メールマガジン

HICPMメールマガジン第512号(6月24日)

掲載日2013 年 6 月 22 日

HICPNメールマガジン第512号(6月24日)
皆さんこんにちは

前回に引き続いて、ボウクス社のCMセミナー「第1部:住宅産業の日米比較」に引き続き、「第2部:CM(コンストラクションマネジメント)の理論」についての説明を紹介します。

第2部:CM(コンストラクションマネジメント)の理論
1.    建設製造業者に必要な合理的な利潤追求の経営理論
(1)    建設製造業

欧米のホームビルダーは、産業分類上は、住宅建設業(工務店)は、「住宅製造業」に分類されます。製造業(工務店)は、材料と直庸または下請け専門業者の労務(建設労働者)を使って、建設現場で「住宅」と言う新たな価値を創造する産業です。住宅建設に投入される材料と労務の価値総額よりも住宅の価値が大きい状態、即ち、建設現場で「新しい価値の創造」が継続される限り、住宅の生産は継続されます。建設現場における建設労働により、新しく「価値が創造される」と言う「労働価値説」を根拠にしています。それを「付加価値」と呼んでいますが、流通業やサービス業でいう「付加価値」のように「商品を取り扱った者の経費と利益」を回収するために商品の製造原価に加算する費用を「付加価値」と呼ぶ「経費」とは全く異質なものです。流通業とサービス業は、「経費」を加算するだけで価値は変わりません。そのため、流通業の「付加価値」を正当化する商社や、公共事業の独占的な価格操作が、適正利潤と社会的に容認できる粗利を逸脱し、消費者に受け入れられなくなると、「流通の中間省略」といって商品の価値向上に寄与していない流通をカットし、「流通経費」を削減します。

(2)    建設サービス業
日本では工務店の産業分類は、「建設サービス業」に分類され、「製造業」には分類されていません。「建設サービス業」の考え方は、公共事業と同じ考え方で、下請け業者の実施した「建設事業の成果」を元請業者に「建設サービス」として提供するという考え方です。重層下請け構造のすべての請負段階で、「経費と利益を加算できることを正当化する」理屈です。重層下請け構造を使って発注者の人件費を流通過程で分散負担させることが行われています。同様のことが重層系列の産業で行われてきました。ハウスメーカーの場合、直接工事費が40%でも、そこに重層下請けまたは重層的組織を前提にした巨額な営業経費、宣伝経費などを転嫁(回収)させて、100%の販売価格を正当化できる価格設定の理論です。そのため、ハウスメーカーの販売した住宅を購入者が住宅市場で転売しようとしても、その購入価格で販売することはできません。ハウスメーカーが営業宣伝に掛けた費用は、住宅そのものの価値を向上させることには役立っておらず、その住宅の価値を高めてはいないからです。当然、住宅を購入した人がその住宅を販売しようとしたときには、その分価格には反映できず、値下がりします。

(3)    米国の建設業とブランド価値
「住宅の価値」は「不動産鑑定評価」で明らかにされることです。住宅市場で決定される住宅の販売価格は常に需要と供給の関係を反映して変動していますが、その平均的な利潤として、粗利として計算されている20%程度の付加価値が、住宅の生産過程で生まれると経験的に考えられてきました。金融機関は、「その粗利分を融資対象にはしない」という原則で住宅ローンが実施されてきました。住宅建設業者は金融機関が認める粗利(20%)を最大限純益にする努力が米国の住宅産業の取り組みです。粗利比率を20%で健全経営をするための建設業経営理論とは、重層下請けをしないで、「一層下請けで工務店経営ができる」かつ、「顧客の70%以上を紹介客として得られる営業」と言い換えることができます。それは、住宅購入者をホームビルダーの営業マンに変え、建設した住宅をホームビルダーの看板広告として使うことのできるホームビルダー経営です。このような健全経営をするホームビルダーの生産する住宅に「信頼のできるホームビルダー」というブランドの価値が付くのです。「ブランド」を理由に、需給関係を無視し高額の価格設定をすることには、「詐欺」以外に合理的根拠はありません。

2.    マクロなCMとミクロなCM
工務店のマクロなCMは、工務店の営業区域をできるだけ狭く設定して、住宅市場調査を行い、多様な需要者の中から、既存ホームビルダーが対応していない顧客や、これまで市場では顧客ニーズに対応していなかったニーズに応える住宅地開発のターゲットを設定します。または、顧客層を絞り込み、その中の顧客の顔(需要内容)を理解して、自社の得意な分野を組み立てて取り組みます。この場合、既存ビルダーより20%程度コストカットして住宅供給できる分野、つまり、既存のホームビルダーにとっては原価で供給できる住宅に関しては、「競合他社に対して、自社の特性を生かせば、絞り込んだ需要者を相手にした事業では負けることがない」経営方針をつくり実践することです。

その取り組みの鍵が「CM」です。生産過程に介在するムリ、ムダ、ムラというマイナス要素を排除することでしかコストカットはできません。そのためには「よろずや」ではなく、「専門店」として扱う材料、工法のすべてに関し、標準化、規格化、単純化、共通化を図って、取り扱い材料及び工法を絞り込んで少数にし、生産を平準化し、生産性を高めることをしなければなりません。当然、専門分野を磨き上げて、より効率を高める住宅関係諸制度(金融、保険、住宅関係法制度)に精通するとともに、ホームビルダーの専門性(地域性、購買者層、住宅地経営、住宅地デザイン) 自社の経営能力、下請け専門業者や職人の能力と競合他社の能力についての知識情報を管理することを言います。

ミクロなCMとは、個別の工事ごとの合理的な工事実施に関する住宅地経営管理業務を指します。ミクロなCMは大きく2つに分けられます。一つは一つの工事を構成する単位工事(一般的には下請け専門業者:サブコントラクターが実施する工事)の中の「ムリ・ムダ・ムラ」を削減することです。もう一つは、生産システムとしての工期短縮をする管理をすることです。工期を短縮することは、単位工期当たりの利益を拡大するとともに、建設労働者に工期当たりの賃金を増大することになります。

3.    経営者のリーダーシップ
カルロス・ゴーンが日産自動車の社長に就任したときは条件としてカルロス・ゴーンが出した条件とは、
それまでの経営者人を全員首切ることでした。ゴーンの社長就任の記者会見で多くのジャーナリズムはゴーンを批判しました。カルロス・ゴーンはジャーナリストを相手に「日産とトヨタを比較して人材と機材の両者に関し、日産に遜色があると言えるか。遜色があればそれを改善すればよいし、遜色がないというならば、一体どこに日産がトヨタに比較して遅れているか、その理由を説明してくれませんか」と質問しました。回答がないことを確かめて、カルロス・ゴーンは、「日産がトヨタと比較して遜色のない人材と機材であるにもかかわらず、それを生かせないのは、それらを使う立場にある経営者の責任である」と説明しました。工務店経営においてもTPO(とき、場所、条件)に合わせた経営が求められていいます。以下のような経営を臨機応変に使い切ることをしないと昔の日産のような経営になるのです
CMは経営管理技術です。CMに必要な4つのリーダーシップの説明は、HICPM刊行のNAHB『アメリカのコンストラクションマネジメント』テキストに説明されているので、ここでは省略します。
専制君主的〈デスポッティック〉リーダーシップ
官僚主義的(ビューロクラティック)リーダーシップ
民主的(デモクラティック)リーダーシップ
交響楽の指揮者的(オーケストラティック)リーダーシップ

4.    ホームビルダー経営の基本
ホームビルダー経営には次の2つの重要なことがあります。
(1)    顧客満足

ホームビルダーが実施しなければならない経営の基本は、お金を支払ってくれる顧客満足です。顧客満足の原則は、約束の履行です。顧客に利益をもたらすことになる選択肢を以下に的確に提供できるかを、工事請負契約前に完全にし終えることが、工務店経営をムリ、ムダ、ムラなく実施することになります。ミクロなCMの実施にとって重要なことは、「顧客の気に入った住宅」を建てることです。その基本は顧客のアイデンティテイの確かめられるデザインの住宅を工事請負契約額でつくることです。工事契約時点で工事内容を確定することが、予定通りの工事の確実な履行(契約内容の明確化と契約通りの実施)となり、顧客満足の基本になります。そのためには工事段階に入って工事内容の決定や変更が発生しないようにすることです。CM作業に入る前に工事用の生産図面である設計図書を確定することと、建築主に対してはあらゆる設計変更可能であるが、設計変更の計画と見積もり変更額に合意がない限り、変更はできないことを明らかにすることです。

(2)    工事の基本データーの収集整理
ホームㇽビダーは継続反復する「業」を営む者ですから、ホームビルダーが業務上使うことになる材料と労務の基礎データーを「最新情報」として管理しないといけません。それを使えるようにするためには、ホームビルダーとして利用する材料(材料供給業者)と労務(下請け業者、または職人の能力と賃金に関し、最新のデーターを「ホームビルダーとして使える」データーベースとして管理しなければいけません。それがなくては現在から将来に向けて対応することになる住宅工事に対し、適正な見積もりを行うことができなくなるからです。見積もり段階で精度の高いデーターを持つことによってしか、厳しい競争社会での適正な利益を確保した仕事をすることはできません。ホームビルダーは、設計施工に関する材料及び工事に関するネットワーキングをしっかり組み立て、材料と労務の情報がアップトゥデイトナ情報として利用できるようにしなければならないからです。

5.    ホームビルダーが重要視する3要素
顧客にとって、「お金」、「時間」、「品質」のCMの3要素は、いずれも重要な要素ですが、顧客の視点で見たときには、CMの3要素の中で最も重要と感じるのは、住宅の効用(使用価値)です。それは顧客が住宅で生活を始めて毎日生活の中で感じる(享受する)ものは住宅で生活して感じる住宅の提供する効用に対する顧客満足です。その効用、即ち、「品質」は、以下の3種類で構成されています。これまでのわが国では、政府も大学も住宅の性能に偏重してきました。しかし、住宅購入者にとって最も重視しているものは、その住宅に対する帰属意識です。「わが家」、「わが街」と認識できる住宅や街並みに対するアイデンティティーを決定する最大の要素は、基本的にデザインです。その意味では住宅購入者が帰属意識を持てるデザインの住宅や街並みづくりを考えなければならなりません。
住宅の品質(デザイン、機能、性能)
住宅の機能(利便性、ライフスタイルへの充足性)
住宅の性能(構造耐力安全性、気密・断熱、遮音性、防犯性)

6.    ホームビルダー経営管理技術(CM)
ホームビルダー経営管理という業務は何かと言えば、マクロな視点でいえば、住宅購入者が、購入するに当たってこだわる帰属意識を持てる街並みや住宅を、どのように適正な価格で手に入れるかという住宅地経営の問題を外して考えることはできません。その方法としては「費用対向率」を最大にすることを措いてありません。ホームビルダーの事業の対象顧客を絞り、その生活要求に対応した土地を選び、住宅地経営管理の「三種の神器」という経営の枠組みを決定した以後は、経済的利益最大化の取り組みとなります。それは経営の三要素である価格(コスト)・時間〈タイム〉・品質(クオリティ)で決められることになります。それを概念的に理解するとすれば、CMとはコスト(C)と時間(T)と品質(Q)の積で決められたものと整理することができます。そして、CMの構成要素であるコスト(C),時間(T)、品質(Q)を変数として考えたときに見たとき、三要素から見た建設業経営管理の見方が、以下の通りの原価管理、工程管理、品質管理となります。
コンストラクションマネジメント(建設業経営管理):CM=C・T・Q(原価・時間・品質)
コストコントロール(CC:原価管理):dCM/dC(原価を変数として見たCM)
スケジューリング(工程管理):dCM/dT(限界工程管理:CPM)(時間を変数として見たCM)
トータルクオリティマネジメント(TQM:品質管理):dCM/dQ(品質を変数として見たCM)

7.    ネットワーキング
工務店(ホームビルダー)経営は、「住宅購入者の70%以上を紹介客とし、営業宣伝費用を掛けない経営です。そのためには、住宅を購入した人にとどまらず、住宅の生産に関係した人のすべてに人たちをホームビルダーにとっての営業マンとし、そこで建設された住宅自体を営業用の広告塔とすることがなければならないと米国では言われてきました。その視点から見たときの以下の3つの管理は、まさに、ホームビルダーの営業の基本的ツールです。いずれの場合も、顧客、職人及び建材業者が満足するようにするネットワーキング」をつくることを意味しています。そのネットワーキングの重要性は、関係する人が皆、ホームビルダーと利益が共同すると理解するようにできることです。それはホームビルダーが以下の方法でネットワーキングを強化することがそれを可能にすることができるといわれています。
顧客管理:ホームビルダーはその供給した住宅に一年に一度訪問すること
職人管理:複数のサブコンを競合関係で使うが、継続して使う
建材業者管理:仕入れ業者はできるだけ継続して利用する。

(特定非営利活動法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム