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HICPMメールマガジン第528号(へいせい25ねん10がつ7か)

掲載日2013 年 10 月 4 日

HICPMメールマガジン第528号(平成25年10月7日)
皆さんこんにちは

小泉・竹中内閣による都市再生事業が、どのような規制緩和を実施したかについて調べると、それは国が率先して都市計画法と建築基準法の「姉妹法」の構成を破壊し、法定都市計画を蹂躙して開発業者の言いなりに規制緩和を容認したものであることが判りました。それはアベノミックスに共通する企業の目先の利益を拡大するために、規制緩和による無法地帯を生み出しているものです。「企業利益を拡大できなければ労働者の賃金は増やせない」と法人税減税を実施し、「労賃は企業利益が拡大した結果、引き上げられる」。しかし、「賃金を上げ消費が増えれば企業活動が活発化し、税収増が生まれるので法人税を減免する」理屈の方が、社会科学的に合理的です。歴代自民党政権による規制緩和は、民主主義国の行政とはいえない政官財利益本位の護送船団中心の規制緩和です。

違法な開発許可権者:特別区長
開発許可制度を定めた都市計画法第29条では、東京都では開発許可は東京都知事しかできないことになっています。東京都は都市計画法で都知事に限られた開発許可権限を、都市計画法に違反し特別区長の権限であると権限委譲を行い、開発許可を与えてきました。行政法の権限委譲は国家行政組織法上、各法律は省庁ごとの縦割りになっていますから、都市計画法で定められた行政処分の権限を、他の法律を使って変更することはできません。東京都の行った違法な権限委譲は、地方自治法を根拠に行っていると説明しています。この改正は青島幸男都政時代に行われ、石原都政が違法状態を踏襲しています。その理由は、両知事及び東京都の事務方に、都市計画法と開発許可の重要性が理解されていない上、法知識が欠如し適正な行政事務ができなかったためだと思います。

官僚として自信を失った行政判断
都知事(行政庁)の権限の行使に伴う行政事務は、地方自治法では、特別区(団体)に移譲できると定めてあり都条例も同様に定めています。都市計画法上の行政庁の許可権限行使は、都市計画法でしか決められず、自治法の規定も行政権限には及ぼせず、行使に伴う事務としか規定していません。それが東京都の規則では特別区長(行政庁)が都知事の権限を行使すると違法に定めました。自治法の規定は、都知事の監督下で、特別区(地方公共団体)が都知事が定めた範囲の開発許可の事務を行い、あくまでも都知事の氏名捺印を使って開発許可の行政事務を行うことを認めたものです。開発許可権限の行使の責任は都知事にあります。特別区長には都市計画法上の権限も責任もありません。以上の法律の文理解釈通りの説明を国土交通省の都市計画課法令担当者の意見を求めたところ、「地方分権法が施行されてからの都市計画法の施行に関しては、東京都知事の判断が優先するので、東京都が特別区長でよいというならそれでよい」と回答し、都市計画法の所管官庁の責任を放棄しています。特別区長の氏名及び捺印した開発許可は、都知事のなした開発許可にはなりません。

行政権の法律を無視した横暴
立法に際し内閣法制局の法令審査は非常の厳密です。組織上、各省庁には上下はなく、政府が国会に上程する政府提案立法は、事前に各省協議が整ったという前提で、閣議では全閣僚の全員合意を確認して上程されます。閣議前の各省協議は、省庁間の省庁益の利権対立の折衝の場です。立法関係省庁の官僚は、その関門さえ通してしまえば、あとは自由に法施行ができると考え、省庁間で調整しきれない利権の対立は、玉虫色の「覚書」を裏で結び、表向き調整が出来たことにして上程します。都市計画法の場合、省庁間及び省内の覚書文書は数センチになったと言われます。これらの覚書は、法律の制定後、施行通達や行政指導の形で小出しに出され、省庁間が表で争うことはありません。ただし、覚書は結局のところ玉虫色の解釈のできる違法な取り決めであることがほとんどですから、その矛盾を突いて国民から行政不服審査請求や行政事件訴訟として争われます。開発許可権者の権限委譲に規定は国土交通省の専権事項ですが、地方分権法の制定時に総務省と国交省間で(総務省人事を国交省で受け入れる等)何らかの違法な取引があったかもしれません。

高地価維持政策の矛盾のはけ口:都市再生
都市再生事業の規制緩和は、基本的にバブル経済の崩壊で生み出された事実上の不良債権(書面上は担保の土地は高額で良資産)によって回復できなくなっている官民の不動産資本を再生するために、その活性化できる空間利用を規制している都市計画法と建築基準法の規制を撤廃しようとするものです。バブル経済の崩壊で地価も下落しましたが、実は土地担保金融を基本にした日本では地価が下落することは金融機関が担保割れ物件を多く抱えることになります。そのため、金融機関はできるだけ地価と高い水準に維持しようとします。それは国税及び地方税収を得る国地方も同様な考えでいます。地価の下落があっても、債権債務の清算をしなければ不良債権は発生しません。日本の不動産鑑定評価制度自体が市場の需給関係を基本にしないで、基本的に非科学的で政府の意向を受けて操作されてきました。高い地価が不良債権の見掛け上の発生を抑え、金融不安を救ってきたとも言えます。そのように操作されて上方硬直化されている高い地価の土地を所有し、それを地価負担能力に見合わない購買力の市場で売却するためには、その土地に定めらてている法定都市計画を骨抜きにする建築物高さの撤廃・緩和と容積率緩和という規制緩和をするしかありません。

「姉妹法」の関係とは「モザイク画」の関係
既存の都市計画法に基づく都市計画(マスタープラン)は、計画された土地利用計画(地域地区に関する都市計画)に対応した都市施設整備計画として定められております。そして、建築基準法は都市計画法で定められた都市のマスタープランに適合するように、「一敷地一建築物」の原則で、建築するよう建築基準法で建築基準を定め、それに基づいて、個別の建築物ごとの建築規制を行います。この都市計画法と建築基準法の関係を「姉妹法」の関係と呼んでいます。世界の都市計画法は都市計画法一本の中で土地の開発計画から建築規制までを一元的に計画し、規制しています。日本では大正8年に都市計画法ができた時点の歴史的経緯で世界に例を見ない「姉妹法」になっています。欧米の都市計画教育では、都市計画を「モザイク画」に例え、マスタープランを「モザイク画」の下絵に、建築物は「モザイクの石」に例え、一〇〇年の刑を立てて都市計画を祖rに適合した建築設計指針で実現することにしています。一方、日本の都市計画のように恣意的な規制緩和を行い、下絵を無視したモザイクの石が埋め込まれると、それまでの「モザイク画」の秩序は破壊されます。

都市計画法と「法定都市計画」とは別のもの
都市計画法は都市計画をつくる道具であって、都市計画のマスタープランは都市計画区域ごとに住民の総意により土地利用計画の将来図決める「モザイク画の下絵」に相当するものです。規制緩和により都市計画の計画手段としての都市計画法や建築基準法が変更になっても、既存の法定都市計画に都市計画法の改正内容を適用するときには、変更都市計画法による法定都市計画変更の手続きが都市計画理論上は必要です。しかし、都市計画法には法定都市計画の変更に伴う住民による承認規定は公聴会、都市計画案の住民に対する縦覧、都市計画審議会の決定という手続きがあります。しかし、都市計画法と建築基準法が姉妹法の関係として機能させるため、両法の改正に伴う既存不適格建築物の扱いの議論がされる必要があります。しかし、小泉竹中内閣により規制緩和では、その部分が国民に隠されたままでやられた結果、国民に都市防災上の安全上及び環境上の既得権侵害の大きなしわ寄せが及んでいます。法律論としては、都市計画法及び建築基準法第3章を改正した場合には、改正に合わせて生まれる既存法定都市計画との矛盾は解決されるべきです。

都市計画法改正による法定都市計画の内容変更(既存不適格建築物)の扱いの疑義
現行法の規定では、都市計画法の改正に伴う法定都市計画の変更および建築基準法改正に伴い改正法規制に適合しない建築物(既存不適格建築物)の扱いが、基本的に法改正を既成事実とした上での、例外的に個別建築問題の処理方法が建築基準法に規定されているだけです。規制緩和が行われ、既存の市民が享受してきた景観や眺望が奪われた既得権侵害に関し法律上は既得権を奪わないよう、既得権を侵害する建築物には、それを「違反建築物」として確認しないように求められることになっています。東京都大田区池上本門寺では住民が大田区建築審査会に訴えを提起しましたが、大田区長はマンション開発業者の利益が大田区の利益と考え、住民に行政的圧力をかけ、住民の訴え自体を取り下げさせました。今回の規制緩和は都市計画法及び建築基準法の改正で、自動的に法定都市計画が変更できたかのような扱いで改正法の施行が行われたうえ、都市計画と建築基準法の関係を切り離し、それぞれの法律でそれまでの規制を撤廃した建築空間をつくれるようにしたためです。

「都市計画とは何か」を教えてくれる英国の都市計画法
日本の都市計画法のモデルになった英国の都市計画法の施行実態を尋ねたとき、「この町の景観は100年前に計画されたとおりに今も維持されています」と、都市計画は市民が合意した100年先を見込んだ計画だと言います。しかし、都市は熟成しそれに合わせて所得の高い人の住宅になり、地価は高騰し、住宅の空間を大きくしたいという要求が生まれます。建築の形態の変更はすべて計画許可を必要とし、申請された内容は住民に縦覧され、公聴会が開かれ、審査会での同意が求められます。基本的な街並み景観の変更は認められないので、屋根裏部屋の改築となりますが、ドーマーウインドウが厳しい形態制限を受けて、はじめて屋根裏利用が実現できます。しかし、そこに新手の改築が登場しました。既存建築物をリフトアップして全面地下室を増築し、外観は変えないで住宅空間を拡大する工事です。増改築工事は都市計画法上認められています。都市計画法改正を実施するときも既存の法定都市計画への影響が議論され、各都市計画審議会が法定都市計画を守ることで、都市計画法の改正があって既存法定都市計画に直接影響を与えることはありあません。

法定都市計画と建築基準法の規制の矛盾の顕在化
小泉竹中内閣の規制緩和により、法定都市計画が都市計画法や建築基準法改正に合わせて自動的に変更され、以前の法定都市計画では建築できなかった高層マンションが建てられることになりました。改正法で可能になった都市計画は、事実上、都市計画上の住民の合意を得ていないため、住民が合意して決められた法定都市計画とは言えません。東京渋谷区鶯谷の「ラ・ツァー・ダイカンヤマ」、大田区池上本門寺マンション、板橋区常盤台マンションは、いずれも幅員4メートル未満の道路が網の目に形成されている低層住宅地に、周辺環境には配慮しない高層高密度マンション計画です。改正都市計画法や改正建築基準法が自動的に法定都市計画に適用されたとしても、都市計画法で定めた開発許可の安全基準にも違反する計画で、大震火災が発生した場合の都市災害の危険が拡大しました。住民たちは住み始めたときに考えていた街が、改正法にも違反して建築される高層建築物により、土地の空間の形を変え、「わが街」としての帰属意識を失わされていることに市民たちは不安を抱いています。そこには都市計画を市民の豊かな空間づくりであるとする人文科学的に都市空間を考えるという考え方が、日本の都市計画にはないからです。

都市計画を工学としてしか考えない我が国の都市行政
都市計画法による開発許可制度は、英国の計画許可制度をモデルにしたものであるために、そこには「開発計画は環境の保全上支障がないよう配慮され」と規定されています。英国では都市計画は市民が健康で文化的な都市空間を享受できるものと考えていますから、都市計画は環境省の所管行政で、法律でいう環境とは「歴史文化環境」を中心に考えています。日本で行政事件となった「ラ・トゥアー・ダイカンヤマ」の開発事件で、住民原告が開発地が東京都内で旧跡時代や弥生時代の最大の住居跡であり、その後も棟居としても優れた住宅地で歴史文化環境の破壊を訴えたところ、東京都開発審査会長は「本行政事件に関係のない発言はやめてください」と発言を禁止しました。その土地に長年住み続け、土地に愛情を抱き、歴史文化資産としての土地に全く配慮しない開発に対し、都市計画法で定めた環境違反として提起した住民と、都市計画行政との矛盾が、都市を「人文科学」の対象として扱う世界の常識と「都市工学」と扱う日本との違いとなって表れたのでした。

都市住民の生命財産が脅かす都市再生事業
法律改正に合わせて法定都市計画の見直しをしないため、都市再生による規制緩和が、法定都市計画として決められた内容を自動的に緩和することになります。その結果、土地利用及び都市の眺望や街並み景観などの生活文化空間を破壊することになります。都市再生事業により日常的に都市環境は悪化させられ、日照や日射が妨害され、日影や電波障害などのビル陰の被害、交通量の異常発生などが急増しました。都市の既存の眺望や景観は都市再生事業で破壊されてました。しかも、規制緩和による開発は、もともと既存の都市との調和を図る意図はなく、高地価な土地を購入者の支払い能力に合わせて買わせるため、高層高密度で開発にする結果、法定都市計画で定めていた有機的な関係を破壊する開発がされることになります。当然、法定都市計画が決定された当時の都市施設と建築物との関係ではなくなるため、日常的に、道路交通の渋滞や大気汚染の問題が住民生活を脅かすことになります。大震火災やその他交通事故等の都市災害発生時に、救命救急活動や避難に障害が発生するなど、都市再生事業によって既存の都市は破壊されることになります。

規制緩和による副作用
都市再生事業は基本的に既存の法定都市計画の都市施設に依存して、これまでの都市空間にその2-3倍のマンションを建設することになりますから、一戸当たりの地価負担は半減またはそれ以下にできます。すると、高い地価を変えないで1戸当たりの地価負担は下げられ、住宅価格は下げられます。その結果、周辺に住宅に比較して有利な条件で住宅販売ができます。そのことで不良債権となっていた土地を優良債権に変えられるだけでなくて、大きな住宅事業を展開することができます。しかし、既存の建築物の高さや容積率規制の中で経営をしてきたマンションは、新規の規制緩和を受けたマンションと競争することができず、空き家の発生など都市衰退の原因になっていきます。政府の考えている規制緩和による景気刺激は、フローとしての経済に刺激を与えますが、ストックの財産に対して経済的な衰退をあたえることになります。
(NPO法人 住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



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