格に締める広告宣伝や営業費用は含めることはできず、結果的に購入価格の半分以下になる。大手ハウスメーカーの直接工事費は販売価格の僅か40%程度(実際の価値の2.5倍の価格)である。その住宅を住宅購入者が売却しようとするとき、ハウスメーカーが価格に転嫁した営業販売経費は加算できない。住宅購入者がその住宅を市場で販売できる価格がその住宅の価値である。

第3.見積りと住宅の不動産評価
住宅の価値を事前に評価する方法は以下の3種類である。日本も欧米と同じように3種類であるが、その評価方法には全く社会科学的合理性がなく、売り手の不正販売を正当化するものである。3種類の不動産評価方法は、原価方式(推定再建築費:見積もり)、相対販売価格方式(住宅の3効用:デザイン、機能、性能のウエイト評価と取引価格の相対評価)、資本還元方式(不動産賃貸料の資本還元価格)である。日本では非償却資産の住宅を償却資産と扱い、不動産を不当に粗末に扱ってきた。

第4.    モーゲージと建設金融
日本以外のモーゲージローンの国では金融機関による融資の対象額は、住宅ローン返済不能になれば、不動産を差し押さえて債務は相殺され、金融機関は差し押さえた不動産を不動産市場で売却できる価格(直接工事費)として融資される。建設工事に対する建設金融は、モーゲージ予約した住宅に対し、金融機関は各下請け工事に対してホームビルダーが支払った請負代金相当の金額をその工事部分に先取り特権をつけ、建設金融として融資する。これらの国では、住宅の価値評価を金融機関も政府も実施しているが、日本では住宅の価値と乖離した住宅価格を全面的に認めてクレジットローンを行い、最終的には生命保険でローンを回収しようとし、融資対象である不動産自体の評価はしていない。

第5.    住宅融資債権(MBS)
FHA(連邦住宅庁)は、1936年に銀行が設定したモーゲージに関し、クラシックデザインによる住宅に対し債務保証をした。それは「クラシックデザインの住宅」は、既存住宅市場で確実に売却できると判断し、政府はそのモーゲージに対し債務保証を行い、MBS(モーゲージ・バックド・セキュリティ)としてFNMA(ファニーメイ:連邦全米モーゲージ協会)に買い取らせた。MBSは金融2次マーケットを形成し、金融市場を潤沢にした。政府による債務保証の前提は、住宅の取引価格が最低融資期間、資産価値を維持向上する住宅地経営をし、その住宅デザインが陳腐化しないことにある。

第6.    ホームプランシステム
FHAによるMBSが、クラッシクデザインに対し債務保証をしたので、確実の住宅金融が得られ政府の債務保証を受けられる住宅の設計図書の販売が、米国ではホームプランシステムとして普及した。
一般消費者もホームビルダーもホームプランシステムを利用し、社会的な住宅の設計能力を、一挙に「資産価値を向上させられる住宅」を造る高い水準にまで向上させることができた。

第7.「三種の神器」
住宅の資産価値を向上させ続けるためには、住宅地が常時、売り手市場として経営管理される必要がある。そのためには、住宅地のハードのルール(マスタープランと建築設計指針)と計画されたとおりのソフトなルール、罰則規定を都市空間の利用のための強制規程として、住民に遵守させる統治機構(HOA)をもつことが、肝要である。ルールは最終的に遵守が強制させられなければ効力を持たない。

第8.    住宅購入者の資産形成
「住宅購入者の利益本位で建てられる住宅」は、住宅購入者の支払い能力の範囲で、そのニーズの最大実現を図るために、コスト(原価)の切り下げ、限られた支払い能力の範囲で、そのニーズに応えようと努める(米国)。一方、日本の「工務店の利益中心に考える住宅」は、プライス(販売価格)を重視して取り組み、「差別化」により、如何に実際の価値より高く住宅を買わせるか営業(日本)になる。

第9.    土地の高密度利用
日本の地価は租税措置法で固定資産税が6分の一に割り引かれている通り、本来、課税標準地価を、事実上その6倍にすることで土地担保金融を実施している。異常に高い地価を、住宅価格に反映させないためには、リースホールド(借地法式)による住宅供給により地価を直接住宅の取引価格に関係させないか、タウンハウスによる低層高密度開発で、地価の住宅価格に対する影響を半減させることである。

第10.    建物のコストカット
住宅の販売コストを切り下げる方法は、住宅の外殻(エンベロップ)面積を(キューブ:立方体)の形態として最小限化し、材料使用量及び労務量を最小限化する方法か、同時に、CM(コンストラクションマネッジメント:建設業生産管理)技術による「期間当り建設業者の利潤と職人の賃金」の最大化を図る製造業が採用してきた方法(OM:オペレイションマネッジメント)を採用する以外に方法はない。

日本の工務店の体質改善がされない理由
セミナーに参加された工務店の方の中には、厳しい工務店経営を打開するため、「安くてよい材料はないか」という視点で、上から目線で参加された方もいたが、「米国の住宅生産について学ぼう」、「何か業務に役立つ住宅産業情報が得られないか」と考えて来られた方もあ利、頼もしいことであった。
工務店にとって最大の課題は、建設業経営管理(CM)能力を高めることを措いてないが、日本において建設産業者がその基本的な技術としてCMが必要であることが認識されていない。肝心なところに心が向いていない。その最大の原因は、政府が建設業を「建設サービス業」であると位置づけ、本来の「製造業」であるという事実の上に立った建設産業行政がなされていないことにある。
日米住宅価格が現在でも約2倍も日本が高い理由は、工務店とホームビルダーの生産性の違いであり、それは同時にハウスメーカーに直接工事費の1,5倍もの販売価格を容認することに繫がっている。
工務店が住宅金融、資材調達、建設資金など工務店経営の仕組みにおいて大手ハウスメーカーと比較して不利な条件におかれていることも事実であるが、工務店自身が自らの取り組むべきこと(CM)に精進せず、ハウスメー間の後追いをし、建設サービス業をやっていては顧客の支持は得られない。

「つくばEX沿線ニュータウン開発現場視察研修会」
5月24日(金曜日)GKK・HICPM・ワシントン州共催で北米研修セミナー関係の住宅地研修セミナーが実施された。つくばEXが開通されて以来、この沿線の時間距離が短縮されたことで、土地の時間距離の短縮を狙った開発が多数実施されてきた。今回見学した「柏の葉スマートシティ」に象徴されているように国、県、市、大学、産業が協力して巨大なスマートシティという新都市を建設していることに、つくばEX沿線の特色を見ることができる。

今回はポラスの開発中の「ココロシティ」と、2005年につくばみらい市に開発された陽光台の二つの住宅地を見学した。ポラスはこれまでHICPMの説明で、米国西海岸、東海岸、英国の先進的住宅地を見学研修したこともあり、日本の住宅会社の中では、最も街造りに積極的に取り組んでいる企業である。今回のココロシティも街並み景観には相当の努力を払っているが、日本の行政や誤った戸建住宅信仰に押されている感を免れ得ない。また、米国のニューアーバニズムの街づくりのような計画思想がなく、「街なみ景観をつくる」と言う小手先の技術が先行しているように見える。景観形成技術には欧米の経験が生かされているが、住宅地経営という考えは存在せず、「手離れのよい事業」として取り組まれていることは残念である。

陽光台は開発後、8年ほど経過しているが、敷地面積が広いこともあるが、住宅のファサード(顔)は道路に面して造られ、セットバックも2メートル弱ではあるが配慮され、電線の地中化が実施され、電柱と電線が視界から見えなくなっているため、街並み景観としては良くできている。
この二つの住宅地開発は、わが国の住宅地開発としては最も進んだ開発と考えられるが、物としての開発という枠を超えられないでいるため、後は住民任せということになり、陽光台では同世代層が居住し、共通の話題を持っていることが、住民の話し合いが進め、街を良い方向に育てているように思えた。
しかし、「三種の神器」を用意し、住民自治の統治機構(HOA)を造ることができないと、衰退の危険は避けられない。最大の要因はふたつ考えられる。一つは、地区内道路を公共機関に管理移管して、道路管理をめぐり行政は住宅団地本位に対応をしてくれないことから、住宅団地が主体性を持って住宅地経営ができなくなることである。もう一つは敷地内の植栽及び外構の扱いである。居住者の主張が揃えられなくなって、緑の景観管理に調和が崩れると、その環境は維持はできなくなる。
(NPO法人 住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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