メールマガジン

掲載日2013 年 10 月 25 日

HICPMメールマガジン第530号(平成25年10月21日)
皆さんこんにちは

政府がいう「わが国の住宅政策」は、住宅産業が振興する住宅産業政策のことです。誰のために住宅産業振興をするかにより、その政策は良くも悪くもなります。現在の住宅政策は、住宅産業の利潤を高めることに置かれ、「巨額な広告宣伝・営業費を回収するため、販売価格を吊り上げる」方法を容認し、ローンを付けさせてきました。しかし、欧米では、住宅ローンは直接工事費に対してしか行わせず、「生産性を高め、同額の粗利を短期間に手に入れることで、期間当たりの建設業者の粗利と労賃を高める政策」を国の住宅産業政策として実践しています。

直接工事費:粗利8:2(材料費:労務費:粗利=4:4:2)
住宅建設費のコスト比率は、大雑把に言って、材料:労務:粗利が4:4:2ですが、日本の大手ハウスメーカーの場合は、2:2:6です。一般の工務店でも4:3:3です。米国の場合、金融機関はモーゲージですから、ローン返済不能事故が起きたときに、住宅を差押さえ、それを売却した費用で貸し金を回収します。モーゲージによるローン額は材料費及び労務費分だけで、粗利分にはローンを行ないません。そのため、粗利は20%以下に抑えられます。すると、その費用の中から、日本のような巨額な営業経費を支出することはできませんから、米国では紹介客を70%以上とする営業となります。少ない粗利で経営をするため、工期を最小限にし、工期あたりの粗利を最大限化する経営をします。工期が短縮できれば、企業の粗利とともに職人の賃金も増大します。建設会社の平均利潤率である20%を超える粗利は、実は住宅自体の価値を超えた粗利ですから、粗利率20%を超えた費用分だけ販売価格より低い価値の住宅になり、既存住宅市場では値崩れを起こすことになります。

大手住宅会社のための日本の住宅政策
衣食住の中で、最も大きな費用を掛けている住宅の資産価値が下落することで、自己破産や住宅ローン自殺に追い込まれている国は、日本以外に例を見ません。住宅を購入することで国民が資産を失うようになったのは、戦後の、特に、高度経済成長以降の半世紀の日本においてだけです。わが国で住宅をもつことで住宅所有者が貧しくなることには、必然性があります。住宅の資産価値の下落は、住宅会社が住宅の価値以上の価格で販売した結果、過大な粗利分だけ販売価格が下落したためです。市場価値とは違った販売価格を設定する不当な住宅産業経営を政府が支援してきたためです。その政策が長期優良住宅政策で、政府は住宅性能表示制度と瑕疵担保履行制度で、ハウスメーカーと共謀して、「安心を与える付加価値を付けたから、高い価格で販売してよい」と「差別化」と「手離れのよい住宅販売」を進めてきたからです。住宅性能表示制度は、それにより実質性能が上昇するわけではありません。計画された住宅性能を表示しただけで、実質性能を保証をしていなければ、検証の方法すらありません。計画性能であることの確認をする手数料や審査料が経費として加算され住宅価格を引き上げます。政府は性能表示制度と瑕疵担保履行に要した費用を含め、住宅供給業者が住宅を販売するために掛けた経費のすべてを販売価格に転嫁することを容認してきました。

性能表示と瑕疵担保という付加価値
高額な住宅販売価格、は住宅の価格を、直接工事費を根拠にするのではなく、直接工事費に政府が強制する安心料として住宅の品質確保促進法に基づく住宅性能表示制度と住宅瑕疵担保履行法を根拠に実施してきたためです。前者は住宅性能に格付けを行い、高い性能格付けを受けた住宅は高い価値をもった住宅であると購入者を騙し、ハウスメーカーによる高額の住宅価格設定を容認するものです。後者は瑕疵担保保険に入ったことで住宅業者は売り抜けられると言う制度です。両制度により「安心という付加価値が付けられた」という詐欺商売を国が率先して実施してきたためです。販売価格の半額の価値しかない住宅を、価値の倍額で販売し、その販売価格通りの住宅ローンを金融機関に認めさせることで、あたかも金融機関もまた、住宅販売価格を適正であるかのようにみなし融資をさせてきました。政府の住宅政策によって、低い価値の住宅を高い価格で買わされたのであって、天変地異のような自然災害でも、自然現象でもありません。政府の言う付加価値によって、住宅の価値は何も変わらないで、販売価格だけが吊り上げられたのです。

「気休めの安心料」を巻き上げる長期優良住宅制度
平成2006年から政府が住生活基本法で進めてきた政策は、住宅の性能表示や住宅の瑕疵担保制度ように、一見、消費者の利益を守る消費者保護のような政策ですが、その実態は、価値の低い住宅を性能表示で騙し、また、瑕疵担保履行法で実施している瑕疵担保は、民法で規定する瑕疵全体を保証するかのように勘違いさせるような不当景品表示し、実際にはほんの一部の瑕疵しかを保証しない詐欺的手法で売り抜けさせる制度です。消費者が騙されたことに気付いたとき、住宅会社がその追及を振り切り、容易に逃げ切らせる口実を与える制度なのです。住宅会社が住宅購入者を騙して不正に利益を得、その追及を受けたとき、逃げおおせる口実を与える制度です。そのため、住宅性能表示制度にしろ、瑕疵担保履行制度にしろ、制度を実施している評価認定機関や瑕疵担保会社は、巨額の手数料や保険料を取り上げ住宅価格に転嫁していても、実質的に住宅購入者に及ぼされた不利益の回復にお金を支出することがないため、その費用はこれらの制度関係者、つまり、官僚や公務員OB の生活のため使われることになります。

「貧乏人は危険で、金持ちは安全」な性能選択
性能表示は標記されたとおりの実態性能を有しているわけではありません。表示された実態性能を確かめる方法はありません、表示性能は単なる計画性能であって、実体性能を保証しているわけではありません。もちろん、性能表示は住宅の経済的価値を表示するものではありません。住宅性能が高いことが住宅の価値が高いことを意味していません。法律の建前上、そこで表示された住宅性能は国民が健康で安全な生活を営むために必要な性能でなければなりません。日本のように気候が地方ごとに大きく異なる国では、地域ごとに気密・断熱の性能は違っていることは必要です。同様なことは地震大陸に住んでいる日本国では、断層の位置や地盤の種類によって違っていておかしくありません。むしろ違っていることが当然です。しかし、住宅性能表示制度は、同じ地域に対して複数の性能を設定して、それを選択できるようになっています。気密・断熱性能等級や、構造安全性能等級は、地域ごとに社会的に必要十分な水準が1種類あればよい性質のものです。それにもかかわらず、複数の等級を定めるようになっていて、等級の高い性能を持っている住宅は高額で販売できる扱いをしてきました。

大手ハウスメーカーのための詐欺の小道具としての性能表示制度
憲法25条の考え方に立てば、かつて、池田勇人首相が「貧乏人は麦を食え」といって顰蹙を買ったように、貧乏人は性能の低い住宅に住み危険に晒され、金持ちは安全性の高い家に安心して住めと言っているのと同じです。仮に選択できる性能の最下等でも安全衛生が十分であるならば、それ以上は過剰品質で、資源の無駄遣いをしていることになります。欧米でも住宅性能を複数用意していますが、それらは地域地区の違いに適用するためで、同じ地域地区に当てはめられる性能は、1種類しか儲けません。
性能が違っても、大手ハウスメーカーは大量生産をするため、どのような性能の住宅を造っても、製造価格に大きな差異はありません。販売価格を高くする理由にできることから大手ハウスメーカーは高性能を標準仕様に入れて高額販売を進めてきました。性能が価格を左右するという間違った説明を政府や御用学者がしてきました。しかし、製造原価(コスト)を左右するものは材料と労務の数量と単価です。同じ性能のものを安く造ることも高く造ることもできます。それであるにもかかわらず、性能表示制度を進めた国と御用学者は、性能表示という価値表示ができたといって、大量生産が可能な大手ハウスメーカーの高性能住宅の高額販売を正当化してきました。

住宅の価値の2倍の住宅価格を正当化する政府の住宅政策
政府が進める住宅政策で最大の政策支援対象とされているハウスメーカーの設定している住宅価格のうち直接工事費は、販売価格の40%です。米国のモーゲージを受けるとしたら,住宅の価値は平均利潤として20%の粗利を認めた価格で、ローン額は直接工事費です。つまり、ハウスメーカーの販売価格の半額の価値と評価され、販売価格の40%の融資しか受けられません。米国の金融機関は、日本のハウスメーカーのモーゲージを差し押さえたとき、その住宅はよくて販売価格の半額でしか市場で販売できないと判断しています。ハウスメーカー及び政府の弁明は、「ハウスメーカーは住宅販売に掛けた費用を住宅価格として回収しているのですから、不当利益を得ているわけではない。」と言います。ハウスメーカーが広告宣伝、営業のために、政府が用意した詐欺の小道具(性能表示や瑕疵担保)に要した審査、評価、手続きに要した費用は、いずれも住宅自体の品質を向上させるものではなく、住宅購入者を騙すための資料作成に使われた費用です。さらに、それらの性能等を満足していることを広告宣伝するための費用も、基本的に住宅会社が販売促進するための費用で、それによって購入する住宅が向上するわけではありません。そもそも性能表示すべきとされる水準は、日本の文明水準で当然充足すべきか、それともしなくてもよいことばかりです。過去の住宅金融公庫の住宅共通仕様書同様、それを融資条件にしておけば足りることばかりです。金融機関が真面目に融資をするならば、融資審査でできることです。つまり、現在住宅性能表示制度で行っていることはほとんど蛇足に過ぎず、この制度で利益を受ける官僚と政治家のためにつくられた制度になっています。

価値の増加にならない「長期優良住宅制度による付加価値」
経済学で「付加価値」というときは、製造業において、製品価格と製造原価の差額をいいます。製造された製品と製造に使われた原材料と労働力とは全く別の商品で、その価値は違っていますから、製造業における付加価値は労働により創造された価値と説明されてきました。流通業で販売価格と仕入れ価格の差を粗利と言いますが、その実体は、流通経費と流通に携わった人の労賃です。流通の過程で取り扱った商品は変化しませんから、その間に価値が創造されることはありません。価値を量ろうとすれば、取引き価格で判断するしかありません。そのため流通の過程で生まれる価格差が製造過程で生まれる価格差と同じように勘違いされ、同じ「付加価値」という名で呼ばれています。しかし、製造業における製造では新たに商品が創造されるのとは違って、流通業では同じ商品が移動するだけです。よって、商品自体の価値には変化がありません。流通が長くなれば商品の価格は高くなりますが、商品の価値は高まりません。長期優良住宅制度とは、正にここで言う流通と同じ役割(無駄)の累積です。

建設業法違反の複合単価(材工一式)単価
建設業は製造業です。建設業法はGHQ(連合軍総司令)が日本を統治していた当時できた法律ですから、建設業は製造業として法律がつくられ、建設工事における請負契約ではその材料労務の原価と数量を明確にすることを建設業法第21条で明記しています。米国の見積の方法を規定したもので、米国の不動産鑑定評価の「原価方式」による不動産の価値の決定方法です。しかし、日本では公共事業に始まり、重層下請け方式で請負工事費は複合単価(材工一式)で見積もられてきました。実行予算と言って、下請けの都度、請負工事費は、粗利分だけ痩せて行き、その都度、実行予算が組まれてきました。公共事業の場合、粗利の合計が発注工事費の70%を超すことも不思議でない状態になっています。公共事業の費用は国民の税金が財政支出として使われています。そのため公共事業費もまた会計検査院の検査の対象です。しかし、会見サインでは検査のものさしである適性単価や適正数量を持っておらず、検査を受ける国土交通省の外郭団体に策させ、それを使っています。その単価は複合単価(材工一式)で、発注者である公的機関が発注したときの実績を下に作成したもので、実際に公共事業の再末端の現場で支払われた材料や労務の数量や単価とは全くかけ離れたものです。この公共事業のやり方が、建設業全体を汚染し、政府は建設業を建設サービス業と呼び、住宅産業も同様の扱いをするようにさせてきました。かつて中曽根内閣のとき輸入住宅が取り組まれ、住宅都市開発公団が米国からの直輸入の単価で工事を実施したとき、会計検査院がこの単価および数量でやられては困るので、利益をどれだけとってもかまわないから、既存の複合単価にして工事を実施してくれと建設業者に頼んだ事件があった。

日本の住宅建設業政策
わが国では直接工事費と粗利とが重層下請けの請負段階で複合単価(材工一式)単価に混ぜ込められ、実際に最末端で支払われている材料と労務単価と数量自体が元請業者にさえ分からなくなっています。その結果、建設業の経営はどんぶり勘定と言われ、儲けさえ得られれば、その経緯は問わないという結果主義になっています。掛かった費用は販売価格として回収できれば、そのプロセスは問題にしないとされてきました。それを象徴するものが、ハウスメーカーの経営であり、政府の住宅政策です。住宅建設の直接工事費が販売価格の40%でも、利益を上げて完売できることが住宅経営であるとされ、住宅購入者予定者を集め、直接工事費の2.5倍の販売価格でも売り切る方法を政府と一丸になって進めてきました。住宅購入者不在の住宅政策が日本の住宅産業政策でした。
日本の住宅政策は、戦後の国家再建のときの初心を忘れ、憲法で定めた国家と国民の契約を忘れ、官僚と政治家と住宅産業と住宅金融界が国民を犠牲にして自らの利益を拡大する官僚主導の護送船団方式の詐欺集団になったといって過言ではありません。官僚による建設業法違反による公共事業を始め、不正な既成事実の積み重ねによって、住宅政策自体が戦災復興と住宅難世帯の解消から取り組まれてきましたが。60年日米安全保障条約の改定で、日米対等の軍事同盟になり、住宅政策は初めは産業振興のため、やがては住宅自体が産業活動を支援する経済政策の手段に組み込まれていきました。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム