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HICPMメールマガジン第525号(平成25年9月16日)

掲載日2013 年 9 月 17 日

HICPMメールマガジン第525号(平成25年9月16日)
皆さんこんにちは、

東日本大震災で日本にきた米国の調査団との密着行動から、米国人にとって「住宅を取得すること」が「アメリカン・ドゥリーム」である理由が分かりました。米国の住宅産業は1929年の世界恐慌で被害を被って崩壊しましたが、政府はまず1934年NHA(全米住居法)が制定し、住宅ローン条件を変更し住宅購入者を救済し、次に、FHA(連邦住宅庁)に金融機関が融資の担保であるモーゲージの債務保証を行わせました。そして政府が債務保証したMBS(モ-ゲージ証券)をFNMA(ファニーメイ)に買い取らせ金融機関にローン資金を供給しました。このシステムを支えているものが、住宅の純資産 (エクイティ)価値を維持向上している「アメリカンドリーム実現の住宅地経営」でした。

国、地方公共団体、金融機関、住宅所有者の共通利益
世界中どこでも住宅は国民にとって生涯に於ける最大の買い物であり、住宅を所有することで資産を失っている日本以外の国では、住宅資産は個人の命、家族の次に重要な経済的支柱と考えられています。国を挙げて住宅資産の維持向上を図ることで、個人の財産形成を促すとともに、結果的に、地方税収入の中心である固定資産税を拡大させ、金融機関の住宅ローンの担保(モーゲージ)の純資産価値(エクイティ)の価値を高め、金融(エクイティ・ローン)により個人消費を安定・拡大させ、経済活動を活性化させることで国富を拡大させてきました。米国の国家経営にとって住宅資産価値が向上し、国富の拡大再生産し続けることは、個人や家族の自由と独立を確立するために重要であるだけではなく、国家、金融界、住宅産業界はもとより米国経済全体にとって、また、社会の安全・安定を図る基本と考えられています。そのため、米国の住宅政策は米国民の自由を守るための経済的自立の基盤をつくるものであり、自由主義国家の政治の関心の中心になっています。

米国人に共通する「アメリカンドリーム」
米国では、総ての国民が住宅を持つことは、個人資産を維持向上する手段の基本とされ、共通の「アメリカンドリーム」と言われてきました。しかし、日本では米国の常識と違って、国家が個人資産である住宅を粗末にし、米国のように資産価値が維持向上する住宅政策がとられていません。政府は資産としての住宅供給を行わず、住宅を償却資産であると粗末に扱い、経年するに伴い資産価値が下落し、住宅を「スクラップ・アンド・ビルド」してきました。そのため、フローとしての住宅建設で住宅産業は住宅建設で潤ってきましたが、国民は住宅をもつことで貧しくなっています。しかし、国家は国民の住宅の資産価値が下落することに無関心でいます。住宅金融機関もその抵当権を設定した住宅不動産(土地や建物)が粗末に扱われ、担保価値が下っても、一向に困った顔をし、困ってもいません。住宅を建設・販売した会社は、住宅を粗末に使ってくれた方が建て替え事業ができると喜んでいます。その現実を見て米国から来た調査団は、震災復興で対応すべき問題は、単なる技術的や経済的な問題ではなく、国家の住宅に対する住宅産業関係者の責任の持ち方の違いであることが分かり,米国の経験を日本での実施することに不安を抱きはじめました。

住宅資産価値向上に関心を持つ国(米国)、持たない国(日本)
ローンの対象である住宅(土地と住宅)は融資の担保になっているため、担保価値が減少しないことが金融機関に必要なことです。担保価値が減少することは、ローンを組んだ人たちと同様に金融機関にとっても困ることです。住宅金融関係者にとっては共通の利害関係のあることですから、米国では、金融機関が住宅ローンを組んだ人たちに、改めて、「ローンの担保となっている住宅を大切に使ってください。」というような馬鹿な(幼稚)ことは言いません。日本の金融機関も住宅ローンに対する一番抵当は、その土地と建物ですから、金融機関と住宅の所有者との関係は同じです。しかし、日本の金融機関の対応は違い、資産価値下落に無関心です。その理由は以下のとおりです。
日本の金融機関が「ローンの担保に取った住宅を、資産価値が落ちないように大切に使ってください。」と住宅購入者に言わないのは、住宅不動産自体の価値がはじめからローン額を下回っていて、ローンの担保になっていないことを知っているから、担保に抑えた土地建物の担保価値が、金融機関の融資額に対し不足していて、それを押えるだけでは貸し金の回収は無理であると判断しているためです。国民も、金融機関も、住宅は償却資産と政府から教えられ、「売却すれば、損失が発生する」と教えられてきました。そのため、日本では、損が発生しない「住宅売却の選択肢」自体が失われているのです。そのうえ、住宅ローンの最終的な担保は生命保険であるため、金融機関は生命保険に依存し、差し押さえた住宅を競売に掛け、ローン残高を回収しようと考えていません。

エクイティとエクイティローン
米国では住宅を担保として差し押さえるときは、ローン債務残高との相殺です。モーゲージの行使、即ち、ローン債務とエクイテイ(純資産)とが相殺されることは、ローンの頭金分にはローンが充当されていなかったわけですから、住宅所有者にとり頭金分は失われることになります。しかし、既存市場で住宅を売却すれば、純資産(エクイティ:住宅販売価格からローンの債務残高を差し引いた額)を手にできますから、頭金分を失わないで済みます。そのため、住宅所有者は自らの資産価値を高めることを日頃から心掛け、金融機関にローン返済ができなくなったときでも差押さえを受けるのを待つのではなく、純資産を確保するため、住宅を自ら既存住宅市場で売却すれば、頭金分を自動的に失わないで済みます。それ以上に金融機関は金貸し業ですから、通常の場合、エクイティに対して信用を与え、融資(エクイティローン)を積極的に行います。金融機関は住宅所有者に銀行が評価するエクイテイ額に相当する小切手を届け、エクイティローンを組んで消費をするよう促します。それが住宅所有者の購買力に裏付けられた購買意欲を高め、米国の消費水準を高め、景気を刺激しています。米国の住宅不動産評価は、住宅がその社会で変わらぬ効用が評価される限り、その価値評価は、原則として、「推定再建築額」として評価されるため、物価上昇に対し連動する上、住宅地の熟成分加算されます。住宅地により差異は大きくありますが、エクイティは、不動産評価額に対し、年間、4-8%上昇するといわれています。

高潮・震災による損失負担
米国はもとより、世界の先進工業国だけではなく発展途上国でも、土地と建物は不可分一体の不動産として扱われ、住宅ローンはモーゲージとして実施しています。それらの国では、震災や高潮のような自然災害により住宅を滅失すれば、住宅所有者はその純資産(エクイティ)は失います。しかし、モーゲージの債務残高(デット)は、金融機関が住宅所有者の担保と相殺します。つまり、金融機関の担保(流失した住宅不動産)が金融機関に帰属し、モーゲージの債権・債務は相殺されます。このことは、被災者の住宅ローン債務が消滅しただけで、災害被害から救済されたわけではありません。ローン債務(デット)が消滅し、住宅の所有者は純資産(エクイティ)を失った訳ですから、震災後の「被災者の健康で文化的な生活のため住宅政策としての支援が必要になります。
米国では、ローン債権者である金融機関の被った損失は、通常、全米の国家としての金融機関の信頼性を維持するために、金融保険制度または政府の必要な金融支援施策として取り組まれます。金融機関は資本主義経済のダイナモ(発電機:原動力)の機能を負っており、金融機関を単なる民間の営利企業と扱ってはいません。国家の金融制度の安定を図るため、金融機関の救済は安心できる国家の金融政策として行われてきました。政治的に政府による金融機関に対する資本注入等の支援措置は、1929年の世界恐慌後の米国連邦政府の政策に見るように、単なる金融機関の企業救済ではなく、国家の金融秩序を守り国民の生活を安定させる施策として採られてきました。

国民救済を第一に、金融機関救済を第2に行った米国政府の世界恐慌対策
1929年の世界恐慌対策の最優先対策として、ルーズベルト大統領はローン債務者を救済しました。政府は金融機関に対し、それまでの50%の融資率を80%に引き上げさせ、当面の生活用に資金を融資し、ローン償還期間をそれまでの5年から15年、やがて20年に延長して、事実上、金融機関の負担で住宅ローン債務者を救済しました。融資条件の救済のための緩和は、は金融機関の経営上の負担を強いるものでした。次に政府は金融機関を救済するため、連邦住宅庁(FHA)を設立し、FHAに債務保証させたモーゲージ証券・MBS(モーゲージ・バックド・セキュリティ)を買い取る機関FNMA(ファニーメイ)を設立し、買い取らせました。FNMAはMBSを金融市場で売却しモーゲージで流出したローン資金を回収させ金融機関を救済しました。
MBSは、資産価値を持続的に向上する住宅を担保に、住宅金融2次市場の礎を築くことになりました。21世紀の始め、FNMAの会長が全米ホ-ムビルダー協会(NAHB)の理事会に出席し記念講演を行いました。その中で、「ホームビルダーの皆様が資産価値の維持向上する住宅を建設し経営管理してくださるお蔭で、FNMAはその事業を拡大でき、国家の繁栄に貢献できています」と挨拶をしました。そのことがNAHBのIBS(インターナショナル・ビルダーズ・ショウ)開催期間中のNAHB発行の新聞に報じられていました。住宅は、通常、物価上昇率の2倍以上(4-8%)に資産価値を維持向上します。そこで、純資産(エクイティ)を担保に、個人の購買力を支えるエクイティローンが実施されます。エクイティローンにより、住宅所有者のための住宅リモデリングや、家具什器の買い揃えや、高額な住宅への住み替え(ムーブアップ)が行われ、かつ、エクイティローンを使って住宅所有者の購買力が拡大し、米国経済は発展させています。

住宅バブル崩壊後の経済復興
米国で2002年ごろから拡大したサブプライム問題は、「住宅の資産価値は常に上昇し続けるという神話」となり、コンピューター投資プログラムまで作られ、プログラムの境界条件を超えてMBSに対する投資から投機が進みました。プログラムの境界条件での制御がかからなかったため、プログラムまかせの投資で2002年から住宅価格は異常な上昇を始め、2007年には3倍以上にまで高騰し、2008年に住宅バブルは崩壊しました。メガバンクの倒産・リーマンショックは被害総額で1929年の世界恐慌を上回りました。住宅不動産価格は高騰前の水準に下落しました。その後、約5年間米国の不動産市場および住宅市場は混乱し低迷していました。しかし、優れた住宅地経営が行われていた住宅地、ボードウィンパーク、セレブレイション、ケントランド、ハーバーランド、シーサイド、ラグナウエスト、ノースウエストランディングなど住宅地経営の良循環が働いた所では、6年間で住宅バブルの最盛期(2007年)の高額な価格水準にまで回復しました。

住宅資産価値を維持向上させるシステム
米国のニューディール政策のうちの最重要施策は住宅政策でした。米国の主権在民の政治は、ルーズベルト大統領に対し、国家の政策の優先順位に、「個人の住宅資産の救済を第一にする政策」のを実践することを求めました。その手段として、住宅が資産価値を持続的に向上できる住宅地経営を実践するよう全米住居法(NHA)を制定し、住宅金融制度と連携させる政策を採りました。十分な住宅金融は、全面道路幅員と同じ幅員だけセットバック(壁面線の後退)をした優れたランドプランニングでつくられた住宅地のマスタープランに対応した建築設計指針(アーキテクチュラル・ガイド・ライン)とおりに建てられた住宅に与えられます。そこでは、計画通りの健全な住宅地経営が経営管理主体(HOA)により、ルール通りに厳格に実施なされなければならなりません。金融機関は如何なる場合も、融資した資金が確実に回収できるよう、差し押さえた住宅は、確実に既存住宅市場で、期待したとおりのローン担保価値以上の価格で売却できなければなりません。

住宅の価値と直接工事費の関係
そのためには、モーゲージが与えられる住宅は、何時の時代でも多くの人びとが憧れる「需要対象に選ばれる」(懐かしさの感じられる)クラシックデザインでなければなりません。時代風潮を反映した流行のデザインは時代が過ぎれば風化し廃っていくため、資産価値を維持できません。回収する金額は最低限ローン残高です。そこで住宅の直接工事費分(契約額の80%)に対し融資しますが、ホームビルダーの粗利には融資しません。それは金融機関が住宅の価値(直接工事費)から逸脱した粗利分に対して融資をしないためです。差し押さえた住宅が既存住宅市場で需要を見つけられれば、その効用を持つ住宅を手に入れるためには推定再建築費分の費用がかかるため、その価格で販売可能です。そのため住宅の取引価格は、必ず物価上昇分は上昇することになります。モーゲージの額は住宅の直接工事費分であれば、金融機関にとって物価上昇分は安全要素になります。

住宅の資産価値増殖の良循環
資産価値が維持向上する住宅は物価上昇分以上の値上がりが期待されるため、自己の資産が守られます。そのうえ、その取引価格は、推定再建築費を中心に需給市場を反映して変動します。その場合、売り手市場(需要が供給を上回る市場)においては、より住宅購買力の高い人々が移り住むことを意味します。すると、居住者の所得水準に見合ってその住宅には高いサービスが行われるようになり、より所得の高い人が住むことになります。逆に無秩序でルールの守られない人気がない住宅地の場合(買い手市場の住宅地)は、悪循環が起きます。米国では住宅所有者が自らの住宅資産を守るために、住宅地の経営管理を重視し、居住者の所得と提供されるサービスの良循環が生まれるようにします。所得の高い人たちが住宅資産価値の向上を期待して集まり、住宅の取引価格は上昇し続けることになります。その住宅地に住宅をもつことが住宅の売買差益の得られる住宅として、住宅所有者に利益をもたらすことになります。住宅の資産価値の増加が金融機関の信用力を高め、金融を拡大し、消費を拡大し景気をよくし、経済の発展をもたらし、国家を繁栄させます。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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