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HICPMメールマガジン第518号(平成25年7月29日)

掲載日2013 年 7 月 26 日

HICPMメールマガジン第518号(平成25年7月29日)
皆さんこんにちは
ホームビルダー研究会定例会

先週7月23日、「ホームビルダー研究会第5回定例会」が開催されました。滋賀県野洲湖都コーポレ-ションでその営業所、開発現場及び社長からの経営の考え方を聞く勉強会です。
会場では「会員の経験から何かを学びたい」という気持ちが研究会を盛り上げていました。すでに多くの方はご存じのように、「ホームビルダー研究会」は、建材の流通経路を短くして、共同購入の考え方で需要を集約することにより、良い材料を安く購入する、という取り組みです。
そのシステムを補強するために、既存の建材商社ハウディーも研究会に参加され、すべての主要建材対象に供給できるようになりました。その結果、ホームビルダーは建材の購入を専門業者に任せ、工務店は本来の工務店経営に専念することを目的に取り組まれている運動です。
HICPMは、この研究会発足時から顧問として参加しています。そして基本的に米国の住宅産業の経験を日本の現場に読み替えて取り組む方法として、NAHBが実施してきた「ホームビルダー20」のようなCMを徹底して会員の建設業経営研鑽の場とするようにしたらと期待してきました。

第5回定例会の検討事例(湖都コーポレ-ション)
実際のホームビルダー研究会の取り組みは、流通業者としてだけではなく、自ら工務店経営に取り組み、社会的評価を受けてきた彩賓館(日商)の笠井社長が事務局長となって、意欲的に工務店経営を変革させ、成果を上げている実例を調査し、その成長戦略の成功経験をホームビルダー研究会の共通の研究材料とするものです。
会で取り上げてきた事例研究がホームビルダー研究会に集まってこられた会員の抱えている悩みにうまく応えているため、会は大変盛り上がり、参加会員も増加しています。
今回訪問した湖都コーポレーションは、これまで入会していたフランチャイズが衰退していたところから、「他力本願ではなく、自社で市場を分析し、市場のニーズに応えた経営を実践し、事業規模を拡大することに成功した事例」でした。
この事例は工務店の安定経営を実現したいという参加会員のニーズに応えた見学事業として参考になったと思います。問題は参加者がこの事例から何を学んだかということです。率直に言って、フランチャイズのモデルホームのデザインと比較して湖都コーポレーションのデザインが優れていたわけではありません。フランチャイズ時代には、そのモデルのデザインを理解しないまま販売していたのに対し、湖都コーポレーションのデザインは、住宅購入者のニーズに応えるという意識的な取り組みで、会社自体のデザイン能力を生かし、背伸びしないで、結果的に、その地域で長い歴史を経て定着してきた米国ン人宣教師建築家ボーリスのデザインの影響を取り入れたものになっていました。

工務店経営のリーダーシップ
湖都コーポレイション原田社長のリーダーシップは、NAHBの『アメリカのコンストラクションマネジメント』にもあるとおりのものです。即ち、過去の否定の上に、新しい方向をゼロからの模索し、社員全体の能力を一つの方向にまとめ上げるため、社員の持てる能力を民主的な方法で生かすリーダーシップです。このリーダーシップで社員全体の能力が集中することに成功していました 。
社長の時代感覚を顧客対応と店舗空間の作り方にいかすことで顧客のニーズに応え、しかも、既存社員の能力に期待できない広告宣伝に関しては外注することで、会社の能力をうまく発揮していました。
しかし、住宅産業という産業は、政府が進めているように「過去を否定して新しいものでつくる(スクラップアンドビルド)」の産業ではありません。過去がすべて間違っているわけではありません。過去の集積が現在です。しかし、政府も企業も過去を否定しないまでも、無視し続けてきました。
湖都コーポレーションは原田社長自らも「時代と市場と顧客のニーズに取り残されることのない精進が必要である」指摘したとおり、過去の全面否定は、常に前を向いて、未来予測調査を基に、すべてを創造することをせざるを得なくなります。最も合理的な取り組みは、過去の総括をしっかりして、計画と実績の矛盾を解明することで、過去から未来に連続した仕事ができます。
日本の住宅産業はハウスメーカーから零細な工務店まで、政府のスクラップアンドビルドの住宅政策で目先の成功を追って疲れ切っているだけではなく、実際に「日本の住宅産業によってつくられた住宅は、住宅を購入した人たちに資産を失わせる結果しか与えてこなかった。」ことを思い出すべきです。
自らが実践してきた結果が、住宅購入者にとって利益となっているか、不利益になっているかを厳密に分析し、総括することがなければなりません。人類がこの世に生まれてから、人類が滅亡するまでなくならない住宅供給を考えるとき、常に需要の先ばかりを追っかける住宅供給は、住宅産業を疲労させ、結果的に住宅購入者を貧困に追いやってきたことを考えるべきです。

「クラシックデザイン」とは
今回の定例会で、私には「クラシックデザイン」についての説明をしてほしいという要望を受け、バス内でのセミナーを実施しました。
プリンスチャールズがいつも次にように主張しています。「私たちは過去の人たちが開発した歴史文化に根差したデザインで、その後の人類が大切にしてきた建築を利用して豊かな生活を享受してきました。私たちは過去の人たちがつくり、育ててきた優れたデザインの空間を未来の人たちのために伝えていく義務があります。」この言葉を忘れてはなりません。
日本の住宅産業や建築設計者は、「前衛」、「時代の先端」を誇り、時代感覚にあったデザインの建築を供給してきました。その多くの住宅は流行歌のように時代感覚に合って人びとに共感を与え、多くの人がそれらの住宅を購入してきましたが、住宅購入者のアイデンティティとして「わが家」、「わが街」の帰属意識を育てることがなかったため、時代が過ぎると飽きられ衰退していきました。しかも、流行のどさくさに紛れて、住宅購入者の所得(住宅購買力)と乖離した高額の住宅を、その住宅の価値を逸脱した価格で販売された結果、それらの住宅は、既存住宅市場で購入価格の半額で販売することもできなくなっています。分かり易く言えば、日本では国民は住宅を購入することで間違いなく資産を失い、住宅購入者に損失を与えてきました。

住宅供給業者本位か、住宅購入者本位か
日本の住宅産業では、ハウスメーカーも工務店も、競って時代を先取りし、市場を食い荒らし、自分が販売した住宅に責任を持とうとしません。それが実情です。ハウスメーカーや工務店は住宅購入者に責任を持って仕事をしているといいますが、住宅生産者が住宅購入者に責任を持つということは、単に維持管理修繕をすることだけではなく、販売した住宅が販売価格通りの価値を持っていることに責任を持つということでなければなりません。究極は「販売価格で買い戻す」ことでなければなりません。
日本以外の国では、基本的に販売価格の80%(直接工事費分の価値)を住宅産業全体が金融機関との関係を介して住宅購入者に保証しています。それがモーゲージによる消費者に対する住宅の価値保証です。日本の住宅金融機関は住宅にその土地と一体的に1番の抵当権を設定しながら、土地建物でローン債務を帳消ししようとしません。土地建物の合算した不動産評価に対する住宅金融は50%にも満たない状態であってもローンを返済するまで債務を追及するのです。要するに金融機関は住宅の価値を評価しないで借主の個人信用で融資しているのです。
米国の住宅産業の基本的な立場(スタンス)は、住宅を購入する人の利益を尊重することです。
一方、日本の住宅産業は、住宅供給者が利益を確保することであって、住宅購入者の資産形成には全く気に掛けていません。両国の住宅産業には住宅購入者に対する関心に置いて、基本的な違いがあります。悪い言葉でいえば、消費者を「手段を選ばず」で成約に持ち込んでしまえば、そこには(契約自由の原則)が民法上定められているので、売り手の責任は追及されないというのが日本の住宅産業の責任回避の論理になっています。
(特定非営利活動法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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