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HICPMメールマガジン第529号(平成25年10月14日)

掲載日2013 年 10 月 15 日

HICPMメールマガジン第529号(平成25年10月14日)
皆さんこんにちは

日本の住宅産業が、「差別化」と「手離れの良い事業」という2つのキーワーズで説明される詐欺商売として、住宅購入者から構造的に不当な利益を巻き上げてきたことはご存じのとおりです。政府が住生活基本法で推進してきた住宅品質確保促進法及び住宅瑕疵担保履行法の運用実態こそ、詐欺商売の小道具の提供になっています。今回は、「政府が支持する住宅産業の営業行為が詐欺商売である」という説明が、住宅政策に対する「非難」ではなく、「事実批判」の証明をするとともに、その手口が「都市再生」という政策転換のなかで、開発形態として大きく「様変わり」してきたことを説明します。

住宅の品質と価格の関係
わが国政府が進めてきた住宅産業は住宅品質確保促進法に基づき、住宅性能表示制度、瑕疵担保促進制度を絡めて、消費者保護のための長期優良住宅を供給するものと説明されています。それを平易に要約すると、政府は性能を表示することで高額な住宅価格に見合った性能を有する保証をするから、住宅購入者は安心して性能表示のされた住宅を購入できる筋書きをつくったというのです。しかし、この政策を実施できた裏には、実際に供給されている住宅は、「高額で、価格に見合った品質をもたない」という不安があるからです。国民の最大の疑問は性能の有無ではなく、高額すぎる住宅価格の不透明性です。住宅価格の正当性を証明できない問題を、政府は住宅性能問題に転嫁したのです。
住宅の価値は需要と供給との関係を反映した住宅価格で決まりますが、供給される住宅の品質と価格の関係の評価法が不動産鑑定評価です。その基本となる価値の計測方法が見積です。市場価格は需要と供給を反映して変動しますが、その平均値(自然価格)は土地と建築物に必要な建材及び建設労務の数量に単価を乗じて計算した直接工事費に建設会社の粗利(平均利潤率20%)を加算して計算します。欧米のモーゲージによる住宅ローンは、直接工事費分に対してローンが行われます。

詐欺(建設業法違反)の基本構造
わが国では、住宅産業の経営が欧米のように直接工事費の販売価格の20%の粗利を加算する伝統的な方法が破綻し、粗利率がどんどん巨額化し、大手ハウスメーカーでは粗利率は60%、言い換えれば直接工事費の2.5倍に拡大しています。中小零細な工務店経営も、この大手ハウスメーカーの営業方法を真似させ、住宅の経営を宣伝広告など営業販売重視に偏重してきました。その経営は住宅生産ではなく、営業販売に軸足が移動し、広告宣伝(チラシ、看板、幟、吊り広告)し、モデルホームをつくり営業販売員を使って集客し、直接工事費(材料価格と職人の労務費)を圧縮し、住宅を短期に確実の売却するために必要な営業費用をかけ、その掛けた費用を販売価格で回収する方法です。
住宅購入者(顧客)には材料業者や下請け業者が提示した上代価格(消費者に提示する小売価格)を積み上げた見積りを、住宅購入者に見積りの不正がばれないように複合単価(「材工一式」の床面積当たり工事単価)で作成します。住宅建設業者は流通業者ではありませんが、材料業者からは下代で材料を仕入れ、見積り額との差額は表に出ない建設会社の利益にしています。建設業法には工事請負価格は材料と労務の数量と単価を明確にして請負うべきことが明記されています。しかし、わが国の住宅産業は基本的に建設業法第21条違反の見積りで詐欺を行い、不正利益を得ています。

長期優良住宅の本質
政府の長期優良住宅政策は、住宅の性能表示や瑕疵担保履行制度を推進することで、住宅購入者に長期に優良な住宅を供給し安心を与えることであると説明してきました。そして、実際に政府が進める長期優良住宅制度を受け入れることで消費者にどのような変化が生まれてきたかと言えば、住宅価格が評価及び審査料で1戸当たり100万円程度以上高額になったということだけです。これらの制度が存在する以前と以後では、基本的につくられる住宅の品質の計画表示をしただけで、品質が向上したわけではありません。これらの制度の目的は、住宅の品質引き上げを図る制度ではなく、保有する住宅の計画性能を表示するだけで、実質性能を担保するものではありません。その結果、制度の適用を受ける住宅は、「制度を活用する手数料」がかさむ分だけ高くなります。
政府は長期優良住宅として認定された住宅には、約100万円以上の費用が上乗せになるため、住宅購入者の負担を軽減するために、その負担をした住宅に対しては、長期優良住宅制度として官僚の天下り受け入れ組織を強化し、官僚主導の住宅政策族議員の政治献金を集める外郭団体の組織化と併せて、1戸当たり100万円の補助金を与えることにしました。分かり易く言えば、1戸当たり100万円の費用を住宅購入者に負担させるわけにはいかないので、長期優良住宅には、その費用分は国民全体が税金で負担する制度です。しかし、その補助金分が住宅購入者の負担減に向けられた保証はなく、住宅価格をそれだけ高く設定して、高く設定した分の値引きをするように使われ、業者への利益供与にしかなっていない例も多くなっています。

腐敗した現在の住宅政策を白日の下に晒し、廃止に追い込む
長期優良住宅制度に関係する消費者負担の費用と国の行政部費は、制度が生まれる前は必要がなく、この制度は消費者が購入する住宅品質の向上には寄与せず、官僚や公務員OBが天下っている組織の審査、評価、認定の事業として使われている費用です。この組織(団体)を利用して官僚と政治化が、補助金の分配交付の手続きを利用して、工務店を組織化し、集票と集金と献金を行ってきました。
政府が進めてきた長期優良住宅制度は、中世の教会が金儲けの方法として「免罪符を発行してきたやり方」と同じことをやっているだけです。性能表示や長期優良住宅という詐欺商売の小道具に使われている免罪符をつかった「差別化」によって、住宅販売で詐欺商売が横行し、住宅購入者は同じ住宅を高く購入させられているのです。現在の政府が進めている長期優良住宅政策は、大手ハウスメーカーの詐欺商売に手を貸すもので、すべて廃止されることで住宅産業に課せられている不必要な手続きの実施に伴う費用や無駄な時間が無くなります。その結果、より良い住宅が過大な粗利を加算することのない、よりやすい価格で、より迅速に国民に供給され、我が国経済に利益をもたらします。

「差別化」とは
商取引としての詐欺とは、実際の価値を逸脱した価格で商品を騙して引き取らせる行為ですが、その不正が見破られたとき、消費者からの追及を免れるように不正な言い訳を用意し、それを口実に逃げ切ろうとします。不正が捕まえられなければ、結果的に詐欺は横行します。日本の住宅産業では国を挙げて住宅産業で詐欺を公然と行わせる政策が実施されてきました。それが「差別化」と「手離れの良い事業」を助長する政策です。政府は住宅性能表示を行い、9項目の住宅性能表示する方法を持ち込みました。性能はその計測方法で違いを表示することはできますが、性能表示を金銭で表示することはできませんし、高い性能を持つ住宅が高額であるとは限りません。「高性能表示された住宅は、表示によって価値が高いことを証明されたから、高額での販売をしても正当である」という趣旨の発言を元東京大学のプレハブ住宅推進御用学者や、ハウスメーカーの社長で住宅審議会専門委員が繰り返し発言していました。性能の「違い」を価値評価の「優劣」であると騙すことを「差別」と言います。「価値の低い住宅」を「高い価値がある」と言って販売することは「詐欺」です。そして虚偽による不正がつかまらないように言い訳の口実として、「住宅は償却資産」であるから、住宅購入者に気付かれたとき、その言い訳を言って逃げるのです。「住宅性能の上下が、住宅の価値の上下である」と言い、高く売り付けられた住宅が、中古市場で安くしか売れない理由を、「非償却資産である住宅不動産を償却資産」と嘘の言い訳を持ち出しました。それは住宅産業の詐欺幇助のため、政府がでっち上げた「嘘」(欺瞞の説明)です。
償却資産の残存価値は会計帳簿上の会計法・税法上の価値で、償却資産の市場価値ではありません。

「手離れの良い事業」
住宅の場合、子供の成長段階として、7年を1ライフステージとしてライフスタイルが変わります。購入した住宅を取り換えるときが7-10年です。売却しようとしたとき、高額で購入した住宅が半額以下でしか住宅市場で売却できないことに気付かされます。住宅は償却資産である説明に口をつぐむ人もいます。公共事業の立ち退きで住宅を強制買収された場合の補償価格は推定再建築費です。もちろん日本以外の国での既存住宅取引価格は、原価方式(コストアプローチ)は、推定再建築費で鑑定評価されています。そこまで問題を追及すれば、正確な見積もり額の半額以下の住宅に、その2倍もの価格で消費者に住宅販売していた詐欺の事実がわかります。それを民事訴訟事件として損害賠償請求しても、10年で商法の法定時効が成立していたり、ハウスメーカーや建設業者を被告に訴えても、詐欺推進主体が政府(行政庁)であるため、司法は被告が行政というだけで住民側を敗訴にします。その理由は「性能表示により住宅に価値を付けた」や「住宅は償却資産である」のいずれの虚偽も行政が進めたことで「公定力」が生まれており、その解釈には法律同様の拘束力が生まれるというのです。

都市再生による新手の詐欺
バブル経済の崩壊は公共機関のうち、大量の土地を保有していた都市基盤整備公団(現在のUR)や地方供給公社、土地区画整理組合、公的不動産経営団体を直撃しました。これらの内、公的機関が保有している土地は民間業者に損切りをして放出し、民間経営を改善させ、景気を回復するように活用すべきという議論が業界関係者から出され、その代理人として政治家が動きました。「不良資産の卸売り」という理由を付けて民間住宅産業に破格の価格で払い下げられました。提案競技とか、対外的には特命という形式を避けていますが、事実上の特命手続きで大手ハウスメーカー、大手商社、建設業者が払い下げを受けました。市場の公示地価に比べ安く購入できた分だけ、開発計画に余裕が持てた計画ができました。その結果、街並み計画という新しい付加価値を付けたから、販売価格を高めてもよいという理屈です。街並みのデザインは価格で評価できませんので、街並み計画を施した住宅を高い価格で販売してよい合理的な理由はありません。単なる違いを価値としての優劣として扱うことが、新しい差別です。

街並み計画という「新しい差別化」に対する規制緩和
公団や公社という公的土地開発期間が都市開発を実施していた当時は、公的開発された土地の上でハウスメーカーは、隣接宅地と違うデザインや工法の住宅を建築し、他社との違いを自社の優秀性と説明し、高い価格を正当であると説明して販売してきました。そのため、多くのハウスメーカーが入り乱れて立地する形で高額な住宅が相互にデザインをつぶし合って、「相殺効果」(「相乗効果」の逆)の住宅地を造ってきました。しかし、土地を破格の安値で卸売された結果、卸売土地全体で開発計画を立てることになり、俄かに街並み景観が「差別化」の道具に使われることになりました。これらの開発事業の中には、建築基準法第86条「1団地の住宅施設」を適用し歩行者専用道路をつくり、敷地面積に参入し、実質の容積拡大も行われています。都市計画法決定をしないで建築基準法単独で実施する違法な「一団地住宅施設」の扱いは、既に30年以上の歴史を持っています。今回の小泉竹中内閣の規制緩和では、建築基準法単独に規制緩和にさせられています。

「新しい差別」に対する無責任
住宅単体の効用(デザイン、機能、性能)の違いを他社との住宅の優劣(差別)であると説明し、高額販売をしてきたハウスメーカーは、公的土地の破格な卸売りを得て、住宅地全体を単位に計画をすることになりました。住宅地全体の効用(住宅地のデザイン、住宅地の機能、住宅地の性能)を新しい差別化の手段として利用するようになりました。つまり、街並み計画によって住宅地の価値が高まったので、高く販売して当然という理屈です。住宅地の効用を高めたことはよいことですが、効用が高まったことで販売価格を高めてよい理由にはなりません。目新しくて高い価格で売られた住宅は、市場が安定したときには粗利が平均利潤率に戻り、住宅取引価格は下落します。新しい住宅地としての効用は、計画通りに維持管理することがなければなりません。そのためには住宅地の経営管理を未来永劫まで実施する住宅地経営管理が必要になります。そのシステムをつくらないで、道路。公園等の公共施設の管理移管をしても、住宅地の道路や公園等の経営管理を住宅販売時の計画通り自治体は行いまません。

大手ハウスメーカー依存の住宅産業政策
わが国の「差別化」と「手離れの良い事業」は、詐欺と断定はしなくても、商道徳に反するのではないかという疑問は当初からありました。住宅建設計画法時代には公共住宅の建設を政府の監督下で補助金や住宅金融の手段を使い、民間業界をコントロールしていました。そのときも住宅金融を理由に住宅指導をするコントロール自体を行う必要があるかという疑問に、誰もその必要性を認めてはいませんでした。ただし、ハウスメーカーは不当な販売の隠れ蓑に政府金融機関の権威を使いました。しかし、公共住宅政策が破綻した住生活基本法時代に、住宅産業政策に依存する政府は、大手ハウスメーカーに依存することになり、その営業ツールとなる住宅品質確保促進法が政策の基本に置かれました。その企業経営を全面的に中小零細工務店にまで従わせる政策に転換しました。大量生産、大量販売にとって効率の良い住宅産業政策が、住宅性能表示制度と結びつき詐欺商法となった所に国民の悲劇が拡大しました。

国の財産を民間企業利益のために安値販売
バブル経済崩壊で基本的に解体の方向が決まった都市基盤整備公団(現在のUR)所有地のハウスメーカー等への卸売廉価払い下げと、都市再生の規制緩和政策は、住宅購入者の住宅価格を引き下げる配慮は全くせず、ハウスメーカーのこれまでの経営をよりやりやすくするだけの政策です。結果的に街並み計画をせざるを得なくしていますが、計画販売通りの住宅地経営を義務付けず、これまで同様売り逃げ(手場慣れの良い住宅)販売で、自治体にしわ寄せするだけです。ハウスメーカーが巨大化した経営の基本として、住宅事業者として販売に要した費用はすべて住宅価格として回収する価格設定を正当であるとしたことに基本的な間違いがありました。言い返せば、住宅の価値は直接工事費に対して平均利潤(粗利)として販売価格の20%までを加算できるという一線を無批判に超えて行ったことを住宅政策として何もしなかったことに問題がありました。
大手ハウスメーカーが行っている住宅は、これまでの住宅同様、その販売価格に対する原価である直接工事費は40%であり、住宅の販売価格が実際の価値の2倍程度の高額のものになっています。その方策が、住宅地経営にまで継続されたら、既存住宅販売で取引価格がその購入価格の半額程度でしか販売できない住宅が、住宅地経営の放置された市域を生み出します。住宅販売時点に美しくつくられた街並みの管理から大手ハウスメーカーは住宅販売とともに逃げて行くのです。住宅地経営管理条件もなくUR等の公有地をハウスメーカー等に利益供与する卸売りし、それでフローの景気が良くなったとするアベノミックスは将来に禍根を残す政策です。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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